本記事は Toreru の縁の下の力持ち、カスタマーサポート2名が執筆しました。
お客様からいただく問い合わせは多種多様。
その中でも特にニーズが高いと感じるトピック「商標登録費用の補助金・助成金に関する制度」をご紹介します。
一般的な商標登録にかかる費用については、こちらの記事をご覧ください。
それでは Toreru Mediaでは珍しい会話形式でお届けします。ご一席お付き合いください。
カスタマーサポート担当 清水: 二級知的財産管理技能士。2024年の目標は「早起きできるようになること」。好きな食べ物はうどん。スピーディかつ丁寧なサポートを心がけている。 |
カスタマーサポートグループ長 斎藤: 二級知的財産管理技能士。趣味が無いのが悩み。好きな食べ物は空心菜とナンプラー。都内の特許事務所で幅広い特許商標事務に従事。カスタマーサポートに醍醐味を感じて Toreru に入社。 |
1、特許庁の減免制度に商標は含まれる?
清水:時々お客様から「商標登録費用には、助成制度はないのでしょうか?」とお問い合わせをいただきます。ご紹介できる制度はないんでしょうか?
斎藤:まず特許庁の制度を調べてみてください。特許・実用新案・意匠であれば一定の要件を満たす中小企業等に対して減免制度を設けていますね。
清水:特許庁に確認しました。残念ながら商標の場合、特許庁の減免制度対象外とのことです。
斎藤:おそらく特許法109条(特許料の減免又は猶予)の制度趣旨が発明の保護にあるためですね。
”本条は、特許料の減免。猶予について規定したものである。資力上の制約により特許料等が納付できないとの理由で特許権を取得できない場合には出願人に対して発明の保護にならず、また発明が出願されず公開されなければ第三者による発明の利用につながらない点で、「発明を奨励し,もつて産業の発達に寄与する」という特許法の目的が達成されない。特許料等手数料の特例(減免)制度の趣旨は、この状況を回避する目的で設けられた。”
(参考文献:特技懇誌 2015.5.13. no.277 宮川 元 「減免制度の商標登録出願への導入」http://www.tokugikon.jp/gikonshi/277/277kiko3.pdf)
この制度趣旨が商標では妥当しないため、減免制度が現在設けられていないという状況のようです。
清水:とはいえ、商標においても費用の負担が重いという理由で出願できず、適切な権利保護を図れないのは困りますよね。
斎藤:その通りですね。商標法の目的達成のためにも、商標を出願しやすい環境を整える必要はありますね。我々としてもお客様に提供できる情報がないかもっと探してみましょう。
2、日本弁理士会の助成制度
清水:日本弁理士会の制度を調べたところ、商標も助成の対象になるようです!
斎藤:早速有益な情報ありがとうございます。対象は印紙代ですか?
(注)印紙代とは:特許庁に納める出願や登録に必要な費用のこと。商標の場合は区分数に応じて料金が変わります。詳しくは産業財産権関係料金一覧をご覧ください。
清水:「特許出願等の手続に要する費用」とあり、弁理士報酬も印紙代も含まれます。
斎藤:申請対象者の資力要件は特許庁施行規則を元にしているようですね。
内容 | 注意事項 | |
---|---|---|
申請対象者 | ・個人 ・中小企業 ・大学、TLO(技術移転機関) |
個人:年収の基準額設定あり 中小企業:設立7年以内。年間純利益額の基準あり 大学、TLO:特許出願等の手続費用を支払うことが困難な場合 |
助成金額 | 最大5万円 | 手続費用が援助額を下回る場合は、手続費用分までを援助 |
対象品目 | ・弁理士報酬 ・印紙代 などの諸経費 |
以下は含まれません ①拒絶理由通知に対応する応答手続き費用 ②審判手続費用 ③特許料及び登録料(印紙代の中でも登録時にかかる費用は対象外) |
必要書類 | 【代理人からの提供が必要な書類】 ・出願書類の電子データ ・出願の受領書 【ご自身で準備いただく書類】 ・資力を証明する書面 ・登記事項証明書又は登記簿謄本(個人の場合は世帯全部の住民票) ・商標援助対象事業の実施計画書 など |
・願書に記載された出願人と申請者とが完全一致する必要があります |
受付時期 | 通年 ・申請は随時受け付け ・毎月 1 回 、援助の可否の審査がされる (翌月以降の審査となる場合もある) |
・特許庁への出願前に、日本弁理士会へ申請する必要があります ※出願済みのものは、援助申請の対象となりません |
申請方法 | メールで申請 | 宛先: 日本弁理士会 知的財産支援センター事務局 |
※他にも申請にあたり様々な注意事項や要件があります。申請前に必ずご自身で日本弁理士会「特許出願等援助制度」のウェブサイトをご覧ください。
※申請書のフォーマットも日本弁理士会のウェブサイト上にございます。
斎藤:他にも各自治体で色々制度がありそうですね。調べてみましょう。
清水:どの自治体から調べますか?やはり人口が多い東京都からでしょうか?
斎藤:オーソドックスにいけばそうなりますけど、せっかくなので Toreru の創業の地である大阪から調べていきましょうか。この記事はシリーズ化予定なので、東京都も後日調べて掲載しましょう。
清水:調べたところ、少なくとも大阪府の以下の自治体では、商標登録費用も対象となりそうな助成制度が設けられていました。
3、大阪府の補助金・助成金制度事例
a.大阪府豊中市の助成制度


<事業名>
豊中市チャレンジ事業補助金
斎藤:豊中市チャレンジ事業補助金は、商標の権利化に特化した補助金ではなく、市内事業者等の新規ビジネスや業種転換、社会地域課題の解決に取り組むコミュニティビジネスに対する補助制度ですね。そのため、審査に通り補助金の交付事業と認められた後も、実績報告書等の提出が必要になる点も注意する必要があります。
清水:はい、そうです。また、自治体の事業ですので対象者は原則として豊中市に法人登記があることが必要です。個人の場合は、豊中市内に主たる事業所を設置し税務署に開業届を提出している者が対象です。
斎藤:豊中市はもう1種類、商標登録費用が対象となる事業を設けているんですね。
清水:はい、以下に紹介しますね。
<事業名>
商品高付加価値化応援事業
斎藤:こちらの応援事業は豊中商工会議所が指定した専門家から、高付加価値化計画に関する指導等を受けた市内の中小企業者を対象に、経費を一部補助しているのですね。豊中市への申請前に、商工会議所を通じて専門家を派遣してもらうステップを踏むことが特徴的です。この「専門家」の中に弁理士も含まれることから、商標登録費用も補助の対象になるということですね。
清水:はい、ですが Toreru は豊中市で現在事業を行っておりませんし、「豊中商工会議所が指定した専門家」には残念ながらあたりません。
斎藤:ということは、Toreru で出願した場合の商標登録費用は、本応援事業の対象外になりますね。豊中市で事業を営む方が Toreru で出願する場合は、先述の豊中市チャレンジ事業補助金のみが対象となる点はご注意いただきたいですね。
清水:Toreru で出願した場合でも助成対象となる事業がないか、もっとお探したほうがお客様にとって親切ですよね。調べたところ、大阪府内の別の自治体で以下の事業を見つけましたので、紹介します。
b.大阪府貝塚市の助成制度

<事業名>
中小企業産業財産権取得促進補助金
斎藤:「商標権を取得した日」から3カ月以内であれば、通年申請できる点で便利ですね。
清水:はい、他の補助金事業と同じく、予算額に到達次第終了になる点は注意が必要ですが、予算が許す限り特段申請時期は決まっていません。
4、助成金申請時の注意点
斎藤:今回は日本弁理士会、大阪府豊中市、大阪府貝塚市の補助事業をご紹介できました。全般的な注意点をまとめてください。
清水:はい、本記事では2023年12月時点の最新情報をまとめましたが、今後申請の条件や必要な書類などが変更される可能性は大いにあります。申請前に必ずご自身で各ウェブサイトをご覧くださいますようお願いしたいです。また、あくまで概略のみの掲載となっておりますので、具体的な申請方法は各自治体等にお問い合わせくださいますようお願いします。 最後に、Toreru カスタマーサポート部門で複数名がファクトチェックをしておりますが、もし情報に誤りがございましたら Toreru の問い合わせフォームまでご連絡いただければ大変ありがたいです。
斎藤:これから順次、各自治体の情報を調べて Toreru Media をご覧くださる方にお届けしたいですね。本日はお疲れ様でした。
おわりに
今回の記事は、商標登録費用の補助金・助成金に関する制度について、大阪府豊中市と大阪府貝塚市を題材にご紹介いたしました。特に新規ビジネスに取り組まれる方は各種補助金・助成金の対象になりやすいので、参考になりましたら幸いです。
Toreru Media では、その他にもスタートアップ様向けの記事を掲載しておりますので、宜しければご覧ください。