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【そば・ジャム・ラーメン】長野の「愛され」ご当地チェーンを商標目線で巡ろう~ちざ散歩Vol.13

皆さんは旅に何を求めているでしょうか?

グルメ、温泉、観光・・・それぞれに魅力はありますが「日常からちょっと離れた、新しい体験」を期待している方は多いのではないでしょうか。

しかし、旅にはどうしても準備はつきもの。世界遺産があるような海外の街へ行くのは楽しくても、スケジュールや費用を考えると、なかなか敷居が高いですよね。

でもそんな「大きな旅」を求めなくとも、週末にひょいっと行ける、気軽な発見の旅もあるんです。そこで今回は「ご当地(ローカル)チェーンの商標」をテーマに、思い立って長野へ行ってきました!

長野にはどんな独自のローカルチェーンが根付いているのか?商標を手がかりにした、気ままな「ちざ旅」のスタートです。

10:40 佐久市~晴天の街と、信州そば処 「小木曽製麺所」

東京から北陸新幹線に乗ること、約70分。長野県東部の佐久平駅に降り立ちました。

駅の階段を上がっていくと、いきなり目に入ったのは・・

漫画「北斗の拳」の名悪役?ジャギ様の胸像です!「俺の名を言ってみろ」の名セリフで知られていますね。

実はこのジャギ像、地元のアルミ鋳造メーカー、吉田工業の技術で作られた高精度なもの。2026年にはフランス・パリの展示会にも日本のコンテンツ&技術力をアピールするため出張したそうで、圧巻のクオリティです。

佐久市は「北斗の拳」の原作者 武論尊先生の出身地であり、市内ではプロの漫画家を育成する『武論尊100時間漫画塾』も開講されています。受講料はなんと無料、さすがの漢気・・!

改札を出ると、爽やかな空が。佐久市は中心部でも標高が約700mあり、年間を通して晴天率が高く湿度も低いので、精密加工業が発展したという歴史があるそうです。

このあとローカル線の小海線に乗るのですが、せっかく佐久に降りたので、乗換前に昼ごはんを食べに行きましょう。

駅から見える、AEON方面へ向かってみます。歩くこと15分ほど。

信州そば処『小木曽製粉所』がありました!ロゴに商標登録を示す®マークがついています。商標情報をチェックしてみましょう。

第5856112号 (2016年6月登録)
権利者:株式会社王滝
住所:長野県松本市

王滝は松本の寿司屋がルーツの飲食グループで、『小木曽製粉所』は2014年3月に一号店が開店。「小木曽」の名は創業者の出身地である長野県木祖村の地名に由来し、ロゴの形は石臼を模しているんですね。

そばの「ひき立て、打ち立て、茹で立て」にこだわり、自社での製粉・製麺と、注文を受けてから茹でるスタイル、さらにセルフを導入して低価格を実現しているのが特徴です。

フランチャイズにも積極的で、長野県18店舗だけでなく、山梨・群馬・愛知など他県にも23店舗と成長を続けています。2026年8月時点では、まだ東京には上陸していないのですがさらに伸びそうなローカルチェーン、ここでお昼にしましょうか。

入口でメニューをチェック。看板メニューはざるそばで、並から中・大にしても変わらず680円。創業時は550円だったといいますから、コスパは抜群です。

オーダーでは、まずベースとなるメニューの札を選びます。

続いて天ぷらを取ります。この辺は丸亀製麺などでも見られるスタイルですね。注文して並ぶことしばし。確かに注文を受けてからそばを茹でています。

上がりました、大ざるそばとえび天・ちくわ天のセットです!

そばは満足のボリューム。味もそばの香りと適度なコシがあり、チェーン店とは思えない仕上がりです。周りを見渡せば、お昼前ですでに満席。レジには行列ができており、現地での人気、愛され具合が伺えます。

高級店のそばは確かに美味しいですが、割高でボリュームが少なくなりがち。そばの世界に「安い・早い・美味い」を持ち込んだ『小木曽製粉所』は、現在長野以外へも店舗を拡大中で、これから台風の目になりそうです。

満足したところで佐久平駅に戻って、在来線で小諸に向かいましょう。

13:30  小諸市~ジャム発祥の街と、PBの玉手箱「ツルヤ」

小海線に揺られること15分ほど。小諸駅にやってきました。「さわやか信州」って響きが良いですね。駅前には「懐古園」という城址公園があります。もともとは小諸城があったのですが、明治に廃城になり、その後に公園として整備されたようです。

見どころは2代将軍、徳川秀忠が腰かけたという憩石。約38000人の本隊を率いながらも、小諸から20キロほどの上田城に籠る真田昌幸に手こずり、関ケ原の本戦に間に合わなかった・・というのは有名な話です。

この石に呑気に?腰かけている時の秀忠はまさか遅参するなんて思ってなかったでしょうが、家康は激怒、下手したら歴史が変わっていたという話。ロマンがある場所です。

城跡もなかなか見どころがあり、立派な石垣を眺めたり、

武田信玄の軍師、山本勘助が最初に小諸城を造ったときに、朝晩自らの顔を映して心を整えたという伝説の鏡石を覗いたり、

併設の動物園でペンギンのエサやりを見たりと、家族でも楽しめそうな場所でした。一通り散策して「懐古園」の入口付近まで戻ってくると、知財的に気になる碑が。

「産学連携発祥の地」という碑です。小諸から産学連携が?と興味を持って読んでみると次のようなことが書かれていました。少し長いですが、ドラマチックだったのでまとめます

・小諸市森山村の塩川伊一郎は、浅間山の火山灰が堆積し、寒冷なため作物が育ちにくい土地に悩んで、小諸義塾塾長の木村熊二を訪ねてどうすべきか教えを乞うた。

・熊二は伊一郎の志に心を動かされ、明治29年(1896年)に森山村を訪れて土壌を調べ「桃の栽培」が適すると助言、苗代として十円を贈って励ました。

・伊一郎や息子、仲間たちは力を合わせて土地を開墾し、北佐久農学校からも指導を受けながら桃の栽培に挑戦。3年で桃の木は実をつけた。

・しかし生桃は傷みやすく、都会で安く買いたたかれた。そこで熊二がまた動き、東京の缶詰組合に助力を依頼。1901年、森山に「日本桃養合資会社」が誕生して、桃缶詰やジャム、ゼリーを製造した。

・「日本桃養合資会社」の経営は軌道に乗ったが、桃がたくさん取れると農家から買い上げる値段を安くした。この経営方針に反対した伊一郎らは1904年、独立して「塩川缶詰合名会社」を立ち上げる。

・1906年に伊一郎は病で亡くなるが、長男が二代目伊一郎として経営を引き継ぎ、皮むき器や核抜き器の特許も取得して、高品質な桃缶を製造する。さらに苺ジャムの製造にも取り組み、事業を拡大する。

・ただ、1925年に二代目伊一郎も病で亡くなり、妻や息子が事業を続けるも太平洋戦争の軍事統制で篠ノ井の長野缶詰に統合、会社は閉鎖されてしまった。

・伊一郎と熊二の取り組みは、小諸における産学連携の偉業である。「塩川缶詰」が製造した苺ジャム缶が明治天皇に献上された4月20日を記念し「ジャムの日」となったことも語り継いでいきたい。

長野はりんごやぶどうの産地として有名ですが、桃の収穫量でも都道府県別で3位。その裏側には伊一郎や熊二の奮闘や、明治の産学連携があったのですね。全く知りませんでしたが、旅ならではの学びです。

次の電車まで30分ぐらいあるので、お土産を買いに行きましょう。駅から歩いて5分ほど、

目当てにしていた長野ローカルスーパー「ツルヤ」です!

 

登録2626053号(1994年2月登録)
権利者:株式会社ツルヤ
住所:長野県小諸市

ツルヤの創業は古く、明治25年(1892年)に小諸で創業。最初は海産肥料商でしたが、1960年にスーパーマーケットを開店。これが成功して店舗を増やし、現在は長野 37店舗、群馬 6店舗の一大ローカルチェーンになっています。中に入ってみましょう。

入口にカルビーと共同開発したオリジナル商品「りんごバター」が大きく陳列されていました。ツルヤは1972年から早くもプライベートブランド(PB)商品を取り入れていた先駆的なスーパーです。

信州産りんごを生かしたPBの「りんご&レモン くだものグミ」や

地元の新鮮な野菜など、魅力がいっぱいの店内です。ちょうどよいお土産を探していて、見つけました。

ツルヤ「プレミアムジャム」コーナーです!いちご、白桃、マーマレードから、安納芋、栗、ピスタチオまで何でもあり。PBだけで50種類以上あるそうです。これはジャムの玉手箱や・・・。

どれにするか悩みましたが、ツルヤを代表する商品だという「りんごバター」をセレクト。信州産ふじりんごを70%も使用し、果実感をたっぷり残してバターでまろやかに仕上げた商品、トーストにもバケットにも合いそうです。

グミと合わせてよいお土産ができました。ブランド的な話をすると、ジャム売り場で掲示されていた「四季の香り」も商標登録されています。

第5085645号 (2007年10月登録)

「ツルヤオリジナルジャム」とだけ言われても、どういう商品なのか認知しにくいもの。豊富なジャムの種類を「四季の香り」というブランドネームでまとめることで、消費者がその価値を直観的に感じやすくしています。

ツルヤオンラインストア / ジャム詰合せ6本A【四季の香り】

ツルヤのジャムはオンラインでも通販可能。店舗は軽井沢にもあるので、避暑旅のお土産にもおすすめです。

17:00  富士見町~詩人の町と、長野のソウルフード「テンホウ」

さて、小諸駅にまた戻ってきました。ここからは小海線で小渕沢に向かいます。

小海線はワンマン列車で、Suicaも使えない全長78.9kmのローカル線です。日本でもっとも標高が高い「野辺山駅(1346m)」がある高原鉄道で、晴れれば絶景!

山に向けて列車は進んでいきます。ただ、何だか雲行きが・・

残念、降られてしまいました・・。高原の天気は変わりやすいもの、仕方ないですね。幸い、最高標高地点を超えて清里駅に着いたころには晴れてきました。

清里は元祖高原リゾートの町、乗客も結構乗ってきます。さらに3駅、終点の小淵沢に到着。ここから帰京してもいいのですが、小諸からの旅で小腹が空いてきました。最終目的地に向かいましょう!

小渕沢から中央本線で2駅、富士見駅にやってきました。富士見はアララギ派の歌人が集まって歌会を開いたり、作家 井伏鱒二らが別荘を構えていたりという歴史があって、「高原の文化都市」を名乗っています。

陸橋から見えるのは南アルプスの入笠山。山頂近くまでのゴンドラもある初心者向けの山で、春から秋までは湿原の花畑も楽しめます。ただ、今日はもう夕方。市街地のほうに向かいます。

右手に町役場を迎える緩やかな坂道を登ること10分ほど。

ありました。長野のご当地ラーメンチェーン、「テンホウ」です!

第5523654号 (2012年9月登録)
権利者:株式会社テンホウ・フーズ
住所:長野県諏訪市

テンホウは諏訪湖の周りで営んでいた「天宝 鶴の湯」という温泉旅館が、昭和31年(1956年)に中華料理店「餃子菜館」を開業。時は高度経済成長期、大型の旅館が周囲に立ち並び「このままの小さな旅館では太刀打ちできない」と考えて、業態変更。

創業者の百代おばあちゃんが、新宿歌舞伎町の有名中華料理店の味を見込んで単身修行に行き、店主に認められてギョウザ・チャーメン・タンメンのレシピを取得。そのレシピで店を出したところ、諏訪の町で大層繁盛した・・・というサクセスストーリーで、創業から70年経った現在でも「ギョウザのレシピは決して変えるな」という教えを守っているそうです。(創業秘話 | みんなのテンホウより)

テンホウは長野県内オンリーのローカル展開で堂々の34店舗。諏訪・松本エリアで知らぬ者はいない人気ラーメンチェーンです。

さて、解説はこれぐらいにしてお店に入りましょう。

入口にはギョウザに並んでタンタンメンの写真が。こちらが一番人気のようです。

メニューをチェックするととにかく多い!チャーメン、テンホウメン、バンバンチーメンなど謎な料理も多く、目移りしてしまいますが、ぐっとこらえて今日は定番をオーダー。

待っている間はイメージキャラ「てんつるくん」の間違い探しで時間をつぶします・・ってこれ、めちゃくちゃ難しくないですか?何とか3つ探せたところで料理が来ました。

テンホウ名物「肉揚げタンタンメン&ギョウザ」です!鶏もも肉の大きな唐揚げを「山賊焼」という松本・塩尻エリアの文化があるのですが、テンホウで出しているのは豚ロースを揚げたもの。なので「肉揚げ」。

鶏の「山賊焼」を乗せておけば簡単に名物料理になりそうなのに、豚ロースにこだわる。これがテンホウ流なのですね。

まずは肉揚げタンタンメンを啜ります。タンタンメンなのに辛くない。ゴマ風味のスープに肉味噌の旨味で勝負しています。肉揚げのサクサクした味わいも加わり、確かにこれは唯一無二。テンホウオリジナルの味になっています。

ギョウザも見た目は普通ですが、味は独特!これは八角やシナモンの風味でしょうか。タンタンメンと異なり賛否両論な感はありますが、これがテンホウ。最初食べたときは??となりましたが、完食するころには何だかクセに。

長野市の老舗七味メーカー「八幡屋磯五郎」とコラボしたオリジナルラーメン七味も卓上にセット。お客さんが手に取りすぎて削れてしまった「てんつる君」のイラストがいい味を出しています。

第6676252号 (2023年3月登録)

店内あちこちで見かける「てんつる君」のイラストも近年商標登録されており、テンホウブランドの象徴だとわかります。

完食、美味しかったです!チェーン=無個性という常識をぶち壊す、個性の固まり。だからこそ長野のソウルフードと呼ばれるのでしょう。

会計後、缶バッジのカプセルトイに挑戦して出てきたのはソフトクリームでした。ラーメンチェーンなのに自由すぎる。次はソフトも食べないとですね。

おわりに~「ちざ旅」のススメ

テンホウで満腹になり、満ち足りた気持ちで帰路の富士見駅に向かいます。夕方になり、空もずいぶん晴れてきました。

商標情報だけを手がかりにふらっと旅に出ましたが、各地で新しい発見が沢山ありました。

J-PlatPatやGoogleなどインターネットで調べられる情報は便利ですが断片的です。現地に行くことで生の環境や、その土地の息遣いを感じることができます。

知財情報×現地旅の「ちざ旅」。

インターネットやAIから得られる情報の洪水に溺れがちな現代だからこそ、知財を起点にして興味を掘り下げる「ちざ旅」を楽しんでみると、リフレッシュできるのではないでしょうか。

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