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【しくじり先生】対談!エセ商標権事件簿には知財実務の学びがたくさんあった!【ぽっちゃり熟女】

商標に関する書籍としては、異例の切り口で大きな話題となっている『エセ商標権事件簿』(パブリブ)。自分でそんな風に言ってもとても信用がないですね。こんにちは、『エセ商標権事件簿』の著者・友利昴です。

エセ商標権事件簿: 商標ヤクザ・過剰ブランド保護・言葉の独占・商標ゴロ (過剰権利主張ケーススタディーズ)

この本は、想定読者層を広く一般と設定していますが、騒動・裁判になった商標にまつわるトンデモな事件の顛末を詳細に分析した内容は、もちろん商標実務に関わるビジネスパーソンが読んで面白くないはずがないのである。だから自分で言うな。

一向に説得力が出ないため、お互い企業で知財業務に携わって早十数年となる、盟友・ちざたまご氏に本書を読んでもらい、琴線に触れた事件や、本書から得られた気づきについて対談を行った。そこには、著者も気づかなかった教訓や発見がたくさんあったのだ。

※本記事の文責:友利昴

 ゲスト紹介

友利昴(ともりすばる):作家。慶應義塾大学環境情報学部卒業。企業で法務知財業務に長く携わる傍ら、著述・講演活動を行う。
著書に『エセ商標権事件簿』『エセ著作権事件簿』(パブリブ)、『職場の著作権対応100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)、『知財部という仕事』『へんな商標?』(発明推進協会)、『オリンピックVS便乗商法―まやかしの知的財産に忖度する社会への警鐘』(作品社)など多数。
また、多くの知財人材への取材・インタビュー記事を担当しており、企業の知財活動に明るい。一級知的財産管理技能士として、2020年に知的財産管理技能士会表彰奨励賞を受賞。

公式ブログ:ブログブログ by 友利昴


友利昴 × ちざたまご(弁理士・知財ライター) 

1.エセ商標権に、知恵と勇気で立ち向かおう 

友利:まずは、分厚い本(495頁)を読んでくださってどうもありがとうございます。

 

ちざたまご(以下ちざ):いやいや、すごかったですよ。もう読んでも読んでも終わらないから、エセ商標権事件がこれだけあるんかい!と思って・・・項目になっているだけでも56事件も掲載されていますよね。

 

友利:順番に読みました?

 

ちざ:最初は面白そうな事件をつまんで読んだんですけど、対談しようって話が決まってからは頭から読みましたね。

 

友利:この本はどこから読んでも楽しめるようになっているんですけど、一応、全体的な流れは考えているつもりなんですよ。

 

ちざ:通読して、それは感じました。最初は『モンスターエナジー事件』のようなメジャーなブランドや、有名人関係の事件。中盤にはエセ商標権に屈してしまった残念な事件が出てくるけど、最後には「知恵と勇気で立ち向かおう」っていうことで、明るい結末の『函館新聞事件』で締めくくられているのがいいですね。

 

友利:エセ商標権にきちんと立ち向かって、成果を出した、防御に成功した人たちの事例で締めたかったんですよね。

  

ちざ:最後が『ボクササイズ事件』とかだったら目も当てられないですもんね。「ボクササイズ」の商標権者から警告を受けた自治体の過剰反応が残念な事件でした。

  

友利:暗いですよね。世の中終わりか、みたいな。ただ、反撃に成功した人たちの話は、やっぱりどういうロジックで勝てたのかの解説をしなきゃいけないので、多少は難しい話になりました。それで最初の方は、ちょっと笑える「こんなことで権利主張して、ボロ負けして、しょうもない」みたいな話が中心です。

 

ちざ:これはどうしようもねぇやつだな、みたいな。その筆頭が『モンスターエナジー事件』なわけですよね?

 

友利:そうそう。「モンスター」っぽいものが商標出願されたらなんでも異議申立。しかも全敗!

  

ちざ:よく「ポケットモンスター」のロゴにまで嚙みつくなと思いますね。モンスター全部殺すマンみたいな。でも、モンスターエナジー社も証拠は一生懸命出すんですよね。

  

友利:いや、あんなの一生懸命じゃないですよ。毎回ほぼ同じものを出してるだけ。日本では、(特許庁が取消通知を出さない限りは)異議申立に対して応答しなくていいですから、「またやってるよ」と笑い飛ばせばいいんですが……

  

ちざ:ちょっと僕らも「モンスターなんとか」みたいな商標出願してみますか?「エセ商標モンスター」を出願したらモンスターエナジーから異議申立が来るのかな。

  

友利:申立されたら「お前のことだよ!」って。「モンスター」が付く商標を100件くらい出願して、全部に異議申立させて疲弊させるのもいいかもしれない(笑)

  

ちざ:「モンヌター」とかも出願して、どこまで申し立てされるのか?みたいな……それはあれだ。我々がベストライセンス状態だ。しかも登録料まで払わないといけないですよね、よく考えたら。

  

友利:そうですね~。設定登録しないと異議申立は来ないですから。

 

ちざ:すいません、破産しちゃうのでこのプランはここまでにします(笑)

2.ちざたまごセレクション①「銃夢ハンドル事件」

ちざ:いくつか、本書を読んで印象に残ったエセ商標事件を選んでみます。まず『銃夢ハンドル事件』。漫画「銃夢」の作者である木城ゆきと氏が、似た名前のハンドルネームを使うネットユーザーに改名を迫った事件ですが……。ものすごい強気ですよね。
相手から「このやり取りをネットで公開してもいいですか?」と言われたら「私も同時に公開するならいいですよ」と。本人は自分が正しいという確信を持っていたわけですよね。

  

友利:自信満々ですよ。そこが人間の面白いところで、「自分が先に考えた言葉だから」というだけで、あらゆる場面で独占できるはずだと過信してしまう。で、公開討論みたいなことを了承した結果……

  

ちざ:木城氏はものすごいネットで叩かれるという。結局は全面謝罪。「明らかな行き過ぎであり、ここに過ちを認めて……」みたいな。でも、認めて撤回するというのは、この方は立派ですよね。

  

友利:えらいですよ。言葉をどこまで独占できるかという問題について驕りがありました、と彼は真摯に謝った。エセ商標権者、エセ著作権者が、自分の言葉で非を認めるパターンは本当に少ないんです。なんなら裁判で負けてるのに全然納得しない人も多いですから。

  

ちざ:『銃夢ハンドル事件』は2000年とインターネット黎明期の事件でしたが、20年経った今でも『ゆっくり茶番劇事件』とか、ネットのお騒がせ商標事件は出てきてますね。

☆ちざたまご補足:この対談後、「銃夢」シリーズ最新作の「銃夢火星戦記」を読んでみたんですが、めちゃくちゃ面白い。SFアクション好きの方にはおススメです!

3.ちざたまごセレクション②「夏目漱石事件」

友利:そう、昔からエセ商標事件は繰り返されているんです。この本に書いた事件も、一番古いのは昭和20年代の『夏目漱石事件』です。

  

ちざ:夏目漱石のダメなジュニアが漱石の小説の題号などの商標権を取りまくった。『吾輩は猫である』から『こころ』、『夏目漱石全集』まで何から何まで……その数、全部で66件も。

当時の出願公告の一例(夏目漱石全集)

さらに朝日新聞のインタビューへのジュニアの回答が振るってますね。「親父の著作権も今年一月から無くなるので、私が商標権を取っときゃいくらか生活の足しになるだろう」と。

  

友利:著作権が切れるからこれからは商標権の使用料で稼ぐんですと。そのことについて何も悪びれていない。堂々と「生活費の問題です」と答えてますからね。これも『過信』ですよ。

  

ちざ:で、岩波書店がブチ切れるという。まあ、これを他の全ての作家の遺族がやったら、著作権制度は崩壊しますよ。でも、著作権が切れるから商標権で延命っていう発想は、割とみんな考えますよね。

  

友利:最近ミッキーマウスに(最初期の絵柄の著作権が米国で切れたことで)フォーカスが当たっていますが、これから10年、20年経つと、有名コンテンツの著作権がどんどん切れていきますから。そこで商標権を主張することがどこまで妥当なのかという問題を考えるときに、夏目漱石事件はもう一度振り返られるべき出来事だと思います。

  

ちざ:出所表示として使われて、混同が生じるということになれば商標権侵害なのでしょうが、著作権の延命装置としてだけ商標権を使おうと考えるなら、法の趣旨が違いますから難しいですよね。

  

友利:今、「書籍」などの商品について、商標が著作物の内容を明らかに認識させる場合は、「品質表示」と判断するという商標審査基準になっていますが、それができたのは実はこの事件がきっかけです。

  

ちざ:これ、「何で書籍だけ特に審査基準に書いてあるんだろう」って疑問に思ってたんですけど、夏目ジュニアが原因だったのかっていう発見がありました。

  

友利:ね。ちょっといびつですよね。ゲームソフトでもコンサートでも表現物については同じことが言えると思うんですけどね。夏目漱石問題という具体的な事件を受けてのパッチ対応だったので、そうなったと。

  

ちざ:ただ夏目漱石の作品でも『明暗』とか著作物の名称以外の意味があったり、抽象的な題名の場合は、直ちに内容表示といえるか微妙じゃないですか。そうすると、登録はできちゃう場合もあるんじゃないかなと思います。

  

友利:限界はありますよね。この審査基準が作られたときの審議も確認したんですが、こういうものは、権利行使の場面で、題号であれば商標的使用ではないとか、権利濫用で非侵害とするという歯止めをかければいいのであって、審査基準を設けても審査しきれないから、かえって不公平になるんじゃないかという議論もありました。

  

ちざ:でも、明らかに内容表示だろうというものまで登録させたことで、いちいちトラブルが起きるとその時点で社会が混乱するから、ある程度は審査の時点でインターセプトすることにしてよかったんでしょうね。

4.ちざたまごセレクション③「朝バナナダイエット事件」

ちざ:登録になったけど権利行使が認められなかったのが『朝バナナダイエット事件』。
「これは悪い夢なのか?はまちと熟女がバナナと巡って法廷闘争」。項目のサブタイトルが最高ですね!ちょっとね、下ネタ入ったかと思ったんですけど全然違いましたね。

  

友利:これは文字通り、「はまち。」が書いた『朝バナナダイエット』の出版社(ぶんか社)が、「ぽっちゃり熟女ゆっきーな」が書いた『朝バナナダイエット成功のコツ40』の出版社(データハウス)を、商標権侵害で訴えたという事件です。

  

ちざ:ぽっちゃり熟女ゆっきーなに対するぶんか社の主張がまたいいですよね。
「被告書籍の著者は、実在するのかさえ確認することができないような名称を用い、隠蔽工作に及んでいる」。

  

友利:めちゃくちゃキレてる。でもお前も「はまち。」だろ!お前もそうだろ!っていうね。これ、本もいいんですよ。『朝バナナダイエット』は100万部売れましたから。

  

ちざ:この事件、気になってAmazonで2冊とも買ってみたんですよ。まず『朝バナナダイエット』はメリット・デメリットやお手本的生活サイクルの図など、情報が整理されていて、バナナを朝食えってだけの話をベストセラーに持っていくだけのことはあります。

『朝バナナダイエット』44-45Pより

友利:そんな「はまち。」さんが書きつくした後のフォロワー本ですから、もう書くことがないですよ。よく真似して書こうと思ったよな。

  

ちざ:「成功のコツ40」って、朝バナナダイエットにそんなにコツないですよね?

  

友利:40もない。実際、後半の15くらいはバナナの豆知識が書いてあるだけ(笑)。途中までは、それなりにダイエットの話を書いてるんですけど、唐突に「バナナについて調べてみると面白いことが分かりました」みたいな話になって……

  

ちざ:剛腕ですね。これじゃページが足りないって怒られたんでしょうかね。

  

友利:しかも『ウィキペディアで調べてみました』っていう書き出しで、ほぼ丸写しで書くんですよ。そのことについて何も悪びれてないんですよ。

  

ちざ:ブログでももう少し考えますよね。こちらも買って読んだんですが、ツボに入ったのが「34.バナナは歌になりやすい」って章。

『朝バナナダイエット成功のコツ40』128-129Pより

友利:りんごの歌もいっぱいあるだろう!っていうね。

  

ちざ:完全に主観!ちなみにラスト3Pは罫線だけのページが「あなたのダイエットMEMO」として挿入されていました。すごい本ですよ。

  

友利:思いっきり二番煎じの上、内容も内容なので、気に食わないというぶんか社の気持ちは分かりますけど。だけど商標権侵害じゃないだろうっていう。

5.エセ商標権には「判定」で逆襲すべき!

ちざ:この『さかなクンの帽子事件』に出てくる帽子は、自身で買ったんですか?

左:さかなクンの帽子(立体商標登録5169970号)、右:ふぐキャップ

友利:警告された「ふぐキャップ」の方をね。買いましたよ。なるべく実物にあたるというのが、このシリーズのコンセプトなので。でも年末の大掃除で捨てちゃって……

  

ちざ:もったいない!しかし写真を見ると全然似てませんね。これで警告書を送ったんですか。

  

友利:さかなクンの帽子のほうが立体商標だったんで、一応、全体像を検証しようと思って買ったんですが、やっぱり全然似ていませんでした。これは警告を受けた側が判定請求して、「商標権の効力に属さない」という判定を引き出した事件です。

  

ちざ:特許庁による公的な制度ですから判定を使うのってなかなかいいですよね。警告されたら「おっしゃることは分かりましたが、納得いかないんで判定させてください」と。「そのうえでまた話し合いましょう」って言ってもいいと思うんですよ。

  

友利:本当に。判定請求って年間10件もないんです。もっとみんな使えばいいのに。

『特許行政年次報告書2023年版』p. 76

ちざ:約3ヶ月の審理で結果が出て、公費は1件4万円。私もまだ使ったことないのですが、想像していたより全然早いし安い。半年以上かかるかと思っていました。

  

友利:裁判所の判決のような法的拘束力はないといっても、白黒はつきますから。

  

ちざ:エセ商標権に基づいて警告書が来て、埒が明かなくなったら、すぐ判定に持っていった方がよさそうですね。

  

友利:『エセ商標権事件簿』の中で判定制度を活かして逆襲している例は、この『さかなクンの帽子事件』と、『市松模様の数珠袋事件』。京都の数珠屋さんがルイ・ヴィトンに判定請求して勝ったという事件です。

   

ちざ:ヴィトンが、市松模様を自分たちのものだと言って数珠屋さんの数珠袋を殴りに行った……これもちょっとタチ悪いですね。市松模様って日本の伝統デザインですから。
「こんなの言いがかりじゃないか」と困った時こそ使おう、判定制度。僕ら、判定の広報やりましょうか?

  

友利:明らかにエセ商標権だったら権利者側に黒星がつくので、判定請求はお勧めです。「エセ商標権には、判定制度」

  

ちざ:特許庁さん、我々はご依頼頂いたら全力でPRいたします(笑)。とりあえず判定制度へのリンク、置いておきます!

 判定制度 | 経済産業省 特許庁

6.ちょっと待て、その出願は本当にお前の商標か?

ちざ:『エセ商標権事件簿』は、『エセ著作権事件簿』に続く《過剰権利主張スタディーズ》の二冊目ですが、実は最初、エセ著作権に比べて、商標権は、登録されている以上は「エセ」ではない、確立した権利では?と思ったんです。

  

友利:登録権利なんだからエセも何もないと。

  

ちざ:でも、本文を読んでみると、そもそも登録されていることがおかしい商標もあるし、登録商標についても、当事者が権利範囲を誤解したり、誇張したり、曲解したり、権利が及ばないところにまで殴りかかってくる迷惑なヤツがいるんで、十分「エセ商標権」なんだなと感じました。

  

友利:そこが面白いところですね。エセ商標権者は、商標権を実体以上にデカく見せようとします。本当は虚像なのに、です。商標権の効力の範囲は本来狭いですから、「言葉の独占」に固執することは、それ自体、過剰な独占欲です。その欲望をブーストさせる原因は、むしろ登録権利であることだったりもしますよね。

  

ちざ:確かに、登録証をもらうと「この権利主張には国のお墨付きが出ています」、みたいな雰囲気になりますからね……登録権利である分、もしかすると著作権以上に知財関係者の責任が重いのかもしれない。
「これってそもそも登録すべきじゃないよな」という商標でも、それを登録に導くために弁理士や企業の知財担当者が手伝うわけですよね。「本当に登録しても大丈夫?」という助言も必要なのかも。

  

友利:登録されたことで独占欲が増長する側面もありますからね。

  

ちざ:職業倫理の問題でもありますね。そうすると、我々知財関係者もあんまり「商標は早い者勝ち」って言い過ぎるのもどうなのかなぁと。

  

友利:同感です。早い者勝ちなのは一面として事実なんだけど、それがなんでもかんでも、「取られないうちに取った方がいいんだ。誰かに先に取られるとどんな場面でも使えなくなっちゃうんだ」という間違ったメッセージになっていることがあると思います。

  

ちざ:「ちょっと待て。その出願、本当にお前の商標か?」。そんな標語が必要な時代ですね。

  

友利:「早めに出願」の前提として、「他人や公に帰属すべき言葉を独り占めしようとせず、自己が商標として使用する気があるものだけを出願しましょう」ということをセットで伝えないといけないんですよね。

7.エセ商標権者にならないための「無理筋コンセンサス」

ちざ:ただ、権利行使の場面では、普通名称化や希釈化対策の文脈で、多少無理筋でも主張していかないとブランドが守れないこともあるし、過剰な権利主張と適法な権利主張の間に、完全に線を引けるわけでもありませんよね。
権利者がエセ商標権者にならないようにするための注意点はありますか?

  

友利:普通名称化対策などは大事ですが、問題はアプローチの仕方なんです。商標としての使用ではない場面で商標を普通名称であるかのように使っても、商標権侵害ではない。それを、「あたかも相手が過ちを犯しているかのようにエラそうに主張するな、お前が頭下げて頼みに来いよ」って話なんですよ。

  

ちざ:ああ、言い方がキツいとイラっと来て、こっちも「いや商標的使用じゃねぇし」って反論したくなりますが、丁寧に来るなら「御社の商標を尊重いたしまして、今後は差し控えます」という大人の対応もしやすいですね。

  

友利:気持ちよく対応できますよ。あとは、権利行使するにしても、「これは無理筋なんだ」っていうコンセンサスを最初から社内で取っておくことです。

  

ちざ:警告とか権利行使する前に、無理筋コンセンサスを。

  

友利:そう、無理筋コンセンサス。それができていれば、撤退戦略、要は反論を受けたらすぐ撤退しますという意思決定がしやすいんです。

  

ちざ:最初からあんまり強気に言わないとか、トーン調整もしやすそうですね。

   

友利:そうそう。一番カッコ悪いのは、やっぱり振り上げた拳を下ろせなくなっちゃうことなんです。最初から無理なのに、それをなおもムリヤリ通そうとした者が、エセ商標権者と呼ばれるようになる。

  

ちざ:ずーっと負け戦の係争をやってる人とかいますよね。

  

友利:どこかで引くという判断もできたはずなのに、ズルズルと……。『矢沢永吉パチンコ事件』がそれですよ。

  

ちざ:ロッカーはカッコつけるのが仕事みたいなところがあるからなあ。

  

友利:引くのがカッコ悪いと思ったのかもしれないけど、敗訴記録が残って語り継がれる方がカッコ悪い。「控訴したら別の判断があるかもしれないけど、かったるいから止めます」というコメントを残しましたが……。そこまでいけばある意味美学だけど、一般企業には言えないですよね。

  

ちざ:自分のやろうとしていることが無理筋かどうかは、『エセ商標権事件簿』を読んで確認しましょう。こういう人になるな!と。しくじり先生ですね。

  

友利:しくじり先生ですよ。『エセ商標権事件簿』に載っている人たちは。他山の石。

  

ちざ:知的財産は目に見えないものだからこそ、権利者が権利を振りかざそうとするときには、自制心をもってコントロールしないといけないですね。それを見境なくブンブン振り回していると、「判定されちゃうぞ!」という。

  

友利:判定されちゃうし、またこの本にもまとめられちゃいますからね。そこを踏まえて、自らの商標権と正しく向き合いましょう!

インタビュー後は銀座のカレー屋で締めました!

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