ピザとはシンプルに見えて、実は複雑な食べ物ー。書籍『ピザの歴史』では繰り返しそう語られています。
ピザは「円形の平焼きパンにトッピングをのせて焼いた料理」を基本としつつも、イタリアとアメリカではそれぞれ異なる進化を遂げました。
また、ピザが何でもアリのフォーマットであるために、本来はまったく関係ない料理までピザの1カテゴリー、ご当地ピザに取り込まれつつあるとか。例えば、お好み焼き、海外では「日本風ピザ」と紹介されているそうです。
うーん、ちょっと違和感はありますが、確かに外国人に説明するならこの説明が一番分かりやすいのかも。すでにピザは世界の共通言語です。
そんな懐が深いピザですが、だからこそ差別化は容易ではありません。日本でピザといえば、『ドミノピザ』、『ピザーラ』、『ピザハット』の宅配3大チェーンを思い出しますが、それぞれが工夫を凝らし、ブランドの差別化をしています。
そこで本記事は、実際に3大チェーンのピザを実食しながら比較し、それぞれの商標登録や、背景にあるブランド差別化戦略を探っていきます。
目次
1、ピザ誕生!イタリア&アメリカで国民食になるまで
ピザにかぶりつく前に、まず簡単に「ピザの歴史」を探っていきましょう。
まずピザのベースとなる平焼きパンは紀元前600〜4000年ごろ、すでに古代メソポタミアで作られていたそうです。ただ、これだけではピザ誕生とは言えないでしょう。
では、ピザの料理としてのオリジナリティとは何か。それはトマトとの組み合わせでしょう。南米大陸では古くから栽培されていたトマトですが、ヨーロッパに渡ったのは16世紀、大航海時代に入ってからでした。
当時、ヨーロッパ人の多くは「真っ赤なトマトには毒がある」と鑑賞するだけでしたが、南イタリアでは珍しく食用として普及しました。何でも、重税に飢えたナポリの雇われ庭師が、命がけでトマトを持ち帰って食べ、美味しかったことで普及したとか。
そしてトマトと平焼きパンはナポリで出会います。時期は諸説あるものの、「ピザ協議会」年表によれば、トマトとニンニク、オリーブオイルだけを用いたピザの元祖、『ピッツァ・マリナーラ』が誕生したのは1734年。現代に繋がるピザの歴史の幕開けです。
最初は「貧しい民衆のための、安くて便利な郷土料理」にすぎないピッツァでしたが、1889年、当時のイタリア王妃がナポリを訪れた際、献上されたピザの1つを気に入ったことで、『ピッツァ・マルゲリータ』が誕生します。
マルゲリータに使われるバジル・モッツァレラチーズ・トマトはイタリア国旗と同じ色。イタリアへの愛国心をも示せるマルゲリータは、マリナーラと並び、“真のナポリ・ピザ” 2種の1つとして、イタリア人が世界に誇るピザとなりました。
その後、ピザはナポリからイタリア全土に広がり、1960年代にはイタリアを代表する国民食となりますが、まったく違った進化がアメリカで起こります。
ただし、そもそもアメリカにピザを持ち込んだのは、やはりイタリア人。アメリカの最初のピッツェリアは1905年にナポリからの移民が開店したニューヨーク市マンハッタン区の『ロンバルディーズ』とされています。
このようなピッツェリアはニューヨークだけでなく、ボストン・シカゴといった北部の都市にも広がっていきました。ただ、アメリカ全土にピザ人気を届けた立役者は、ピッツェリアだけでは足りません。キーワードは、「冷凍」と「宅配」です。
まず、技術の進歩により1950年に最初の冷凍ピザが生まれ、手軽な食品として急速にアメリカの一般家庭に普及していきました。1953年には500万枚を売り上げたメーカーもあったそうです。
宅配ピザが普及したのも冷凍ピザと同時期です。特に1960年にミシガン州で創業した『ドミノピザ(創業時は「ドミニック・ピザ」)』の無料宅配サービスは特に若者に大人気で、1978年には200店舗まで拡大しました。2022年現在、『ドミノピザ』は米国で約5600店舗、ワールドワイドでは約15000店舗もあるとのこと。
米国では車で配達するスタイルが主流だそうです。
もう1つのアメリカを代表するピザ・チェーンといえば『ピザハット』。こちらは1958年にカンザス州で創業しました。宅配よりもファミリー層に店まで来てもらうイートインスタイルを主力とし、店舗は赤い屋根と小屋がトレードマークでした。
ピザハット1号店 – Pizzahut Japan 公式ウェブサイトより
・・・そう、ピザハットの英語名は「Pizza Hut」。「ピザの帽子(Hat)」ではなく、「ピザの小屋(Hut)」なのです。ピザハットのロゴは、実は小屋の屋根をモチーフとしています。
・・うん、私もずっと帽子のイラストだと思ってました。
『ピザハット』もグローバル進出に成功し、ワールドワイドで約18000店舗(2019年時点)と、店舗数では世界最大のピザチェーンとなっています。
『ピザハット』の特徴は、海外進出する際にその国の好みを柔軟に取り入れること。試しにピザハット・インディアのウェブサイトを見てみると、驚くべきメニューがありました。
ピザの上にモモ(ネパール式餃子、インドでもポピュラー)が載っている・・!イタリア人が見たら卒倒しそうなビジュアルですが、一押し商品に上がっているので、きっと現地では人気があるのでしょう。
デリバリー主力の『ドミノピザ』と、イートイン主力の『ピザハット』。イタリア移民によるピッツェリアから始まり、冷凍ピザ・そしてピザチェーンがアメリカ全土に広がることで、ピザはアメリカでも国民食に成長したのです。
イタリア式のピッツァと違い、アメリカンピザは具だくさん、時間経過にも耐えるモチモチした生地、石窯ではなくオーブンで焼くという特徴がありますが、これらも「冷凍」、「宅配」、「アメリカン人好み」といった環境に合わせて進化した結果でしょう。
2、日本に上陸!アメリカピザチェーン
さて、イタリア式・アメリカ式に分かれたピザですが、日本はどちらの派閥なのでしょうか。
まず日本に上陸したのはイタリア式、戦後間もない1944年、すでに神戸のイタリアンレストランでピザが供されていたとか。1954年には六本木に老舗「ニコラス」が開店、若者に人気を博します。
ただ、この時代のピザはまだまだマイナー料理。「西洋風お好み焼き」なんて呼ばれていたそうです。
そんなピザが日本で一般化したのは1980年代のバブル景気のころ、ファーストフードブームが来てからです。60~70年代にアメリカで急成長したピザチェーンは、次の市場を探していました。そこで目が留まったのが、日本市場です。
まず日本に上陸したのは『ドミノピザ』。1985年、恵比寿に一号店が誕生しました。公式HPにも「日本の宅配ピザの歴史はドミノ・ピザから始まりました」と誇らしく書かれています。
商標出願日は1982年、上陸の3年前から準備を開始していたことが伺えます。
もともと宅配に強い『ドミノ・ピザ』、日本でも「ドミノジャイロ」と呼ばれる三輪バイクを開発するなど工夫を重ね、大人気を博します。これを見てもう一つのアメリカ巨大チェーン、『ピザハット』も黙っていません。1991年に日本に進出します。
一方、日本資本の『ピザーラ』も1987年に誕生します。ピザーラは創業者の淺野氏が映画館で『E.T.』のピザ宅配のシーンを観て、「これを日本で商売にしたら面白い!」と閃いたのが始まり。ピザ開発は難航し、一度は『ドミノピザ』にフランチャイズのお願いもしたそうですが、直営店主義を理由に断られ、それならばと日本向けのオリジナルピザを作ろうと決意しました。
「ピザーラ」という店名は、「ピザ」に「ゴジラ」の「ラ」をくっつけたものです。ゴジラのように、日本生まれで皆に愛される店になって欲しいとの願いを込めました。「ピザーラ」のブランドロゴは、開店当時、私が手描きでチラシに描いたものが元になっています。全部が手作りの、ゼロからのスタートでした。
The 21 Online 記事「ピザーラ創業者、人生の転機を語る」より
これで現在の「日本ピザ・ビック3」が揃いました。日本のピザの普及には、アメリカの影響が大きかったことが分かります。
ピザの歴史がわかったところで、いよいよお待ちかね。次の章ではピザを実食しながら、3大チェーンの商標戦略の違いを見ていきましょう。
3、宅配ピザのパイオニア ドミノピザの「宅配エンジョイ戦略」
『ドミノピザ』は宅配ピザチェーンのパイオニアでありながら、長らく店舗数では日本国内3位で、伸び悩んでおりました。しかし2014年から打ち出したLサイズピザ半額、店舗に行けばもう1枚無料キャンペーンが大成功。年間50店以上のペースで急拡大し、2019年7月には
「店舗数、売上ともに日本一になった」と公式発表しました。
記事では「出店数を増やすだけが目的ではなく、お客様への対応・品質・安全に妥協はない。」と社長が語っています。
注文したピザの配達状況がリアルタイムでわかる「GPS DRIVER TRACKER」や、週末に届く「ミステリークーポン」など、待ち時間を楽しませる工夫にも力を入れており、私もお気に入りのチェーンです。
そんなドミノピザですが、どんな商標登録があるのでしょうか?
商標でまず目につくのはドミノマーク。配達バイクや店頭サインでもおなじみです。ドミノの点が3つなのは「創業当時の3つの店舗」を表すそうです。最初はチェーンが増えるたびに点を1つずつ増やすアイディアがあったそうで、実行したら大変なことになっていたでしょう笑。
最近の商標登録に目を移すと、目についたのは「ウルトラチーズ」。ホームページでも熱く推されています。

ウルトラチーズ®|ドミノピザHPより
HPでも登録したロゴをしっかりと使用しています。では「ULTRA CHEESEⓇ」を注文します!
1キロをセレクトしようとするも、家族に「他のも食べるんだからMにしな」と真顔で言われて、今回は自重のMサイズ。
届きました。
チーズすごいな!
このままでは飽きそうな感じですが、『ドミノピザ』に抜かりはありません。味変トッピングがオプションで販売されています。上からメープルシロップ、バーベキューソース、パルメザンチーズ、韓国海苔フレークです。
まずは禁断のパルメザンチーズ増しから…
なんか見た目がすでに強い。食べてみると、パルメザンのクセがある味わいと、モッツァレラのクリーミーな味わいが結構違うことがわかります。
次は韓国海苔フレーク。合うのか…?と恐る恐るでしたが、あまじょっぱくて意外なヒット。チーズピザの懐は深い。
BBQソースをかけるといい感じにコクが出ておすすめです。
そのほか興味深い商標登録として、「GPS DRIVER TRACKER」がありました。配達員の位置をリアルタイムの地図で追えるので、「いつ届くかわからない」イライラ感が解消される画期的なシステムです。
創業当時から「宅配」にこだわる『ドミノピザ』ならではの工夫、そして商標といえるでしょう。
4、日本発祥!ピザーラの「ファミリー寄り添い戦略」
続いて商標をチェックするのは『ピザーラ』。
出願人は株式会社フォーシーズ。フォーシーズグループは『ピザーラ』だけでなく、ハワイアングルメバーガーの『KUA`AINA』、宅配寿司チェーンの『柿家すし』、宅配パエリアチェーンの『ビバパエリア』など、多くの飲食ブランドを運営しています。
恵比寿の最高級フレンチ、『ジョエル・ロブション』も日本ではフォーシーズが運営しています。ミシュラン3つ星はすごい。
ジョエル・ロブション フォーシーズブランドページより
『ピザーラ』関連の商標に目を移すと、イメージキャラクター「ピザーラくん」の登録がありました。

指定商品が「ピザ」や「ピザを主とする飲食物の提供」ではなく、「ピザカッター」や「文房具類」、「おもちゃ」など、グッズ展開を意識した商品になっているのが興味深いです。
また、メニュー系では「カニのよくばりクォーター」を商標登録。
冬の期間限定メニューなのですが、2020年、2021年と2年連続で限定メニューに選出されており、人気の高さが伺えます。「継続使用するなら商標を確保」という、セオリーをしっかり守った出願といえるでしょう。
これにしようかなと思いきや、ウェブサイトをチェックしていたら気になる商品が。
アメリカンピザチェーンに対して、『ピザーラ』に感じるのはやはり身近な「ファミリー感」。2018年『僕のヒーローアカデミア』、2020年『すみっコぐらし』など、人気キャラクターとのコラボ企画はピザーラの得意分野です。

『鬼滅の刃』ロゴの登録は複数ありますが、「30類 ピザ」をカバーした商標登録もしっかりとありました。
期間限定ですし、ここは鬼滅の刃コラボピザ、行きましょう!
届きました。パッケージもしっかり「鬼滅の刃」限定仕様になっているのが嬉しい。
ピザ本体は4つの味のクォーター仕様。箱の「ピザーラは、1987年に日本で生まれた宅配ピザです」のメッセージに誇りを感じます。
さて、この商品には限定グッズとして「アクリルスタンド」がついています。ただどのキャラがでるかは5種のランダム。ここは長男である『店長の炭治郎』を狙いたいところ。こいっ!
でたー、炭治郎、一発ツモ!
ピザガチャ楽しいです。第2弾は別のデザインに変わっているそうで、これはまた頼んじゃいそう。
双六もついており、「ファミリーの楽しい時間を演出する」ピザーラの寄り添う工夫を感じました。
5、世界王者 ピザハットの「美味しい社会貢献」
そして『ピザハット』、ワールドワイドでは約18000店舗(2019年時点)と、世界最大のピザチェーンです。
商標登録をみると、やはり帽子・・ではない、小屋の屋根ロゴが目につきます。
実はこのロゴ、リニューアルを重ねています。
1974年以降のロゴに共通するのは赤い屋根、つまりピザハットレストランの外観です。
2022年現在、日本ではレストラン形式のピザハットは展開していないのですが、海外では「元ピザハットの建物だけを集めた写真集」がクラウドファンディングされるほどの認知度。
アイコンとしての愛されっぷりが分かります。
メニューの商標登録に目を移すと、ピザハット公式HPでも推されている「PAN PIZZA」の登録がありました。
「ふっくら鉄鍋パンピザ」は、ピザハットを代表する生地です。「パンピザ」の「パン」は、食べ物の「パン(bread)」ではなく、調理道具の「鉄鍋(pan)」が由来。生地だねを「鉄鍋(pan)」に入れてオーブンで一気に焼き上げた黄金色の生地は、外側のサクサクとした揚げ焼き食感と中のふわっとした軽い口当たりが特徴です。ハンドトス生地の約1.2倍のボリュームで他では味わえない食べ応え!
トッピングとクラストの組み合わせがピザの楽しみの1つですよね。よし、これを注文します!
届きました。
うん、イメージイラスト通りの厚みが嬉しい。パリパリ系のピザとは正反対ですが、これぞアメリカンピザというボリュームがあります。
食べてみると、確かにカリッとした耳が美味しい。ピザの耳は「飽きる問題」がありますが、食感が違うので別物として楽しめます。オーブンで耳だけ軽く焼いておつまみにしても良さそうです。
そして、『ピザハット』には他にも気になる商標が。

「AN EQUALE SLICE FOR EVERYONE」とは、イギリスで『ピザハット』が後援しているアントレプレナー育成プログラムでした。現在はイギリス国内向けの企画ですが、日本でも商標出願しており、世界展開の可能性もあるのかも。
New Founder Programme ピザハットイギリスHPより
フランチャイズ方式で世界企業に成長した『ピザハット』、加盟店それぞれがオーナーであるわけで、アントレプレナー(起業家)支援との親和性も高いように感じます。
「全ての人に公平なピザスライスを」の言葉の通り、ここから世界を明るくするビジネスが生まれることを期待したいです。
6、終わりに~真のナポリピッツァも食べてみた
ここまで日本3大ピザチェーンの商標&差別化戦略を見てきました。
ただ、ピザの世界で忘れてはいけないのが、やはり「ナポリピッツァ」。ナポリピザ職人たちが自らの技術を再評価し、後世に伝える目的で結成された「真のナポリピッツァ協会」には世界的な認定制度があります。
「真のナポリピッツァ」の認定マークは商標登録されており、ナポリ本部の現地審査をクリアした店舗だけが使用することができます。商標登録されていることで、他店舗が無断で使用することはできません。商標登録の独占権をうまく利用した認定制度です。
公式ページによれば、2022年3月現在、89店舗が日本で認定されています。そこでこの1店舗に実際に行ってみました。
訪れたのは柏市の『ピッツェリア ティンタレッラ』。入口にしっかりと認定マークがありました。こちらは世界で666番目の認定店です。
店内にも認定証の掲示がありました。ピザだけでなく前菜・ドルチェなどたくさんのメニューがありますが、今日はナポリピザ伝統の2品、『マリナーラ』と『マルゲリータ』を注文します。
まず出てきたのは『マリナーラ』。トマト、ニンニク、オレガノだけが載った、ナポリピザの原点です。食べてみると、フレッシュなトマトのジューシーさ、そして小麦の旨味が飛び込んできます。チーズがないことで、これまで脇役だと思っていたトマトが一気に主役へ。
トマトのシズル感が素晴らしかったですが、一方でこれは宅配には向かなそう。このお店は薪窯で焼き上げています。焼きたてならではの美味しさを堪能しました。
続く2枚目は『マルゲリータ』。
バジル・モッツァレラチーズ・トマトの3重奏です。チーズが乗ると一気に見た目が変わります。ピザの進化を体感しているよう。
味はさきほどと打って変わってクリーミー。トマトとチーズのバランスが絶妙です。『マリナーラ』が素朴な味わいなら、『マルゲリータ』は重厚かつ近代的な味。イタリア王妃が気に入ったのも道理でしょう。
この2枚が「ナポリピッツァの王道」と呼ばれるのも納得です!
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・・・お店を後にして、改めて「真のピザ」とは何かを考えてみます。
まず、ナポリ職人伝統の調理法で作ったピザが「真のナポリピッツァ」と呼べる、というのには異論ありません。
ただ、それ以外のピザは「偽物」かというと、それは違う。「真のナポリピッツァ協会」も「ナポリピザ以外はピザと認めない!」と言っているわけではなく、あくまで「本物のナポリピザを継承し、普及させる」のが目的です。
思えば、日本のビッグ3チェーンも、それぞれにピザに工夫を凝らしていました。
- ドミノピザ:ニューヨーカー&メガチーズ推し。アメリカンな味が売り
- ピザーラ:明太シーフードや和風もちベーコン。日本ならではの味が充実
- ピザハット:アメリカ式のパンピザクラフト推し。カニ・エビなどの魚介系も充実
そういえば、書籍『ピザの歴史』に興味深い記述がありました。
世界全体では、マクドナルドのハンバーガーより、ピザのほうが普及している。しかし、新しいマクドナルドの店舗がオープンするときに頻繁に出くわすような抗議行動は、ピザの店に対しては見られない。・・・
独立したハンバーガーレストランやハンバーガーショップの数がどんどん減っているのに比べ、大都市でも郊外でも、個人経営の小さなピザ店は驚くほどの数が残っている。ピザ業界は事業形態という点では、もっとも多様性がある業界に数えられる。
『ピザの歴史』143~145P より
このような「多様性」、言い換えれば「寛容さ」は、ピザの数奇な歴史によるものでしょう。
イタリアの伝統食だったピザはアメリカで規格化されたものの、さらに世界各国に輸出されるにあたり、再び地域色が強いフードに進化しました。
アメリカを通過した際に、ピザの「あるべき姿」は一旦リセットされ、バーリトゥード(なんでもあり)なグローバルフードになったのです。
ただ、「なんでもあり」だから誰でも競争に勝てる訳ではありません。日本でも多くのローカルチェーンが戦いに敗れて、脱落していきました。ユーザーに指名されるためには「味」、「歴史」、「カッコよさ」、「便利さ」、「価格」などなど、独自の武器が必要です。今回のピザ調査では、商標が差別化の武器としてそれぞれのチェーンや店舗でしっかり活用されていることがわかりました。
・・腹ペコのお客さんにとっては、「ピザの本物」が何か?なんて、実はそれほど大事じゃありません。それぞれの国で愛され、ユーザーに独自の価値を届ける。
人々を笑顔にすることこそが、ピザブランドの本当の存在価値なのです。
参考書籍:食の図書館 『ピザの歴史』キャロル・ヘルストスキー
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