バービー人形の歴史をこち亀と特許から探る~1960年代の技術進化を追う~

バービー人形、懐かしいですよね。筆者は体験したことがないのですが、名前や存在は当然知っています。しかし、バービー人形を製造する会社名や歴史については全くの無知。どこの国で生まれた人形なのかも分かりません。

きぐるみバービー

現代版バービー(きぐるみバービー)

そこで本記事では、こち亀と特許情報を参考にして、バービー人形の歴史について紐解いてみました。こち亀には度々マニアックな話が盛り込まれ、例えば両津扮するバービー人形研究家「馬美人魚熊三郎(ばびにんぎょくまさぶろう)」による解説が非常に勉強になります。

一緒に奥深いバービー人形の世界を味わっていきましょう!

バービー人形誕生から30年の歴史を振り返る書籍「Barbie the First 30 Years 1959 Through 1989: An Identification and Value Guide」(以下、バービー本)も参考にしていきます。

Barbie the First 30 Years 1959 Through 1989: An Identification and Value Guide(バービー本)

Barbie the First 30 Years 1959 Through 1989: An Identification and Value Guide(Amazon リンク

1. バービー人形の歴史:初期型バービーは日本製(1959年)

  • こち亀概要(コミック第49巻「なんてたって愛ドールの巻」初版:1987年)
     麗子の妹が持っていたバービー人形を見て、両津がうんちくを披露する。開始3ページ目から、両津扮する「馬美人魚熊三郎」なるバービー人形研究家による4ページにも渡る力説。その後ドール評論家の矢野万太郎が現われ、人形収集の奥深い世界の紹介が始まるのであった。
こち亀 バービー

こち亀コミック第49巻 P9 より引用

バービー本の表紙を飾るバービー人形そっくり!さすがこち亀、抜かりが無いです。

バービー人形の誕生は1959年。米国の Mattel 社より発売されました。初期のバービー人形は繊維産業が盛んな日本にて製造されていたとのこと。(参考:バービー|Wikipedia

Barbie 登録商標

商標登録第589632号(出願日:1960.9.5)

そして 馬美人魚熊三郎 氏の解説によると、創業者の娘 Barbara の愛称「Barbie」がそのまま人形の名前になったそうです。バービー本にも、たしかに娘さんとのエピソードが記載されています。

While traveling in Europe, Ruth Handler, co-owner and founder of Mattel, saw a Lilli doll in a toy shop in Lucerne, Switzerland. This was the doll she was looking for. Mrs. Handler wanted to produce a doll with adult proportions since she noticed that her own daughter Barbie(after whom the doll was later named)loved playing with paper dolls with adult features, not with baby dolls.

Barbie the First 30 Years 1959 Through 1989: An Identification and Value Guide P22 より引用

Mattel 社創業者が、スイス旅行中に見かけた「リリー人形」に触発されたことがきっかけだったのですね。当時、男の子は消防士や医者など何にでもなって遊べるのに対し、女の子が遊ぶ人形は種類が少なかったそうです。

そこで、女の子にも「何にでもなれる(You can be anything)」という選択肢を与えるべく、バービー人形が開発されました。(参考:【公式サイト】Barbie 世界で人気のファッションドール

You can be anything…!

バービーを象徴する力強いフレーズ。主に人形分野において、Mattel社による多数の関連商標が登録されています。

You Can Be Anything 登録商標

You can be anything」というブランドメッセージに基づき、1960年代から多様性を表現してきたバービー人形。世界中の女の子に様々な選択肢を与え続け、1980年代のこち亀にも登場する程の発展を遂げていったのです。

You Can Be Anything

バービーロールモデル インタビュー|mattel より引用

ところで1959年発売の初期型バービーには 1 ~ 4 型まであり、表情が微妙に異なるようです。こち亀においても 1 ~ 4 型が描かれていますが、違いがよくわからない・・・。

そこで、型の違いについて特許図面からも探ってみましょう。

US3009284:Doll construction

出願日:1959.7.24 発明者:John W Ryan Google Patents リンク

バービー米国特許図面

US3009284 より

おおお!こちらもバービー本の表紙にあるバービーとそっくりですね。こち亀のバービーと比べ、より忠実に描かれています。眉が凛々しい。特徴をよく捉えた図面ですが、1 ~ 4 型のうち、どのバービーなのか!?

こち亀 バービー

こち亀コミック第49巻 P9 より引用

・・・やはり、ちょっとよくわからないですね。特許情報から「型」の情報を探るのは無茶でした。なぜなら特許文献とは、ある課題を解決する技術的内容が記載された文書。表情や仕上げ方法に起因する「型」の情報までは記載する必要なんて無いのです。

なお本発明は、base12 上に doll11 が設けられ、手足は弾力性のある材料で形成されるといった内容。foot31 に pin34 が貫通することによって人形が自立するようです。

全世界が熱狂するバービー人形はここから誕生し、1960年代には様々な機能が追加されました。再びこち亀や特許情報を眺めていきましょう。

2. バービー人形の歴史:ツイストバービー(1967年)

こち亀 バービー

こち亀コミック第49巻 P9 より引用

ツイストバービー!!

初期型バービー人形の誕生から8年。1967年には腰をひねることに成功したようです。こち亀の㊙図解によれば、腰部分に「ななめにカットが入っている」とのこと。カットによって自然な動きへ繋がるのでしょう。

再び特許情報も拝見しましょう。発明の名称に「natural movements」とある米国特許を見つけました。

US3234689:Doll construction for natural movements and positions

出願日:1962.6.8 発明者:John W Ryan Google Patents リンク

バービー米国特許図面

US3234689 より

pelvic portion 3(骨盤部分)につき、たしかにこち亀どおり斜めのカットが入っています!バービー本と照らし合わせてみると、特許図面はポニーテール姿であるものの、髪の長さは同じくらい。特許出願年が1962年でありツイストバービー発売の5年も前ですが、関連する特許権といえそうです。

Barbie the First 30 Years 1959 Through 1989: An Identification and Value Guide(バービー本)

Barbie the First 30 Years 1959 Through 1989: An Identification and Value Guide P47より引用
一番右端の箱に「NEW Barbie」と書かれた人形がツイストバービー

そして、上記こち亀コミック第49巻P9右下には「かつらのセットもあった」とありますが、実はカツラセットについても特許化されています。さすがは Mattel 社!

US3225489:Doll head and replaceable hairdo construction

出願日:1962.8.17 発明者:John W Ryan Google Patents リンク

バービー米国特許図面

US3225489 より

より柔軟に着脱が可能となるカツラに関する発明。人形の髪型は見た目に大きく影響しますし、バービー人形を提供するにあたって重要な要素技術ですね。

さて、最後のバービーは可動域が増えて、もっと ”イキイキ” し始めます。別のこち亀話を参考にしながら見ていきましょう!

3. バービー人形の歴史:イキイキバービー(1968年)

  • こち亀概要(コミック第33巻「温故知新⁉の巻」初版:1984年)
     本田のバイクに乗ってパトロール中の両津は、小休止として入った駄菓子屋にて貴重なGIジョーを見つける。そして、その後に立ち寄ったおもちゃ屋にてGIジョー愛好家と出会い、愛好家を連れて再び駄菓子屋へ。GIジョーに限らずバービー人形やサンダーバードのプラモデルなど、大量のお宝に遭遇するのであった。
バービー こち亀

こち亀コミック第33巻 P136 より引用

「イキイキバービーだ!」・・と、放射状の集中線まで付与され、驚きが伝わってくるコマです。イキイキバービーは、肘や膝など全身14ヶ所も可動するバービー人形。

可動する関節が増えると、どの様な姿勢が可能となるでしょうか?その様子は特許図面にもわかりやすく示されています。

US3277601:Doll having an angularly adjustable limb

出願日:1964.1.23 発明者:John W Ryan Google Patents リンク

バービー米国特許図面

US3277601 より

膝が曲がって、イキイキしている!!!そしてなんと、脚 を 組 ん で い る …!?

イキイキバービーによって遊びの幅が広がりそうですね。

1959年の出願から数えて、本発明に至るまで約4年半。技術進歩が素晴らしいです。イキイキバービーの発売は1968年ですが、1964年時点で既にイキイキさせる構想があったということ。生産するにあたって様々な課題があり、発明から発売まで4年程要したということなのかもしれません。

そして現代版バービーにて”イキイキ”具合を確認してみたところ・・・・

きぐるみバービー

肩や肘が滑らかに動きました!様々なポーズを取ることが可能で、これは確かにイキイキしています!!

そして、脚を組むことにも挑戦してみました。

きぐるみバービー

できました!!!

特許図面ほど太腿を重ねることはできなかったものの、しっかりと脚を組めています。素晴らしいですね。

以上、こち亀や3件の米国特許文献を参考にしながら、バービー人形の歴史の一端を紐解いてみました。他にも「トーキングバービー(1968年)」や恋人 Ken の存在などネタは様々あるのですが、キリがないので本記事はここまでとします。少しでも懐かしさやバービー人形の新鮮さを感じていただけたら嬉しいです。

まとめ:1960年代に様々なバービー人形が誕生した

まとめは以下のとおりです。

  1. バービー人形は「You can be anything」をコンセプトとして1959年に誕生した。
  2. 可動域を増やしながら「ツイストバービー(1967年)」「イキイキバービー(1968年)」が誕生していった。
  3. 特許図面にはバービー人形が割と忠実に描かれている。

バービー人形は70年代以降も数々の発展を遂げ、今もなお我々の心を掴む逸品となっています。多様性がより求められる風潮となった現代においては「You can be anything」が一層刺さり、我々を魅了し続けているのでしょう。

懐かしくなった皆様。実家の押し入れ等からバービー人形を発掘し、久々に「何か」になって遊んでみてはいかがでしょうか。You can be anything!!

なお、2010年代には「I Can Be」シリーズも誕生しました。より主体的に「何か」になれそうなブランド名ですね。

I can be 登録商標

Mattel社 による国内登録商標

おまけ:きぐるみバービー(2022年)

時代はめぐり、現代においてはこんな愛くるしいバービーも登場しています。

US11426667:Toy figurine with plush covering

出願日:2021.10.21 発明者:Kelley Lindberg, Isaac Luk, Kenna O’Brien Google Patents リンク

バービー米国特許図面

US11426667 より

ウサギ、猫、犬、パンダ・・・動物の中にはバービーが隠れており、リバーシブルな洋服によって様々な楽しみ方ができるというもの。「You can be anything」とは、動物までもが対象範囲に含まれていたのですね!

きぐるみバービー

きぐるみバービー(ユニコーン)

*注* 筆者はこの度初めてバービー人形を体験しました。本記事における紹介の仕方などで至らぬ点がありましたら申し訳ございません。そしてバービー愛好家の方がいらっしゃいましたら、1970年代以降の発展について、是非続編記事をご執筆いただければ幸いです。

<関連記事>

Toreru 公式Twitterアカウントをフォローすると、新着記事情報などが受け取れます!

押さえておきたい商標登録の基本はコチラ!