あしたの知財 Vol.01前編 コロナ後の働き方はどう変わる?( IPTech 湯浅 竜さん)

こんにちは、企業内弁理士&知財イベンターのちざたまごです。
Toreru Mediaのリニューアルに伴い、インタビュー連載をスタートすることになりました。

2つの企画があり、こちらは「あしたの知財」という、知財界で新しい取り組みをされている方々と対談し、一緒に知財の未来を考えていく企画となります。

第1回は、IPTech特許業務法人の湯浅副所長&COOに「このコロナでしょんぼりした時代に、何か未来に繋がるような、面白い話はないですかね?」お声がけしました。

 

※ より詳しくはIPTechホームページよりこちら

今回は、アフターコロナの働き方・学び方について、興味深い知見が得られました!さあ、どんな話が飛び出すでしょうか?早速スタートです。

湯浅 竜さん & ちざたまご

 

リモートワークは経営者に得?

 

―湯浅さん、今日はよろしくお願い致します。この対談もオンライン会議でやっているのですが、コロナ問題で世の中みんな、突然リモートワークになっちゃいましたよね。
自分もその口なのですが、IPTechさんではコロナ問題以前からリモート対応されていたんでしょうか?

湯浅さん:もともと、IPTechではリモートワークの体制自体はコロナ以前より進めていたのですが、フルリモートワーク化まではそれなりに苦労はありましたね。
ただ、コロナは『有事』なので、全従業員を完全リモートに移行すべきという前提に立ち、もろもろ検討を急ぎ行って、比較的短期間で実現させました。

この辺りは、特にIPTech所内で、佐竹が相談相手としていてくれたのが大きかったですね。「有事にどうするべきか」は経営論を超えて、統治論から決めるべきと考えているのですが、僕も佐竹も歴史(特にローマ史)が好きなので、そのあたりの価値観がぶれず、即断即決できたところもあると思います。
 

―“経営論”と“統治論”では、どのような価値観の違いがあるのでしょうか?

湯浅さん:経営論からだけみると、リモワの移行コストを考えればギリギリまで判断遅らせたくなります。例えば、いきなり全社員デスクトップPCからノートパソコン貸与に切り替えるのってコスト的にそれなりにかかるので、決断しにくい。

短期的な合理性も考慮すれば、「弁理士はリモートワークでもいいけど、特許事務員は郵送物対応があるから普通に出社してほしい」とか、まぁ、そういう結論になるのは目に見えるわけですよ。

でも、『有事』においては統治論から考えるべきで、そうなると、組織に所属する人員の「生命」と「財産」に対してトップはどう責任を果たすべきかというリーダーシップ論、そういう価値観で物事を決めることになる。結果的に、今回のケースで完全リモート化は必然という結論に至りました。

この辺りの相談相手が社内にいてくれたのは大きかったですね。振り返れば、いい決断をスピード感を持ってできたと思うのですが、当時はそれなりに勇気のいる決断でした。
 

―「コロナは有事」という話はTwitterでも発言されてましたよね。『有事』『平時』のリモートワークは何が違うのでしょうか?

湯浅さん:『有事』では、組織のメンバーをどう守るかという価値観を試されました。

一方、『平時』のリモートワークは選択肢の問題で、リモートの方がオフィスワークより進んでいる、偉いなんて話はなく、明確に切り分けて考えたほうが良いかなと。

 

湯浅さんtwitter

―今後の希望としては、もちろん『平時』に戻る方向ですよね。『平時』におけるリモートワークのメリットって何でしょうか?

湯浅さん:実は、経営者目線で考えると、リモートワークってめちゃくちゃメリットが大きいんですよ。経営において常に重荷になるのは毎月発生する“固定費”なんですが、リモートワークにすればスタッフの常駐が無くなるからオフィスを縮小できるし、少し郊外に移転させても良い。

例えば虎ノ門のある程度大きい賃貸オフィスが月150万円として、エリアを外れた小さめのオフィスに引っ越せば半額になれば、差額で年間1000万円近く浮き、新たに優秀な人材を雇えますよね。

もちろん、このお金は別の投資に充てることも、メンバーに還元することも自由です。

 

2020年3月度 全国六大都市圏オフィスビル市況調査(ビルディンググループ)より 

また、リモートワークの制度を導入しておくことで、地方在住だったり、家庭の事情により毎日の出社が難しい人材も新たに活用する余地が生まれます。
実のところ、経営者側にリモートに踏み切る勇気と、適切な環境を提供する能力さえあれば、リモートワークを導入したほうが得なんです。
 

―なるほど、経営者側から冷静に計算すれば、リモートは利益をもたらすと・・。一方、従業員にとっては、どんなメリットがあるんでしょうか?

湯浅さん:自分はドワンゴにいた5年ほど前からリモートワークが大好きで、いわば「一人リモートワーク」を勝手に実践していたのですが、やはり働く場所・時間が固定されないことで、アウトプットを出すチャンスが増えるのが魅力だなと。

通勤時間がない、オフィスの拘束時間がないのは、すでに多くの人が体験している“わかりやすい自由度の上昇”ですよね。もちろんオフィスのほうが集中できる人もいるので、『平時』はオフィスで働く選択肢も用意すべきですが、一方で「自宅や喫茶店の方がはかどる」派の人もかなりいる。

働き方の選択肢があった方が、組織全体のアウトプットは上がると思います。

また、自分はオフィス派と元々考えていた人でも、実際にリモートになって「何だ、意外とやれるじゃん!」と感じた人も多いのではと。テレワークで生産性が上がったと感じる人が、アンケートでは8割を超えており、“オフィスでしか仕事ができない”というのは、習慣からの思い込みだった可能性がありますよね。

 

マイナビニュースより「テレワークで業務の生産性向上を感じた人の割合は?」

 

『チャット』文化がないと爆死する

―ただ、「皆がオフィスにいないとコミュニケーションが取りづらい」という問題点も指摘されています。

湯浅さん:リモート環境でのコミュニケーションの難しさは確かにありますが、組織の文化づくりでクリアできると感じていて。

リモートワークを導入しようとしている特許事務所が見落としてはいけない視点の一つに『チャット文化』があるかどうかを考慮しないといけないと思っています。
 

―SLACKとか、TEAMSといったチャットツールを導入すればよいということでしょうか。

湯浅さん:勘違いしやすいんですが、ツールさえあれば、それでOKというものではない。

組織内に、「ツールを自然に使いこなし、みんなが自発的に情報交換する文化」が育っている必要があるんです。

例えば、リモート以前からSLACKに「雑談」や「情報共有」チャンネルがあり、そこでメンバーが活発に日々感じたことや、アドバイスを交換し合っていたら、強制的に在宅勤務になっても、「その場を使ってコミュニケーションすれば大丈夫」とみんなが考えますよね。

ただ、いきなりツールを導入して、「この場で雑談や、情報共有をし合いましょう」と呼びかけても、みんなどう書いて良いか分からないし、場の空気も分からないから全然盛り上がらない。

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場の雰囲気がないと、投稿も疑心暗鬼に・・・

―確かに、自分の会社もチャットツールをリモートのために慌てて導入したパターンですが、雑談や全体チャンネルは全然盛り上がってないです。個別のメッセージのやり取りは活発にされているのですが、外に出て来なくて、情報のタコツボ化が進んでます。。

湯浅さん:プライベートでLINEを使っている人がほとんどなので、少数でグループを作ったり、ダイレクトメッセージを送り合ったりするのは、誰でも比較的入りやすい。

ただ、組織内の掲示板に名前を出して書き込むって、ちょっと抵抗感がありますよね。2chとか、昔からのネット文化にハマっていれば自然に書けるんですが。そこで、経営者やマネジメント側が、意図的に「この場は安心して書ける交流の場だよ、みんなのコミュニケーションにメリットがあるよ」と、盛り上げていく必要がある。

最初は若手のメンバーに書いてもらって和ませるとか、コメントしやすい話題を振るとか、かなり細かくケアしていく必要があると思います。

時間をかけてでも『チャット文化』を組織内に根付かせれば、リモートワークでも他の人がどういうことをやっているか何となく見えたり、メンバーの意見を苦労なく集めたりできるので、メリットが大きいです。逆に、『チャット文化』なしでのリモートは、メンバーが孤立化しやすく、アラートも見えにくいので非常にキツいですね。
 

―実際、リモートワークを導入してみてIPTech所内の反応はどうだったのでしょうか?

湯浅さん:社内メンバーにもリモートワークの感想をヒアリングしたのですが、ほぼ全員、「リモートワークのほうが仕事がはかどる」との見解でした。出社は、たまに気分転換程度にできるのがちょうどいいと(笑)。

コロナ終息後の「選択肢」でも、多くのメンバーはリモートワークのままになりそうです。

ただ、アンケートで、あらためて深堀りする必要があると感じたのが、「お子さんを幼稚園や学校に預けられず、自宅で面倒見ないといけない」という環境の方がおられることです。

平時におけるリモートワーク環境下ではこの問題は生じにくいですが、緊急事態宣言下の有事では、本人以外に家族もみんな自宅にいます。旦那さんが会議中だと子供の面倒を見るのは自分しかいなかったりと、なかなか在宅勤務にも大変な点があります。

こういうメンバーには「社内会議に無理に参加しなくていい(子供が泣いちゃったりするので)」「仮に子供が泣いたりしていても、他のメンバーが気にしない・むしろそういう環境をほほえましく見るように」というメッセージを、組織側が意識的に発信していく必要があると考えています。
 

―なるほど、リモートワークをみんなが快適に使える雰囲気づくりは、組織側の責任ということですね。
あと、湯浅さんはオンラインで「特許事務所における新しい働き方を目指して ~リモートワークをテーマに~」というセミナーを2回主宰されていましたが、これはどういう動機だったんでしょうか?

湯浅さん:元々、FACEBOOKで若手の知財経営者のクローズドコミュニティを主宰していまして、そこでリモートワーク化状況の話がでました。その中でも、すでに対応できている人と、全然これからの人が混在していて、だったら「リモートで対応できている代表の人を集めて知見を共有しよう」と。

1回で語り切れず2回やりましたが、IPTech、Toreru、IPXの3事務所がどういうツールを導入しているかの情報もスライドにまとめたので、参考にして頂ければ、リモート導入のファーストステップはクリアできると思います。


 セミナー資料

 第1回 特許事務所における新しい働き方を目指して ~リモートワークをテーマに~

 第2回 特許事務所における新しい働き方を目指して ~リモートワークをテーマに~


 

リモートワークがもたらす社会の『二極化』

―しかし、アフターコロナの『平時』でも、リモートワークは日本に根付くんでしょうか?

湯浅さん:ぶっちゃけ、元のオフィス勤務に戻るだけの企業や事務所も多いでしょうね。

ただ、今回のコロナ問題が発生する前にリモートワークを経験した人は、全体の数パーセントでした。それが「97.8%の企業が、何らかの形でテレワークに取り組んでいる(経団連調査)という状況になったので、少なくともリモートワークは特別なものではなくなった。

そうなると、先ほど話した通り、「固定費削減」、「幅広い人材登用」、「全体でのアウトプット向上」の観点で、リモートワークを活用できる組織の方が有利になっていくかなと。
 

―働く側も、「意外にリモートワーク快適で、もうオフィス行きたくないな~」みたいな気持ちも生まれてますよね。この前、オン呑みでアンケート取ってみたら、自分を含めて半分以上が「オフィス行きたくない派」でした。

湯浅さん:この業界、1人で書類を作ったり、考えたりする時間も多いじゃないですか。オフィスには必要な時だけ行って、後は在宅という働き方は全然アリだと思いますよ。
今までは、リモートワークやりたいなんて言い出したら、「みんな普通にオフィスで働いているのに、ワガママなやつ」という扱いだったのが、今後はリモートワークは1つの選択肢として認知されていく。

そうすると、リモートワークを許さない組織は魅力が薄く、良い人材が集まりにくいことも十分起こり得るなと。副業論でも似たような話はありますよね。
 

―アウトプットの質・量がオフィスより上がるなら、リモートワークで働くのは全然アリですよね。ただ、逆に考えると従業員にとっては、「オフィスにいることで評価してもらえない」時代になるから、実力主義がさらに進む。

湯浅さん:リモートワークが許容される職種・人材の給料は全体的に上がり、そうでない人々は下がって行く、なんて二極化も起こるかもしれませんね。

2回のセミナーを経て、自分の中ではリモートをやる・やらないの議論はすでに終わった感があります。現時点でやっていない組織は今後もやらないだろうし、逆に積極的に取り組んでいる組織はコロナ後も「やれやれ、元に戻った」ではなくて、貪欲に活用していくのではと。

IPTechは後者でありたいので、積極的に取り組む方々と情報交換していきたいです。

 

リモートワークを楽しむグッズ&マインド

―個人のレベルでは、自宅でどれだけ設備が整っているかも、リモートワークの効率に大きな影響がありますよね。おススメのグッズなどはあるでしょうか?

湯浅さん:まず組織支給のノートパソコンは必須かなと。特許事務所では固定のデスクトップPCを使っている方もいるのですが、リモートワークには全く適さない。今の時代、ノートパソコンでも十分な性能がありますし、打ち合わせへ持参できますから、オフィスワークでも有用です。

また、自宅のスペースにもよりますが、モニターは数があるだけ作業しやすいです。ノートPCに繋いで2画面で作業するのも良いですし、32インチクラスの大きいモニターを買い、画面を左右分割で使うのも資料作成がしやすくておススメです。

 

トリプルモニター体制の湯浅さん在宅デスク

あとは、どうしても運動不足になりがちなのでヨガマットを買いました。所内の会議だと、時々筋トレしながら参加してますね(笑)。

また、お子さんがいるが、他の家族が面倒を見ることができるという環境であれば、仕事が乗ってきて集中したいときはノイズキャンセリングヘッドホンというのも有効だと思います。
 

―自分もAirPods Proを最近買いましたが、無音とまではいかないまでも、かなり雑音はシャットアウトされますね。もっと集中したい時は、ノイズキャンセリングヘッドホン+耳栓のセットを使ってます。

湯浅さん:あとは、今後自宅で仕事をする時間が増えるなら、特に椅子にはお金をかける価値があるかなと。オフィスチェアって、ずっと座っていてもあまり疲れないじゃないですか。通気性もクッション性にも配慮して設計されている。

家庭用の椅子だとどうしても機能よりデザイン性で、長時間座っていると効率が落ちてくるものも多く、オフィスワーク用の椅子を導入するのは効果的だと思います。

他だと、紙で郵送しなければならない書類もありますが、その対応のためにレターパックをまとめ買いしておいて、必要なときにさっと使えるようにしておくのも便利です。

色々とツールを駆使することで、リモートワークはもっと快適にできると思いますね。
 

―お話を聞いていると、リモートワークを前向きにエンジョイしていますよね。

湯浅さん:結局、自分はIT技術をフルに活用し、新しい働き方をするという体験自体が好きなのかなと。

以前、ドバイ国際空港で飛行機を待ちながら、チャットツールでしれっと特許のアイディアミーティングに参加し、実際に出願できるネタまでまとめたことがあるんですが、ミーティングした人々も帰国するまで気が付かなかったんですよ。後で、「湯浅さん、あの時ドバイいたの!?」みたいな(笑)。

 

未来の働き方を象徴?ドバイ国際空港(エアトリ Webサイトより)

それまでは出来なかった働き方が技術の進歩で出来るようになるのはIT技術を愛する人間として最高に刺激的だし、それを選択肢として採用しないのはもったいない。

もちろん、文化作りや組織への導入など簡単でないことは多いですが、その苦労を乗り越えた上の喜びも待っているので、今後もチャレンジしていきます!

ウェブ対談でも大変盛り上がりました!


 コロナで無理くりはじまったリモートワークではありますが、お話を聞き、『働き方を変える、前向きな機会』だと捉えることもできるのではと改めて感じました。

後編では、「アフターコロナの学び方」として、知財塾の取組みを掘下げていきます!

※ 脱オフィスについての湯浅さんの別インタビュー(日経ビジネス)はこちら

商標を、武器にしよう。

 

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