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【三つ巴】2023年 覇権スイーツを商標目線で探る!~カンヌ―ロVSフラワーデザートVSカヌレ

2022年の秋から冬にかけて、多くの企業から発表された『2023年トレンド予測』。

すでに馴染みのある品物が紹介されている一方で、まだ知名度が低い品やカテゴリも多数取り上げられています。

今回着目したのは、さまざまなジャンルの中でも特に流行の移り変わりが激しいスイーツ分野。

各社が発表したトレンド予測の中から、以下3種のスイーツをピックアップしました。

  • カンノーロ
  • フラワーデザート
  • カヌレ

※参考:『SHIBUYA109 lab.』『Pinterest, Inc.』『一般社団法人SNSトレンドマーケティング協会』各社トレンド予測

なじみがある名前と目新しい名前が混ざったラインナップ。一体、この3種の中ではどれが、消費者の注目を集める「覇権スイーツ」となるのでしょうか?

本記事では「商標情報」を分析して各スイーツの歴史やメーカーのブランド戦略を探るとともに、実食による調査も併せ、独自に「覇権スイーツ」を決定します!

 

※本記事は2023年2月18日時点の情報に基づいて執筆しています。

※記事中の調査では、商標の調査対象を指定区分が30類かつ現在も更新されている商標権に限定、商品紹介におけるフラワーデザートを「フラワーを名称に含む菓子全般」として定義

ゲスト紹介

てらこ:認定NPO法人スタッフ&ライター。グルメやラジオ、防弾を防ぐ少年団やポケットに入るモンスターが大好き。ソーシャルセクターの一員として親子支援に携わりながら、異文化交流の促進や執筆業にも励んでいます。
https://twitter.com/TeraWEB1

1、可愛すぎる映え系スイーツ|フラワーデザート

 

https://business.pinterest.com/ja/pinterest-predicts/2023/wildflours/ より

花を連想させる見た目の菓子を表す「フラワーデザート」。食べる前から楽しい気分になるような、美しいビジュアルに仕上げられたスイーツです。

「フラワー」を商標名に含んだ30類(お菓子の分野が該当する商品区分)の登録商標は、2023年2月現在において179件(審査中の14件を除く)。

1967年の「FLOWERLAND\フラワ-ランド」が“菓子及びパン”を指定商品とする登録では最古の登録商標で、1980年代には、『メリーチョコレートカンパニー』や『不二家』などの有名企業もフラワーに関する商標を続々と出願していました。

現在でも、不二家は花のトッピングを施した『フラワーデコレーション』ケーキを、

 

https://www.fujiya-peko.co.jp/cake/item/10139.html より

 

メリーチョコレートカンパニーは、バラをデザインしたチョコレート『コフレローズ』をそれぞれ販売。

 

https://lotte-shop.jp/shop/g/g4608v/ より

 

どうやら、華やかな見た目のフラワーのモチーフは、お菓子業界では定番化しているよう。さまざまな企業が、それぞれのブランドネームで商品を展開していました。

そんな定番の「フラワーデザート」は、近年どのような進化を遂げているのでしょうか?

今回筆者が注目したのは、『株式会社 Heartful Support』の「フラワーキッシュ」。「本当に食べ物!?」と疑いたくなるような美しいビジュアル、これは映えが止まらない…!!

 

https://peraichi.com/landing_pages/view/flowerquiche より

 

そもそもキッシュは、パイやタルト生地に卵液(アパレイユ)を入れて焼いた、フランスロレーヌ地方の家庭料理。一般的には”映え”ることが少ないキッシュに花の要素がプラスされ、「インスタ映え」するスイーツに進化しています。

 

キッシュ – Wikipediaより

 

J-PlatPatのデータベースを調べてみると「フラワーキッシュ」の商標登録はすでに3件ありました。

 

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2018-049714/65815718C63B586F5BE66F710F87AFD0C9B6FF591F58CD2B96D6E8FD9F50528D/40/ja より

 

「キッシュ×フラワー」は、一度流行すると他のメーカーも真似したくなりそうな組み合わせ。Heartful Supportは、先んじて商標を登録することで、他社も使用したくなる「フラワーキッシュ」というブランドネームを確保しています。こうした人気が高まりそうな商標を登録しておくのは、賢いブランド戦略といえそうです。

調べるほどに、どんどん食べたくなってくるフラワーキッシュ。直営サイトを利用し、お店から商品を取り寄せました。

 

 

今回注文した「ラナンキュラス(リンゴと紅茶)」は、花びらを一枚一枚リンゴのコンポートで丁寧に表現した商品。切った断面も美しく、まるで芸術作品のような見た目のデザートです。

 

 

薄く切られたりんごはシャキシャキとした食感で、心地よい舌ざわり。程よく甘いクリームによって、りんごのみずみずしい味わいが引き立てられています。

全体に上品さを加えているのは、ほんのり漂う紅茶の香り。一口食べると、ふわっとやさしい風味も感じられました。

後味はさっぱりとしており、もう一つ食べたくなってしまうようなキッシュ。サクッと軽い生地となめらかなクリーム、フレッシュなりんごの相性は抜群です…。

 

 

ちなみに、トレンド予測の掲載元であるPinterestのサイトでは、フラワーデザートを“食べられるアート作品”の1種としてピックアップ。

華やかでSNS映えするビジュアルが、次に流行するスイーツとして選出された理由といえそうです。

 

フラワーデザート | Pinterest Predicts 2023 | Pinterest Business https://business.pinterest.com/ja/pinterest-predicts/2023/wildflours/より
 

2、海を渡って商標登録!|カンノーロ

https://www.cannolo-cannoli.com/items/70882498 より

 

イタリア・シチリア島の伝統菓子「カンノーロ」。

油で揚げた筒状の生地の中にリコッタチーズのクリームをたっぷり詰めたスイーツで、日本ではイタリア料理店やベーカリーを中心に販売されています。

読み方に「カンノーロ」を含む登録商標は、2023年2月時点ではわずか1件のみ。名義人の居住地は米国と記載されており、日本発の商標はまだ存在していませんでした。

 

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-1579507-20210119/881F132BFF6DCC868F09F9ED0D3036AC47041393C0DAAD8C521DEC40DDFD21F2/49/jaより
 

カンノーロの複数形である「カンノーリ」の登録数も2件と少なめ。日本での注目度が徐々に高まってはいるものの、先ほどの「フラワー」とは対照的に、まだ商標面での人気は低いようです。正直、筆者は名前すら知りませんでした・・・。

 

ただ、「商標登録が少ない」というのは、裏を返せば大きなビジネスチャンス。

商標は「第三者が類似する商標を先に出願していると、後からは登録できない」という早い者勝ちの制度。そのため、「フラワー」のように人気のキーワードは、ブランドネームの選択の余地が狭いです。

一方、「カンノーロ」では先行登録が少ないため、ブランドネームもよりどりみどり。「カンノーロ」の言葉そのものはこのスイーツの普通名称のため商標登録は難しいですが、カンノーロをベースとした独自のネーミングを考案すれば商標登録できます。

もちろん、自分の商品自体を一般に知ってもらう労力はかかりますが、まだライバルが少なければ、成功したときに「カンノーロといえばこのブランド」と認知されやすいというメリットも。まだ登録が少なく、商標の面でブルーオーシャンのジャンルには、大きなリターンが眠っていると言えるでしょう。

まだ参入企業が少ないスイーツ、一体どのような味わいなのか。期待に胸を膨らませながら、カンノーロ・カンノーリ専門店「Cannolo&Cannoli」の商品を通販で取り寄せました。

 

 

同社では、購入者がカンノーロを一番美味しい状態で味わえるよう、セルフ形式のキットで配送しているようです。

 

 

通販サイトの写真を参考に、見よう見まねでクリームを詰めてトッピング。

プロには及びませんが、なかなか上手くできた気がします。お取り寄せキットには、届いた品を味わうだけでなく、自分で作る楽しみもありました。

 

▼店舗公式通販サイト

『おうちでカンノーリ 春限定 4種ピッコロ(小) | Cannolo &Cannoli』より https://www.cannolo-cannoli.com/items/62738323
 

セットの中には、シンプルなリコッタチーズクリームを用いた品だけでなく、ピスタチオや季節限定の桜あんを使ったカンノーロも。桜あんを使ったクリームは淡いピンク色で、晴れやかな春の気分を感じられます。

 

 

桜あんのカンノーロは、どこか懐かしいやさしい味わい。わずかに塩気がある桜あんと、まろやかなクリームが織りなすコクと甘みを楽しめます。

クリームを包む生地は厚みがあり、満足感のある食べ応え。空気がたっぷり含まれており、パリッとした歯ごたえの生地に焼き上げられていました。

シチリア島の伝統菓子ながら、和と洋が絶妙にコラボした目新しい限定商品。春が終わる前に、リピートしたい・・・。

3、さらに流行が広がる予感?|カヌレ

KALDIや成城石井など、多数の有名小売店でも販売されているカヌレ。駅ナカや街のスーパーで目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

そんなカヌレを含む3登録商標は、審査中の権利を除いて約27件(2023年3月現在、30類)

カヌレ自体はフランスボルドー地方の伝統菓子ですが、「京かぬれ」や「立町カヌレ」、「東京カヌレ」など、国内の地名を名称に含んだ商標が複数見つかりました。

ブランディングにおいては、まず”ユーザーに覚えてもらう”ことが何より重要。洋菓子に日本の地名を組み合わせ、「ご当地」感を生み出すことで、ユーザーの記憶に残り、さらにお土産に利用してもらう狙いがあるのでしょう。

なお、「地名+洋菓子の一般名称」だけでは、識別力が弱く、商標登録は原則としてできません。しかし、シンボルマークなどの図形要素と組み合わせた商標にすることで、登録が可能になります。

 

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2019-154506/1D26A2F11C9E3338FEAE12A78112EB6CE5193FA91B8FF59D5FBD818C1F9782D3/40/jaより
 

図形的な要素と名称を併用した商標の好例が、「東京カヌレ」のロゴ。。猫やお菓子のデザインと「東京カヌレ」のネーミングを組み合わせることで、商標登録が認められています。

せっかくなので「東京カヌレ」をお取り寄せしてみます。楽天市場で4個セットの商品を購入しました。

※【楽天市場】【東京カヌレ】【 お味が選べる 4個セット】:クロネコパティスリー

https://item.rakuten.co.jp/kuroneko-cake/10000005/
 

 

同社のカヌレには、ストロベリーや塩キャラメルなど、他店では見かける機会の少ないラインナップも。商品説明には、ストロベリーはお子さまに、塩キャラメルは女性に人気との記載があり、豊富な選択肢によって顧客層を広げている様子がうかがえます。

 

 

ストロベリーのカヌレは甘みが強く、商品の説明通り、お子さんや甘党の方に特に喜ばれそうな味わい。

一般的なバニラやチョコレートのカヌレよりも華やかな色合いで、プレゼントや手土産に持っていくのにも適していそうなスイーツです。

カヌレの生地は、外はこんがり、中はしっとり濃厚なもちもち食感。生地にはストロベリーソースが使用されており、さわやかで甘酸っぱい味わいが口いっぱいに広がります。

ミルクの風味とストロベリーのさわやかなテイストのバランスが良く、リッチながらもポップで楽しい雰囲気が漂うカヌレ。王道のカヌレとは異なる見た目と味わいを有した、新たな感覚のフレーバーでした。

【実食を経て】2023年のトレンドスイーツ、覇権大予測!

3種のスイーツの商標分析と実食によって、各スイーツの特徴が見えてきました。

 

 

「フラワーデザート」は、昭和から続く定番のモチーフですが、今回取り上げた「フラワーキッシュ」は「映え」を取り入れた令和バージョンに進化。“食べられるアート作品”という切り口を生かし、今後も様々なフラワーデザートが誕生しそうです。

「カンノーロ」は、期待度大のニューフェイス。日本で知名度が低くても、イタリア シチリア島の伝統菓子という折り紙付きの歴史を有しています。イタリア発のスイーツといえば、ティラミス・パンナコッタといった大物が。現在の商標登録は数点でしたが、数年後には商標もたくさん出願されているかもしれません。

そして、「カヌレ」は1990年代に日本でブームとなってすでに知名度があるものの、近年セカンドブレイクの兆しを見せているスイーツ。その秘密は、「日本各地のご当地化」と「フレーバーの多様化」にありそうです。サイズも小ぶり、ケーキのように型崩れもせず手土産にも最適。これは人気が出そうです。

・・・そして、私が独断した3種の中での「2023年覇権スイーツ」は、シチリア島の伝統菓子であるカンノーロ。クリームと生地、というシンプルな構成のスイーツであり、バリエーションを広げやすいのが大きな強みだと考えました。

クリームはチーズが主な原料でコクがあるため、記事内で紹介した桜あんのように、日本古来のさっぱりとした和菓子類との相性も良さそう。トッピングを加えることで、オリジナル感や写真映えも狙えるため、個性を出したいユーザーからの需要も高いと思われます。

また、日本での知名度がまだ低いため、SNSでの投稿や新規店舗の出店で話題を呼びやすいのもメリット。筆者のように、「聞いたことがないスイーツを食べてみたい」という消費者は、特に心を惹かれるスイーツなのではないでしょうか。

今回、商標情報を調べたところ、それぞれのスイーツの日本での歴史や知名度、各社のブランド戦略を知ることができ、さらにスイーツへの愛が高まりました。3種のスイーツ、まだ見ぬブランドの商品にこれから出会うのが楽しみです・・・!!

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