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箱根駅伝で地域ブランドと大学商標を愛でる~往路レジェンドランナーも紹介!~

もうじき2022年の箱根駅伝®の開催です。

箱根駅伝 登録商標

商標登録第5565518号

大手町~芦ノ湖の約107.5kmを舞台とした爽やかな風が流れる新春一大イベント。過去の駅伝でも様々なドラマがありました。

箱根・芦ノ湖 往路ゴール

箱根・芦ノ湖 往路ゴール(2019年12月撮影)

記憶に新しい箱根駅伝2021においては・・・ダークホースとして見事往路優勝を遂げた創価大学。想定外に往路12位となるも、2秒差での復路優勝を果たした青山学院大学。そして10区アンカーの逆転劇による総合優勝の駒澤大学。各校とも素晴らしい走りを見せました。

毎年、どの様なドラマがあるか?楽しみでなりません。そして神奈川在住の身としては、各区間の景色や地名も楽しみの1つです。

そこで本記事では、この一大イベントを更に楽しむべく、コースに関連する「地域ブランド」の紹介をしていきます。実は東京や神奈川には歴史溢れる多くの地域ブランドがあり、それらは「地域団体商標」として商標登録されているのです。(参考:「地域団体商標ってなに?メリットや事例を解説!-地域ブランドの強い味方-」Toreru Media)

そして各区間におけるレジェンドランナーとともに、その大学が保有する商標権についても取り上げました。中には駅伝に関わる商標を取得している大学もあり、ブランディングの観点からも興味深いものです。

では早速、大手町の読売新聞東京本社前からスタートしましょう!

箱根駅伝 コース紹介

コース紹介」箱根駅伝 HP より

1区 大手町~鶴見中継所 (地域ブランド:江戸木版画)

箱根駅伝の往路は毎年、1月2日午前8時に一斉にスタートします。2021年の箱根駅伝1区はスロースタートで驚きましたが、1区はレースの流れをつかむための重要な区間で、毎年有力選手が集まります。各大学の駆け引きにも注目です。

では、1区に関連する地域ブランドを早速見ていきましょう。

スタート地点・大手町の近くにある中央区は「江戸木版画(えどもくはんが)」の生産地の1つでもあります。(参考:「商標登録第5027720号 江戸木版画(えどもくはんが)」特許庁 HP)

江戸木版画 登録商標

商標登録第5027720号

「江戸木版画」は、絵師である葛飾北斎・歌川広重らの活躍によって、江戸時代後期に発展しました。歌川広重と言えば、浮世絵「東海道五十三次」。「戸塚」「小田原」「箱根」等の東海道の各地における景観や習俗が描かれています。

東海道五十三次

東海道五十三次」東京工芸木版画工芸協同組合オンラインショップより

街道としての東海道の始まりは1601年。徳川家康公による、江戸を起点とした「五街道」の整備によって誕生しました。その後東海道は日本を代表する動脈として活躍し、様々な名作やエピソードが生まれています。歌川広重「東海道五十三次」と並び、例えば十返舎一九「東海道中膝栗毛」も有名ですね。

箱根駅伝のルートは旧東海道とかなり重なっており、箱根駅伝をたどることで昔の旅をしのぶこともできます。第1区ゴールの「鶴見中継所」は、旧東海道の2番目の宿場町である「川崎宿」の少し先です。一般人なら江戸から半日歩いてたどり着きますが、駅伝ランナーはここまで1時間ちょっとで走りきる。まさに超人集団です。

では次に、1区におけるレジェンドランナーと、その大学が有する特徴的な商標権を紹介しましょう。

〇1区レジェンドランナー「大迫傑 氏」:早稲田大学の商標紹介

1区で印象的なランナーと言えば、早稲田大学の大迫さん。当時1年生であった 箱根駅伝2011 にて区間賞を獲得し、鮮烈な箱根デビューを果たしました。その後のご活躍は紹介するまでもありません。2021年に開催された東京オリンピック2020「男子マラソン」における走りからは勇気をいただきました。

大迫さんが所属していた早稲田大学は、ちょっと変わった商標を登録しています。

大隈重信像 立体商標

商標登録第4164983号

早稲田大学の初代総長である大隈重信氏の銅像ですね。こちらは立体商標として登録されています。大隈重信像は、早稲田大学の象徴として重要な存在なのでしょう。漫画「学生 島耕作」のコミック表紙にも大きく君臨しています。

学生島耕作

コミック「学生 島耕作(2)」講談社コミックプラス

さて。神奈川県に入って川崎を過ぎ、鶴見中継所へ。次は各大学のエースが集う「花の2区」です。

2区 鶴見中継所~戸塚中継所 (地域ブランド:横濵中華街)

「花の2区」は、1区にて生じてしまった遅れをエースランナーが一気に挽回するシーンが目立つ区間でもあり、特に目が離せません。

2区のルートは神奈川県の鶴見から戸塚まで。その間に通り過ぎる歴史的な地域と言えば・・・そう。「横濵中華街」です。

横浜中華街 登録商標

商標登録第5069264号

この文字を見るだけで、シューマイ等の美味しい匂いが漂ってきますね。1859年の開港から約160年もの間、横浜の街を支えてきました。

横浜中華街 地域団体商標

商標登録第5069264号 横濵中華街(よこはまちゅうかがい)」特許庁 HP より

中華街の近くを抜けると、やがて横浜市保土ヶ谷区にある「権太坂」や、最後の3kmの上り坂が続く「戸塚の壁」が待ち構えています。

〇2区レジェンドランナー「イェゴン・ヴィンセント 氏」:東京国際大学の商標紹介

そんな2区で衝撃的な走りを見せたレジェンドランナーは、東京国際大学のイェゴン・ヴィンセントさん。箱根駅伝2021にて8人抜きを披露し、タイムは1時間05分49秒の区間新記録。前年の箱根駅伝2020における3区の走りも驚愕でしたが、エースランナーが集う「花の2区」での走りは実に印象的でした。(参考:「【衝撃の箱根駅伝】2区区間新・東国大ヴィンセントのスゴいふくらはぎって? “牛丼”を愛する最強留学生の秘密」Number Web, 2021.1.3)

ヴィンセントさんが所属する東京国際大学は、その大学名だけでなく、いくつかの商標を登録しています。例えばこちら。

東京国際 登録商標

商標登録第6352260号

大学の正式名称ではなく、短縮表現。

私達は、何かの対象について名前を覚えたり他者とコミュニケーションを取ったりする際に、略称等の短縮表現を活用することが多いですよね。青山学院大学であれば「青学」、吉野家の牛丼であれば「吉牛」、超ベリー・バッドであれば「チョベリバ」など。そうすると、正式名称だけでなくそれら短縮表現にも「愛着」が湧いてきます。つまり商標権の世界に沿って考えると、その短縮表現にも「信用」が蓄積されているということ。

蓄積された信用は、商標権としてできる限り守っていきたいものですね。(参考:「商標とは?」Toreru Media)

3区 戸塚中継所~平塚中継所(地域ブランド:鎌倉彫)

海がそびえる湘南地域へと差し掛かる3区。戸塚中継所を過ぎると「原宿」が待ち構え、そして「横浜ドリームランド(2002年閉園)」の思い出をまとった俣野町へ。そのまま進むと藤沢市へと入りますが、ここで少し東を眺めてみると、ニョキっと突き出た形をした鎌倉市があります。

鎌倉において商標登録されている地域ブランドは、「鎌倉彫(かまくらぼり)」。

鎌倉彫 登録商標

商標登録第5276777号

鎌倉彫は、800年の時を越え伝承されてきた工芸品。木のぬくもりと漆による色調との調和が特徴で、箸・スプーン・ブローチ・壁掛け等の様々な作品があります。

鎌倉彫 地域団体商標

商標登録第5276777号 鎌倉彫(かまくらぼり)」特許庁 HP より

鎌倉彫商品紹介」(鎌倉彫工芸館) を拝見すると、多くの作品が「しなやか」な曲線美を有しているように見受けられます。鋭利な彫刻刀によってどの様に「しなやか」さを表現していくのか?職人による体験教室もあるようなので、いずれ体験してみたいものです。

ところで「しなやか」と言えば、駒澤大学。レジェンドランナーとともに、「しなやか」に関連する商標を紹介しましょう。

〇3区レジェンドランナー「田澤廉 氏」:駒澤大学の商標紹介

3区レジェンドランナーは、駒澤大学の田澤さん。主将兼エースとして、箱根駅伝2022でも活躍が期待されます。

田澤さんの箱根デビューは、箱根駅伝2020における3区。1年生ながら区間歴代3位(2021年現在)の好記録にて襷を繋げました。(区間歴代1位は東京国際大のヴィンセントさん)

絶対的な存在であるが故の重圧の中、「全日本駅伝2021」においても見事な走りを見せた田澤さん。その走りから垣間見えるのは「しなやかな、意思。」です。

しなやかな、意思。 登録商標

商標登録第6279492号

これは駒澤大学が掲げるブランドコンセプトに関するスローガンであり、公式HPにおいても大学名やロゴと一緒に掲げられています。

駒澤大学 ブランドスローガン

駒澤大学ブランドスローガン等の策定について」駒澤大学

「モーニング娘。」のように「。」が入っていますね。最後に「。」があることにより、しなやかであり、且つ、困難に立ち向かう力強い意思を感じます。

駅伝は他ランナーとの駆け引き要素もあり、単に自分に意識を集中して走ればよいというものではありません。想定外の場面に遭遇したときは、事前に検討していたペース配分をも「しなやか」に変える必要があります。エースとしての期待に応える田澤さんの走りは、そんな「しなやか」さに支えられているのかもしれません。

茅ヶ崎の海岸沿いを過ぎ、次は往路ゴールの箱根が徐々に迫ってくる4区です。

4区 平塚中継所~小田原中継所(地域ブランド:小田原かまぼこ、小田原ひもの)

大磯ロングビーチを過ぎ、二宮を越え・・・いよいよ城下町小田原へ。小田原の地域ブランドといえば「かまぼこ」ですね。漢字と平仮名、いずれも地域団体商標として登録されています。

小田原かまぼこ 登録商標
小田原かまぼこ 地域団体商標

商標登録第5437574号 小田原蒲鉾(おだわらかまぼこ)」特許庁 HP より

そして、小田原の地域ブランドは蒲鉾だけではありません。同じく魚を活用した「小田原ひもの」も地域団体商標として登録されています。

小田原ひもの 登録商標

商標登録第5727397号

小田原ひもの 地域団体商標

商標登録第5727397号 小田原ひもの(おだわらひもの)」特許庁 HP より

小田原ひものは、江戸時代より、地場で取れた鯵やカマスを干すことによって保存食として愛されてきました。「御家庭でも、簡単?にできる」とのことなので、ひもの作りにチャレンジしてみるのも面白そうです。(参考「■ひものの作り方」小田原ひもの協同組合)

では、4区における伝説的なランナーと大学の商標について紹介していきましょう。

〇4区レジェンドランナー「吉田祐也 氏」:青山学院大学の商標紹介

青山学院大学の吉田さんはずっと「11番目の選手」でした。なかなか箱根駅伝の出場を果たせなかったものの、4年生時の箱根駅伝2020において箱根デビュー。大学卒業後は一般企業への就職が内定しており、この「最初で最後の箱根」が競技人生最後の走り・・となる予定でした。

そしてなんと、吉田さんは区間新記録を樹立する圧巻の走りを見せます。襷を受け取った際に1分以上の差があった1位東京国際大を抜き、トップで小田原中継所へと駆け込みました。運営管理車に乗った原監督からの声掛けに熱いガッツポーズで応じた場面がとても印象的であり、近年における箱根駅伝の名シーンの1つと言えるでしょう。

その後、箱根の激走や2020年2月大分別府毎日マラソンでの好走(日本人トップの全体3位)により、競技引退を撤回することに。実業団へと進み、2020年12月の福岡国際マラソンにおいてマラソン初優勝を飾るなどの活躍を見せています。

吉田さんに限らず、他にも多くの伝説的なランナーを輩出する青山学院大学。その秘訣の1つでもあるトレーニング方法が「青トレ」です。

青トレ 登録商標

商標登録第6401102号

「青トレ」は、フィジカルトレーナーである中野ジェームズ修一氏によって考案され、青学の箱根駅伝4連覇(2015-2018年)等を支えてきました。(参考:「青トレ入門1」青学TV Youtube チャンネル)

トレーニング方法の名称も商標登録されているとは、さすが箱根4連覇の青学ですね。

ここでクイズです。実は本件商標には、特許庁における非常に珍しい制度が関わっています。本件商標は、①~④いずれを通じて登録に至ったでしょうか?

  1. 回転式抽選機による「ガラガラポン」を実施(くじ引き制度)
  2. 特許庁長官へのエレベーターピッチを敢行(直訴制度)
  3. 特許庁の商標審査官が「青トレ」を自ら体験して効果を確認(体験制度)
  4. 「4連覇を達成したら登録にするよ」という審査結果(成果主義制度)
青トレ クイズ

作画:おっさん?特許技術者さん(Twitterリンク

正解は・・・・・

①くじ引き制度 でした!

以下特許庁クイズの答えにもある通り、「同日に、同じ商標が同じ商品に対して複数出願された場合」に用いられる制度です。「青トレ」はほんの三文字であり語感も良いので、他にも出願があったのですね。

さぁ、いよいよ往路の最終区である5区。箱根の山登りが待ち構えています。

5区 小田原中継所~箱根芦ノ湖(地域ブランド:箱根強羅温泉)

箱根と言えば、黒タマゴ、ロープウェイ、芦ノ湖、彫刻の森・・・様々な名物や名所があります。その中で箱根を代表する地域ブランドと言えば、やはり温泉でしょう。「箱根強羅温泉」が地域団体商標として登録されています。強羅は、財界人らの保養地として明治時代から発展してきました。(参考:「商標登録第6423535号 箱根強羅温泉(はこねごうらおんせん)」特許庁 HP)

箱根強羅温泉 登録商標

商標登録第6423535号

5区と言えば山登り。箱根駅伝の中で走るのが最も難しい区間とされており、素晴らしい記録を出した選手は「山の神」として称えられます。これまでに3名の「山の神」が誕生しました。初代・今井正人さん(順天堂大)、2代目・柏原竜二さん(東洋大)、3代目・神野大地さん(青山学院大)です。

〇5区レジェンドランナー「柏原竜二 氏」:東洋大学の商標紹介

ここで特に紹介するのは「2代目・山の神」である柏原さん。4年連続(2009年-2012年)で5区を任され、その全てにおいて区間賞獲得という異次元の記録を達成。東洋大学の往路4連覇に大きく貢献しました。10年程経過した現在においても実況中継等にてそのお名前を耳にするなど、伝説的な活躍が語り継がれています。

柏原さん卒業後においても優勝候補の1角として存在感を示している東洋大学。印象的な登録商標は「哲学館」です。

哲学館 登録商標

商標登録第5141840号

ミステリー作家・綾辻行人さんの「館」シリーズとしても出てきそうな、哲学館。これは東洋大学の前身である「私立哲学館」に関連した商標と思われます。哲学館は、1887年に哲学者・井上円了によって設立されました。(参考:「創立者・井上円了について」東洋大学)

哲学館。その文字には130年以上かけて蓄積された歴史的な価値があり、東洋大学にとって大事にしたい名称と言えるでしょう。先人によって築かれた様々な歴史は、現代における判断基準や心の支えともなり得るものだからです。

故に「哲学館」という名称について、その歴史や蓄積された信用を汚すような使われ方は排除しなくてはならず、その為の商標登録なのでしょう。

まとめ:地域ブランドと箱根駅伝から考える「商標とは?」

以上、5区までの往路ルートに関連する地域ブランドとともに、レジェンドランナーや大学商標についても紹介しました。

往路区間に関連する地域ブランドとレジェンドランナー&大学商標

商標権で「らしさ」を守り、独自のブランド力を確立。それは企業におけるビジネスや地域の名産品だけでなく、大学運営においても深く関わってくるものです。

私達は、駅伝選手のひたむきな姿勢に心を打たれ、その大学に対してポジティブなイメージ(=信用)を抱くこともあるでしょう。その時に「信用が蓄積される場所」が「商標」であり、その信用を守る1つのツールが「商標権」です。

TV中継やラジオ等を通じて箱根駅伝を体感する際、必ず「〇〇大学」という大学名を見たり聞いたりします。更には「青学」「東京国際」といった略称や、もしかしたらトレーニング方法である「青トレ」の紹介もあるかもしれません。

それら視覚&聴覚の情報に対してそのときの感情が紐付くことにより、商標に信用が溜まっていくことになります。つまり商標とは「顧客の感情ポイントを溜める器」のような存在と言えるでしょう。そしてせっせと溜めた信用を他人がフリーライドすることは許されないので、商標を権利として守るために商標制度があるという訳ですね。

箱根駅伝ミュージアム

箱根・芦ノ湖ゴール横にある「箱根駅伝ミュージアム」(2019年12月撮影)

地域ブランドや大学の商標を意識しつつ箱根駅伝を応援すると、「筋書きの無いドラマ」がもっと楽しくなるはずです。歴史的な名産や名物に触れつつ、爽やかな走りを味わいましょう!

なお今回は箱根駅伝に特化して地域ブランドを取り上げましたが、日本にはまだまだ多くの地域ブランドがあります。(地域団体商標として登録されているだけでも716件:2021年12月21日現在)

他の地域ブランドについては、今後も様々なテーマにて取り上げていくかもしれません。どうぞお楽しみに!

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