近年は、知財をテーマにしたコンテンツが、一般人向けのニュースになる出来事がありました。
例えば、2022年には、第20回『このミス』大賞を受賞した小説「特許やぶりの女王」が発売され話題となりました。この小説の著作者が現役弁理士だったことも、知財業界では驚きをもって受け止められました。
そして、2023年には、奥乃桜子さんが原作の「それってパクリじゃないですか?」が、日本テレビ系列でテレビドラマとして放送されました。私も、毎週リアルタイムで視聴させて頂きましたが、非常に面白いドラマです。
このように、知財をテーマにしたコンテンツは、多数存在しているわけですが、ひときわ異彩を放つコンテンツがあります。
それが、知財をテーマにした「宗教」です。いったいどんなものなのか?実際に本社に行って参拝してきましたのでレポートします。
目次
ゲスト紹介
ドクガク:特許事務所に勤務している弁理屋です。
いろいろなイベントに顔を突っ込んでおり、ある時は村人として映画に出演したりします。
今年は、すごい知財EXPO’23のPRチームのリーダーもやっています。
ブログ:独学の弁理士講座(https://benrishikoza.com/)
Twitter:https://twitter.com/benrishikoza
1. まずは「発明神社」の本社に行ってみた
本日ご紹介するのは、ズバリ「発明神社」です。
どこにあるかというと・・・実は新宿なんです。位置的には都営大江戸線 若松河田駅と、東新宿駅の中間ぐらいです。
「発明神社」は、一般社団法人発明学会が業務を行っている、東京都新宿区にある発明学会ビルの屋上に建立されています。
誰でも参拝することができるのですが、発明学会ビルの屋上は施錠されています。
そのため、参拝を希望される方は、発明学会の受け付けにてその旨をお伝えください。
屋上まではエレベータで上がることができますが、途中に階段があるので、足の不自由な方には参拝が難しいかもしれません。
ちなみに、発明学会の業務時間は、9:30~17:30(日・月・祝日休業日)です。
なお、発明学会とは別に公益社団法人発明協会という団体がありますが、両団体は別の団体です。
このビルの屋上に「発明神社」がある!(筆者撮影)
発明学会ビルの屋上に上がると、普段はシャッターが下りているスペースに「発明神社」があります。
御祭神は、著名な発明家ということで、聖徳太子や平賀源内等が祭られているそうです。
また、「発明神社」には「思案箱」が 置いてあり、思案中の発明を投函することができます。
これが「発明神社」だ!思案箱も見えます(筆者撮影)
投函したらどうなるのか質問してみたのですが、神様が発明を創作してくれるということではなく、神様へ発明の思いつきから発明の完成までを報告するという使い方をするそうです。
思案箱に投函したからといって、神様に発明を知られて新規性を喪失するということはなさそうですね(安心して下さい!)。
なお、「神社」を名乗っていますが、少なくとも本社では勧誘活動なども行われていないようでした(筆者調べ)。宗教を「人間の力や自然の力を超えた存在への信仰を主体とする思考体系、観念体系」と定義すれば、「発明神社」も立派な宗教の1つでしょうが、いわゆる「教団」とは違うようです。
2. 発明神社の由来とご利益
発明神社の由来ですが、
『・・・昭和四十七年発明学会は国の社団法人として認可され、指導力は全国に及びかくて資源なき日本は経済大国となり、物資は飽和状態となる。それにつれて、心の貧困を招き、社会悪の発生となる。
発明学会はそれを憂えて、むかしから私利をすてて世につくせひ、崇高な先輩発明家を祭る発明神社をつくり、その精神にあやからんと昭和六十四年四月十八日招魂祭を挙行しここに発明神社を創立した。』(「発明神社創立の由来」より一部を抜粋して引用)
と書かれています。
発明神社を創立したのは、社団法人発明学会の創立者である豊沢豊雄氏ですが、そこには国を憂える崇高な理由があったのですね。
「発明神社」の由来が書かれており、歴史を感じさせます(筆者撮影)
また、発明神社のご利益も、「発明神社創立の由来」に書かれています。それによると、
『・・・この神には、参拝する人の願いにより、創造力、発想力、アイデア発明力、数学等の思考力等々の知恵を授けるものである。』(「発明神社創立の由来」より一部を抜粋して引用)
知恵を授けるご利益があるとは・・・「発明神社」すごいぞ!
また、発明学会ビルには、会員の発明が展示されています。
その中には、発明学会の名誉会員であるビートたけし氏の発明品「タマジャー」もありました。
名誉会員だったんですね・・・知らなかった。
「タマジャー」は男性の大切なところを守る発明です(筆者撮影)
3. 実は一つじゃないんです
「発明神社」は、日本唯一と言われていますが、実は分社があります。
その分社が「秩父発明神社」です。
この「秩父発明神社」は、埼玉県秩父郡皆野町にあり、ホームページも開設されています。
「発明神社」で検索すると、最初にヒットするので、むしろ本社よりも有名なのではなかろか?と思ってしまいます。
「秩父発明神社」の由来は、
『分社設立の目的は「発明は未来を築き、人類社会の発展に貢献します。いま過疎と衰退に悩む、この秩父の山村に、過去に発明によって偉業をなし、日本の技術発展に貢献した発明神たちを敬い、発想と創造の意識を育て、夢と活力を養い、発明により豊かな社会と、次世代を担う人材を育成すること」といたします。』(「秩父発明神社のホームページ」より引用)
ということで、御祈祷申込も受け付けているそうです。
また、実際に訪問した方が、「花も嵐も寅次郎」というブログで記事にしていますので、ご興味があるかたはご一読ください。2015年の訪問記で、鳥居や社の姿が見えます。発明に尽くした人として、聖徳太子から豊田佐吉、そして竹下登まで祀られている模様です。
記事によると、境内には複数のオブジェが立ち並んでいるそうですが、夏には雑草で覆われるという情報もあるので、「秩父発明神社」は冬の訪問がよいかもしれないですね。
また、「秩父発明神社」では、公式ページでWEB参拝も受け付けています。
ですので、現地へ行かなくても参拝が可能です。
すごいぞ「秩父発明神社」!(なんだか、分社の方が神社っぽい気もしてしまう・・・)
4. 実は分社も一つじゃないんです
さらに「発明神社」は、香川県にも分社があります。
それが、丸亀春日神社の末社である「発明神社」です。
「末社」とは、『神社で、本社に付属し、その支配を受ける小社』のことだそうです。
※「コトバンク」より引用
場所は、香川県丸亀市川西町で、うどんでおなじみの丸亀駅から約5キロ。やや遠いですが、ルート上に丸亀城があるので、観光のついでにいいかもしれません。
とりあえず、便宜的に「丸亀発明神社」と呼ばせて頂きますが、丸亀春日神社のホームページによると、発明にまつわる偉人22名の他に、素戔嗚尊、大己貴神、三穂津姫が御祭神であるそうです。
写真を見る限りでは、分社の中でもっとも立派なんじゃないかと思います。
なんなら、本社よりも立派な鳥居があります。
「丸亀発明神社」の由来は、
『発明学会の創立者であり会長である豊澤豊雄氏により、「日本古来からの先人から創造力、発明力などで、世のため人のために尽くした22名の方々を神として祀り、その人々を敬い尊敬することによって、氏子たちの創造力が増し、学問向上し、大きな財産をつくることができる」という趣旨のもとに建立されました。』
というHPの記載でした。
他のところに、豊澤豊雄氏が丸亀春日神社の氏子という記載があったので、その縁もあって香川県に建立されたようです。
さらに、HPで、「発明神社から御朱印が誕生しました」という案内を発見しました。
聖徳太子がイメージキャラ(「丸亀春日神社のホームページ」より引用)
これがその画像ですけれど、かなり立派な御朱印ですね!ちなみに、何で聖徳太子?という疑問については、「日本で最初の和紙を発明したことで知られる」とのアンサーがありました。
一知財人として、丸亀を訪れる際には、ぜひとも入手したいものです。
5. 実は三重県にもあるんです
さらに、「発明神社」は、三重県にも分社があります。
それが、「三重発明神社」です。
こちらは、ホームページなどもなく、二次情報に頼るしかなさそうです。
というわけで、実際に訪問した方が、「ひまつぶし」というブログで記事にしていますので、ご興味があるかたはご一読ください。
「三重発明神社」の由来は、
『三重発明神社 知恵の神 日本三号社
この地に昔、知恵の神様をお祭していたそうな。今、日本経済は厳しい不況の真っ只中、小泉内閣の知的財産作りを地方(三重)から、発展ある生活、勇気と希望ある教育の活性化を目指し、資源の少ない日本を健全にしなければならない。昨年のノーベル賞受賞の小柴昌俊名誉教授と田中耕一さん、お二人共、知恵の葛藤そして地道な研究努力での大成功を納められ、不況の中、明るい話題と元気の活力を与えてくれました。
我々自身も、お互いに知恵を出し合い、協力しあって自助努力でこの苦境を乗り切らなければなりません。発明神社総裁の豊沢豊雄先生のご指導、ご協力に感謝します。』
(ブログ「ひまつぶし」より引用)
ということなので、「日本三号社」とあるのだから、秩父発明神社」、「丸亀発明神社」に次ぐ三番目の分社ということでしょうか!?
こちらの場所は、三重県伊賀市西高倉ということですが、最寄り駅(伊賀上野駅)からはかなり遠いです。Google Mapではこの辺ですね。
6. 実は三重県にもう一つあるんです
さらに、「発明神社」は、三重県にもう一つ分社があります。
それが、「奥伊勢発明神社」です。
場所は、三重県多気郡大台町栃原で、最寄り駅は栃原駅だそうです。
こちらは、公式かどうか不明ですが、Facebookのアカウントがあります。
「奥伊勢発明神社」の由来は、
『この神社は、2009年に中部電力などを勤められた堀内司さんが建立されました。(みえアイデア発明研究会)
堀内さんは、日本の有形資源は限りあるものでもアイデアや知恵・工夫は無限という想いを持っており、今まで養殖真珠を発明した御木本幸吉さんをはじめ大衆発明を行った20数名の方々をお祀りしているそうです。』(「奥伊勢発明神社のFacebook」より引用)
ということで、意外にも「発明神社」には複数の分社があるのです。
また、堀内さんのインタビュー記事も発見しました。
(「市民活動・ボランティアニュース2005年10月号」より一部を抜粋して引用)
やはり、発明家を祀っているところと、創造力を高めるという趣旨は共通しているのですね。
なお、こちらも実際に訪問した方が、「かむながらのみち ~天地悠久~」というブログで記事にしていますので、ご興味があるかたはご一読ください。
訪問したい方のために、場所はこちらです。(2023年6月時点の情報のため、訪問前にご確認ください)
7. おわりに~発明神社はエンドレス!?
と、ここまで調べたところで、気になるTweetを発見しました。
発明神社本社の「第10号の分社」だと・・・!?
どうやら、日本にはまだまだ「発明神社」が存在しているようです。もしかしたら、あなたの近くにもあるかもしれませんよ?
ここまでさまざまな人に愛され、日本各地に分社されているとしたら、やはり「民間宗教」の1つといえそうですね。
秩父発明神社のHPに記載された「発明は未来を築き、人類社会の発展に貢献する・・・」は確かにその通り。神頼みがどれだけ通じるかは分からないですが、心の支えになるなら1つのあり方でしょう。
ともあれ第10号までの「発明神社」を見つけることができたら、また紹介させて頂きますね。
8. 告知~すごい知財EXPO’23やります!
今年は、すごい知財EXPO’23のPRチームのリーダーをやっていると書いた手前、最後にイベントの説明をさせて頂きます。
・イベント名
すごい知財EXPO2023(主催:株式会社知財塾)
公式HP:https://super-ip-expo.com/
・概要
「ovice」を利用した完全無料・オンラインによる知財サービスイベントです。
8/23(水)から8/24(木)の各日10時-18時に開催いたします。
完全オンラインイベントではありますが、リアル展示会のように仮想展示場を周ることができ、各種知財関連の講演を聞いたり、特許事務所を探したりできます。
・イベント詳細
イベントでは、WIPO日本事務所澤井所長による「知財の国際性と多様性」の講演に加えて、キヤノン株式会社の知的財産法務本部長室の平山室長や、東京大学の田村教授による講演を予定しております。
また、この他にも「2022年度の知的財産権に関する注目判決紹介」や「知財関連のニュースや話題を総ざらい」する講演を企画しております。
・申込方法
参加登録は以下のリンク先からお願いいたします。
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見逃した講演のアーカイブ動画を視聴できるなど、複数の参加特典をご用意しております。
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