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素材ビジネスをデザイン?成分ブランディング事例を三井化学に聞く

素材ビジネスをデザインするって、何だろう?普段はあまり目立たない存在である化学会社がブランディングに力を入れる意義はあるのだろうか?成分ブランディングとは一体・・?

本記事では上記疑問に対する解を探るべく、三井化学の活動である「そざいの魅力ラボ(MOLp®)」の事例を紹介します。

100年以上の歴史がある三井化学は、社会を支える素材メーカーとして BtoB ビジネスを進めていく中で、素材の価値や魅力をなかなか世の中に伝えることが出来ないという課題がありました。そこで、社内の研究者を中心とした有志活動である MOLp(モル)を2015年にスタートさせ、「感性からカガクを考える」をコンセプトとして掲げて先進的な取り組みを進めています。

例えば MOLp は、クリエイティブ・ディレクター田子學さんとの協働を通じ、素材の特性を生かしたプロダクトを自ら提案しています。これは従来の BtoB ビジネスにおける直接顧客だけでなく、その先の BtoBtoC までを意識したものです。

本記事では BtoBtoC ビジネスにおける「成分ブランディング」の真髄を探るべく、MOLp 創始者:松永有理さんのインタビュー記事をお届けします。そして化学メーカーにとっては珍しいネーミング事例や、活動を通じて浮かび上がってきた知財に関する課題意識についても掘り下げていきます。

MOLp® HPより

なお、本記事における「成分ブランディング」とは、最終製品を構成する部材 / 素材のブランディングを指します。イングリーディエント・ブランディング(インブランディング)とも呼ばれ、高付加価値を提供する BtoB ビジネスを行う上で大事な要素となります。

代表的な例として、「Intel Inside(インテル入ってる)」や、最終製品である衣服や靴の製品価値にも影響を及ぼしている、防水性 / 透湿性が売りの「GORE-TEX(ゴアテックス)」があります。

では、お話を伺っていきます。

松永有理さん

◆松永有理(まつなが・ゆうり)◆ 
三井化学(株) コーポレートコミュニケーション部 広報グループ 課長
2002年神戸大学経営学部卒業。同年、三井化学入社。食品パッケージなどの素材であるポリオレフィン樹脂の営業・マーケティングを経て、2011年6月より現職。主にPR業務や社長発信資料に加え、製品マーケティング支援を担当。2015年より組織横断的オープンラボラトリー「そざいの魅力ラボ(MOLp®)」を設立、BtoB 企業における新しいブランディング・PRの形を実践している。PRSJ 認定 PR プランナー。

1.素材の機能的価値や感性的な魅力を通じて成分ブランディングを行いたい

(聞き手:Uchida l 知財ライター)
-私が MOLp &松永さんと初めて出会ったのは、2016年6月のインテリアライフスタイル展@東京ビッグサイトでした。えっ、何故素材メーカーの三井化学がインテリア小物や雑貨の展示会に?という驚きが忘れられません。三井化学の素材を活かした風鈴「KODAMA -言霊-」などのプロダクトを制作し、出展されていましたね。三井化学は最終製品ではなく主に素材を扱っている会社ですが、どの様な背景があったのでしょうか。

「KODAMA -言霊-」MOLp HPより

松永有理さん(以下、松永。敬称略)
弊社は決して目立つ存在ではありませんが、皆様のスマートフォンに組み込まれているカメラレンズ向け樹脂、自動車やオムツに使われる素材など、様々な産業と関わりを持ったビジネスを行っています。しかしそれは、今回のテーマである「デザイン」や「ブランディング」とは少々無縁の世界でした。つまり、今までは技術スペックや価格といった「経済合理性」の世界にてビジネスを進めてきたのです。

-スマホカメラからオムツまで・・実に幅広いですね。恥ずかしながら私は30歳頃まで、三井化学はおろか化学産業について全く知りませんでした。

松永
一般的にはあまり馴染みがない分野ですからね。だからこそ MOLp をスタートしました。研究者を中心として、「カガクの機能的価値や感性的な魅力」を社会に対して発信していくというコンセプトです。計20-30名程の活動であり、主体的にやりたい人だけが集まる場です。それまで目の前のお客様の要望を叶えるべく研究開発に没頭してきた研究者が、視野を広げて社会との接点を探し出し、自らゼロイチの価値を生み出す――その様な活動を目指しています。

コミュニケーションの相手を変える

-「0→1 MAKE IT HAPPEN」はコーポレートメッセージにも使われていますよね(三井化学HP)。視野を広げるというのは、目の前の BtoB ビジネスにおける顧客だけでなく、その先である「顧客の顧客」を意識しようということですね。そして素材の価値を広く伝えるためには、SDGs 等の社会的側面まで考える必要があるということでしょうか。最終製品を構成する「成分型商品」である素材が、より広い視点で考えたときに社会に対してどの様な影響を及ぼすのか?と。

化学メーカーが関わるビジネスのイメージ

成分型商品のブランド戦略では,ターゲットは直接顧客,流通,(その製品が最終的に使われる)エンドユーザー,さらに社会・政府・一般消費者などが想定される。

ブランド戦略論 – 田中洋 著, 有斐閣, 2017年, P123

松永
そうです。しかし、今まで化学式や素材の技術特性で目の前のお客様とコミュニケーションを取っていた弊社にとっては、異次元の世界です。そこで、「突き抜けるデザインマネジメント」等の著者であるクリエイティブ・ディレクター田子學さんのお力を借りて、その未知な世界へと飛び込んだのです。

-全裸で知らない世界に出ていくのはマズいので、創造性や感性を身に纏って出て行こうということですね。そうしないと風邪をひいてしまいますし。

松永
はい。そもそも全裸で出歩いたら犯罪ですしね。

-そうですね(苦笑)変な例えで失礼しました・・・。

松永
MOLp の活動では、一般消費者や「お客様のお客様」といった、今までお付き合いの無かった方々とのコミュニケーションを大事にしています。それを起点として「プル戦略」に繋げるべく、そこでの知見に基づく素材の開発やマーケティングを進めています。

-100年間培ってきた技術に対して感性やクリエイティブ要素を注入することで成分ブランディングを行い、より川下の顧客に対しても訴求するプル型マーケティングに繋げるということですね。つまり、素材を購入する企業(三井化学の直接顧客)に、「顧客や社会が欲しているから三井化学の素材を使いたい」と思ってもらうという。

松永
そうです。一般消費者の皆様や「お客様のお客様」から、「三井化学の素材が使われた製品が欲しい」と思っていただくことが理想ですね。

プル戦略を採用する場合には、構成部品メーカーは自社のコミュニケーションとマーケティング活動を最終顧客へ向けるために一つあるいは複数の市場のステップを飛び越える。

コトラーのイノベーション・ブランド戦略 – フィリップ・コトラー/ヴァルデマール・ファルチ 共著, 杉光一成 訳, 白桃書房, 2014年, P24

2.成分ブランディング素材ビジネスを新たにデザインする

形にして見せないと、お客様の欲しい物がわからない

松永
ところで Steve Jobs 氏の名言にもありますが、人は形にして見せてもらうまで、自分の欲しい物がわからないものです。一方、これまで弊社が扱ってきた多くの製品は、ペレットと呼ばれるツブツブや、ガス、液体です。そして技術スペックで定量的に示される「耐熱性」や「透過性」といった機能的価値はお客様に伝えられるものの、触り心地や ”音” といった感性的な魅力は、なかなか伝えることができません。このままでは、世の中の人達に対して化学の価値を伝えることに限界を感じていました。

-たしかにそうですね。いかに触り心地が良いと言って感性的な魅力をアピールされても、ツブツブや液体の状態では「お、おう・・?」となりそうです。

ツブツブのペレット例(三井化学 HP より)

松永
それが普通だと思います。そして、例えばスマホの内部部品や製造過程で使用される素材について感性的な魅力をアピールしたとしても、スマホ分野において弊社の売り上げが向上するわけではありません。しかし、今はスマホ向けに使用されている素材でも、実は全く別の用途があるかもしれません。その探索のためにも、素材の魅力を活かしたプロダクトを自ら制作しています。自ら発信しないと、何も生まれませんから。

-自ら発信しないと何も生まれない・・格言ですね。では、代表的なプロダクトを紹介いただけますか?

松永
「NAGORI®」と「SHIRANUI®」です。NAGORI は海のミネラルを有効活用する新たな概念のプラスチックであり、2018年度グッドデザイン賞BEST100 をいただきました。

素材デザイン例:NAGORI® -波残-「海水から生まれたイノベーティブプラスチック」

「NAGORI -波残-」MOLp HPより

-グッドデザイン賞ですか!しかも BEST100 とは、素晴らしいですね。「海水から生まれた」という表現がオシャレです。でも、ただ海水を活用しただけでは BEST100 は受賞できませんよね。どういった点が ”グッドデザイン” として評価されたのでしょうか?

NAGORI®樹脂を活用したビアタンブラー(MOLp HPより)

松永
化学の力で海水淡水化は実現しており、世界の水不足に大きく貢献しています(SDGs : 6番「安全な水とトイレを世界中に」)。一方で、海水の淡水化に伴って海に放出される濃縮水によって海水温度やミネラルバランスが変わることで、サンゴが死滅してしまうというトレードオフの社会課題が発生している点に気付きました。そこに着目し、廃棄されるミネラル成分を有効活用した素材が NAGORI です。つまり、SDGs 6番の水の問題とトレードオフで出てきた SDGs 14番「海の豊かさを守ろう」に対する解決提案の一つです。

-なるほどです。海水を有効活用するというだけではなく、サンゴの死滅といった社会課題の解決にも繋がるコンセプトなのですね。

松永
はい。そして単にミネラル成分を混ぜればいいという話ではなく、三井化学が長年培ってきた素材合成技術によって初めて実現しました。これによって陶磁器の様な風合い・熱伝導率を有するプラスチックとなり、例えば食器に適用すれば「温かいものは温かく、冷たいものは冷たく」食品をいただくことが可能になります。

-ストーリーがエモいだけではなく、それを実現するには高い技術力が不可欠ということが分かりました。そしてサステナブル性に溢れるだけでなく、その特性を活かした用途も見出してらっしゃるのですね。

素材デザイン例:SHIRANUI® -不知火-「浮かんでは消える、光と色の幻影」

松永
もう一つは、SHIRANUI です。これは普段はメガネレンズに使われる樹脂を活用したものです。この樹脂を活用したボタンやバングルは、太陽光を浴びると色が浮かんできます。そして室内に入れば、再び透明に戻ります。

MOLp HP より

-おおお!これは綺麗ですね。これを身に着けると、自然と外に出たくなりそうですね。

松永
はい。2018年3月の単独展示会(MOLp Cafe)で販売したところ、ご好評の声をいただきました。ボタンやバングルではなく、横で飾っていたオブジェまで売って欲しいというお客様もいらっしゃいました。これはバングル製造時にお遊びで作ったものだったのですが。

-それは凄い。以下動画を拝見しましたが、とてもオシャレな雰囲気ですね。

松永
表参道で開催しました。SHIRANUI ボタンが付いたシャツをハンガーに掛けて展示していたこともあり、セレクトショップと勘違いした方にも ”ご来店” いただきました。

Youtube チャンネル「三井化学株式会社」より

-この佇まいを見ると、間違えてしまうのも無理はないですね。一棟貸切って単独展示&販売を行う点も、ブランディングの観点で学びがありそうです。周りの情報を遮断することで、来場者は MOLp の世界観に集中することができますね。

3.成分ブランディング素材のブランド力が発揮された場面

-ここまで、MOLp の設立経緯や、長年培ってきた技術によって実現される素材の感性的な魅力についてお話を伺いました。次は「成分ブランディング」の観点で質問させてください。NAGORI や SHIRANUI 等の新たな素材に関して、プル型マーケティングの成功事例は何かあるのでしょうか?

松永
NAGORI 樹脂に興味を持っていただいたお客様から、「この樹脂は賞を受賞したとか、何かないのか?もしあれば、社内の説得がスムーズにいくのだが…」とのコメントをいただきました。それまでの弊社の製品は機能的価値が最も重要な要素でしたが、化学業界においても感性的な価値を武器にできるということに確信が持てました。

NAGORI 樹脂を活用したビアタンブラーと松永さん

-なんと、そんなことが!社内説得のために受賞歴を気にするというのは面白いですね。意思決定にあたり、素材の技術スペックや価格といった合理性だけでなく、感情に訴える要素も関わってくるのですね。

たとえば、Lynch and de Chernatony(2004)では、BtoBの購買行動において、経済合理性の他に、ブランドに対する知識や感情が加わって、意思決定が行われることを指摘している。

BtoB事業のための成分ブランディング -余田拓郎著, 中央経済社, 2016年, P134

松永
はい。目指してきたことが間違っていなかったということが分かり、嬉しかったですね。そして SHIRANUI に関しては、社長や役員の目の色が変わる出来事にも繋がりました。

4.そして「パリコレ」へ…。ANREALAGE との協働

松永
MOLp Cafe に出展した SHIRANUI が ANREALAGE のデザイナーである森永邦彦さんの目に留まり、その他素材も含めて衣装やアクセサリーに採用いただきました。そして、パリコレ進出を果たしたのです。

MOLp HPより

-パリコレ!え、”あの” パリコレですか!?

松永
はい。”その” パリコレです。まさかパリコレを生で見学できる日が来るとは思いませんでした。

-衣装だけでなく、松永さんもパリへ行かれたのですね。

松永
非常にタイトなスケジュールで開発&制作を行っていましたので、最後は ANREALAGE の皆さんは衣装をハンドキャリーでパリへ持っていくことになるくらいでした。ショーに間に合うか否か危なかったのですが、研究者が夜なべをして頑張ってくれました。そして私がパリコレに行けたのは、実はもう一つ同時にプロジェクトを動かしていて、そちらも同時にパリコレで発表できたためです。こちらもかなり面白いものが発表でき、反響も大きかったです。

-素晴らしいですね。パリコレ衣装に素材が採用され、その後どの様な反応がありましたか?

松永
お蔭様で様々な会社様に関心を持っていただき、実製品の採用にも繋がっています。先日はイタリアのファッションブランド「FENDI」さんでもこの素材が採用され、世界中で販売されています。

-おおぉ、とうとうそこまで…。わらしべ長者みたいですね。三井化学の素材には神々しさも感じてきました。これは正に「成分ブランディング」の好例と言えるのではないでしょうか。仮に機能や価格が全く同じ製品が2種類あった場合には、私は SHIRANUI が使われた製品を選びますね。「これ、FENDIにも採用されているんだぜ?」って、自然と語りたくなりそうです。

インブランディングは、消費需要を創り出すことができる(プル効果)。

コトラーのイノベーション・ブランド戦略 – フィリップ・コトラー/ヴァルデマール・ファルチ 共著, 杉光一成 訳, 白桃書房, 2014年, P8

松永
是非語ってください。初めは「色が変わる素材って面白いんだけど、メガネ以外でどんな用途が生み出せるかな?」といった漠然とした思いで進めてきましたが、どういうご縁か、ANREALAGE さんや FENDI さんと関わらせていただくことに繋がりました。この様な「風が吹けば桶屋が儲かる」といった事例を更に生み出すためにも、次の風をせっせと仕込んでいきたいと思います。

5.MOLp の成分ブランディング活動と知的財産

-ここで、活動を通じて出てきたアウトプットについての知的財産権保護について教えてください。実際に MOLp Cafe でプロダクトを販売したことがあるとはいえ、三井化学の本業としてボタンやバングルを販売しているわけではないかと思います。その様な状況で、知的財産権についてどの様に考えて進めてらっしゃるのでしょうか?

松永
知財権の保護には気を使っており、合計で50件程度は出願しています。仰るとおりボタンやバングルはあくまでも素材の魅力を伝えるための一形態であり、三井化学がそれらプロダクトを販売するビジネスを定常的に行っているわけではありません。しかし、関連する素材技術を特許出願することは勿論のこと、プロダクトに関する意匠権、名前やロゴに関する商標権についても保護しています。もしプロダクトに関して製造販売したいという企業様がいらっしゃれば、それら知財権をライセンスアウトさせていただく選択肢もありますから。

感性に訴求するワードで商標登録/色が変わるボタンで意匠登録

-なるほどです。少々調べさせていただきましたが、例えば「NAGORI」や「SHIRANUI」については既に複数の登録商標がありますね。

松永
はい。先ほどお話したとおり、NAGORIは海のミネラルを有効活用した素材です。つまり、波が残してくれたもの・・なので、波残(なごり)。

-おお、シャレてますね!化学メーカーの製品名とは思えないお名前ですね。

松永
ありがとうございます。感性的な魅力を伝えるためには名前も重要なので、読みやすく、且つコンセプトを包含する名前を付けました。そして他社の商標権を侵害してしまうリスクを低減するためにも、名前について商標登録を受けています。

-感性的なワードでの商標登録は、素材分野で今後トレンドとなるかもしれませんね。そして意匠に関しては、例えば SHIRANUI を活用したボタンやバングルについての登録意匠がありました。

活動と知財保護についての課題:スピード感

- MOLp の HP を拝見すると、様々なデザイナーさん / クリエーターさんと協働されていることが伺えます。そしてグッドデザイン賞やパリコレ等を通じて話題になると、更に新たなお客様からもお声掛けがある・・・その様な状況において、知財の観点で何か課題意識などありましたら教えてください。

松永
スピード感ですね。デザイナーさん / クリエーターさんやスタートアップ企業のスピード感に合わせて素材開発を行うためには、なかなか知財の出願が間に合わないケースもあります。そんな中でも社内外の知財関係者の方々にはサポートをしてもらっていて、有難い限りです。

-特に特許出願の準備には時間がかかりますからね…。でも「出願が終わってないから発表を一ヶ月待ってくれ」なんて、協働相手にはなかなか言えないですよね。

松永
それは失注するとともに、信用も失ってしまいますね…知財保護も勿論大事ですが、何よりもまずはビジネスファーストです。知財権は、ビジネスをデザインしていく上でのツールの一つとして捉えています。

-特許法や意匠法には「産業の発達に寄与することを目的とする」という法目的がありますが、失注してしまったら元も子もないですからね。そしてそれは商標権で間接的に保護する対象である「信用」の低下にも繋がる・・・大変考えさせられます。

6.MOLp 活動、次の発表の場は?

-今進めていらっしゃる新作の発表の場などは考えているのですか?

松永
今のメンバーでのアイデアが溜まってきましたので、もともと3月に発表の場を作りたいと考えていました。しかし、コロナ禍において開催は難しくなっています。素材の展示なので、体感してもらわないと、映像や画像だけでは全く伝わらないんですね。実際、オンラインでメンバーの会議を行っていますが、なかなか研究者の思いを発露した実験物に対して、同じように驚きや感動を共有できないんですね。なので、日程を遅らせても、ご来場いただける方を少なくしても、どこかのタイミングで出来ればリアルでやりたいなぁと考えています。

-それは楽しみです!もし展示会が開催されれば、私も行きますね♪ この度は大変貴重なお話をどうも有難うございました!MOLp の今後の活動を楽しみにしています。

7.まとめ:広い視点で素材ビジネスをデザインすることで、成分ブランディングを実践

最後までお読みいただき有難うございました。まとめは以下3点です。 

  • 目先の BtoB ビジネスにおける顧客を飛び越えて、その先の顧客や社会に対して素材の魅力を発信する。これにより、プル型マーケティングを狙う。
  • 目に見えるプロダクトとして素材を発信して適切なコミュニケーションを取ることで、「わらしべ長者」や「風が吹けば桶屋が儲かる」の様な価値の連鎖が起きる。
  • 感性に訴求するネーミングにて商標登録。そして知財権の保護を最優先にする「知財ファースト」ではなく、「ビジネスファースト」で考える。

さいごに:MOLp=創造性・感性を取り込んだ成分ブランディング事例

三井化学の松永さんからお話を伺い、素材に関する成分ブランディングの真髄を学んだ気がします。ここで、「顧客の顧客」へのアプローチを試みる素材メーカーとして、例えば東レ株式会社の事例もあります。自動車会社と直接取引をするティア1、そしてティア1より一段素材メーカー側である川上にいるティア2を飛び越えて、東レは自動車会社にもアプローチを行ってきました。

東レの活動は,こうしたティア1, 2の業者とも協業しつつ,「お客さまの,お客さま」である自動車会社に直接アプローチを行う。この「ワンストップ・サービス」を行うことで,自動車メーカーが何を考えているかがわかるようになり,新規開発のテーマを設定するなど,東レグループの総合力によるソリューション営業が可能となる。

ブランド戦略論 – 田中洋 著, 有斐閣, 2017年, P470

三井化学による MOLp の事例は、このアプローチに関してデザイナー/クリエーターの創造性・感性を全面に取り込んだ点が新しいのではないかと思います。MOLp は、長年培ってきた技術についての見せ方・魅せ方の工夫により、その価値を未知な方々へ広く届けることに成功しています。そしてプル型マーケティングにも繋げていることから、これは BtoBtoC ビジネスの手本とも言えるのではないでしょうか。今後の活動も非常に楽しみです。

また、知的財産の観点についても貴重な課題意識をご提供いただきました。知財権の取得を目的化することなく、ビジネスを進める上で何が重要なのかを柔軟に考える必要がありますね。

「ビジネスの ツールの一つ 知財権」を心に刻んでいきたいものです。

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