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こち亀の神回5選!傑作コマに似た特許図面を探してみた~新どきどきメモリアルからトーマス部長まで~

こち亀×知財、第九弾です!

本記事は約1年振りに「特許」に関するネタを取り上げます。過去のこち亀×特許関連の記事は、

  • 特許の技術的内容が、特許出願日より前にこち亀で描かれていた…!(記事1記事2
  • 特許庁における特許出願の審査にて、こち亀が参照されている事例があった…!(記事3記事4

というものでした。それはそれで面白いのですが、技術内容や特許制度について小難しい印象を持ってしまう側面もあるかと思います。

特許文献は文字ばかりなので仕方ない・・と考えるのは早計。特許文献には、発明内容の理解を助けるための「図面」があります。図面であれば難解な文章を読み解く必要が無く、更には言語の壁をも越えることが可能です。

そこで本記事では、筆者の独断で決めたこち亀「神回」のコマを紹介しつつ、関連する特許図面を添えていきます。

途中、お役立ち情報も盛り込みました。特許に関して誤解しがちな内容を説明しています。こちらもどうぞお気軽にご覧ください。

  • お役立ち情報①:製品の販売前に特許出願しよう。
  • お役立ち情報②:特許出願したら全て権利になるわけではない。
  • お役立ち情報③:「ふんわりアイデア」で特許が取れるわけではない。

こち亀神回①:新どきどきメモリアル(特許情報:恋愛シミュレーションゲームにおける呼称変化技術)

~コミック第99巻(1996年発売)「格闘ゲーマー警官登場!!の巻」~

  • 【概要】「格闘技の鬼」である左近寺が初登場。女性に興味が無い硬派な男であったが、両津が持っていたゲームソフト「新どきどきメモリアル」と出会い、恋愛ゲームにのめり込むことに。柔道の練習を休みながらゲームを進めると、とうとう早乙女沙織からあだ名で呼んでもらうことに成功するのであった。
こち亀 新どきどきメモリアル

こち亀 99巻 P21 より

この回以降も度々登場する左近寺竜之介が初登場。現実世界で大ヒットしたゲーム「ときめきメモリアル」を想定したお話ですね。ユーザーの恋愛相手である「藤崎詩織」とよく似た長髪の少女がこち亀にも登場します。

実際のゲームにおける藤崎詩織は、どの様なキャラクターでしょうか?特許図面にて確認してみましょう。

特開平09-192353:アイコン表示制御装置、コマンドの入力支援方法、制御方法およびコンピュータプログラムが格納された記録媒体(優先日:1995年10月12日、出願日:1996年10月11日)

特許図面 ときめきメモリアル

特開平09-192353 より

そうそう、こんなキャラクターでした!ピンク色の髪の毛は特許図面では表現できないものの、これは正しく藤崎詩織さんですね。詩織さん…!

こちらの出願には「ときめき度」「友好度」に応じてユーザーの呼び名が変わるという内容が記載されています。どちらか一方のパラメータばかり上げても、好ましい呼び名である「よっちん(レベルF)」には辿り着きません。友達とみなされてはいけず、かと言ってときめきばかりでも駄目。恋愛の難しさが上手に表現された図面ではないでしょうか。

特許図面 呼び名

特開平09-192353 より

ここで、1つ目のお役立ち情報です。

  • お役立ち情報①:製品の販売前に特許出願しよう。

特許を取得するには、大前提として「新規性」が必要です。つまり、製品の販売等によって発明内容が公開される前に特許出願を行わなくてはなりません。

PlayStation版『ときめきメモリアル 〜forever with you〜』の発売日が1995年10月13日であるところ、上記特許出願はなんとその前日である1995年10月12日になされていました。発売日に合わせて急いで書面を整えた関係者のご苦労が推察されます。その時間的制約の中でも、簡易的なものではなく実製品に沿った忠実な藤崎詩織さんを図面に掲載いただき感謝です。

この様に実製品を想起させる忠実な図面があると、発売や出願から数十年経った後でも話題になりやすく、昔を懐古することができます。もしかしたら最新版の同ゲームソフトへと購買意欲が向くかもしれません。そう考えてみると、特許は「他人に使わせない」という独占排他的機能だけでなく、宣伝広告機能としての側面もあると言えるでしょう。

そして権利は原則として出願から20年で満了しますが、特許文献はその後ずっと公開され続けます。その広告効果は無視できないのではないでしょうか。

注:「国内優先権制度」により、最初の出願から1年以内であれば内容の追加が可能。本制度は、包括的で漏れの無い権利取得を図るため設けられている。上記案件は同制度に基づいて1996年10月11日に再び出願されている。

こち亀神回② :ゴメスのハンバーガー(特許情報:ゲーム内広告配信技術)

~コミック第100巻(1996年発売)「ゲーム営業 両津!!の巻」~

  • 【概要】テレビゲームを制作する電極+(プラス)達。開発メンバーは皆小学生でありメーカーへの売り込みに苦労していたため、両津が交渉役として手助けをすることに。最初は真面目にサポートを行うものの、裏金を貰いつつ、テレビゲーム内に過度なスポンサー広告を入れるという「お決まりの悪事」へと向かうのであった。
こち亀 ゴメスのハンバーガー

こち亀 100巻 P46 より

これは強烈な広告…!野球ゲームを全く無視していますね。大事な局面に広告が挿入されているあたり、以下記事にて紹介の「あたり前田の缶コーヒー」事案よりもタチが悪いです。

新桃太郎⁉こち亀の名シーン5選からゆるく学ぶ著作権法~お茶屋の藤田くんは違法行為をしていた~

そして筆者はこの回がお気に入りで、もはや「ゴメス」といえば真っ先に「ハンバーガー」が想起されます。皆様は「ゴメス」に対してどの様な印象をお持ちでしょうか? Twitter 上でアンケートを取ってみました。

ハンバーガーにも票が入っている…!こち亀好きな方がいらっしゃったようで嬉しいです。でも半数以上がレオ・ゴメス氏ですね。助っ人外国人として活躍し、99年には中日ドラゴンズを優勝へと導く活躍をしました。

では関連する特許図面を眺めていきましょう。

特開2021-58317:プログラム、ゲーム装置、ゲーム装置の制御方法及びゲームシステム(出願日:2019年10月4日)

特許図面 野球ゲーム 広告

特開2021-58317 より

パワプロシリーズでお馴染みのコナミによる出願。スマホ等の観戦端末からユーザーが入力したコメント等に基づき、表示させる広告内容を制御するというものです。さすがにこち亀の様に投球が妨害されることはなさそうです。野球ゲームに限らず幅広い用途がありそうな発明ですね。

なお本件は2021年1月に審査請求がなされており、これから特許庁での審査が行われる見込みです。

こち亀神回③:部長を笑顔に(特許情報:折り目による変顔遊び技術)

~コミック 第86巻(1994年発売)「パソコン・モンタージュ!の巻」~

  • 【概要】パソコンが導入され、派出所でも容疑者の顔画像作成を行うことが可能になった。操作方法を覚えた両津は、実験として部長の写真を使うことに。そして「部長の顔こわいから笑わせよう」と言って画像を歪ませるなど、様々な悪戯を繰り広げるのであった。
こち亀 画像処理

こち亀 86巻 P133 より

こちらは個人的にとても記憶に残っている回です。カツラを被せるだけでなく、ゴリラやウン✖と合成するシーンもあり、幼心をくすぐられました。

そんな画像処理分野には、様々な特許技術が関わっています。複数枚の画像を合成する技術は勿論のこと、フーリエ変換等を通じて特定の周波数成分をカットする技術など。しかしそれらの特許図面には下手したら数式が入っており、一般人にとっては難解です。

ここでご紹介する図面は、複雑な画像処理技術ではありません。もっと原始的でシンプルなものです。

以下の図面は、何を示しているかが一目瞭然。多くの方が幼少期に同じ試みをした経験があるのではないでしょうか。

特開2012-194234:広告媒体(出願日:2011年3月15日)

特開2012-194234 より

これは…!紙に折り目を付けて、人物を笑わせたり悲しませたりする試みですね!懐かしいものです。

この発明のポイントは、2次元の広告情報に折版加工が施されているというものです。初めからこの様な折り目がついていれば興趣があり、広告効果の増大が期待できるかもしれませんね。

ここで、2つ目のお役立ち情報です。

  • お役立ち情報②:特許出願したら全て権利になるわけではない。

「こんな古典的な内容が特許なのか?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。それは「No」です。特許出願した発明が全て権利になるわけではなく、特許庁の「審査」を経ることで初めて特許権が誕生します。そして本件は出願人が特許化を望まなかったためか、この「審査」を請求する手続がなされていませんでした。審査の請求は出願日から3年以内に行う必要があるため、今後本件が特許化されることはありません。

そしてもし仮に権利になっていたとしたら、「子供が紙を折り曲げて遊んだら特許権侵害なのか??」といった疑問も出てくると思います。こちらも全力で「No」です。特許権として登録された内容を ”業として”(≒ビジネスとして)実施したら権利侵害になり得ますが、家庭内等で個人的に楽しむ分には侵害に該当しないためです。

特許権は独占排他的な機能を有し、時にはビジネスに影響を与える絶大な存在にもなり得ます。しかし単に出願されているだけという案件もありますので、その点を考慮して冷静に受け止めることが大事です。

なお、特許が登録されているか否かは、番号表記にて簡易的に見分けることが可能です。国内の特許出願に関する番号表記は主に3種類あり、登録されていることを示す表記は③のみです。

(番号表記例)

  1. 出願番号:特願2011-56306
  2. 公開番号/公表番号:特開2012-194234/特表2013-567123
  3. 登録番号:特許第4040117号

注:製品やHP等にて①や②の表記があっても、実は登録されていて③の登録番号が付与されている場合も有ります。気になる案件を見つけたら、J-PlatPat にて検索するか、専門家に相談してみましょう。

こち亀神回④:機関車トーマス部長(特許情報:画像合成技術)

~コミック 第86巻(1994年発売)「パソコン・モンタージュ!の巻」~

  • 【概要】パソコンが導入され、派出所でも容疑者の顔画像作成をすぐ行うことが可能になった。操作方法を覚えた両津は、実験として部長の写真を使うことに。ゴリラや✖✖チと合成して楽しむなど、様々な悪戯を繰り広げるのであった。
こち亀 トーマス部長

こち亀 86巻 P135 より

神回③と同様のお話です。ここでは2種類の画像を合成する技術について取り上げます。部長の顔をゴリラ等の写真と合成して遊んでいる中で、上記コマは機関車との合成を試みたシーンです。

2枚の画像を合成する技術・・大量に特許出願がありそうですね。

ここでは、調査を行った中で当該技術が最も図面に表現されていた案件を紹介します。米国の特許文献です。

米国特許第7483553号:Caricature exaggeration(出願日:2004年3月29日)

特許図面 画像合成

US7483553 より

わかりやすい!!!

発明の概要を掴むにはこの上ない図面ですね。言語の壁を越えており、今回の様な企画の記事を書くにあたって大変助かります。

ここで、3つ目のお役立ち情報です。

  • お役立ち情報③:ふんわりアイデアで特許権が取れるわけではない。

こち亀コミック86巻の発売は1994年。そして本特許の出願は2004年。・・あれ?既に世の中に開示されている内容でも特許が取れるのか?と感じるかもしれません。

ここで、本特許がどの様な内容で権利化されているのか、中身を確認してみましょう。日本の特許文献であれば【特許請求の範囲】、米国の特許文献であれば「Claim」の記載内容が、権利範囲を示しています。

では、詳しく見ていきます。

米国特許 クレーム

US7483553 より(Claim1 を抜粋)

あぁっ…!!やっぱり詳しく見ていくのはやめましょう。

上記 Claim の雰囲気だけでも分かるとおり、特許として登録されている内容は「2枚の画像を合成する」といった ”ふんわり” したものではありません。多くの技術要素が関わる内容に限定することで、従来技術との差異があり、その結果特許となるのです。

一言に「特許権」と言っても、その中身や価値は様々であることが感じられるのではないかと思います。

ところで日本の特許権の中で、非常に短い文字数にて登録された事例があります。何文字くらいか、想像がつくでしょうか?

なんと「10文字」です。

短い文字数の特許

特許第2920767号(出願日:1998年7月7日)

最後の「。」が、権利範囲を示す文章の中で10%も占めています。中々強烈ですね。

【発明の名称】に「。」だけ加えた内容で特許が取られているのは、前代未聞の事案でしょう。(参考:「特許請求の範囲」日本弁理士会 中国会, 2018.8.1)

なお、例えば Toreru が取得した特許第6936459号の【請求項1】は「213文字」です。IT分野においては、これでも短い方です。

【請求項1】
 文字からなる検知対象商標、及び、検知対象項目を受け付ける受付部と、
 前記検知対象項目を用いてweb検索を行い、検索結果の電子データを検知対象領域として取得する取得部と、
 前記検知対象領域から広告として使用されている広告領域を抽出する抽出部と、
 前記広告領域に前記検知対象商標が存在しているかを検知する検知部と、を有し、
 前記取得部、前記抽出部及び前記検知部は、定期的に又は不定期的に継続して実行されることを特徴とする商標使用検知装置。

特許第6936459号

こち亀神回⑤:ロボット漫才(特許情報:漫才玩具技術)

~コミック 第198巻(2016年発売)「ロボタレの巻」~

  • 【概要】超戦隊ロボットの活用方法について知人から相談を受けた両津。ハイテク小型モーターを108個搭載したその滑らかな動きに着目し、漫才等を通じてバラエティ番組への進出を企てるのであった。 
こち亀 ロボット漫才

こち亀 198巻 P52 より

ロボット警察官「丸出ダメ太郎」や「度怒り炎の介」をはじめとし、こち亀においてロボットは度々出てきます。そして連載終了間近である198巻には、とうとう漫才ロボが登場。近未来感ある描写ですね。

ここまでスムーズな動きを駆使する漫才ロボは現在まだ存在しないかと思いますが、アイデアレベルであれば、多様な特許出願があります。

例えばこちらの案件。「経営の神様」とも称されるあの歴史的実業家が創業した会社によって出願されています。

特開平9-131468:漫才玩具(出願日:1995年11月9日)

特許図面 漫才玩具

特開平09-131468 より

何やら漫才をしている風の図面ですが、このお二人は人形です。音声制御手段やアクチュエータが備わっており、まるで上記こち亀のロボットの如く漫才を繰り広げる内容が記載されています。

【0015】・・・・例えば、図3に示すように相方を向いて話したり、つっこみ役が相手方をはたいたりといった動作を漫才風に制御する。図3には話の内容によって相方を向いたり、お客さんの方向に向いたりする様子や、つっこみが「あほか」と叫びながら頭を殴打する様子を示している。

特開平09-131468

そして本件の出願人は、松下電器産業株式会社(現パナソニック)。さすが大阪の会社です。漫才玩具について、製品化を検討していたのでしょうか。今からでも是非実現をお願いしたいところです…!

なお、似た先行技術が存在していたため、本件は特許化には至りませんでした。

まとめ

お楽しみいただけましたでしょうか。少しでもニヤッとする場面がありましたら幸いです。

特許に関する「お役立ち情報」は以下のとおりです。

  • お役立ち情報①:製品の販売前に特許出願しよう。
  • お役立ち情報②:特許出願したら全て権利になるわけではない。
  • お役立ち情報③:「ふんわりアイデア」で特許が取れるわけではない。

いずれも大事な内容ですので、是非こち亀のコマと一緒に紐付けて覚えておいてください。そうすれば、こち亀を読む度に特許の事を思い出すはずです。

幅広い切り口で日常が描かれたこち亀は、大人になった今でも面白く読めます。そして何より、特許に限らず多くの「知的財産」が関わってくるのです。こち亀×知的財産 については過去に8つの記事を掲載していますので、こちらも是非ご覧ください。

こち亀知財ワールドを一緒に楽しみましょう!

【①特許】:こち亀は時代を先取りする?-こち亀アイデア関連の特許出願紹介 Vo.1- 
【②特許】:こち亀は時代を先取りする?-こち亀アイデア関連の特許出願紹介 Vo.2- 
【③特許】:特許庁の審査官はこち亀好き?-こち亀アイデア関連の特許出願紹介 Vo.3- 
【④特許】:審査官はどうしてもこち亀を参照したかった? -こち亀アイデア関連の特許出願紹介 Vo.4- 
【⑤商標】:モガンボ両津・麗子…普通名称化した商標をこち亀キャラから教わる
【⑥著作権】:新桃太郎⁉こち亀の名シーン5選からゆるく学ぶ著作権法~お茶屋の藤田くんは違法行為をしていた~
【⑦意匠】:空間デザインを権利保護!瞑想ルームで「内装の意匠」を考察する~こち亀のあの細長い家も意匠権を取れる?~
【⑧商標】:宅急便、マジックテープ…意外?な登録商標を「こち亀」内で探してみた

(参考情報)
・『こち亀』社会論 超一級の文化史料を読み解く(稲田豊史 著, イースト・プレス)
 ・こちら葛飾区亀有公園前派出所 データベース

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