スターバックスは今年で日本上陸25周年を迎えました。
今やスタバは、誰もが知るカフェであると同時に、私たちの身近にある存在となりました。
私は、学生の頃からスタバが好きで、足を運んでいます。
おひとり様率高めです。
勉強や仕事をしたり、
もしくは、疲れて一休みしたいときにふらっと立ち寄ったり。
☆私のお気に入りはダークモカチップフラペチーノ
海外旅行先でスタバを見つけると、なんだかホッとした気持ちになり、つい入ってしまいます。
また、最近は息子(3歳)にせがまれて一緒に行く機会もあります。
『スタバのマークだね』と嬉しそうにカップを眺める息子。
息子曰く、スタバのマークのついたカップで飲むミルクはとても美味しいのだとか(笑)
店内のあちこちで緑のロゴを見かけては、大興奮しています。
まだ難しいことが頭で理解できない3歳児も、直感的に、『スタバブランド』を体験しているようです。
ただ、スタバは、他のコーヒーショップやコンビニと比べると、コーヒー一杯の値段が割高です。(スタバのドリップコーヒー363円(tall)、比較:ドトールアイスコーヒー275円(Mサイズ))
それにもかかわらず、スタバファンは多いですよすね。
カフェランキング顧客満足度は、スターバックスが堂々の1位となっています。
有名な話ですが、スタバはコーヒーを売る企業ではなく、居心地のよい場所(サードプレイス)を提供する企業であり、顧客は『サードプレイス』で過ごす時間に対して対価を払っているのです。
※ ちなみに、この『サードプレイス』も、スタバが商標登録しています!
カフェ顧客満足度第1位であるスターバックスの『顧客価値』は、どのように創り出され、成長してきたか。スタバの顧客価値に関するお話は、色々な視点から語られた記事が沢山ありますね。
この記事では、『知的財産の活用』の観点から、スタバブランドの歩みを覗いてみたいと思います。
ゲスト紹介
オモチさん:企業勤務の弁理士です。
日々の知財業務で得た気づきや学び、気になる特許の紹介など、幅広いテーマでブログを書いております。
Twitterもやっています。よろしくお願いします。今回は『Toreru Media』さんにお声かけ頂き、大好きなスターバックスの知財活用についてお話をさせて頂きます。
オモチ@日々知財 (@omochi_benrishi)
弁理士ブログ~日々知財日和~ omochi
目次
1. 創り上げられた『スタバの特別感』
スタバが顧客に提供している『居心地の良い場所(サードプレイス)』には、スタバならではの『特別感』が感じられる、こだわりがたくさんつまっています。
その、『特別感』とは?
『スタバにしかないもの』『スタバでしかできないこと』の積み重ねにより作り上げげられてきました。
知的財産は、端的に言えば『独自性』が保護されているものです。
他のコーヒーショップと差別化できるオリジナルな知的財産、すなわち『独自性』が集まることで、スターバックスらしさが生まれ、『特別感』が形成されているのではと考えました。
つまり、スターバックスの知的財産を見てみることで、スタバの『特別感』がどんなところにあり、どう作られてきたか、を知ることができます。
日頃、企業の知的財産について見る機会がない方も多そうですが、この記事では、『スタバの顧客価値(=特別感)』を、知的財産から1つ1つ探していきたいと思います。
1-1.『ベンティ』『ダブルショット』もスタバだけ。
そもそも、スタバのドリンクサイズは、『S,M,L』ではありません。
『ショート、トール、グランデ、ベンティ』です。
このうちスタバオリジナルの『ベンティ』は商標登録されていますので、他のコーヒーショップでは使えません。
大きなカップにラテをなみなみ注いでもらうと、贅沢な気持ちになれますね。
ただ、あまりスタバに行かないお客さんにとっては、レジで突然、聞きなれない『ショート、トール・・・』などと言われても、サイズ感覚がイメージできないもの。そのように困っているお客さんに対しては、都度、店員さんが実際のカップを出して、丁寧に説明をしてくれます。
S,M,Lのサイズ表記にすれば、店員さんが説明する手間も減るのでは?
と思ってしまいますが…。
しかし、その手間を惜しまず、独自のネーミングにこだわり、『特別感』を優先させているのです。
次に、他のカフェと圧倒的に異なる『スタバの特別感』としては、充実したカスタムメニューが挙がります。
もちろん、他のコーヒーチェーンにもカスタム自体はあるのですが、バリエーションの充実度、そして、そのカスタムの顧客への定着度合いでいうと、スタバが群を抜いていますね。
最もそのように感じるのは、友達とスタバに行き、レジでオーダーしているとき。
みんな、何かしら『マイカスタム』があるのです。
ミルクを豆乳に変更したり、デカフェにしたり、自分流が決まっているもの。
そして、レジで支払い後、ドリンクを待っている間に『私いつも○○するんだー』などと、お互いマイカスタムについて、話したりするんですね。
ちなみに私は、フラペチーノのホイップクリーム増量をオーダーします。
他のカフェで、友達とのこのようなやり取りをする記憶はあまりないので、やはり、スタバならではと感じます。
さて、前置きが長くなりましたが、カスタムの中での『エスプレッソ追加』について。
『ダブルショット』(エスプレッソショット×2)
『トリプルショット』(×3)
が、商標登録されています。
オーダーの仕方に『かっこよさ』を感じますよね!
一緒にスタバに行った友達が、『ダブルショットで』とオーダーしていたら、ちょっとこなれ感を感じます(笑)
スタバのカスタムの特別感、そして顧客に周知&定着するキッカケになっていると思います。
このように、サイズ・カスタムでも「スタバオンリー」の領域を作ることで、独自の世界観を演出しているのです。
1-2.『フラペチーノ』はスタバオリジナル
スタバの人気商品でもあるフローズンドリンク、フラぺチーノ。
『フラペチーノ』の名称は商標登録されています。
つまり、フラペチーノはスタバにしかないメニューなのです。
フラペチーノは、カフェラテやカフェオレのような、『ドリンクの材料や作り方』によって定義された名前ではありません。
例えば、カフェオレは、ドリップコーヒー+ミルクで作られているものを指し、カフェラテは、エスプレッソ+ミルクで作られているものを指しています。
では、フラペチーノの定義とは?
スタバのフローズンドリンクであれば『フラペチーノ』ですし、他で売られているフローズンドリンクに『フラペチーノ』という名前はつきません。
つまり、簡単に述べると、『スタバの商品であるかどうか』で決まるのです。
どうやらフラペチーノのネーミング自体は、フラッペ+カプチーノからなる造語とのこと。
今となっては、カフェ系フローズンドリンクと聞いて真っ先に思い浮かぶのが、フラペチーノ、というくらい、有名なネーミングですね。
さて、このフラペチーノは商標登録されているのはもちろんのこと、
フラペチーノはスタバの公式HPに掲載されているメニューについても、必ず末尾にⓇマークをつけて、『これはスタバオリジナルの商品名である』ことを強調し、商標であることを宣言しています。
専門的な言葉を使うと、「商標の希釈化を防いでいる」と言えます。
さらに、スタバのフローズンドリンクは全て『○○フラペチーノ』『△△フラペチーノ』というように、末尾にフラペチーノがついたネーミングに統一されています。
これは、顧客に定着しやすいですよね。
また、期間限定フラペチーノを打ち出す頻度が非常に高いため、顧客目線では、『次は何かな?』とワクワクするのが定番になりつつあります。
中には、『あれ?スタバに行く度に限定フラペチーノが変わってる!』という人もいるのでは?
そうなると、つい飲んでみたくなりますね。
固定されているネーミングや新メニューの頻度が、顧客への周知、定着を加速させています。
フラペチーノのメニューがあることによって、コーヒーを飲まない人や、若い世代の人も、お店に足を運ばせる効果がありそうです。
コラム. スターバックスラテのネーミング戦略
上記のように、オリジナルネーミングを作り出したフラペチーノとは対照的ですが、看板商品の一つである『スターバックスラテ』の名称にも工夫があります。
商品名の頭に『スターバックス』とお店の名前がついており、インパクトがありますね。
実は、スタバの商品の中でこのようにお店の名前が入っているのは、スターバックスラテだけ。
フラペチーノは造語を作り出し、商標登録をしているのに対して、スターバックスラテは、お店の名前を商品名に入れている、というように、全く異なるネーミング戦略ですが、いずれもスターバックスの個性が表れており、ユーザーに印象付けているのが特徴的です。
1-3. 細部にわたるこだわり マドラーと蓋(ふた)
スタバで過ごす時間のお供となる、コーヒーアイテムの細部にわたるこだわりが、顧客体験、すなわち居心地の良さを高めることになり、結果的に『サードプレイスの提供』という顧客価値の提供に繋がります。
例えば、こちら、マドラー&カップの蓋の変遷を見てください。
少し前まで店舗で見かけた緑色のプラスチックのマドラー。
飲みかけのドリンクに蓋ができる、蓋機能つきでした。
実はこちらは、特許出願されていました!
『封止部分が二段階になっている』点を発明のポイントとして、登録されています。
このマドラーと対になるカップの蓋のデザインは、意匠権で保護されています。飲み口の形状が、マドラーの封止部分がはめ込まれるデザインです。
昔からのスタバファンにはおなじみの機構でしたが、最近では、脱プラスチックを目指す取り組みの一環で、上記のプラスチックマドラーは廃止となりました。
合わせてカップの蓋のデザインも変更となり、マドラーがなくても飲み口が閉じられる蓋のデザインに変化しましたが、これも意匠権で保護されています。
このように、スタバは、商標だけでなく、特許や意匠出願を積極的に行っており、技術やデザインを守っています。
特許や意匠を年代順に見ていくと、スタバが「居心地が良い場所、サードプレイス」を作り上げるために、どんな技術に注力し、どのように進化させていったか、創意工夫の歴史を覗くことができるのです。
2. スタバの味、店舗の外へ拡張
いつの日からか、コンビニや百貨店などでも、スタバのマークのついたコーヒ―商品を見かけるようになりました。
1996年に日本第一号の店舗がオープンしてから約10年後となる2005年、スターバックスは店舗に行かなくてもコーヒーが楽しめる商品の販売を、次々にスタートしています。
ちなみに、上の商品の発売がスタートした2005年頃はどんな出来事があったかというと…
高速道路のSAでの初店舗がオープンしました(2006年)。
足柄SA(静岡)、蓮田SA(埼玉)が初出店だったようですよ。
2-1. コンビニや百貨店で買えるスタバ商品
上のように、コンビニや百貨店で買える飲み物は、チルドカップ、インスタント、ドリップなどがあります。
各商品のネーミング由来はこのようになっています。
HPによると、「スターバックスの本格的な味わいを、いつでもどこでも楽しんでもらいたい!」という想いからコンビニ展開をスタートしたそうです。
ただ、自分の店舗以外でスタバ商品を販売することは、『サードプレイスの提供』の理念と反するのでは?という疑問が生じます。
この点、たとえばチルドカップのブランドストーリーには『きょう、どこをスターバックスにする?』というフレーズが掲載されていました。
私見ですが、「お店でない場所であっても、店舗と同じ味のコーヒーを楽しんでもらうことで、『サードプレイス(居心地が良い場所)』を提供しよう」という理念があるのではないでしょうか。
確かに、地元に店舗がない、店舗による時間が取れない・・という人々にはありがたい商品であり、そのような人々へスタバの魅力を届けることができますし、それがいつかサードプレイス(=店舗)に足を運んでもらえるキッカケとなる。
それぞれの商品に込められた想いが、特徴的なネーミングを通じて消費者へメッセージとして伝わることで、ブランドとして愛され、定着していくのです。
2-2. 店舗と同じ味を保持する技術、特許で保護
また、お店と同等の質のコーヒーを提供するための技術も、特許取得されています。
店舗で味わえる、オーダーを受けてその場で抽出されるコーヒーの風味。
インスタントコーヒーでは、なかなかその風味を維持するのが難しいのだとか。
風味は時間の経過とともに消失しやすく、繊細なのだそうです。
その風味を、製造方法によって維持する内容になっています。
実際にこの技術が用いられているかは確認できていないのですが、『店舗の味のまま』をこだわり抜く姿勢は、特許情報からも読み取ることができますね。
3. スタバ、さらなる価値の追求
ここまでは、店舗以外でもスタバの味が楽しめる、マーケットの拡大について見てきましたが、ここからは、これまでのスタバよりも更に体験価値を追求して誕生した、スタバの新しいブランドについて見ていきたいと思います!
3-1. 新ブランド『STARBUCKS RESERVE』の誕生
2011年、最高のコーヒー体験を楽しみたい顧客向けに、新しいブランド、『スターバックスリザーブ』が誕生しました。
店舗数推移で見てみると、スタバが日本にオープンして約15年後、国内店舗数が1000に近づいたタイミングですね。
ちょうどこの頃、2011年にスタバのロゴ変更がありました。
ロゴから初めて『STARBUCKS COFFEE』の文字が消えたのです。
ロゴに名称を入れなくても一目でスタバだと分かるほど、スタバが人々に定着した証です。
ロゴから「社名を削る」という思い切った決断がされた年に誕生した『スターバックスリザーブ』。高い知名度にあぐらをかかず、ワンランク上の新ブランドを作り出すことでさらにスタバの価値を飛躍させる、戦略的なブランド創設であったと考えられます。
コーヒーを丁寧に入れてくれる、ちょっと高級なカフェ自体は実は結構あって、最近、私の住む地域にも着々と増えています。
でも、コーヒーに詳しくないと、敷居が高いんですよね。
しかし、既に身近な存在であるスタバが始めた高級コーヒーなら、入店してみようかな、という気持ちになりませんか?
通常のスタバのワンランク上の特別なコーヒー体験、『希少性が高いプレミアムコーヒーを楽しむ』のがスターバックスリザーブドのコンセプト。
体験できる店舗は限定されており、少量しか手に入らないコーヒー豆を丁寧に抽出したコーヒーが頂けます。
定番のスタバロゴとは全く異なる、新しいロゴが誕生し、こちらも商標により保護されています。
他のコーヒーショップとの差別化だけでなく、通常のスタバ店舗との差別化も図り、顧客に『さらなる特別感』を与えてくれますね。
スタバファンにはたまらないですね!!
3-2. のめりこむような体験 『STARBUCKS RESERVE ROASTERY』へ
2019年、中目黒にオープンした『STARBUCKS RESERVE ROASTERY』。
コーヒー豆から焙煎にいたるまであらゆる点でこだわりぬいた、のめりこむような体験を心から楽しむことのできる場所となっており、もはやコーヒーショップではなく、コーヒー体験ができるテーマパークのような存在です。
ロースタリーの名前そのもので、店内に巨大な焙煎機があります。
顧客は、その圧巻のサイズの焙煎機を使って行う、焙煎工程を実際に見て楽しむことができるのです。
中目黒のロースタリーは、世界で5店舗目なんですって!
店内の至るところで、ロースタリーのロゴを発見しました。
中でも圧巻だったのが、一面に広がるコーヒーパッケージ
よく見ると、パッケージ一枚一枚にリザーブの★/Rロゴが入っているのです。
徹底したこだわりが見られます。
また、全部で4階建ての建物は、各フロアごとにコンセプトが異なっており、それぞれネーミングがされています。
そして、それらは全て、商標登録されています。
店内のこだわりは、飾りつけだけではありません。
その一例は、コーヒー成分の抽出マシン。
このマシンでコーヒーを抽出する過程を、視覚的に楽しむことができます。
マシンの写真を見ているだけで、ワクワクするデザインですよね。
実はこのマシンは、意匠権で保護されています。
店内の細部にわたる世界観の演出に、知的財産が活用されていますね。
ここで紹介した以外にも、スターバックスリザーブに関する商標が多く登録されています。
「特別感」がより一層、沢山つまっているのです。
それにしても、『STARBUCKS RESERVE ROASTERY』がいくら戦略店舗だとはいえ、フロアのネーミングを全て商標登録するなんて、徹底しています。ブランドにこだわるデパート・百貨店であっても、フロア名を1つ1つ商標登録している例はありません。
更に、登録されたロゴがお店の至るところに見られ、ブランドが作りこまれている印象があります。
本記事の最初に、知的財産とは『独自性』を保護するものだと書きました。
知的財産は、他者と自分を差別化し、特別感を作り出す武器になります。
スターバックスリザーブは、「他のコーヒーショップとの差別化」を単に目指すだけではなく、これまでスタバが顧客に提供してきた価値、すなわち「サードプレイス(心地よい場所)」を進化させ、既存のスタバとも「差別化」するブランドだからこそ、これだけ知的財産にも力を入れたのではないでしょうか。
4. むすび
本記事では、約25年間のスタバの歴史と顧客価値の成長を、『知的財産の活用』という観点から見てみました。
スタバは、顧客価値の向上のために、
『スタバにしかないもの・スタバでしかできないこと(=特別感)』を創出し、定着する、というステップを着実に積み重ね続けてきたことが分かりました。
さらに、そのような『特別感』については知的財産として守られており、他のコーヒーショップとの差別化、ときには、これまでのスタバとの差別化、を確立していった姿が伺えます。
スターバックス社は、特許・意匠・商標のいずれも、積極的に出願していました。
これらの知的財産は、スタバブランドが作られていく過程で活用され、大切な役割を担っていたのですね。
創業者のハワードシュルツ氏が作りたかった『サードプレイス』
サードプレイスとは、自宅と職場の間にある『オアシス』である存在。
やるべきことが山積みなのに、気分が乗らない・・・。
そんなときは、とりあえず勉強用具やパソコンを持ってスタバに駆け込むのが、いつの間にか私の習慣になっています。
また、ひと休みしたいときに、自然と足がスタバに向いていたり。
『サードプレイス』と意識してスタバに行くことはあまりありませんが、気付けばそうなっていた、という感覚が近いかもしれません。
勉強、仕事がはかどらない日も、疲れてしまったときも、お店を出る頃には少し前向きな気持ちになれている。
スタバで過ごす時間がそうさせてくれている。
そこが、私にとっての『心地よさ』なのだと感じます。
・・さて、この記事を書いていたら、早速スタバへ行きたくなってきました!
いつも立ち寄れる場所であり続けてくれる、
そんな安心感を与えてくれる変わらない部分と、
期待を超えて楽しませてくれる、
常に進化する側面とを併せ持つスターバックス。
これからも、ずっとそんな存在であり続けてほしいな、
と、いちファンとして願っています!
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