こち亀は時代を先取りする?-こち亀アイデア関連の特許出願紹介 Vo.1-

はじめに

 この記事では、筆者が大好きな漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所(以下、こち亀)」に登場するアイデアに関連する、実際の特許出願案件を紹介します。

 世の中のトレンドに対してギャグ要素を盛り込み、面白おかしくデザインするその秋本先生の能力・熱意には脱帽するしかありません。主人公である両さんを見ていると、お金が無くともその人柄による信頼・評判によって何でも実現できるというのがわかります。そして、例えばゴキブリ養殖等のお話からは、一体何が価値になるかのマーケット感覚を学ぶこともできます。こち亀は、新たな価値提供を図る全てのビジネスパーソンにとって参考になる漫画なのではないでしょうか。

 では、そんな素敵な漫画「こち亀」に登場するアイデアに関連する、実際の特許出願案件を紹介していきます。中には、こち亀の掲載後に、あの大企業が似た特許出願を行っている事例もありました。

ロボット掃除機(コミック第19巻)

 1件目は、ロボット掃除機に関するものです。(1981年11月発売、コミック第19巻9話「発明の日!の巻」)

 発明研究所の所長が「コンピュータ掃除機をもってきました」と言いつつ出したものが、自動的に動いて掃除をしてくれる装置です。

こち亀 第19巻 P174より引用

 むやみに動き回るのではなく「ゴミをおいもとめてすすんでいく」掃除機とのことであり、これはまさしく2002年に iRobot 社より発売されたルンバ(Roomba)のコンセプトを示すものです。

 ルンバに関連する特許出願は、例えば特許第4838978号(J-PlatPatリンク)があります。

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特許第4838978号 図2

 iRobot社による上記出願案件は、こち亀に登場するアイデアよりも詳細な技術的内容が記載されており、特許化されています。ただ、もし仮に「ゴミを検知して自動的に動きまわって掃除する掃除機」といった広い概念にて特許を取ろうとしたら、特許庁からは「そんなのは大昔のこち亀に記載されてる内容と一緒だから、特許にできないよ」と言って拒絶されていたかもしれません。(特許出願日よりも前に公に知られている内容については、特許化できないため)

木製パソコン(コミック第98巻)

 2件目は、木製パソコンに関するものです。(1996年5月発売、コミック第98巻8話「インターネット駄菓子屋の巻」)

 独自のOS「インドーズ95億」を搭載した木製のパソコン「山田28号」「高橋2号」を開発して駄菓子屋で販売するという、とんでもないお話です。

こち亀 第98巻 P158より引用

 株式会社アスコから、関連する特許出願がありました。パソコン本体やマウスに被せる木製の外装ケースについての特許出願です。(特開平10-31533、出願日 1996.7.16:J-PlatPatリンク

特開平10-31533 図1(左) 図3(中) 図9(右)

【課題】
 従来のプラスチック製の外装ケースを有するパソコン機器の欠点を、簡単な構成で一度に解消することができるので、パソコン機器の性能向上、故障防止及び使用者の快適性を向上させることのできるパソコン機器の外装ケースを提供する。

特開平10-31533より

 上記特許出願の出願日は1996年7月16日であり、こち亀第98巻の発売日から2ヶ月程遅れての出願でした。本件は関連する先行技術があったため特許庁から拒絶され、特許化には至っていません。(特許庁での審査において、残念ながら?こち亀は引用されておりませんでした。)

エアバッグ付ランドセル(コミック第82巻)

 3件目は、エアバッグ付ランドセルに関するものです。(1993年8月発売、コミック第82巻8話「ハイパー小学生!?の巻」

 電極+(プラス)が初登場し、プリンタや FAX が内蔵されたハイテクランドセルを披露するお話です。ランドセルの正面と首元には、衝撃を検知したら自動で開くエアバッグが合計3箇所に搭載されています。

こち亀 第82巻 P159より引用

 関連する発明は、本田技研工業株式会社より特許出願されていました。(特開2014-230665、出願日 2013.5.29:J-PlatPatリンク

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特開2014-230665  図1

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特開2014-230665  図12

 【0016】
 エアバッグ装置2は、図1に示すように車両等の障害物Vがランドセル1に接近した際に、その接近をエアバッグ制御装置3によって検出し、所定条件が充足された場合に、頭巾型エアバッグ4を自動的に展開させる。図1では、説明便宜上、展開前の頭巾型エアバッグ4を実線で示し、展開後の頭巾型エアバッグ4を二点鎖線で示している。

特開2014-230665より

 とのことなので、車が接近したことに応じてエアバッグが作動する発明のようです。特許化したい内容が記載されている【請求項】は以下のとおりであり、後頭部・側頭部・頭上部を被覆するエアバッグについて記載されています。

【請求項1】
 背負い式収納具に設けられる頭巾型エアバッグの展開方法において、
 前記頭巾式エアバッグを、複数のガス室にガスを充填することで、利用者の後頭部、側頭部、及び頭上部にそれぞれ被される後頭部被覆部、側頭部被覆部、及び頭上部被覆部が膨張状態で形成される構造として、
 前記背負い式収納具の上方で、前記後頭部被覆部、前記側頭部被覆部、及び前記頭上部被覆部を膨張させ、その後、前記頭巾型エアバッグを前方に移動させて利用者の頭部に被せる、ことを特徴とするエアバッグの展開方法。

特開2014-230665より

 こち亀においては側頭部にはエアバッグが被覆されていないように見えるので、請求項の記載とこち亀のアイデアが同一というわけではありません。しかしコンセプトは同様であり、技術的には類似する内容と思われます。本件は残念ながら特許庁で審査が行われておりません(注1)が、もし審査された場合、特許庁の審査官は、「このアイデアは1992年のこち亀に載ってるよ」と言って、本件の特許化を認めてくれなかったかもしれません。(注2)

注1:審査してもらうためには出願から3年以内に審査請求を行う必要があるが、本件はそれがなされていない
注2:出願日より前に、発明に似た技術的内容が公に知られていたら、その内容は特許化できないため

 なお、2013年には小学三年生が「エアバッグランドセル」というアイデアを考案しており、コンテストにて受賞していました。

NEXT熊本 2013年度 NEXT夢コンテスト受賞者発表

 今もニーズはあるでしょうし、いつか製品化されるかもしれませんね。 

まとめ

 こち亀に登場する3つのアイデアに関する特許出願を紹介しました。他にも似たようなネタを見つけて、また記事にしていきたいと思います。こち亀からヒントを得て、特許出願アイデアを探ったり新製品開発を検討したりするのも面白そうですね。

以上

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