法人が商標登録するときに気をつけるべきこと5選

ブランドを守る商標登録は個人でも法人でもすることができますが、法人が商標登録するときには、特に気をつけるべきことがあります。

この記事では、法人が商標登録するときに特に気をつけるべき5つのポイントを紹介します。

1. 過去の商標と権利者名義が一致しているか

法人の場合、起業してからの期間の長さや事業の規模が、個人で行っているビジネスよりも大きいことがほとんどです。そのため、自社が過去に商標登録出願を何件か行っていることも少なくありません。

過去に商標登録出願をしたことがある場合には、新しい商標を出願するときに、過去の出願において使った出願人や住所(権利者名義)と同じ情報を使って出願する必要があります。

なぜなら、商標登録の審査を行う特許庁は、同じ出願人(権利者)かどうかを、出願人の名称と住所が一致しているかどうかで判断しているからです。

過去に取得した商標登録の名義人情報と新しく取得する商標登録の名義人情報が異なっていると一番困ってしまうシーンは、過去に取得した商標と似た商標(シリーズものの商標など)を新しく登録しようとするときです。

商標登録の審査においては、既に他の人が似た商標を登録している場合には、別の人がその商標を登録することができません。逆を言えば、どんなに似た商標であっても、出願人が同じであれば商標登録をすることができます。

しかしながら、先ほど書いたように、特許庁は「出願人の名称と住所が一致しているかどうか」で出願人が同じかどうかを判断しているので、自分が過去に取得した商標登録の名義人情報と、今回新しく出願する商標の名義人情報がずれていると、「別人が既に似た商標を登録しているので、今回の商標は登録できません」という審査結果になってしまうのです。

そのため、新しく商標登録出願をしようとするときには、自社が過去に商標登録をしたことがないかみて、過去に使った名義人情報を確認するようにしましょう。

特に間違えやすいのは、本社の住所ではなく支店の住所を書いてしまったり、会社名や住所が新しく変わっている場合です。

会社名や住所が新しく変わっているときは、新しく行う商標登録出願ではその新しい名称と住所で出願する必要がある一方で、古い名称と住所を使っている過去の商標登録については権利者情報を修正する手続きを別途行う必要があります。

この権利者情報を修正する手続きについては、こちらの記事で詳しく解説していますので、よろしければこちらもご覧ください。

商標の名義変更や住所変更はどうすればいい? – 名義変更・移転登録・住所変更・表示変更の違いや費用を徹底解説 –

2. 既に取っている権利範囲をみて不足があるか確認できているか?

自社が過去に商標登録をしたことがある場合、既に取得済みの商標権の権利内容=権利範囲をよく確認することが大切です。新しく商標登録出願をするときには、既に取っている権利範囲をみて、不足しているところを補うようにする必要があります。

2.1. 標準文字やロゴなどを追加で登録したほうがいいか?

商標権の権利範囲を決めている要素の1つは「商標」それ自体の内容です。今回全く新しいプロジェクトに関して商標登録しようとする場合はもちろんのこと、既に何らかの商標登録をしてあるプロジェクトについても、商標に新しいバリエーションが増えてないか?などの観点から、追加で登録すべき商標がないかを検討することが大切です。

具体的には、次のようなパターンが典型的です。

  1. すでに「標準文字」(普通の書体の文字)で登録済みだが、ロゴデザインが決まったので、「ロゴ」を追加で登録する
  2. すでに「ロゴ」で登録済みだが、他の書体やデザインで使うことも出てきたので、「標準文字」や「別のデザインのロゴ」でも登録する
  3. サービスの正式名称では登録済みだが、サービスが認知されるに伴い「略称」でも呼ばれるようになってきたので、「略称」でも登録する
  4. 「Toreru」は登録済みだが、「Toreru 〇〇」のようにシリーズ化してきたので、「Toreru 〇〇」でも登録する

これらの例のような “追加で商標登録する” ことが必要かどうかの判断はケースバイケースです。

商標のネーミングの性質やロゴがどのようなデザインかなどによって、すでに登録済みの商標権によってどの程度変更した商標まで権利が及ぶかどうか(権利範囲)は違ってくるからです。

ここは専門的な知識と経験が必要な判断になるため、自分で判断できない場合には、商標に詳しい弁理士の力を借りましょう。

そのためにも、まずは「追加で商標登録をした方がいいか検討する必要がある」という認識を持ってアンテナを張っておくことが大切です。

2.2. 追加すべき指定商品・役務はないか?

商標権の権利範囲を決めている要素にはもう1つあり、それは「指定商品・役務」の内容です。

💡 指定商品・役務ってなんだっけ?という方は、こちらの記事がおすすめです。
https://toreru.jp/media/trademark/4593/

「商標」自体の方に変更があったりバリエーションが増えたということはなくても、その「商標」を使って行う事業の範囲が拡大している場合には、「指定商品・役務」の範囲も合わせて拡大しないと商標権で守りきれなくなってしまいます。「指定商品・役務」の範囲を拡大するには新しく商標登録出願をする必要がありますので、自社が既に取っている商標権の内容を把握して、「追加すべき指定商品・役務はないか?」を検討することが大切です。

特に注意が必要なのは、商標登録の「区分」(第〇類)は権利範囲とは直接関係ないという点です。

たとえば、自社が既に「第9類」の区分で登録しているが、その「指定商品」の内容は「コンピュータープログラム」だったとしましょう。現在の自社の事業範囲としては 「電子書籍」も増えているけれど、「電子書籍」は「第9類」。「第9類」はもう登録済みだから、追加で商標登録する必要はないや・・・というのは間違った判断です。

商標権の権利範囲は「区分」(第〇類)ではなくて「指定商品(役務)」の内容で決まりますので、この場合には、「第9類」に「電子書籍」と書いた内容で、追加で商標登録をする必要があります

このように、「追加すべき指定商品・役務はないか?」は、商標権で自社の事業を守れるかどうかの分かれ目となるとても重たい判断なので、社内の商標担当者となった方は、このチェックをしっかり行うことが重要な仕事になります。

3. 更新期限は管理されているか?

出願した商標が無事に登録になった後は、商標権の更新期限の管理が必要です。商標権は5年、または10年ごとに権利期間を延長(更新)することができ、更新手続きをしなければ商標権が消滅してしまうからです。

💡 商標権の更新については、こちらの記事で解説しています。
https://toreru.jp/media/trademark/4645/

法人の場合には、持っている商標権が複数にわたることが多いので、商標権の更新期限の管理が煩雑になりやすいです。

特に、商標ごとに社内の担当者が異なっていると、社内で一元管理ができておらず、更新漏れにより意図せず商標権を失うリスクが高まります。

商標担当者が退職等により突然いなくなることもあるので、スプレッドシートなどを活用して自社が保有する商標権の情報を1カ所にまとめておくのがオススメです。

4. 引き継ぎがしやすいようになっているか?

先程の更新期限の管理の話とも重なりますが、法人の場合には自社の商標のことを把握している人が退職や配置転換などで入れ替わることがあるため、あらかじめこれを想定して、商標の管理の引き継ぎがしやすいようにしておくことが大切です。

自分専用のタスク管理ツールだけで管理していると、急に引き継ぎが必要になったときや、自分が対応できなくなってしまったときに、後任者が自社の商標の情報にアクセスできず、困ってしまいます。

他の社員がアクセスできる、スプレッドシートなどで、自社が保有する商標のリストや、出願中の商標の審査状況、商標権などを一元管理しておきましょう。

また、商標登録出願の審査で不合格になってしまったときに審査官に反論できる期限や、審査合格後に支払う登録料の納付期限、そして3つ目のポイントでもお話しした更新期限等など、商標には期限内に手続きをしないと商標権を失ってしまう状況が多くありますので、単に状況をスプレッドシートで管理するだけでなく、期限が迫ってきたときに、社内の担当者に通知されるような仕組みを整えておくことができれば理想的です。これがあれば、普段は他の業務に集中していても、いつの間にか商標権を失ってしまう事態を避けることができます。

5. 依頼している弁理士事務所の品質と価格は最適か?

最後の5つ目のポイントは、自社が商標登録を依頼している弁理士事務所の品質と価格が最適かどうかを1度見直していることです。

もちろんこれは、個人ビジネスにおいて商標登録をする場合も同じように大切ですが、個人だと商標登録を1度しかしないケースも多いと思います。

一方、法人の場合には、個人よりも事業規模が大きいので、おのずと使う商標の数も多くなってきます。そうすると商標登録をする回数も増えますので、サポートを依頼する弁理士事務所のサービス価格が必要以上に高いと、回数が多いだけに総費用に大きく跳ね返ってきます。

また、かといって、価格が安ければ良いというものでもありません。特に法人の場合には、1つの商品・サービスやプロジェクトに対して投じている資金は大きく、巻き込んでいる関係者の数も多くなります。そうすると、その商標を採用してもリスクがないかどうかの判断を間違えたり、本来なら登録成功に導けるような商標を審査対応の仕方が悪くて登録失敗にさせてしまったりすると、事業やプロジェクトの計画や進行に与えるダメージは個人ビジネスの比ではありません。そのため、商標登録の専門家としての弁理士事務所のサービス品質が高いことも譲れないポイントになってきます。

一般論としては、品質の高い商品やサービスは、そのぶん価格も高い傾向にありますが、弁理士事務所の場合、サービス価格は、その事務所が弁理士の他にもどのくらい事務スタッフを抱えているかや、業務効率化がどれくらいなされているか、受注している案件数が多く規模の経済を活かせているかなどの要素にも大きく影響を受けます。つまり、価格が高いから必ずしもサービス品質が良いとも限らないし、安いから品質が悪いとも限らない面があります。

また、弁理士事務所のサービス品質には、法律的な専門性の高さだけではなく、コミュニケーション能力やホスピタリティーといった「サービスの受け心地の良さ」や、経営的な視点や判断も交えながらコンサルティングできる力なども含まれます。

弁理士事務所のサービスは、実際に体験してみないとその良し悪しがなかなかわからないので判断は難しいのですが、何度も商標登録をする法人であれば特に「依頼する弁理士事務所の品質と価格のバランスが自社にフィットしているか?」を一度見直してみることも大事です。

おわりに

今回は、法人が商標登録をするときに気をつけるべきことを5つのポイントに絞って解説しました。

自社の事業が成長し、規模が大きくなればなるほど、商標についてしっかりケアする重要性が増してきます。

その一方で、規模が大きくなると、社内の担当者の入れ替わりが起きたり、情報が分散されやすくなるため、商標の管理の難易度が上がります。

今回ご紹介した5つのポイントを意識しながら、商標と事業を適切に守り、強いブランドをつくっていきましょう。

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Toreru のアカウントにアクセスすればいつでも自社の商標の状況が確認でき、各種期限もメールで通知されるので、法人に必要な引き継ぎ可能な仕組みを簡単に自社に導入することができます。

無料で更新期限の管理もでき、もちろんそのまま更新手続きを申し込むことができます。

スプレッドシートでの管理よりも安全なので、商標権を複数持っている法人でも安心です。

ぜひ一度 Toreru 商標登録®︎ をお試しいただけたら嬉しいです。

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