目次
はじめに
ロゴを商標登録する必要性はあるのでしょうか?ロゴを商標登録しておかないと、そのロゴが継続して使えない可能性があります。
この記事では、ロゴを商標登録しておく時の注意点やよくある疑問点について解説しています。
ロゴの商標登録の実例
一口にロゴと言っても様々なパターンがあります。
例えば、Nikeの場合
第5146738号
登録1976560
スターバックスコーヒーの場合
第5978442号
第5814027号
コカコーラの場合
第5899793号
大きく分けて3パータンあります。
- ロゴ(イラスト)のみ場合
- ロゴ(イラスト)+文字の場合
- 文字(装飾)の場合
上記はどれも商標登録されていますが、これら各社は何故、商標登録しているのでしょうか?
ロゴの商標登録の必要性ってあるのか
ロゴを商標登録する理由は3つあります。
- ロゴが誰かに使われた時に「使うな!」と言うため
- 商標権侵害で訴えられないため
- ブランドを継続して保護していくため
ロゴが誰かに使われた時に「使うな!」と言うため
もし、自分のロゴが誰かに使われた時に、「そのロゴを使うな!」という権利はあるでしょうか?実はロゴには著作権が発生している場合があり、それをもとに「使うな!」ということができるときがあります。
しかし、著作権が発生しないロゴもあります。
下記のロゴは著作権はないとして判断されました。( 東京高裁平成8年1月23日)
また、著作権が発生しても、相手が「自分で独自に作った」と主張された場合に、「そのロゴを使うな!」と言えない可能性があります。(著作物の依拠性)
この様に、ロゴの著作権は非常に不安定で使いにくい権利なのです。
しかし、商標登録をしておけば、著作権が発生していなくても、依拠性の主張をされても、商標権をもとに「そのロゴを使うな!」と言えるようになります。
商標権侵害で訴えられないため
また、上記の裏返しになりますが、誰かがロゴを商標登録すれば、自分で作ったロゴであっても使うのをやめないといけない可能性があります。
そうなることを防ぐ意味でも、ロゴの商標登録は有効です。
ブランドを継続して保護していくため
ロゴは、ホームページ、新聞、テレビ、広告、プレスリリースなどあらゆるところに露出して、多くの目に留まるものです。
しかし、それが他の人に勝手に使われたり、自分が使えなくなってはブランドを育てることができません。
ロゴは大切な顧客とのタッチポイントになるので、ブランドを継続して保護するためにロゴの商標登録は必要になります。
デザイナーに発注したロゴを商標登録する場合の注意点
商標登録するロゴは、著作権者から著作権を譲渡してもらうか、商標登録の同意をもらうようにしましょう。
例えば、デザイナーにロゴ制作を発注する際には、商標登録希望であることを伝えおくと良いです。
もし、著作権が自分になく、著作権者の同意もない場合は、公序良俗違反で商標登録が認められない可能性があるからです。
例えば、下記のイラストは、著作権者の同意なく商標登録されたとして公序良俗違反で無効になりました。(平成27(行ケ)10023 審決取消請求事件 )
画像引用(著作権者のもの と 商標権者のもの)
デザイナーに発注したロゴをを商標登録する場合は、著作権の譲渡か同意を得るようにしましょう。
ロゴの中の有料フォントは商標登録しても良いか?
ロゴの中に使っているフォントが有料フォントだった場合は、商標登録しても良いのでしょうか?それは、フォントを販売している会社の利用規約によります。
例えば、Adobeのフォントは商標登録を許されていますが、モリサワフォントは禁止されています。
ここは商標法というより、契約によって成り立っていますので、できるだけ自由に商標登録できるフォントを使用することをオススメします。
ロゴの色は何パターンかあるが全て商標登録しないといけないのか?
原則は、一番よく使う色を1パターンだけ商標登録しておけば問題ありません。何色もよく使う場合はグレースケールで商標登録することも考えられます。
商標登録する際に、ロゴの色は2つのことが注意が必要です。
- 商標登録した商標と違う色のロゴを他社が使った場合に権利行使できるか(使うのやめろと言えるか)
- 商標を使っていると言えるか(商標を適切に使っていない場合は、権利が取り消されることがある)
商標登録した商標と違う色のロゴを他社が使った場合に権利行使できるか
先ほどの NIKE のロゴを例に考えましょう。例えば、青色のNIKEのロゴを使っている他社がいた場合であっても、使うのやめろと言うことができます。
商標権は似ている範囲までが、権利行使の対象となりますので、色違いくらいでは似ている可能性が高いからです。
しかし、とても単純な図形で色の重要度が高いものについては、似ていない可能性が高いです。例えば、日本の国旗とバングラデシュの国旗を商標として考えた場合は、形は同じですが、色の印象が強いため似ていないと判断される可能性があります。
商標を使っていると言えるか
商標登録した後に、過去3年間にその商標を使っていないと、権利が取り消されることがあります。これは不使用取消審判という制度です。権利を取り消されることを防ぐために、商標を適切に使用することが大切です。商標登録した商標と色違いのロゴであれば、同一の商標を使っていると認めてくれることが多いです。しかし、上記の日本の国旗とバングラデシュの国旗のように、色が異なれば明らかに印象が異なるものは、その色ごとに商標登録しないと権利を取り消される可能性があります。
ロゴと文字を一緒に商標登録した方が良いのか?
ロゴと文字を一緒に商標登録することはメリット・デメリットがあります。
ロゴ+文字の商標は、例えば下記のようなものです。
登録4318765/01
ロゴ+文字のメリット
- 初期の費用が安くなる
ロゴ+文字のデメリット
- ロゴと文字の配置を変えて使用すると、登録商標と同じ商標を使っていないとして不都合が生じる場合がある
- ロゴのみや、文字のみを使っていると他社の権利を侵害することがある
ロゴ+文字は、1件の商標登録でロゴと文字の権利を確保できる可能性があり初期の費用が安くなることがあります。しかし、ロゴ+文字で出願(登録)した場合には、その配置も含めたロゴ+文字の1セットの態様が出願(登録)商標という扱いになります。そのため、実際に商標を使うときにロゴと文字の配置を変えたり、ロゴと文字の片方のみを使用したりすると、出願(登録)商標と同じ商標を使用していないと評価され、不都合が生じる場合があります。たとえば、特許庁の審査が早まる早期審査が受けられなかったり、不使用取消審判で商標を適切に使っていないとして権利が取り消される場合があります。
そのため、ロゴと文字の配置に複数のパターンがあったり、ロゴと文字を分離して使うこともある場合には、このような不都合を避けるため、新たに別バターンの商標登録をし直さなければならないことがあります。この場合、初期の費用は安くなっても、結果的には費用が高くなります。
また、可能性はあまり高くありませんが、ロゴ+文字の商標登録をして、ロゴ部分のみや文字部分のみを使ってしまうと、他社の権利を侵害することがあるので注意が必要です。商標登録により安全に使えるお墨付きを得られているのは、あくまでも商標登録をした商標そのものだからです。
そのため、文字とロゴを単体で使うことがあったり、配置が変わることがある場合には、トータルで考えると文字とロゴは別々に商標登録することをオススメします。
ロゴの商標登録の費用
ロゴを商標登録するためには、一般的には
- 調査費用
- 出願費用
- 登録費用
がかかります。
調査費用は、商標登録する前の事前の調査費用です。似たようなロゴが商標登録されていなかなどを調査します。ロゴの商標調査費用は一般的に文字よりも高い傾向にあります。調査が文字よりも広範になり大変だからです。調査費用は無料〜5万円です。
出願・登録費用は、文字商標と同じことが多いです。特許庁に支払う印紙代と弁理士に支払う手数料が必要です。
印紙代と手数料を合わせて概ね5万円〜15万円程です。区分が増えればその分費用も増えます。
ロゴの商標登録の確認方法は?
ロゴの商標登録を簡単に確認する方法があります。それは、 Toreru商標検索 を使用する方法です。
一般的には、ウィーン分類という分類コードを使いこなしてロゴの商標登録を調査しますが、Toreru商標検索であれば画像をアップロードするだけで似たようなロゴをAIが探してくれます。
しかし、検索精度が完璧ではないのと、似ているかどうかの判断は難しいですので、最終的には弁理士などの専門家に依頼することをオススメします。
まとめ
いかがでしょうか。ロゴの商標登録は、事業を安定して継続したい場合、ブランド保護を適切に考えていきたい方には有効です。
また、ロゴ制作をデザイナーに発注する時や、有料のフォントを使う時は著作権や利用規約に注意しましょう。
ロゴが商標登録されていないかどうか調べるには Toreru商標検索 を使えば簡単に検索できます。