企業の知財部は、いったいどんな仕事をしているのでしょうか。
一般的には、社内の研究開発や事業から生まれたさまざまな知的財産の権利化をし、第三者とのトラブルを回避すべく知財調査を行い、さらに知財係争にも対応する、知財の専門部隊とされています。
ただ、知財部が『プロフェッショナル部門』として社内外で活動するには、必ず突き当たる壁があります。それはコミュニケーションです。
- 「法律とか何だか難しそう・・」と思われ、タイムリーな相談に来てもらえない。
- 頑張ってたくさんの知的財産を権利化しても、社内で『コスト』と認識されてしまう。
- 地道な調査で侵害を未然に防止していても、「係争が起きないのが普通」と認識され、「平和なんだから、そこまで知財に力を入れなくても良いのでは?」とか言われてしまう。
知財部は会社の売上・利益に直接貢献することが難しい。企業が利益を生み出すための集団である以上、「コスト部門」である知財部は自らの存在意義を常に模索し、対外的に「理解」してもらわなければならない宿命を抱えています。
・・友利さんが今年出された本 『知財部という仕事』には、そんな知財部の「あるあるお悩み事例」が100本も収録されていました。
- 侵害リスクを指摘したら、事業部が「今から仕様変更は無理」と言ってきた。
- 役員が「○○社の商品はパクリ」とブチ切れてるが、知財的には侵害と言いづらい・・
- 市場で見つけてきた侵害品、ただ、これ発売元が取引先なんですけど?
雑誌『発明』の2010年1月からの約10年分の連載がまとめられ、知財部や知財担当者が日常的に接する悩みはほとんど網羅されています。
まさに、知財部のコミュニケーションに関する処方箋はこの1冊、なのですが、読んでいて感じました。今、企業が直面している「ウィズコロナによる、突然のリモートワーク導入」という新たな悩みも、友利さんに聞いてみたい!
<個人的にぶつけたい質問>
1、自宅でリモート勤務だと、朝やる気でないんですけど。。
2、リモートで部下がちゃんと仕事しているか、分からなくて不安・・・
3、盛り上がらないウェブ会議って、どうすればいいの?
4、コロナで業績不振、知財予算もカット・・ってどう対処すれば良い?
4問とも赤裸々な質問ばかりなのですが、一体どんな回答が飛び出すでしょうか?さっそく、Q&Aスタートです。
友利昴さん × ちざたまご
目次
1、やる気が出ないリモートワーク・・処方箋は?
―友利さん、今日はよろしくお願いします。最初は「在宅だと朝からやる気が出ない」というお悩みなのですが、何かよい解決法ってあるでしょうか?
友利さん:これはね、そもそも異論があるんですよ。
夕方からエンジンがかかるタイプの夜型の従業員に、在宅でも夕方から仕事をしてはいけないという制度を押し付ける方がヘンで、「職場側の怠慢」ではないかと。
―じゃあ、朝からやる気が出なくても、リモートワークでは問題ない?
友利さん:確かに、オフィスにいっせいに集まる従来の働き方であれば、「朝はやる気でないから、私だけ午後からにしてください」という訳にいかないですよ。ただ、リモートワークなら、個人がベストパフォーマンスを発揮できる時間に勤務した方が成果が上がります。
なので、私のアドバイスは「朝からエンジンかからなくても、恥じる必要はない。マインドを変え、堂々と夜から本気出そう」。個性ですから、本来は悩まなくていい。
―うーん、なるほど・・。とはいえ、就業ルールで9時始業、17時30分終業などとリモートであっても決まっている会社は多いですよね。業務開始の挨拶をするルールになっているとか、現実的には朝に弱くても、始業せざるを得ない。
友利さん:確かに、よほど成果主義の組織でないと、リモートであっても「好きな時間に働けば良いルール」はまだ無いし、朝からやる気が出るに越したことはないですね。
そこで対策ですが、リモートワークのメリットは、自分のペースで仕事ができること。
仕事環境の構築や、進め方について従業員レベルでも裁量が拡大しているのだから、それを最大限に活かせばいいんです。
具体的には、午前中は雑務業務や、すぐ返せるメール回答など受動的な仕事にあてて慣らし運転の時間とする。提案書の作成や、発明発掘などクリエイティブな要素が大きい能動的な業務は午後からと自分で設定し、ペースを崩さないようにする。
私も夜型人間なので、「11時まではメール処理の時間」とあらかじめ決めてあり、クリエイティブな業務には手を出さないようにしています。『自分予定』を立てることで、時間あたりの効率が確実に上がりますよ。
―ただ、午前中であっても「至急回答してください」というメールや、突然の電話がかかってくるじゃないですか。ペースを保つのは容易でないですが・・
友利さん:よほどのことがない限り、私は11時まで無視しますね。電話も面倒な相手なら出ず、チャットツールで「今、手が離せないので、午後折り返します!」と返します。
―強い! うーん、そんなことをしたら、人間関係が壊れちゃうのでは?
友利さん:逆に考えましょう。パフォーマンスが出ない時間帯に、無理に相手に合わせて対応し、思うようなアウトプットが出ないほうが、社内の専門家としての信頼を失うと。
そもそも、知財業務で「至急」といっても、一分一秒を争うことはほぼなく、たいがいは今週中ぐらいじゃないですか。
―「商標調査の依頼を忘れていたから、翌日までに回答を欲しい」とかいう人には、どうしましょうか。
友利さん:1回ぐらいは仕方ないですが、常態化しているなら、それは「確信犯」かなと。『知財部という仕事』のQ24でも、「“常に至急”で仕事を押し付けてくる事業部に困ったら、誠実に仕事をこなし、堂々と納期を破ろう!」と書いてます。
もちろん無理して相手の期待に答えるべきシチュエーションは存在しますが、通常業務においては「自分のパフォーマンスがうまく発揮できるペース」を自分で見つけ、それを相手にも見せることで、お互いに尊重し合える健全な関係を作ることが大事です。
―相手に合わせることは、必ずしもお互いのためにならないということですね。そもそも、自分のペースを決めて、自律できる能力が大切になりそうです。
友利さん:その通りです。「俺の問いかけには即レスしろ」という圧が強い人も世の中にはいますが、常識的なビジネスの時間軸を守るなら、無理に合わせる必要はない。
目の前にいない人間という幻を恐れず、変な圧があってもスルーし、自分の仕事に集中すればいいんです。
朝型でも夜型でもどちらでもOKなので、そのこと自体には悩まず、ベストパフォーマンスの時間帯を見つけ、『マイペース・マイルーティン』を確立していきましょう!
2、見えない部下の管理・・どう解決する?
友利さん:これはね~、厳しいですが、「上司の心の弱さ」。
部下に何を求めているのかをもう一度見つめなおした方がいいですよ。
―そうは言いますが、部下や後輩の指導・監督はそれなりの社歴になると、会社から求められるじゃないですか。「管理」するのも仕事ですよね?
友利さん:じゃあ逆に聞きますが、上司が欲しい部下は「常にパソコンの前に座っている人材」なんでしょうか?
部下から即レスが来ないと満足できないなら、チャットボットと仕事したほうが、精神衛生上も良いですよね。
―うーん、ではパソコンの前に座ってちゃんと仕事しているかどうかは、リモート時代においては、上司が管理すべき事項ではないと?
友利さん:確かに、オフィス勤務において「勤務態度」も監視・指導する必要がありました。みんなで働くオフィスで、音楽聞きながら、お菓子食べながら、寝っ転がって仕事してれば、何やってるんだということになる。
ただ、今は家でどんな態度で仕事をしてようが、他の人はそれを見ないんだから、職場の「風紀」は乱れない。
そもそも、仕事の成果とは態度ではなく、アウトプットで測定するものですから、どんな態度で仕事をしようが、どんなプロセスを採ろうが、成果が出れば評価に値するし、成果が出なければ評価できないはずです。
乱れようがない「風紀」を守るため、自宅での勤務態度までもしゃかりきになって監視しようとするのは、ナンセンス。部下に期待したいのは「成果」じゃないのかと。
―言われてみれば、本来的には「風紀」と「成果」はまったく違うものですよね。リモート時代だと、因果関係があるかも怪しい。。
友利さん:例えば、家ではふだん裸族で、服を着ると落ち着かない人がいたら、その人は裸の方が成果が出せますよね。だったら裸で勤務したほうが会社のためになる。
―オンライン会議に全裸で出てこない限りはね(笑)。
一方で、Yシャツ着て、ネクタイ締めないとやる気でないという人もいるらしいですが。
友利さん:その人はそういうルーティーンなんだから、別に良いと思いますよ。ただ、他の人に「これは、リモートでも守るべき風紀だ!」と強要するなと。
そもそも、勤務態度を監視しなくて良くなったのは、管理する側にとってもメリットです。「お前、朝はもう5分早く来いよ!」とか言うのは、お互い気が重かったじゃないですか。リモート時代は、成果でシンプルに評価すれば良いんです。
―ただ、評価するべきものがアウトプットだけだと、事業がコケたときとか、ビジネスで成果が出なかったときに、「態度」で救済する余地がなくなる心配もありますよね。
友利さん:その場合は「プロセス」を評価するのがよいでしょうね。「態度」と「プロセス」は、似ているようで全然違います。「プロセス」は、成果を出すために、どのような計画・仮説を立てていったか、また、どのような段取りで進め、進捗に合わせて検証し、軌道修正していったかの“道のり”です。
知財部では、例えば「担当する出願件数を○件」というような成果目標があります。不可抗力(研究開発が頓挫したとか)で達成できないこともありますが、知財部員としての仕事のプロセスが真っ当だったら評価していい。でも、計画がずさんだったとか、状況に応じて軌道修正ができなかったということがあれば、評価はマイナスでしょう。
「プロセス」は、いちいち勤務態度を監視しなくても、業務報告やメールCC、会議同席などを通して確認することが可能です。もし部下の仕事の「プロセス」に不安があれば、どういう過程でやっているか部下の相談に乗り、具体的な改善方法を一緒に考えればいいんです。
―確かに、「ちゃんと机の前に座っているか」を監視するより、お互い有意義ですね。
友利さん:上司に言いたいのは、勤務態度を監視しているヒマがあれば、まずはしっかり「成果」と「プロセス」を見ましょうよということです。
部下に期待されるアウトプットが明確なら、態度を見張らなくても、仕事は十分回ります。評価軸が変わったこと自体を、上司としても受け入れる必要がありますね。
3、盛り上がらないウェブ会議、何とかならない?
友利さん:これは、まず1回落ち着きましょう。そもそも盛り上げる必要がある会議かどうかを考えたほうがいい。
ただの穏当な報告会議であれば、相手は聞いているだけでいいんだから、リアクションがないのが自然だと。
―とはいえ、みんながカメラOFFで「聞いているかどうか分からない」というのは不安がありますよね・・・。
友利さん:逆に考えるんです。「発言に問題がないから、反応がないんだ」と。心に自信を持ちましょう。リモート時代では、リアクションを欲しがらないほうが幸せです。
それでも不安が残る “子羊” には、秘策があります。
「昨年審査請求をした出願は、期限管理が1年ズレていたため、期限徒過ですべてパーになりました」などと、ウソの爆弾発言をしてみましょう。必ずリアクションが得られます。
―間違いなく叫び声が聞けそうですね。失うものもありそうですが。
友利さん:そもそも「報告会議」の多くは、今まで本当にその会議が必要だったのか?という話もあるじゃないですか。
―確かにリモートワークに入って、「報告会議」は減りましたね。
友利さん:他の人の時間を大切にするなら、文書で共有したほうが良いケースも多いです。リアクションがないことに悩むより、そもそも必要かどうかも疑ってみてはどうかと。
―オンラインであっても大切なことを伝えたく、相手にきちんと把握させたい会議であればどう工夫すればいいんでしょうか?
友利さん:予備校の講師が参考になります。
「ここ大事!」「ここ出る!」「メモ取れよ!」「いつやるか?今でしょ!」
大事なポイントを、声を張り上げて強調しますが、生徒がいちいち「おお~」などとリアクションしますか?ノーリアクションですよ。
つまり、リアクションは気にせず、自分が報告に起伏をつけ、大事なポイントにはしっかりと注意喚起する。そして「重要なことを、自分は伝えている」という自信を持つ。
―なるほど・・。他には、「発明発掘会議」などアイディアを引き出すミーティングがありますが、オンラインでは難しいという話もよく聞きます。特効薬はあるでしょうか。
友利さん:対面と違って直接モノを見て話ができないから、話が膨らまないという悩みですね。これはわかります。対処法の1つとしては、PCに接続できる「書画カメラ」を導入する方法があります。
手元を精細に撮れますから、ウェブ会議の画面に映して「試作のこの部分の構造は~」などとやれば、だいぶ理解の助けにはなるでしょう。
―こんな商品もあるんですね。会社の備品として買ってもらえれば、心強い武器になりそうです。スマホを使っても、書画カメラの代用になりそうですね。
あと、発明発掘会議の会話自体が弾まないという悩みも良くあります。
友利さん:相手があまり会話に乗ってこないケースですね。これは知財部側から、相手が打ちやすい話のネタを投げ続けるしかないです。相手に期待せず、こちらから仕掛ける。
―色々と質問を準備しておいても、相手の反応が薄い場合は・・・
友利さん:それは、相手の回答に対し、「からの~?」を重ねるしかない。「ああ、そうなんですね」で終わらせず、さらなる掘り下げで返していくのです。
出てきた話だけでは「従来技術の範囲で、特許性ないかな~」と感じていても、会話の過程では、こちら側の「特許のタネを必死に見つけようとする姿勢」を見せつける。
新商品であれば、商品を開発することになった動機とか、試行錯誤した苦労話とか、どんどん聞いて、「面白い!」、「スゴい!」とリアクションする。
何なら相手がほかに開発している技術の話でもいいんですよ。社内であれば、発明者との関係は継続していきますから、1回の打ち合わせで特許性が見つからなくても、次に生かせれば良い。
―相手のやっていることに『関心』を示し、会話を繋げて、掘り下げていくんですね。
友利さん:最初から、何が特許になるか分かっていれば、打ち合わせする必要もないじゃないですか。会話のキャッチボールから生まれるものがあるからこそ、会議する価値がある。
発明発掘のコツは『知財部という仕事』のQ50でも取り上げていますが、「相手のリアクションに頼らず、知財部側から盛り上げる」という原則は、リモートワークであっても変わらないと思います。
4、コロナで予算大幅カット!?・・への予防策
友利さん:うーん、これは仕方ないですよね。
事業部が判断ミスで招いた業績悪化であれば、反発したくなる気持ちは分かりますがコロナは天災。今はコスト削減に注力しましょうという、大人の判断が妥当かなと。
―ただ、「一律50%削減せよ!」とか言われたら、困りますよね。
友利さん:もしコロナの影響で業績が不振なのであれば、経営陣に「○○%削減して」と言われる前に、知財部の側で「最低限必要な予算ライン」をしっかりと固めておくべきです。
企業の知財活動は、調査・出願・権利行使、どれであっても「たくさんやっておくに越したことはない」側面があり、「適正」な予算は組みづらい。普段は、昨年度の予算を目安としつつ、やりたいことを積み上げて予算を決めるような形をとりがちです。
ただ、事業を継続するために最低限必要な知財予算は、だいたい算出できるんですよ。
会社の研究開発プランや、新商品の発売見込み件数を把握しておけば、その件数 × 調査・出願にかかる平均額で、「最低限行うべき調査・出願費用」の目安は算出できます。
―この額を最低防衛ラインに置くんですね。企業によっては、知財部が調査・出願費用の予算を持たず、事業部に振替えているケースもあると思いますが、これで「知財部予算の削減要求」が来たら、どうしましょうか。知財部の予算はほぼ人件費なので、削れない・・。
友利さん:それは、あらかじめ全社の知財予算を把握しておき、「知財部本体には調査・権利化の予算はないのですが、調査・権利化のポリシーを見直すことで、全社であれば知財予算をここまで削減できます」と説明すれば良いと思います。
言われてあわてて動くのではなく、あらかじめコスト削減について何を言われる可能性があるか想定し、しっかりと説明できるように準備を進めていくべきです。
―過去、「リーマンショック」などで起こったコスト削減の社内での要請があれば、その時の対応を調べておけば参考になりそうですね。ちなみに、削減するとしたら、「調査・出願・更新」などで、どの項目を削れば良いでしょうか。
友利さん:企業によりますよね。まずは自己分析により、出願費が多いのか、維持費が多いのかなど、まずは知財の予算構成を見てみると良いかと。
出願費が多い会社だと、「戦略出願」が実はノルマ出願になっているとか、事業部が希望すればとりあえず出願に応じているとか、脇が甘い部分が見つかりやすい。
また、老舗企業だと、特許権などの維持費が膨らんでいるケースも多く、思い切ってスリム化する機会にもなります。
ポイントは、できる限り「必要なものを削る」ことにならないよう、会社にとっての「必要・不要」を見極め、仕分けの基準を経営陣にも説明できるようにすることです。
―言われたから嫌々コスト削減をする、という姿勢ではなく、主体的に「見直し」に取り組むことで、逆に知財の必要性について、あらためて説明する機会にもなりそうです。
友利さん:この「見直し」なんですが、個人の単位でも進めた方が良いかなと。つまり、自分の担当業務が会社にとって「必要」側なのか、「不要」側なのかを考えてみるのです。特に、人数が多い知財部で仕事が分業化されていると、自分が担当している仕事は、実は「不要」側ばっかりという可能性もなきにもあらずかも……?
―確かに、担当事業部のビジネスが年々縮小しているとか、コロナの悪影響が直撃していて当分戻る見込みがないとか、あり得る話です。
友利さん:「不要」側の仕事ばかりに甘んじていると、今回みたいなコスト削減の圧力がかかったきに、「いや、実は『必要』な仕事なんですよ」というPRをがんばってする羽目になってしまいます。
―内心、会社にとって重要度が低いと分かっているのに、「必要な仕事」だとPRするのはキツイですよね。
友利さん:「あいつは大局が見えてない」とか不興を買って、評価までも下がりかねない。事業ごと分割・売却を積極的に行うような会社だと、1つの事業に紐づいた知財しか担当していないスタッフは、事業部ごと異動・転籍させられることも普通に起こります。
―本体に残しても、あまり活躍が見込めないですからね・・。企業はその辺シビアです。上も「彼の得意分野だから、本人にとっても良いんじゃないかな?」とか、言っちゃう。
友利さん:それで給料下がったりするんですけどね~。。ですから、「あれ!?オレ、もしかして不要な仕事ばっかりやってないか!?」と、自ら率先して気付くことが大切なのです。気付いたうえで、どう行動するか。
一般的に知財部員はスペシャリストで異動が少ないといっても、会社が守ってくれる保証がない時代ですから、自己責任で備えるしかありません。
- 会社にとって必要な仕事を、自ら獲りにいくもよし。
- 今の業務外の仕事もこなせるようスキルを磨き、「なんでもできるスペシャリスト」になるもよし。
- 今の会社では不要かもしれないスキルでも、トップレベルに至るまで腕を磨いて「ニッチ分野で重宝される超スペシャリスト」を目指すもよし。
方法はいろいろですが、今の担当業務が消滅しても困らないための手段を、最低1つは考えておいた方が良いですね。
5、最後に ~ウィズコロナ時代を乗り切る処方箋
―今回、リモートワーク時代ならではの4つのQ&Aを見てきましたが、どれも今年のはじめには思いも寄らなかった悩みですよね。
働き方もガラッと変わりましたが、我々はどうやって「適応」していけば良いのでしょうか。
友利さん:そうですね、やはり今までの「常識」に足を引っ張られないようにした方が良いかなと。例えば、「通勤」という大きな常識が、今回いきなり消滅した訳じゃないですか。
代わりにリモートワークという新しい働き方が生まれましたが、そうなると「朝9時からの一斉始業」や、「部下の監督」、「定例会議」とかも、合わせて見直した方が成果が上がる可能性がある。リモートワークには、リモートワークのメリット・デメリットがあり、それに合わせていく方が「常識」を守るよりも大事じゃないかと。
―ただ、何でもかんでも変えていくのは、不安も大きいです。逆に、我々が意識して守るべきことはあるでしょうか。
友利さん:それは『自分のペース』と、『やりたいテーマ』だと思います。
リモートワークでも、新しい働き方に合わせよう、合わせようとするから気疲れするのであって、「自分は朝型じゃないから、朝は思い切って定型業務しかやらない」とか、自分でペースを作るのであれば、もっと楽になると思うんですよ。監視されなくなったのだから、もっとマイペースにこだわって良い。その上で、成果をあげれば良いんです。
また、今回のコロナ問題で感じたのは、どんな業界でも絶対はない、何が起こるか分からないことです。自分の仕事の価値が、ある日暴落することもあり得るのですが、結局身を助けるのは、「自分がやりたいテーマ」なんじゃないかと。
―それは、今やっている仕事以外にも、別のスキルを伸ばしておこうということですか?
友利さん:必ずしも、今の仕事以外に「やりたいテーマ」を求める必要はないかなと。特定の知財分野が先細りになったとしても、その分野でトップクラスであり、10人中の1番というポジションであれば食べていけるじゃないですか。
自分にとって価値があり、突き詰める覚悟があるならば、今の業務を掘り下げれば良い。
一方、そこまでの関心が持てず、他に「やってみたいテーマ」があるなら、アフターファイブの時間を使って仕事外のテーマを勉強・実践してみるのはアリですよね。
どちらにせよ、「本業がヤバそうだから、副業しようかな」というぐらいの気持ちでは続きません。まずは自分の意思で興味があることを決め、それを伸ばしていくのが大切かなと。
―確かに、「一万時間の法則」に象徴されるように、プロになるためには多大な時間の投資が必要ですから、自分が無理なく続けられることが大事ですよね。
友利さん:人生、何があるか分かりませんが、自分で決めたテーマであれば、苦労もしがいもあるじゃないですか。SNSをはじめ、顔が見えないコミュニケーションが増えていますが、これも無理に歩調を合わせなくても良い。
自分でやりたいテーマを見つけ、自分なりに楽しんで掘り下げる。
色々と大変な時代だからこそ、『マイペース、マイテーマ』で行きたいです。
―『マイぺース、マイテーマ』、確かにコロナ時代だからこそ、守っていきたい言葉です。
友利さん、ありがとうございました!
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知財部という仕事(友利 昴) honto 販売ページへ
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