近年まれに見る大ヒット漫画となった『鬼滅の刃』、いよいよアニメも「遊郭編」に突入しますね。
グッズ展開も幅広く、炭治郎おにぎり、煉獄さんの炙り寿司、義勇はらまき、無惨フレグランスと、その勢いは留まることを知りません。
公式グッズだけでなく、炭治郎っぽいマスク、禰豆子っぽい竹ちくわ、日輪刀っぽい木刀など、いろんな場所で「それっぽい」商品を目にします。
街で見つけた「鬼マスク」(著者撮影)
集英社としては、非公式グッズの販売・流通に釘を刺す意図もあってか、『鬼滅の刃』という商標だけでなく、「炭治郎」「禰豆子」などのキャラクター名、「鬼殺隊」「全集中」などの作中用語、そして炭治郎たちの羽織の柄など、様々な商標登録出願をしています。
一方で、商標出願ができるのはもちろん集英社に限られません。他社さんからも、意図的にか偶然か、どことなく「鬼滅」を連想させる便乗?いや、“あやかり商標”がいくつか出願されているようです。
そこで、この記事では、「鬼滅」っぽい他社商標がどこまで登録されるのかを調べてみました!「柱」の人数に合わせ、9件をピックアップしています。
登録か拒絶か、まずは一覧を眺めて、自分なりに結果を予想してみてください。
※本記事は、令和3年11月13日時点で公開されていた審査経過情報に基づいて執筆したものです。
ゲスト紹介
しろさん:特許事務所に勤める弁理士です。ジャンプ歴は23年。
この世で一番好きな漫画は『HUNTER×HUNTER』、最近の推しは『僕とロボコ』。前回記事に続き、愛するジャンプネタで登板です。
目次
第1柱:「鬼滅」(指定商品:ビールなど)
まずは直球!
(商願2020-012667)
指定商品・役務(その商標を使っている、または使うことを予定している商品・サービス)は、以下のように指定されています。
第32類:ビール,清涼飲料,果実飲料,(後略)
第33類:清酒,焼酎,合成清酒,(後略)
お酒やジュースなどの飲料に対して、商標「鬼滅」の文字を使用することが想定されているようです。
お酒に「鬼滅」といえば、有名ブランド「鬼ころし」を連想しそうですが、こちらは「鬼ころし」の販売元である日本盛さんの出願ではありません・・。
まさに『鬼滅の刃』の略称である「鬼滅」をそのまま出願したようにも見えますが、果たしてこの商標は登録されるのでしょうか?
特許庁の審査結果は……
商標登録できない
として、拒絶理由が通知されました。
特許庁からの拒絶理由通知書には、その商標を登録できない理由がはっきりと説明されているので、少し長くなりますが引用します(赤字は筆者が変更。以下同じ)。
■第4条第1項第15号(商品又は役務の出所の混同)
この商標登録出願に係る商標(以下「本願商標」といいます。)は、「鬼滅」の文字を標準文字で表してなるものです。
ところで、「鬼滅」の文字は一般的な辞書等に掲載が認められない一方、当該文字を有する語としては、「泉吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)」氏による漫画作品であり、社会現象とも言われるほどのヒットとなった「鬼滅の刃」の掲載が認められるとともに、当該作品は略して「鬼滅」と称されている実情が認められます(「デジタル大辞泉プラス」小学館、「知恵蔵mini」朝日新聞出版)。(筆者注:「泉吾峠呼世晴」は原文ママ)
そして、当該作品は、2016年から2020年まで「週刊少年ジャンプ」(集英社)に連載されていることに加え、TVアニメ化され、また、各種メディアを通じて、放送・報道された結果、「鬼滅」の文字は、上記「鬼滅の刃」を表す標章として、本願商標の出願前から現在に至るまで、我が国の子供から大人まで、広く認識されているものというべきです。
また、「鬼滅の刃」に関する商標は、いずれも当該作品の出版社である「株式会社集英社」により登録(登録第6208244号、登録第6260437号、登録第6264744号)されています(特に、登録第6264744号については、指定商品として本願商標に係る指定商品と同一又は類似の商品である「ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料,カクテル(アルコール分を含まないもの)」が含まれています。)。
そのため、いずれも一般的な需要者を対象とする商品であり、漫画作品とコラボレーションした商品が発売されることも少なくない本願商標に係る指定商品に使用するときは、これがあたかも上記「鬼滅の刃」作品及びその関連商標と何等かの関係ある商品(役務)であるかの如く、商品(役務)の出所についての混同を生じさせるおそれがあるものと認めます。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当します。
――商願2020-012667の令和2年8月7日付け拒絶理由通知書より
要するに、特許庁の審査官は、以下のような理由により、今回出願された商標「鬼滅」は登録できないよ、と言っています。
<審査官のポイント>
- 「鬼滅」の文字は、大ヒット作「鬼滅の刃」を表す略称として全国的に広く知られている。
- 「鬼滅の刃」に関する商標は、集英社により登録されている。その登録商標の指定商品には、今回の出願の指定商品と同一または類似のものが含まれている。
- 今回の出願の指定商品「ビール,清涼飲料,・・・」は、一般的な需要者を対象としており、漫画とのコラボも多い。
- したがって、今回出願された商標「鬼滅」が指定商品「ビール,清涼飲料,・・・」に使用されると、あたかも集英社の「鬼滅の刃」と関係のある商品であるように、商品の出所を混同させるおそれがある。
このように、他人の商品やサービスとの出所混同のおそれがあることは、商標出願の拒絶理由として規定されています(商標法第4条第1項第15号)。審査官は、まず拒絶理由を通知して出願人に反論の機会を与え、それでも拒絶理由が覆らないと判断した場合には拒絶査定をします。
本件では、特許庁からの拒絶理由通知書に対して出願人が何ら応答をしなかったため、そのまま拒絶査定となっています。
第2柱:「鬼滅の剣」(指定商品:刈払機など)
続いては、「鬼滅の刃」ならぬ……
(商願2020-156895)
指定商品は「刈払機」(草刈機)や「くわ」「鋤」などの農具です。鬼は畑にいるのか……?
第7類:刈払機用チップソー,刈払機用刈刃,刈払機,(後略)
第8類:くわ,鋤,(後略)
商標「鬼滅の剣」を農具に付して販売することなどが想定されているようですが、「刃」を「剣」に置き換えることで商標登録できるのでしょうか?
特許庁の審査結果は……
商標登録できない
として、拒絶理由が通知されました。1つ目と同じく、「出所混同のおそれがある」という理由付けです。
「鬼滅」の文字を含む本願商標をその指定商品に使用するときは、これがあたかも上記「鬼滅の刃」作品及びその関連商標と何等かの関係がある商品であるかの如く、商品の出所についての混同を生じさせるおそれがあるものと認められます。
――商願2020-156895の令和3年10月8日付け拒絶理由通知書より
そのものズバリの『鬼滅の刃』や略称である「鬼滅」だけでなく、「鬼滅」の文字を含む商標も出所混同のおそれがあると判断されるのですね。
ただし、こちらはまだ拒絶理由に対する出願人の反論などが提出されていないので、もしかすると反論で拒絶理由が覆るかもしれません。
第3柱:「菌滅の燈(きめつのライト)」(指定商品:紫外線ランプなど)
次は少し変わり種。
(商願2020-095585)
これです。
でっかく「菌滅の燈」と表記し、ささやかに「きめつ」「ライト」と振り仮名が添えてありますね。指定商品としては、紫外線による滅菌装置などが指定されています。
第11類:紫外線滅菌装置,紫外線ランプ(医療用のものを除く),電気式家庭用殺菌装置
「菌滅」と書いて「きめつ」と読ませるのは、正直かなり強引に「鬼滅」に寄せているようにも思えますが、字面そのものは『鬼滅の刃』からだいぶ離れています。
特許庁の審査結果は……
商標登録できない
として、これも拒絶理由が通知されました。1・2つ目と同じく、「出所混同のおそれがある」という理由付けです。
「きめつ」の文字を含み「菌滅」の文字を「きめつ」と読ませようとする本願商標をその指定商品に使用するときは、これがあたかも上記「鬼滅の刃」作品及びその関連商標と何等かの関係がある商品であるかの如く、商品の出所についての混同を生じさせるおそれがあるものと認められます。
――商願2020-095585の令和3年6月23日付け拒絶理由通知書より
正直、「菌滅」を「きめつ」と読ませたとしても、一般消費者が「菌滅の燈」を見て公式の「鬼滅」関連グッズと誤認するんか?? と言われると微妙な感じもします……。
しかし特許庁としては、少しでも「鬼滅」に乗っかろうとしてそうな商標には、一旦拒絶理由を打って出願人からの反論を見てみるという運用なのかもしれませんね。
第4柱:「ウイルスきめつ水Ag」(指定商品:手指用除菌剤など)
お次はこちらです。
(商願2020-067139)
商標の構成は、素直に見ると「ウイルス」+「きめつ」+「水」+「Ag」と4つに分けられるように思われます。
指定商品は、コロナ禍以来よく見るようになった手指用除菌剤やスプレー式の殺菌消毒剤などです。
第5類:手指用除菌剤,スプレー式殺菌消毒剤,医療用スプレー剤,(後略)
商標中に平仮名の「きめつ」が入っていますが、ウィルスを滅殺する水といった意味なのでしょうか。
この商標が全体として『鬼滅の刃』を連想させるか、『鬼滅の刃』との混同が生じ得るか、といった点がポイントになりそうです。
特許庁の審査結果は……
商標登録できない
として、これも拒絶理由が通知されました。これまでと同じく、「出所混同のおそれがある」という理由付けです。
審査官は、「ウイルスきめつ水Ag」の中に「きめつ」の文字が含まれている点を指摘し、次のように指摘しています。
いずれも一般的な需要者を対象とする商品であり、漫画作品とコラボレーションした商品が発売されることも少なくない本願商標に係る指定商品に使用するときは、これがあたかも上記「鬼滅の刃」作品及びその関連商標と何等かの関係ある商品であるかの如く、商品の出所についての混同を生じさせるおそれがあります。
――商願2020-067139の令和3年6月7日付け拒絶理由通知書より
3つ目と同様に、読み方として「きめつ」を含み、その部分を他の部分と区別して認識できるような商標については、特許庁の審査官は厳しく対応しているようです。
第5柱:「禅集中」(指定商品:雑誌など)
ここからは『鬼滅の刃』という作品名ではなく、作中用語などを連想するような出願を見ていきましょう。
まずはこちら。
(商願2020-134543)
「禅」で「集中」するから「禅集中」ということでしょうか。宗派としての「禅宗」もかかっているかもしれません。
指定商品・役務としては、雑誌や書籍のほか、「技芸・スポーツ又は知識の教授」などが挙げられており、禅についての本や禅の教室運営などに対して使用する商標として想定されているようです。
第16類:雑誌,書籍,新聞,絵はがき,(後略)
第41類:技芸・スポーツ又は知識の教授,講習会・セミナーの企画・運営又は開催,(後略)
一方で、『鬼滅の刃』には「全集中」という言葉が登場します。作中で、鬼殺隊の剣士たちは「全集中の呼吸」という呼吸法で身体能力を強化します。
菅元首相が国会で「私も全集中の呼吸で答弁させていただきます!」と答弁したこともあったように、「全集中」という言葉は『鬼滅の刃』を象徴するものとして広く知られているように思われます。
集英社も、既に「全集中」の商標登録を済ませています(登録第6397479号)。果たして、「全集中」と同じ読みを持つ商標「禅集中」は登録されるのでしょうか?
特許庁の審査結果は……
商標登録の査定(登録できる)
拒絶理由が通知されることなく、ストレートに登録が認められています。
「禅」と「集中」とに強い関連性があり、「禅集中」との表記から独自の(「全集中」とは別の)意味内容をイメージできると判断されたのかもしれません。
第6柱:「ZEN集中」(指定商品:雑誌など)
それでは、こちらはどうでしょうか?
(商願2020-134542)
5つ目の「禅集中」と同じ出願人、同じ指定商品・役務ですが、「禅」がアルファベットの「ZEN」に置き換わっています。
「禅」は英語圏でも「Zen」として知られており、スティーブ・ジョブス氏などが傾倒していたことでも有名です。「ZEN集中」は、外国人向けの使用を意図したものでしょうか?
特許庁の審査結果は……
商標登録できない
「禅集中」とは打って変わって(1)出所混同のおそれがあること、および(2)集英社の登録商標との関係から、「ZEN集中」は登録できないと通知されました。
具体的な拒絶理由は以下のとおりです。
■第4条第1項第15号(商品又は役務の出所の混同)
この商標登録出願に係る商標(以下「本願商標」といいます。)は、「ZEN集中」の文字を標準文字で表してなります。そして、この文字は「泉吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)」氏による漫画作品であり、映画化されて社会現象とも言われるほどのヒットとなった「鬼滅の刃」における、主人公の台詞である「全集中」の語と類似するものです。
また、「全集中」の語は、「鬼滅の刃」の漫画の出版社である「株式会社集英社」により商標登録されており(登録第6397479号)、さらに、下記の参考情報によると、「鬼滅の刃」に関する展覧会の名称に使用されたり、関連グッズの名前に使用されるなど、取引者、需要者間において「鬼滅の刃」を象徴するものとして広く認識されているものと認められます(下記1~4)。
そうすると、本願商標をその指定商品又は指定役務に使用した場合、その商品又は役務が、あたかも「鬼滅の刃」の作品及びその関連商標と何らかの関係がある商品又は役務であるかのように、その商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれがあるといえます。
(中略)
■第4条第1項第11号(先願に係る他人の登録商標)
この商標登録出願に係る商標は、下記の登録商標と同一又は類似であって、その商標登録に係る指定商品(指定役務)と同一又は類似の商品(役務)について使用するものですから、商標法第4条第1項第11号に該当します。
(中略)
登録第6397479号(商願2020-076846)
――商願2020-067139の令和3年8月3日付け拒絶理由通知書より
1つめの拒絶理由は、これまでの商標と同じく、集英社の『鬼滅の刃』との出所混同を生ずるおそれがあるため登録できない、というものです(商標法第4条第1項第15号)。
一方、2つめの拒絶理由は、集英社の登録済み商標である「全集中」(登録第6397479号)を引用して、この引用商標と出願された商標とが類似し、指定商品も同一又は類似であるため登録できない、というものです(商標法第4条第1項第11号)。
集英社としては、ちゃんと商標登録をしておいたことが功を奏したというべきでしょうか。
ただし、この拒絶理由に対しては出願人側から反論(意見書)が提出されており、審査の結果は確定していません。最終的な判断が待たれるところです。
第7柱:「水の呼吸」(指定商品:ビールなど)
続いてはこちらです。
(商願2021-041145)
指定商品としては、ビールや清涼飲料などの飲み物が挙げられています。
第32類:ビール,清涼飲料,果実飲料,(後略)
もはや説明不要だと思いますが、「水の呼吸」は「全集中の呼吸」の一種で、炭治郎が使用することで有名ですね。筆者の身の回りでも、煉獄さんの「炎の呼吸」と並び、小学生の使い手に多く見られる呼吸法です。
出願された商標はそのまま「水の呼吸」で、作中用語と同一ですが、果たして登録されるのでしょうか?
特許庁の審査結果は……
商標登録できない
出所混同のおそれがあるとして、以下のように拒絶理由が通知されました。
この文字は、「吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)」氏による漫画作品であり、社会現象とも言われるほどのヒットとなった「鬼滅の刃(きめつのやいば)」における、主人公等が繰り出す技の名称と同一又は類似するものです。(別掲1ないし3参照)
(中略)
「水の呼吸」の文字についても、「鬼滅の刃」に関連する商品等について使用されるなど(別掲4ないし8参照)、取引者、需要者の間において、「鬼滅の刃」を象徴する語の一つとして、本願商標の出願前から現在に至るまで広く認識されているものです。
そうすると、本願商標をその指定商品に使用した場合、これがあたかも上記「鬼滅の刃」作品又は上記作品の出版社と何等かの関係がある商品であるかのごとく、商品の出所についての混同を生じさせるおそれがあるというのが相当です。
――商願2020-067139の令和3年8月3日付け拒絶理由通知書より
審査官の拒絶理由は、「水の呼吸」の文字は『鬼滅の刃』を象徴する語として広く知られているので、商標「水の呼吸」を指定商品である飲料物などに使用すると、商品の出所混同を招くおそれがある、というものです。
「ZEN集中」と同様に、タイトルである『鬼滅の刃』や略称「鬼滅」と同一又は類似の商標でなくても、作中の有名な言葉・フレーズとの関係で出所の混同を生じさせる疑いがあるものに対しては、特許庁は拒絶理由を通知しているようです。
ただし、本件も、まだ拒絶理由に対する反論などが提出されておらず、最終的に登録されるか、拒絶されるかの判断はまだ確定していない状態です。
第8柱:「財務の呼吸」(指定役務:企業財務に関するコンサルティングなど)
次は「呼吸」つながりで、こちらです。
(商願2021-005370)
「財務の呼吸」!文字だけでなく、どことなく和風なロゴと結合した商標として出願されています。
指定役務としては、「財務の呼吸」らしく財務関係のコンサルティングやセミナーに関するものが挙げられています。
第36類:企業財務に関するコンサルティング,金融又は財務に関する指導・管理及び助言,(後略)
第41類:セミナー・シンポジウム・講演会の企画・手配・運営・開催,(後略)
「水の呼吸」そのままでは拒絶理由が通知されてしまいましたが、作中に登場しない「○○の呼吸」であればどうでしょうか?
特許庁の審査結果は……
商標登録の査定(登録できる)
これは拒絶理由が通知されることなく、ストレートに登録が認められています。
なかなか際どいラインかもしれませんが、単なる文字商標ではなく図形との結合であったことなどが有利に働いたのでしょうか?
しかし、ロゴも「あやかり感」があるような……ストレート登録で良かったのか、ちょっとモヤモヤするところです。
第9柱:「財務柱」(指定役務:企業財務に関するコンサルティングなど)
最後は、8つめと出願人・指定役務が同一であるこちらの商標。
(商願2021-011178)
こちらも「財務の呼吸」と同じく、文字と円形のロゴとが結合した商標として出願されています。
ちなみに、「鬼滅の刃」のタイトルロゴはこちらですね。
うーん、なかなか似てなくなくなくもない?
ご存じのとおり、「柱」とは、鬼殺隊の幹部的なポジションにいる9名の剣士の称号です。使用する呼吸法によって、「水柱」「炎柱」のように「○○柱」と呼ばれています。
作中に「財務柱」がいたら、「財務の呼吸」を使うお金のエキスパートということになるのでしょうか。銭投げとかで鬼退治するのかな?
「財務の呼吸」は登録されましたが、果たして「財務柱」はどうでしょうか。
特許庁の審査結果は……
商標登録の査定(登録できる)
こちらも拒絶理由が通知されることなく、ストレートに登録が認められています。
ロゴの印象を含め、かなり攻めている気はしますが、特許庁の審査官としては出所混同のおそれがあるとまでは認められないと判断したようです。
まとめ:激闘を振り返って
ということで、全9件の「鬼滅」っぽい商標の審査結果を見てみました。
予想はどのくらい当たりましたか? 結果をまとめます。
現時点で登録されたのは「禅集中」「財務柱」「財務の呼吸」の3件、全体の3分の1です。
やはり特許庁も、『鬼滅の刃』の全国的な大ヒットを受けて、少しでも「鬼滅」っぽい商標については、出所混同のおそれがないかどうかをしっかりチェックしているようです。
特に「きめつ」の読みが含まれる商標に対しては、ひとまず拒絶理由を通知して、出願人に反論を要求しているようにも思われます。
今回見たような人気作品への便乗とも思える「あやかり商標」は、一切登録を認めるべきでないのか、それとも需要者が誤認混同しない限りは、一定の範囲で登録を認めてもよいものか。
立場によって様々な考え方があるでしょうが、少なくともブランドオーナーが声を上げなければ、世の中が「なあなあ」に傾いていくのも真理でしょう。
今回確認したところでは、集英社側も「鬼滅」関連の商標登録を積極的に進めており、一部の商標の審査では集英社の登録商標の存在もきちんと考慮されていました。
単に漫画作品として著作権で保護するだけでなく、商標権なども活用して「鬼滅」ブランドをしっかりと確立・保護しようとする同社の姿勢は、一漫画ファンとしてもリスペクトを感じ、さらに戦略としても学べるものが多いように思います。
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