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“白くま” アイスの推しを決めたい!古参白くま2種の魅力を解剖してみた

暑い日に、アイスクリームを食べたくなった経験はありませんか?夏の季節になると、筆者はまだ見ぬアイスを求めて、あらゆるスーパーやコンビニのアイス売り場を彷徨っています。そして、ある問題を抱えています…。

それは、『名前に”白くま”が含まれているアイス多すぎないか』問題。とくに、カップに入った白くまは、一般メーカーに加えてコンビニオリジナルの商品も猛プッシュされているようで…。種類が多すぎて、どの白くまを推したら良いかわからない!!

そこで、愛情を注ぐ白くまを定めるべく、古き良き2種類の白くまに関するトピックを掘り下げてみることに。2000年までに”白くま”に関する菓子類の商標を登録し、現在もカップアイスを取り扱っている「丸永製菓」「セイカ食品」が販売する白くまについて、歴史や商品の特徴を調査しました。

この記事では、調査の結果から考察した白くまに対する2社の情熱や、2つのアイスそれぞれの個人的感動ポイントをご紹介。ご自身の”推し白くま”を見つける一助となれば幸いです。

ゲスト紹介

てらこ:認定NPO法人スタッフ&ライター。グルメやラジオ、防弾を防ぐ少年団やポケットに入るモンスターが大好き。ソーシャルセクターの一員として親子支援に携わりながら、異文化交流の促進や執筆業にも励んでいます。
https://twitter.com/TeraWEB1

※本記事はデータベース・公開情報に基づき、筆者が独自に調査および執筆したものです。

“元祖”の名称やキャラクターによって演出されたオリジナリティ

「丸永製菓」「セイカ食品」の白くまにまつわる歴史を年表としてまとめてみると、各メーカーの面白い戦略を多数発見。白くまを愛する2社が実施した、商標面での工夫3点について解説します。

 

※白くまにまつわる歴史年表(筆者作成)

 

まず着目したのは、2002年にセイカ食品が出願した商標「元祖鹿児島 南国白くま」。現在販売されている白くまアイスにも用いられているネーミングです。

 

出典:元祖鹿児島 南国白くま – セイカ食品株式会社

 

詳しくは次の項で述べるものの、じつは、いち早く白くまアイスの工場製造をスタートしたのはセイカ食品。しかし、商標に”元祖”の単語を取り入れたのは、1995年に「南国白熊」の商標を出願してからおよそ7年後でした。

1995年以降、丸永製菓や『センタン』のブランド名で有名な林一二株式会社など、多数のメーカーが白くまアイスを製造。ライバルの増加によって激化した販売競争のなかで差別化を図るために、”元祖”の名称を取り入れたと考えられます。

この、「うちが元祖だぞ!」という誇りと心意気が感じられる商標出願。セイカ食品の社員さんの白くまに対する情熱がひしひしと感じられる、激アツストーリーですね…!

続いての興味深い戦略は、2009年に丸永製菓が出願した「くま吉」くん。白くまをかわいらしくデフォルメしたキャラクターで、現在販売されているアイスクリームのパッケージにもデザインされています。

 

2009年に丸永製菓が出願した「くま吉」くん

 

セイカ食品は2000年にイラスト付きの商標を出願しているものの、こちらは実際の動物に近いデッサン風。

セイカ食品がゆるっとした雰囲気のイラストを使った3種類の商標を出願したのは、丸永製菓のくま吉より10年ほど後の2019年でした。

 

デッサン風イラストが付いたセイカ食品「南国白くま」

 

デフォルメ風イラストが付いたセイカ食品「南国白くま」

 

製造の開始時期はセイカ食品よりも遅かった丸永製菓。”元祖”以外の戦略として、ゆるキャラに代表されるようなキャラクターを用いたPR戦略を考案したのかもしれません。

ちなみに、キュートな雰囲気のキャラクターは、セブン&アイ・ホールディングスがプロデュースしている白くまアイスのパッケージにも登場。デフォルメされた白くまは、かなり引きが強いようですね…。

 

出典:7プレミアム 練乳の味わい白くま|セブン‐イレブン

 

最後に取り上げる面白い事柄は、2020年の「南国白くま」出願について。これまでアイスクリームを含む30類でしか登録されていなかった「南国白くま」が、Tシャツなどを含む25類の範囲でも登録されました。

※商標は商品ジャンルごとに分けて登録される権利のため、異なるジャンルの商品を販売したい場合、同一の商標でも個別に申請が求められます

 

この出願によって、セイカ食品は「南国白くま」のイラストを用いた衣類の販売を開始。イオンのカジュアルファッションブランドとのコラボ商品として2020年-2021年に発売されているのを発見できました。レトロな感じがかわいい…!

 

出典:https://www.aeon-kyushu.info/files/management_news/2075/pdf.pdf

 

と思っていたら、ちょっとショックな事実も。2022年のイオンコラボで発売されたのは、デフォルメされた白くまをデザインしたTシャツ。やはり、かわいいキャラクターのほうが需要があるのかもしれません。切ないっ…。

 

出典:南国白くま【公式】@nanogokushiroku

最も歴史のある商標は、セイカ食品「南国白熊」

続いて、市販の白くまアイスが誕生した流れや背景を探るために、初期段階での歴史を改めて整理してみます。

農林水産省のサイトによると、白くま自体は鹿児島県全域の甘味処や喫茶店で取り扱われているかき氷。鹿児島で親しまれていたスイーツは、一体どのように全国へ普及したのでしょうか?

特許情報プラットフォームで”白くま”および”白熊”を検索すると、アイスクリームが含まれる30区分の商標で最も早期に登録されていたのは、セイカ食品の「南国白熊」。 1995年05月25日に出願され、1997年9月5日に登録されていました。

 

セイカ食品の「南国白熊」

 

ちなみに、”白くま”を含んだ商標を先に登録したのは丸永製菓。「マルナガの白くま」という名称で1997/03/14に出願、1998/12/18に登録されています。

 

丸永製菓の「マルナガの白くま」

 

また、各社の公式サイトに掲載された情報によって、2社が白くまアイスの製造を開始した時期も判明。セイカ食品が白くまの工場生産を始めたのは昭和44年(1969年)頃から。丸永製菓は1972年からとのことでした。

丸永製菓が白熊を発売したのは、1972年。

白くま | 丸永製菓より引用

 

セイカ食品では、昭和44年頃から工場生産を始め、様々な種類、価格で挑戦してきました。

南国白くま – セイカ食品株式会社より引用

 

商標登録や製造の歴史を参照すると、白くまを工場で製造し、全国へ広める初期の段階においては、セイカ食品が大きな役割を担っていたよう。かき氷をカップに詰める発想力、尊敬します…!!

2社の白くまカップアイスを食べてみた

白くまに対する2社の愛情を存分に感じたところで、いよいよアイスを実食。2種類とも美味しいことは間違いない白くまですが、果たしてどのような違いがあるのでしょうか?

 

 

今回レポートするのは、セイカ食品の「南国白くま」と丸永製菓の「白熊」。両社が販売する最もシンプルな白くまカップアイスです。

※最新バージョンのしろくまが手に入らなかったため、セイカ食品の白くまはリニューアル前の商品(“追い練乳”なし)をレポートしています

 

 

フタを開けてみると、小豆やみかんなど、かわいらしいトッピングが登場。まずは、見た目がシンプルなセイカ食品の白くまから食べてみます!

 

 

 

氷はザクザクとした食感で控えめな甘み。練乳と混ざり合うと、こってり濃厚な味わいが感じられます。

小豆はホクホクやさしい味わいで、キンと冷たい氷とのコントラストが絶妙。凍ったみかんが口の中でしゅわっと溶けると、柔らかな甘酸っぱさも楽しめます。やっぱり、美味しい…!!

カロリーは恐ろしいものの、「アイスは飲み物」と信じている筆者。セイカ食品の白くまを堪能したところで、続いて丸永製菓の白くまを味わいます。

 

 

丸永製菓の白くまの特徴のひとつは、中央にかかったチェリーソース。ポップな赤色のソースによって、白くま全体が一層キュートな見た目に仕上げられています。

 

 

ソースや小豆がトッピングされた氷は、どこか懐かしい味。少し固まったふにふにのソースが舌の上でとろっとした食感に変化して、やさしい甘みが口いっぱいに広がります。

練乳はセイカ食品の白くまよりもあっさりした風味で、チェリーソースの味わいを引き立てている様子。氷の粒が細かく、心地よい冷たさが体に染み渡ります…。

2つの白くまアイスの違いとして、筆者が感じた点がこちら。

 

 

甘みやひんやり感がダイレクトに伝わってくるのがセイカ食品、癒やされるようなまろやかな味わいが丸永製菓、という結果になりました。

個人的には、暑い日に爽快な気分を楽しみたいときはセイカ食品、クーラーが効いた室内でのおやつタイムには丸永製菓を選んでみようと思います。

白くまアイス、面白い!

ユニークな戦略によって白くまを全国へ広めていたセイカ食品と丸永製菓。商標における各メーカーの工夫を調べた後で白くまを食べると、もともと美味しかった白くまが、さらに極上の味わいになりました。

しかし、これまで知らなかった事実を知ることができた一方で、2社以外の白くまの歴史や味についても、とことん調べたい欲が。商標調査の予定はまだ決まっていないものの、つまり、普通に食べたいです。

すでに好きな白くまが決まっている方も、まだ決まっていない方も、実際に食べてみたり、商品の情報を調べたりして、ひんやり楽しい白くまの世界に浸ってみてはいかがでしょうか?

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