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こち亀は時代を先取りする?-こち亀アイデア関連の特許出願紹介 Vo.2-

本記事では、筆者が大好きな漫画である「こちら葛飾区亀有公園前派出所(以下、こち亀)」に登場するアイデア関連の特許出願・実用新案出願を紹介します。前回の Vo.1 では、ロボット掃除機、木製パソコン、エアバッグ付きランドセルにつき紹介しました。

本記事では、ゴルフに関する2件の事例について紹介します。いずれも特許や実用新案の出願日より前にコミックが発売されており、秋本先生の先見性を垣間見ることができます。なお、2件目については、あの超有名起業家が発明者である特許案件をオマケとして掲載しています。

1.ARゴルフ(コミック第182巻)

1件目は、AR(Augmented Reality:拡張現実)ゴルフに関するものです。(2012年10月発売、コミック第182巻4話「 AR ゴルフの巻」)

AR ゴーグルをつけるだけでどこでもゴルフ場になる『どこでもゴルフ』を用いることで、ゴルフ場に行かなくても接待ゴルフができるようになるというお話です。AR を駆使することで盛り上がり、より良い接待ができるかもしれませんね。

こち亀 第182巻 P66

こち亀 第182巻 P66より引用

GPS 機能を搭載した AR ゴーグルを使用することで、複数人でのプレイも可能となります。

こち亀 第182巻 P70

こち亀 第182巻 P70より引用

ゴルフ場まで行かなくてもゴルフを楽しむことができ、面白そうですね。ゴルフに限らず、ゲートボール等の様々なスポーツにも応用できそうです。

では、特許情報を紹介していきます。

AR や MR(Mixed Reality:混合現実)を利用したゴルフについて、vGolf 社HPリンク)による特許出願(US2018/0261010:Google Patentsリンク)や実製品がありました。

US2018/0261010 図

US2018/0261010 図9(左)、図3(右)

抄録(機械翻訳) 
・・・ミックスリアリティメガネは、ユーザの頭またはビュー位置に応じて、実世界ビューの上にボール追跡データを表示すること、および/またはシミュレートされた世界ビューの没入型ディスプレイを表示することを可能にする。・・・

US2018/0261010 Abstractより

ボールにセンサーが組み込まれており、飛距離や位置などのデータがゴーグル上に表示されるという内容のようです。そして段落 [0026] には、ゴーグルに GPS センサが付与されてもよい旨が記載されていました。

[0026](機械翻訳)
 図示の実施形態における複合現実眼鏡100はまた、角度変化および/または線形変化率および/または磁気配向を感知する慣性測定ユニット(IMU)104を含む、三次元空間における位置検出のための1つまたは複数のセンサを含む。追加のセンサは、測光位置検出のための統合カメラ105と、地球に対する複合現実眼鏡100の位置の衛星検出のための全地球測位システム(GPS)センサ106とを含み得る。

US2018/0261010 より

本件は米国の特許庁(米国特許商標庁)にて審査が終わり、特許化されています。しかし、大変残念ながら、当該審査においてこち亀の情報は参照されておりませんでした。

AR ゴルフのアイデアは本件の出願よりも前にこち亀で登場しているため、「この発明はこち亀に載っているから特許に出来ないよ」という審査を行って欲しかったですね。(勿論、当該特許出願には技術的な内容が詳細に記載されているため、最終的には特許化に至るとは思います)

以下は vGolf 社の HP 上に掲載された Youtube 動画です。1:15頃に登場するように、戦車や飛行機が墜落するといったありえない環境でのゴルフを体験できるのが面白そうですね。

vGolf Overview (Youtube)

2.シミュレーションゴルフ(コミック第50巻)

2件目は、シミュレーションゴルフに関するものです。(1988年2月発売、コミック第50巻4話「遊び天国出現の巻」)

中川の系列会社が経営する巨大レジャー施設にて、オールシーズンでスキーや海水浴が楽しめる設備や、シミュレーションゴルフが登場するお話です。このお話の中で登場するシミュレーションゴルフは、ショットを打った後にその場で歩行をすることにより、スクリーンに表示される映像がボールの位置まで移動していくという内容が描かれています。

こち亀 第50巻 P71より引用

上記アイデアと似た内容は、1992年11月に出願された実用新案に記載されていました。(実開平6-44574:J-PlatPat リンク

【課題を解決するための手段】
・・・・・前記ティー上のゴルフボールのスイングを終わったゴルファーが行う足踏みを検出するマットセンサーと、前記マットセンサーにて検出されたゴルファーの足踏みによって前記表示装置に表示された打撃されたゴルフボールの落下位置の場所を前記表示装置にクローズアップして表示する画像制御部とを備える構成とするものである。

実開平6-44574 より

従来のシミュレーションゴルフではコース上の移動についての配慮がなされていないという点を課題として捉えて、マットセンサーを活用して解決する考案です。

実開平6-44574 図

実開平6-44574 図3

【0008】には、マットセンサーに関する記載がありました。

【0008】
 ・・・マットセンサーEは、ゴルフのスイングを終わったゴルファーがする足踏みを検出し、この検出により画像制御部Fにおいて前記表示装置Gに表示されたゴルフボールの落下位置の表示画面をボールの落下場所のクローズアップ画面に切り換える。 

実開平6-44574より

足踏みを検出して表示画面を切り替える旨が記載されており、こち亀に記載されたアイデアと似ていますね。こちらの技術はシミュレーションゴルフに限らず、ランニングマシンなどにも応用できそうです。私はランニングマシンを使っていても退屈ですぐ飽きてしまうのですが、もし景色が変わる任意の好きな場所を設定して走ることが出来れば、長続きしそうです。

また、本文献には、より臨場感をもたせるために打席の周囲に送風機を設けるアイデアの記載もありました。風向きや風力が任意に制御可能となるようです。

実開平6-44574 図6

実開平6-44574 図6

孫正義氏によるシミュレーションゴルフ関連の特許発明

なお、本文献は、1997年12月に後発で出願された特許第4041197号(J-PlatPat リンク)の審査時に引用されていました(注1)。特許第4041197号の筆頭発明者は孫正義氏で、打席の周囲を囲むように空気ダクトを設けたり、打席上部より散水することにより雨も表現するといった内容が記載されています。色々な発明を行ってきたことで有名な孫氏ですが、シミュレーションゴルフ関連でも特許出願があったのですね。

特許第4041197号 図1

特許第4041197号 図1

(注1)特許庁における審査時に、審査対象の発明と似た先行技術があるか否かをチェックされる。シミュレーションゴルフ×送風という観点で似た技術であることから、特許第4041197号の審査時に実開平6-44574が引用された。

3.さいごに

本記事では、ゴルフ関連のこち亀アイデアに関する特許出願・実用新案出願について紹介しました。1件目のARゴルフは、その後 vGolf 社から実際に似たコンセプトの製品も実装されており、秋本先生の ”発明力” には驚かされるばかりです。(注2)

今後も事例を見つけて、定期的に紹介していきます。

 (注2) 関連する特許出願案件がこち亀の掲載よりも前に存在する可能性はありますが、現時点では見つかっておりません。もしあれば、教えていただければ幸いです。

(参考記事)

日本発祥のゴルフシミュレーター、35年の進化でここまで達した「3D BIGBAN」がスゴイ

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