商標は長く使い続けるほど、そのブランドにお客さんの信用が付いて価値が高くなるといわれています。
たとえば「PUMA」というブランドは世界的に有名ですが、こうなるまでに、長く大切に使われてきました。
このように、商標権はその商標をずっと使い続けるために長く保っていきたい権利です。そのため、商標権の権利期間を「更新」できる仕組みになっています。
この記事では、その「商標の更新」について解説していきます。
目次
1. 商標の更新とは
商標権は5年または10年ごとに権利期間を更新することができます。商標の更新とは、このような更新の手続きのことをいいます。
商標権は、更新を繰り返すことによって半永久的に持つことができます。
そうやって長く商標を使える環境を整えることで、信頼のブランドができあがっていくわけです。
2. 商標の更新の費用
商標権の更新費用は、商標権によって異なりますが、16,400円(印紙代)からできます。
更新の費用は次のような要素によって変わってきます。費用に最も大きく影響するのは「区分数」です。
- 納付年分(5年分または10年分)
- 区分数
- 商標登録料なのか更新登録料なのか
- 前回に納付した時期はいつか
~2022/3/31までの更新の金額
項目 | 改定前金額 |
---|---|
商標登録料(5年)(後期支払分) | 区分数×16,400円 |
更新登録料(10年) | 区分数×38,800円 |
更新登録料(5年) | 区分数×22,600円 |
2022/4/1~の更新の金額
項目 | 改定後金額 |
---|---|
商標登録料(5年)(後期支払分) | 区分数×17,200円 |
更新登録料(10年) | 区分数×43,600円 |
更新登録料(5年) | 区分数×22,800円 |
商標登録料とは、商標登録して最初の10年までの手続きの料金のことです。10年をすぎると、そこからは料金の名前が更新登録料に変わります。
※2022/4/1から特許庁に支払う更新費用(印紙代)が値上がりします。自分の商標権について、いつから値上がり後の金額で支払わなければならないかを確認したい方は、こちらをご参照ください。
3. 商標の更新はいつから可能か
商標の更新は、存続期間満了日の6ヶ月前からできます。でも、5年ごとに更新している場合は、分納満了日までならいつでも更新ができるようになっています。
パターン1 10年ごとに更新している場合 → 存続期間満了日6ヶ月前から可能
パターン2 5年ごとに更新している場合 → 分納満了日前(前半5年の更新期限前)はいつでも可能。存続期間満了日前(後半5年の更新期限前)は6ヶ月前から可能
※分納満了日とは、登録(更新)日から最初の5年の日付のことです。
4. 商標の更新の追納について
期限までに商標の更新をし忘れたときに、期限の経過後6ヶ月までなら追納(ついのう)ができます。
でも、追納する場合は、印紙代を倍額納付する必要があるため、それだけ多くの費用がかかります。ですから、商標の更新の期限はしっかり守って、期限内に手続きすることをおすすめします。
5. 商標の更新の分納について
商標の更新の分納とは、10年の納付期限を半分に分けて納付することです。つまり5年ごとに納付します。
この分納は、事業の変化などに対応しやすくするための制度です。たとえば、更新はしたいけどこの先「10年」もその商標を使い続けるかは不透明な場合は、分納を選んでひとまず5年分の更新費用を支払う、ということがよく行われます。
なお、あくまでも10年ごとが原則なので、15年目や25年目に10年分の納付はできません。
6. 商標の更新の手続の方法
商標の更新の手続きは、「商標登録料納付書」または「商標権存続期間更新登録申請書」を提出して行います。
原則である「10年」ごとに更新する場合は、更新時に「商標権存続期間更新登録申請書」を提出します。
一方、分納して「5年」ごとに更新する場合は、前半5年満了時の更新手続のときは「商標登録料納付書」を提出し、後半5年満了時の更新手続のときは「商標権存続期間更新登録申請書」を提出します。
前半5年満了時の更新手続のとき(後半5年のための料金を納付するとき)だけは「商標登録料納付書」になりますので、提出する書類の種類に注意しましょう。
特許庁のHPには更新の手続きのために必要な書類のサンプルが掲載されていますので、活用してください。
特許庁HP:https://www.jpo.go.jp/system/process/toroku/youshiki_kisaihouhou.html
たとえば、「商標権存続期間更新登録申請書」の様式は次の通りです。
① 特許印紙の金額を記載してください。特許印紙には割印をしないでください。
② 商標権者全員を記載してください。
③ [ 識別番号」は特許庁から通知済みの9桁の申請人識別番号を記載してください。
※その他の詳細はこちらをご確認ください。
7. 商標の更新の期限を落とさない方法
商標権の更新の期限を落とさないようにするには、次のようなツールを使うとよいでしょう。どのツールも無料で使うことができます。
- 特許(登録)料支払期限通知サービス(特許庁の期限管理ツール)
- Toreru 商標登録®︎
- Googleカレンダー
特許(登録)料支払期限通知サービス(特許庁の期限管理ツール)
特徴
- 期限が近くなるとメールで通知してくれる
- 案件番号を入れると期限は自動で設定してくれる
- 更新登録料の納付は別途自分で行う必要がある
- 案件登録は50件までできる
Toreru 商標登録®︎
特徴
- 期限が近くなるとメールで通知してくれる
- 案件番号を入れると期限は自動で設定してくれる
- 更新登録料の納付を申し込める
- 案件登録は無制限にできる
Googleカレンダー
特徴
- 期限は自分で設定する必要がある(自動ではしてくれません)
- 更新登録料の納付は別途自分で行う必要がある
- 案件登録は無制限にできる
8. 商標の更新の注意点
商標の更新の最も重要な点は「期限を落とさないこと」、これに尽きます。
上記のツールを利用するか、特許事務所に期限管理を依頼することを強くオススメします。
期限を過ぎて商標権が失効してしまった場合は、また一から商標を出願して、登録をし直さないといけません。それでもうまく権利を取り直せて登録ができればいいですが、商標権が失効してからもう一度出願するまでの間に、その商標権を誰かに取られてしまっていたら、商標登録ができなくなる可能性もあるのです。
このように、期限を忘れただけで取り返しがつかない事態になることもありますので、期限管理はしっかり行いましょう。
まとめ
最後にまとめです。
- 商標権は5年または10年ごとに権利期間を更新することができる
- 商標権の更新費用は16,400円(印紙代)から。ただし、納付年分や区分数等によって変わる。2022/4/1から特許庁に支払う費用が値上がりするので気をつけよう
- 商標の更新は存続期間満了日の6ヶ月前からできる。ただし、5年ごとに更新している場合、分納満了日前はいつでも更新ができる
- 商標の更新をし忘れても、期限の経過後6ヶ月までなら追納できる。ただし、印紙代が倍額になるので要注意
- 「10年」もその商標を使い続けるかは不透明な場合は、分納を選んでひとまず「5年」ごとに更新するのも手
- 商標の更新の手続きは「商標登録料納付書」または「商標権存続期間更新変更登録申請書」を提出して行う。手続のタイミングによって提出すべき書類や様式が変わるのでよく確認しよう
- 商標権の更新の期限を落とさないようにするために、次のような無料のツールを使うとよい
- 特許(登録)料支払期限通知サービス(特許庁の期限管理ツール)
- Toreru 商標登録®︎
- Googleカレンダー
商標の更新は、一見単純な作業のようですが、意外と複雑な仕組みや注意点があります。
そして、何よりも更新期限を過ぎてしまわないように、便利なツールや専門家に頼りながら、大切な商標を守っていきましょう!