川柳で学ぶ商標とブランド -知的財産を吐く①-

本記事では、五七五にリズムに乗せて、商標やブランドに関する川柳を吐いていきます。それぞれ、17文字の中に大事な要素を詰め込みました。気軽に読んでいただき、何かを感じるきっかけになりましたら幸いです。

なお、俳句は「詠む」ですが、川柳は「吐く」と表現します。(参考:川柳 | 日本文化いろは辞典

本記事は決して汚い内容ではございませんので、ご安心ください。

*本記事における語句の定義*

商標:製品やサービスに関するロゴや名前といった、人の知覚によって認識することができるもの

「星の王子さま」の名言/教訓から学ぶ商標とブランディング

ブランド:個別の売り手または売り手集団の財やサービスを識別させ、競合する売り手の製品やサービスと区別するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはこれらの組み合わせ

ブランドとは・意味  グロービス経営大学院

ブランディング:企業自身や商品・サービスの独自の魅力を、届けたい相手に知覚してもらい、その魅力が無意識レベルでイメージされる状態にする。そのために継続的に行う活動。

なぜ、ブランディングに商標登録が必要なのか深掘りしてみる

1.川柳(初級編):商標とは

・需要者の 利益保護する 商標法

商標法第一条は、以下のとおり規定されています。

この法律は、商標を保護することにより商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。

商標法 第一条

後段では、需要者(消費者+取引者)の利益を保護する旨が規定されています。つまり商標は、ビジネスを行う商標権者のみならず、一般の消費者にとっても大事なものなのです。

もし高級なお菓子に関するロゴマークが品質の劣る「バッタもん」に付されていたら、どの様なことが起こるでしょうか?

自分へのご褒美として高級お菓子を購入するつもりが、欲しくもない紛い物を購入してしまう恐れがあります。これは、お菓子会社だけでなく消費者にとっても不利益な状況であり、避けなくてはなりません。

故に、商標法は、商標を権利として保護することによって「バッタもん」を極力排除し、我々消費者の利益をも保護することを目的としているのです。

・信用が 蓄積するよ 商標に

企業や製品 / サービスを表すロゴや名前である商標は、使用することによって「信用」が蓄積されていきます。これは、バケツをイメージすると分かりやすいです。

商標権者が商標を使い始めたときは、まだバケツは空の状態です。そして、商標を付した製品 / サービスを提供することによって、消費者がその製品 / サービスによって得た体験と紐付いて、商標に「信用」が蓄積されていくのです。

美味しい体験。気持ちがいい体験。感動した体験。

好ましい体験が得られたとき、バケツに水が溜まっていきます。私達は、この溜まった水(=信用)の力を受けて、同様の製品 / サービスを再び体験したいという気持ちが湧いてくるのです。(この力を顧客吸引力とも言います)

そして、水が溜まった(=信用が蓄積された)からといって、そこで終了ではありません。バケツがひっくり返って水がこぼれるように、商標に溜まった信用が一気に失われることもあり得ます。

商標権者である企業において不正等が明るみになれば、それまでの信用は脆く崩れ去ります。その企業が扱っている製品 / サービスにおける代替品 / 代替手段があれば、そちらへ鞍替えしたくなるのが人情です。そして一度失った信用を取り戻すには、長い年月が必要となるのです。

こぼすことなく、焦らずに少しずつバケツに信用を蓄積していくことが大事です。そしてその行為は、「ブランディング」と呼ぶこともできます。

・商いの 標にするべ ロゴ名前

商標は、「商標権者の世界観・価値観を抽象的に表すもの」と言うこともできます。つまり、世界観・価値観等の多くの情報を消費者に対して手軽に届けるために、目に見えるロゴや製品名があるのです。

ロゴや製品名は、その商標権者 / 製品 / サービスに紐付いた様々な感情 / 体験を想起するための「標(しるべ)」です。

ビジネスを行う場合には、何を「標」とすべきか、そしてその「標」をどの様に保護すべきか、よく検討していきましょう。

関連記事:ロゴを商標登録する必要性ってあるの?ロゴの注意点と費用を確認!
関連記事:なぜ、ブランディングに商標登録が必要なのか深掘りしてみる

2.川柳(中級編):商標にはこんな一面も

・これからは 音商標が アツい世に?

商標と言えばロゴや名前が一般的ですが、実は「音」も商標登録を受けることができます。商標は「人の知覚によって認識することができるもの」なので、聴覚によって知覚できる「音」も、商いの標になり得るのです。

昨今では ”ソニック・ブランディング” などと呼ばれ、ブランディングの一助として「音」を活用する流れもあります。世の中は種々雑多の視覚情報が溢れているため、顧客の視覚よりも聴覚を ”奪う” 余地があると考えることもできそうですね。

「企業が音でブランディングしたいと考える世界がくる」

ASMRやノイズで訴求…「音でブランディング」は花開くか(連載・音の時代がやってくる#06)

ところで、「音商標」は大きく分けて2種類に分類されます。(リンク先にて音源を聴くことができます)

 ・歌詞等の言語が含まれる「音」
  (例)商標登録第5833615号:痔にはボラギノール(J-PlatPat リンク
 ・言語が含まれない「音」
  (例)商標登録第5985747号:インテル サウンドロゴ(J-PlatPat リンク

以下記事にて紹介のとおり、言語要素が無い単なる「音」について商標登録を受けることは、極めて困難です。長年テレビ CM 等で使用し続けて全国的にも著名な「音」であれば登録の可能性はありますが、そうでない場合は、歌詞等の言語要素が含まれる「音」での権利保護&ブランディングを検討していくのが得策です。

(歌詞等の)言語要素があるものと、言語要素がないものに大きく分かれます。結論から言うと前者の登録は比較的容易ですが、後者の登録はきわめてハードルが高いです。

歌詞なし音商標の登録のハードルの高さについて(+小ネタ)

関連記事:おもしろ商標をご紹介!え、アレも登録されていたの?

・近未来 匂い商標 導入か

欧米や韓国等においては、視覚・聴覚に関するもののみならず、嗅覚で知覚できる「匂い」についても商標登録を受けることが可能です。有名な例として、テニスボールの匂いについての登録例があります。(EM 428870:TMView, 2006年権利満了)

日本においては未だ匂い商標の制度導入には至っていませんが、国際的調和を図るべく、いずれ導入されるかもしれません。

そして、”五感マーケティング” ”香りブランディング” など、企業活動において匂いを重視する考え方もあります。少なくとも移ろいやすい人間の気持ちが購買行動に大きく関わるビジネス分野においては、匂いは有効なツールと言えそうです。

「においは体験記憶に感情を織り込む」といわれ、ひとつの香りから過去の体験のディテールを思い出す「プルースト効果」が生じることも証明されています

体験記憶に感情を織り込む「香り」のちから 〜新時代の五感ブランディング③〜

技術が発達して匂いのデジタル化が実現されれば、出願の管理や定量的評価が可能となり、制度導入に現実味を帯びてきそうですね。

参考情報:新しいタイプの商標に関する 海外主要国における実態について(特許庁)

・商標で 幸か不幸か 未来バレ

公開された商標登録出願の情報に関して、SNS 上で盛り上がることがあります。出願された商標の中には、出願人がこれから使おうとしている商標の情報(未来情報)が含まれる場合があるためです。

投資家であれば、当該未来情報は投資判断の一助となる可能性があります。しかし、例えば以下記事末尾に記された様に、発信者の意図に基づくタイミングにおいてお行儀よく情報を入手したい場合もあります。

商標の情報に限らず、ドラマの最新話などに関する「未来バレ」を避けたい場合は、SNS での当該情報をうまく遮断する工夫が必要ですね。

商標バレについては賛否両論ありますが、次回作のプリキュアで盛り上がるのは公式での情報解禁を待ってからにしたいというのが筆者の個人的な意見です。

プリキュアシリーズのタイトルを Toreru 商標検索で検索してみた

3.川柳(上級編):ブランドの保護

・意味の保護 特や意よりも まず商だ

ここでいう「意味」とは、「意味的価値」「情緒的価値」を指します。そして、技術によって大きな価値が創出される世界(例:医薬品)ではなく、人間の感性が購買行動に影響を及ぼす世界(例:お菓子等の嗜好品)を想定しています。

あるブランドを通じて得た体験が心地よかった場合、我々は再びそのブランド体験を得たいと思うはずです。(そして、そのブランドに関わる商標に信用が蓄積されていきます)

これは、我々消費者は「意味的価値」「情緒的価値」を欲していると言い換えることができます。ブランドを有する価値提供者は、それらの価値を消費者へ提供することでビジネスが成り立っているのです。

では、そのビジネスを保護するために、どの様な知的財産権が重要となるでしょうか?

知的財産権として、主に以下3つの権利があります。

 特許権:技術的に創作したものを保護
 意匠権:物品の外観を保護
 商標権:ロゴや名前である商標の保護を通じて、商標に蓄積された信用を保護

例えば医薬品の様な分野であれば技術的な創作である発明を保護する特許権が重要です。そして物品の外観に関する視覚を通じた価値については、意匠権にて保護することができます。

一方、商標権は商標を保護することで、間接的に「信用」をも保護しています。これは、初級編の1句目「需要者の 利益保護する 商標法」からも感じ取ることができます。

バケツに溜まった「信用」が保護されることにより、私達は正規の製品 / サービスの恩恵を安心して受けることができます。これは、裏切られる恐れが少なく、過去のブランド体験時と似た「意味的価値」「情緒的価値」を享受していることに他なりません。

故に、商標権で「信用」を保護することで、心地よいブランド体験を通じて提供する「意味」についても保護していることになるのです。

信用が蓄積された商標が付されていれば、どの様な製品 / サービスにおいても価値を感じることができ得るということが示唆されます。仮に機能的価値が競合製品と比べて劣っていたとしても、そのブランド力によって情緒的価値が増し、顧客に選ばれる場合があるかもしれません。それは、究極のブランドと呼べるのではないでしょうか。

「星の王子さま」の名言/教訓から学ぶ商標とブランディング

関連記事:ビジネスの「意味」が変わるとき、考えるべき商標のこと

・あのときの 記憶の栞 そこにある

商標を知覚することで、その商標に関連する過去の体験が想起されます。

私は、とある清涼飲料水のロゴや文字を見るだけで、水を飲ませてもらえずしんどい思いをした野球部時代の苦い体験が蘇ってきます。(逆に、のどが乾いたらその清涼飲料水を飲みたくなります)

私達は覚えきれない膨大な情報量を扱って日々を過ごしていますが、抽象化された情報である商標をきっかけとして、特徴的な体験については長い年月を経ても鮮明に蘇ってくるのです。

これは、商標が記憶を呼び起こす「栞」の役目を果たしているからです。

世の中の玉石混交な情報に埋もれることなく、栞である商標をきっかけとして心地よい体験を再び提供するようなブランドを育てていきたいものですね。

マーケティングとは商品の戦いではなく、知覚の戦いである。

マーケティング22の法則 -アル・ライズ/ジャック・トラウト共著, 東急エージェンシー, 1994年, P37

・究極の ドリルが欲しい 人もいる

マーケティング界には以下の有名な格言があります。

人は四分の一インチの穴を買うのであって、四分の一インチ・ドリルを買うのではない。

マーケティング発想法 -T.レビット著, ダイヤモンド社, 1971年, P4

顧客はドリルという解決手段が欲しいのではなく、穴という機能が欲しいのかもしれない(=顧客が望む解決策は、穴開けサービス?)、というものです。目先の顕在ニーズに囚われずに本質を探ることが重要である旨を示した、分かりやすい表現です。

本格言がビジネスにおいて参考となるのは疑う余地がありません。しかし、高度なブランド力を構築すれば、「究極のドリル」でもビジネスが出来るのです。

「究極のドリル」が顧客に選ばれるためには、穴を空けるという機能的価値が優れるだけでなく、「意味的価値」「情緒的価値」も重要となります。このドリルを所持する満足感、ドリルが誕生したストーリー、企業側の信念等、様々な要素が関わってきます。

これらは定量的な評価がしにくいため、目標を定めて構築するのが困難です。しかし、ブランディングの結果、もし「究極のドリル」の域まで達することが出来たなら、顧客にとって唯一無二のブランドと言えるでしょう。もはや穴を空けるという機能が劣っていたとしても、購入してコレクションの一部として壁に飾る顧客が出てくるかもしれません。

言うまでもなく「言うは易く行うは難し」ですが、高級路線のビジネスを行う場合には常に意識すべき点です。

4.川柳(番外編)

・商標を 守るつもりが 燃えてぴえん

最後は、人気記事を多く執筆されている Toreru Media ライター「ちざたまご」さんの作品です。さすがのちざたまごさん。自由律の素敵な句を吐いていただきました。

関連記事:『ぴえん』『アマビエ』・・どうして商標の出願は炎上するのか? メカニズムと回避法、教えます! -あしたの知財 vol.05(稲穂 健市先生)

法を犯していなくても炎上してしまう世の中です。勿論商標に限った話ではなく、経歴詐称など、人の気持ちを裏切る言動は全て炎上の恐れがあります。

「守るもの 法以外にも あるんだね」を意識して過ごしていきたいものですね。

以上

 

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