漫画の元祖ともいわれる、日本一有名な絵巻物は・・?そう、『鳥獣戯画』。
セリフがあるわけではないのですが、ウサギ・カエル・サルなどがユーモラスに擬人化され、生き生きと描かれています。
小学校6年生の国語の教科書にも採用されており、国宝となっていることからも、まさに「国民的作品」だと言えるでしょう。
『鳥獣戯画』を読む(光村図書)Yahoo!知恵袋より
鳥獣戯画の魅力といえば、やはりそのキャラクター性。もっとも有名な場面は、ウサギとカエルの相撲ですが、躍動感が素晴らしく、かつ「自分でも描いてみたくなる」シンプルさ。
教科書やノートの余白に、自分でも落書きしてみた方も多いはず。
広く愛されている鳥獣戯画ですが、定期的に「勝手にイラスト使ったり、グッズを作っても問題ないの?」という論争が巻き起こります。古くは2004年の「2ちゃんねる、トップページ画像騒動」。
2ちゃんねる、著作権を侵害中?ITmedia NEWSより
2ちゃんねるのトップページに、鳥獣戯画 甲巻のラストシーンが使われていたところ、京都新聞に
高山寺(右京区)の鳥獣戯画や、建仁寺(東山区)の風神雷神図など著名な絵画は、陶器の図柄などに無断転用される例が後を絶たない
という記事が載り、それに対して2ちゃんねる側が「著作権は著作者の死後、50年までだろ。鳥羽僧正さん、長生きだな~」と揶揄したというものです。
2ちゃんねる側の言うことはもっともであるのですが、ここで面白いのが、京都新聞は別に「著作権侵害」だからという理由付けはしていないところ。
つまり、著作権が満了していようが、「無断転用」はまかりならんとの発想がある様子。
さらに、2021年2月に書かれたNoteでも、実際に『鳥獣戯画』を用いた商品開発をされた方が、高山寺さんに電話されたり、過去に使用許諾を得た方から話を聞いた結果として、
法律的に鳥獣人物戯画の許可申請をする必要はないが、「高山寺公認」とするためには申請する必要がある。申請の内容次第でライセンス料がかかり、商品によっては売上の数%を高山寺に払う。デザインの使用可能期間は3年間で、継続する場合、更新届を出す必要がある。
鳥獣人物戯画を利用した商品開発。商用利用する場合、許可申請が必要か。|三島大世|note
という情報を公開されていました。
法律的には著作権は切れていても、「公認権」を高山寺さんがお持ちで、公認のためにはライセンス料が必要・・。うーん、著作権と公認権は違うというのは何となく分かるのですが、この公認権はどこから登場したのでしょうか。
そこで今回は、「鳥獣戯画」の由来や、グッズなどでの利用状況。さらには2021年4月に上野の東京国立博物館で開催された展覧会『国宝 鳥獣戯画のすべて』にも行って現物を拝見しつつ、著作権満了デザインの「許諾」のあり方について、考えてみたいと思います。
目次
甲、鳥獣戯画はどこから来たの?
「日本一有名な絵巻」である鳥獣戯画ですが、誰が書いた作品かご存じでしょうか。
俗説では平安後期の高僧・鳥羽僧正覚猷の作とされてきましたが、確証はなく、現在では複数の絵仏師か、宮廷絵師が書いた作品の集合体とされています。
鳥獣戯画には甲・乙・丙・丁の4巻があり、擬人化されたウサギ・サル・カエルたちが登場する最も有名な部分が甲巻。乙巻は、擬人化されない「動物図鑑」、丙巻は「人物・動物戯画のハイブリッド」、丁巻は「人物主体」と、それぞれの巻に特徴があります。
鳥獣戯画で興味深いのは、先に描かれた巻の影響を受けつつ、後半が描かれていること。
上の絵はお坊さんがお経を読んでいる丁巻の1シーンですが、これは2ちゃんねるトップページにも使用された甲巻の「猿の法会」を踏襲しています。
巻によって書かれた時期もまちまちですが、少なくとも平安~鎌倉時代の作品であることは間違いないようで、時代を超えた、絵師たちの「合作」と言えそうです。
次に、なぜ鳥獣戯画の原本が京都の高山寺にあるかですが、由来はよくわかっていないようです。高山寺の中興の祖、明恵上人を偲んで寺外から寄進されたとも言われていますが、少なくとも1519年の史料には高山寺に鳥獣戯画が保管されていることが記載されています。
高山寺 国宝 鳥獣人物戯画 なぜこの寺に伝わったのか
著者や由来について確たることは分かりませんが、高山寺で大切に宝物として保管されていたからこそ、今に「鳥獣戯画」が残っていることは事実でしょう。
これらを踏まえ、法律から見て「鳥獣戯画」の著作権はどうなっているでしょうか。
2021年時点の著作権の存続期間は、著作者の死後70年間。無名・変名(周知の変名は除く)の著作物は、公表後70年です。(著作権法51条~52条)
「鳥獣戯画」が描かれた平安~鎌倉時代から現在まで少なくとも800年以上。誰が描いた作品としても、すでに著作権期間が満了していることは明らかです。
一方、著作権には、「著作者人格権」という著作権が満了したあとも消滅しない別の権利があります。
これには「同一性保持権」という、著作者の意に反して著作物を改変されない権利が含まれるのですが、誰でも請求できるわけではなく、著作者の死後は、その孫までしか著作者人格権による差止を請求できません。(著作権116条1項)
遺言で「著作者人格権の請求人」を別途指定することも可能なのですが、遺言指定パターンだと著作者の死後70年で請求権が消滅します。(著作権法116条3項)
結局、『鳥獣戯画』の著作権人格権があっても、もはや誰も請求できず、著作権も消滅していることがわかりました。
しかし、世の中の「鳥獣戯画グッズ」は制作するにあたり、高山寺さんに「許諾」を取っているものが相当数あるようです。それは何に対しての許諾なのか?謎を解くため、乙の章ではさまざまな利用の実例を見てみます。
乙、鳥獣戯画のグッズを見てみよう
一言に鳥獣戯画の利用といっても、大きく分けて2つのグループがあります。
1つはイラストを素材化したり、加工したりして講評するデータ型。次に、イラストをグッズ化するグッズ型です。
1.データ型
① フリー素材型
「ダ鳥獣ギ画」は、鳥獣戯画の甲巻を中心にデータ化された素材集です。興味深いのは、複数のカラーから好きなものを選んでダウンロードできるところ。もともとは墨1色のところ、イメージが広がります。
さらに、元のタッチを作者がアレンジした「駄巻」もあり、「手洗い励行するカエル」など、時代に合った姿を見せてくれます。
本サイトの著作権に関する注意書きは、以下の通り。
戯画はおそらく著作権が切れているので(そもそも作者不明)パブリックドメインだと思うけど、絶対とは言いにくいので、自己責任で。駄巻は一応ダーヤマが著作権を保持しますが、基本的に各種デザインにおいて無料でお使い頂ける素材となります。詳しくはライセンスページで。
特に高山寺さんに許諾を取ったというような表記は見当たりませんでした。
② 大喜利型
鳥獣戯画のイラストを並べ替え、セリフを付けてネタ的に投稿する大喜利型。Twitterを中心とするSNSの世界で一時期流行りました。
その火付け役になったのは、2015年に公開された「鳥獣戯画制作キット」。残念ながら、ウェブサイト版、Android版は公開終了しているのですが、iPhone版はまだ公開されていました。
ダウンロードして遊んでみることしばし。1つ自作ができました。
ネットではたくさんの作品が公開されていますが、個人的には「じどりぼう」が好きです。
手彫りスタンプ制作所 リスタンプ工房 on Twitterより
このアプリには特に権利表記はなく、高山寺さんからの許諾についても言及はなかったです。
2.グッズ型
①高山寺公認型
たくさん存在する鳥獣戯画グッズ。Amazonで調べてみたところ、700種以上もHITしました。中には「高山寺認定」となっているものと、特に表記がないものが混在しています。
公認型の代表は、やはり高山寺限定グッズ。お守りなど、実際に京都のお寺に行かないと入手できないグッズもあるようですが、てぬぐい、扇子などはオンラインショップでも購入可能です。
中でもお寺らしいグッズは御朱印帳。
表面はウサギとサルの追いかけっこ、裏面にはしっかりと「高山寺」のロゴが。上品な仕上がりで、オフィシャルグッズの品格を感じます。
他にも「高山寺公認」と書いてあるグッズをさがしてみたところ、ありました。
モンチッチで有名なぬいぐるみメーカーのセキグチさんの商品。
鳥獣戯画 ペンケース/ぬいぐるみ セキグチダイレクトショップより
鳥獣戯画の雰囲気たっぷりのデザインです。これは「公式認定商品」と書いてあることで、箔が付いている感もありますね。
さらに探していると、夢のコラボレーションを発見!
【mc.】miffy×鳥獣戯画 ミッフィー マリモクラフトオリジナルグッズのご紹介
ミッフィーはオランダの絵本作家、ディック・ブルーナ氏による世界的なキャラクターですが、それが鳥獣戯画のウサギと共演する日が来るとは・・。
ミッフィーコラボで目につくのは「高山寺」のロゴです。見る限り、ほぼすべての商品にロゴが入っています。
鳥獣戯画コラボって何?斜め上すぎるミッフィ展先行発売品を数量限定で仕入れた話。
同じウサギということもあり、初見では「何?ミッフィーのリアルタイプ??」と混乱しそうですが、ロゴが入ることで「コラボ商品」だとわかりやすい。
なるほど、許諾を受ける裏側には、「高山寺」のお名前があることが、プロダクトの価値を高めるというマーケティング的な判断もありそうです。
丙、鳥獣戯画「許諾権」の正体は「商標権」?
さて、少なくとも高山寺さんより許諾を受けて商品を作っている企業が複数あることがわかりました。著作権は切れているはずなのに、なぜなのか。
理由付けを考えるあたり、まず思いつくのは所有権です。
高山寺さんで「鳥獣戯画」が保管されるようになったのは500年以上前のこと。長い所有の歴史から著作権とは違う、「公認権」が生まれる余地はないでしょうか。
この可能性を考えるにあたり、参考になる最高裁の判決があります。顔真卿自書建中告身帖事件です。
博物館が所有する唐時代の名筆があり、ある写真家が許可を得て、名筆の撮影を行いました。ただ、写真家が亡くなったあと、写真の乾板が第三者の手に渡ります。
写真乾板をもとに、名筆の画像を載せた書籍を発行しようとした出版社に対して、博物館側が「お前には許諾してない」と怒って販売停止を求めた事件なのですが、最高裁は
著作権の消滅後に第三者が有体物としての美術の著作物の原作品に対する排他的支配権能をおかすことなく原作品の著作物の面を利用したとしても、右行為は、原作品の所有権を侵害するものではないというべきである。
と判示し、請求を棄却しました。
すると、著作権が現存しない作品について博物館が観覧料を取ったり、撮影料を取ったりしているのは一体どういう根拠なのか?不思議に思えるのですが、これも最高裁が説明してくれており、
(観覧料・撮影料などを所有者が徴収できるのは)、所有権者が無対物である著作物を体現している有体物としての現作品を所有していることから生じる反射的効果にすぎないのである。
顔真卿自書建中告身帖事件 最二小判昭和59年1月20日判決(民集第38巻1号1頁)
原作品の所有権者はその所有権に基づいて著作物の複製等を許諾する権利をも慣行として有するとするならば、著作権法が著作物の保護期間を定めた意義は全く没却されてしまうことになるのであって、仮に右のような慣行があるとしても、これを・・・法的規範として是認することはできないものというべきである。
・・・うーん、ここまではっきり言われると、「所有権」根拠説は無理そうです。有体物に対する所有権と、そこに化体されている著作権はまったく別物ということですね。
次なる可能性としては、「商標権」があります。
ネットでは「著作権はなくても、高山寺さんは商標権を保持している」という情報もあり、今の権利がどうなっているか、J-PlatPatで検索してみました。
意外なことに、高山寺名義での商標登録は1件だけ。ウサギ・カエル・サルといったキャラクターたちの商標登録はありません。
登録されている商標見本は「高山寺」の落款印。指定されている区分は、16類【印刷物、文房具など】、21類【お守り、おみくじ、食器類など】、30類【お茶など】の3区分でした。
お茶も指定?と不思議に思ったところ、実は高山寺は「日本ではじめて茶が作られた場所」として知られているそう。日本最古之茶園があり、いまでも5月に茶摘みが行われているとのことです。
茶摘みのあと、数量限定で売られるというお茶には、しっかりと「高山寺」ロゴも入っています。このために商標も取得したのでしょう。個人的に、一度飲んでみたい。
区分を見る限り、もともとは高山寺さんが自前でグッズを販売するために取得した商標のようですが、商標権を取ったことで他人に商標の使用を禁じられる=裏を返すと、特定の人に対してだけ使用許諾を与えることが可能です。
印刷物、文房具などのグッズの目印として「高山寺」のロゴを使用できるのは高山寺さんご自身と、許諾を受けた者だけ。著作権が切れている以上、ウサギ・サルといったイラストの使用は止められなくても、「高山寺」のロゴも目印として使いたければ、許諾をちゃんと受けてください・・・とすることで、一定のコントロールを効かせることはできそうです。
<丙の章 まとめ>
- 所有権をベースにして鳥獣戯画イラストの「利用許諾権」を法的に導き出すことはできない。たとえ許諾料を払う慣行があったとしても、その慣行を守るかどうかは法的には自由。
- 「鳥獣戯画」のウサギ、カエルといった動物たちを「高山寺」さんが商標登録している事実は2021年4月時点では存在せず、イラストの利用許諾を得る必要はない。
- 一方、「高山寺」の印は商標登録されており、指定されている商品の範囲では無断で使用することができない。公認権の正体は「高山寺」印の商標使用権と考えられる。
丁、鳥獣戯画の現物を見に行ってみた
許諾権の根拠は「商標権」だと正体が見えてきましたが、まだモヤモヤが残ります。それは、登録されている商標区分の狭さ。
例えば、24類【タオル、てぬぐい】や、28類【玩具】は、鳥獣戯画グッズの定番ですが、商標登録されておらず、商標権に基づくライセンスとは説明できません。
もちろん商標権がなくても、利用者が望むならばデザインをチェックしてもらい、「高山寺公認」とのお墨付きを受けることは可能です。公認された側にもマーケティング上のメリットがありそうですが、動機はそれだけなのでしょうか。
2021年4月、鳥獣戯画のオリジナルが上野の東京国立博物館で展示されることになりました。甲乙丙丁の全4巻が一挙公開されるのは、史上初とのこと。ここは現物を見て、考えてみることにします!
コロナ禍もあり、入場は事前予約制。オンラインでチケットを押さえて、いざ会場に向かいます。
上野の美術館といえばいつも長蛇の列でしたが、予約のおかげでスムーズに入れました。
展示は平成館でやってます。
展示は2階なのでエスカレーターを上がっていきます。音声ガイドは山寺宏一さん。
入口について、いよいよ現物とのご対面!・・なのですが、ここからは撮影禁止。。以降は東京国立博物館ホームページの画像や、購入した図録を引用しつつ紹介します。
今回の展示の目玉は、やはり4巻展示なのですが、一番人気の甲巻には何と「動く歩道」が設置されています。
動く歩道 イメージ画像 東京国立博物館ブログより
美術館だとどうしても前の人のペースや、横や後ろの人のプレッシャーを感じながらの鑑賞なので落ち着かないことも多いのですが、動く歩道のおかげでストレスなく、まるで巻物を広げていくような体験ができました。
この動く歩道、今回の展覧会のために新たに製造されたということで、主催者側の「本気」を感じます。これだけで会場に行った価値があったというもの。
動く歩道で「鳥獣戯画」を体験!特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」会場レポート@東京国立博物館 平成館 | M3PRESS ※内覧会の様子がわかります。
現地で新たに知ったのは、実は甲巻も前半・後半で作者が違う可能性が高いというもの。
写真は会場で購入した図録からですが、確かによく見ると11紙の繋ぎ目で、紙質が変わっています。線の太さも多少異なるようです。
乙・丙・丁にもそれぞれ違ったキャラクターの味があるのですが、共通しているのは繋ぎ目に「高山寺」の印が必ず押されていること。不思議に思っていたら、第2会場で謎が解けました。
平安や鎌倉時代に書かれた鳥獣戯画は経年劣化で絵巻のつなぎ目がバラバラになり、外れた部分が抜き取られ、掛け軸(断簡)として仕立て直されたと。
巻物のつなぎ目にやたら高山寺印がペタペタ押されているのはこれ以上抜き取られ、外部に持ち出されるのを防ぐためだったとか。
江戸時代にバラバラになった鳥獣戯画が修復されましたが、正しい絵の形が伝わっていなかったので、ところどころ順番が入れ違ったり、別の絵巻を合体させたところがある。
つまり、現在の鳥獣戯画は江戸時代にリミックスされた作品だったのです。元々の甲巻は少なくとも2グループあり、分量も今の1.5倍以上はあったと。これは驚きでした。
元々の絵姿も図録にしっかり載っていますので、鳥獣戯画ファンの方は会場で購入されることをお勧めします。ほぼ原寸大、フルカラー470ページで3000円はめっちゃ安い。
高山寺の歴史の展示もしっかり見て、終わった後はグッズコーナーへ。展示会オリジナルグッズだけでなく、高山寺公認グッズや、公認ではなさそうなグッズもたくさん集まって大賑わいです。
まずはド定番のクリアファイル。
ポーチ、タオルハンカチ、そして令和を感じる布マスク。
缶入り飴は色がきれいでいい感じです。
写筆用紙は筆ペンでなぞることで、簡単にカエルやウサギを描いてみることができます。
「すみっコぐらし」と鳥獣戯画のコラボ商品もありました。キャラクターの雰囲気にマッチしています。
海洋堂のフィギュア。やはりカエルがウサギを投げ飛ばしたシーンが一番人気なんですね。
今回の戦利品。
見ていたらつい欲しくなり、たくさん買ってしまいました。これが鳥獣戯画の魅力・・いや、魔力なのかもしれません。
おわりに~ 著作権満了デザインの「許諾権」とは
展示会から自宅に引き上げ、「なぜ、鳥獣戯画のグッズを作るメーカーは、高山寺さんに公認を求めに行くのか?」を、改めて考えてみます。
甲章で見た通り、すでに著作権は満了していますし、丙章の通り、商標権も限定的。所有権からも「デザインの利用許諾権」は導かれないのが最高裁の見解です。
1つありそうなのが、権利の誤解説。これは多少はありそうですが、高山寺さんのホームページには、ライセンスを促すような表記は一切ありません。あくまで、メーカーは自主的に連絡しているようです。
もう1つ考えるのは、「公認」を得ることで宣伝効果を求めるパターンですが、高山寺さんが宣伝してくれる訳ではなく、「公認商品」が多数あることからも、効果は限定的と思われす。
では、なぜ公認を求めるのか。慣行に流されているだけでは・・?とやや斜めに見ていたのですが、展示会に行ってみて、公認を求めるメーカーの気持ちもわかりました。
つまり、メーカーとしては、鳥獣戯画という歴史的な絵素材を使って商品化したり、新しい表現をすることへの「正当性」が欲しいのです。
例えば、こちらの鳥獣戯画を現代風にアレンジした商品。
パリピ、社畜、自撮り……鳥獣戯画を現代風フィギュアに 狙いを聞く withnewsより
ウサギとカエルが現代あるあるを表現したユニークな作品ですが、企画会社のリーメントさんは、インタビュー中で
すでに鳥獣戯画のフィギュアを発売している会社もあったので、そのまま作ってもしょうがないなと思っていました。作品自体が当時の世相を反映しているといわれているので、現代風にアレンジしてみたら面白いのではと考えたんです。もちろん高山寺の了解をとって、監修していただいています。
とコメントされています。
あまりにも国民的な絵巻であり、皆に知られ愛されている作品であるからこそ、収益化や、アレンジでユーザーに反発を買わないかという不安がある。
本来許諾は不要なのだが、歴史ある鳥獣戯画で「ここまで遊んでいいのか?」という躊躇。それに対して高山寺さんが監修してくれたことの後押し。
買う側も公認グッズならばという安心感。
高山寺さんは「おたげい」にもオッケー出すのですから、かなり寛容なのでしょう。すると、公認という存在が、鳥獣戯画という作品のアレンジや利用を後押ししている部分もあるのです。
もちろん公認を受けず、そのままアレンジ作品を発表・販売するという選択肢もあります。データ型の大喜利作品などは「公認」にはなじまないでしょう。
一方、グッズについては「公認」してもらい、場合によっては許諾料を払うことで、「正当性」という安心を得る。
・・・高山寺さんは、2018年9月の台風21号で、金堂が半壊するなどの大きな被害を受けたそうです。被害総額は4億8000万円、復興に向けたクラウドファンディングも実施されました(今は募集終了)。
クラウドファンディングのリターンには「鳥獣戯画限定おまもり」、「限定朱印帳」が並び、1000人以上の支援者が集まっていました。これも鳥獣戯画という作品の力だと思います。
ない権利を「ある」ように装うのは間違いですが、権利が満了していることを理解した上で、なお鳥獣戯画という文化遺産を守り育てた高山寺という場所をリスペクトし、売上の一部からライセンス料を寄付的に支払う。そんな場の繋がり方があっても良いのでしょう。
自分もコロナ禍が収まった後に、「鳥獣戯画のふるさと」、高山寺を訪れてみたいと思います。
内容を画像でまとめ(グラレコ)

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