商標登録出願をすると、特許庁から「このままでは登録できません」とか「ここを直してください」と言われることがあります。
その際に必要となるのが「手続補正書」です。
でも、この手続補正書はどのように作成すればいいのでしょうか?
特許庁から届いた通知にはあまり詳しく書いていないので、困ってしまうことがあるかと思います。
そこでこの記事では、商標の手続補正書について、記載例・手数料・様式など、みなさんが気になるポイントを解説します。
目次
1. 商標の手続補正書とは?
商標の手続補正書とは、商標登録の手続きについて内容を修正することができる書類のことです。
ただし、何でも修正できるわけではありません。
修正できる項目と修正できない項目が、あらかじめ決まっています。
修正できる項目
- 指定商品・指定役務
- 納付する料金
- 間違いのあった住所
- 間違いのあった出願人名
修正できない項目
- 商標
- 出願日
今回は、最も行う機会の多い「指定商品・指定役務」の修正方法について解説します。
2. なぜ「指定商品・指定役務」を修正する必要があるのか?
商標を出願をすると、登録OKかどうか特許庁の審査を受けます。
その審査において、拒絶理由通知(このままでは登録できない旨の通知)が届く場合があります。
(拒絶理由通知について詳しくはこちらの記事をご参照ください)
この拒絶理由通知への対応にはいくつかパターンがあります。
そのうち主に次の2パターンに対応するために、「指定商品・指定役務」の修正が必要になることがよくあります。
- 拒絶理由通知で、似たような商標が登録されていると言われた場合
→ 「指定商品・指定役務」を一部削除して対応する - 拒絶理由通知で、「指定商品・指定役務」の書き方が不明確であると言われた場合
→ 「指定商品・指定役務」を一部修正して対応する
「指定商品・指定役務」を適切に修正すれば、拒絶理由通知をクリアして商標登録させることができる場合も多いです。
このようなときに、手続補正書で「指定商品・指定役務」を修正します。
3. 商標の手続補正書の書き方
「指定商品・指定役務」を修正するための手続補正書は、次の手順で書きます。
手続補正書を書く4つの手順
- 拒絶理由通知を確認する
- 対応表を作る
- 残せる指定商品・指定役務を書き出す
- 手続補正書を作成する
①拒絶理由通知を確認する
まずは、特許庁から届いた「拒絶理由通知書」の内容をしっかり確認します。
そもそもなぜ「このままでは登録できない」と言われているのか、その原因を把握することが大切です。
具体的な確認方法などはこちらの記事をご覧ください。
②対応表を作る
拒絶理由通知で「似たような商標が登録されているからダメ」(商標法4条1項11号)と言われている場合は、まず下記(表1)のような対応表を書きましょう。
似ていると言われた商標①(24C01) | 似ていると言われた商標②(42X11) | |
洋服(17A01) | ||
運動用具(24C01 24C03 24C04) | × | |
電子計算機用プログラムの提供(42X11) | × |
このような対応表を作ることで、「指定商品・指定役務」の中で削除しないといけないものがどれか、漏れなくチェックできます。
「似ていると言われた商標」(引用商標)に含まれる「類似群コード」と同じコードが付与された指定商品(指定役務)を削除すれば良いことになります。
表1の例では、「運動用具」と「電子計算機用のプログラムの提供」を削除すれば良いことがわかります。
ただし、このような対応表を作るには、前提として「類似群コード」の知識が必要になります。
類似群コードについて知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
自分でやるのが難しい場合は、商標を専門とする弁理士に相談しましょう。
③残せる指定商品・指定役務を書き出す
表1のような「対応表」を作ったら、削除せずに残せる指定商品・指定役務を書き出しましょう。
残せる指定商品・指定役務は、「対応表」で「×」が付いていないものです。
「×」が付いていないものは、「似ていると言われた商標」とバッティングしていない商品・役務=登録できる商品・役務だからです。
表1の例では、残せる指定商品・指定役務(「×」が付いていないもの)は「洋服」だということがわかります。
この場合、この「洋服」だけを書き出します。
④手続補正書を作成する
ここまでで下準備は完了です。
いよいよ手続補正書の作成に取り掛かりましょう。
難しそうですか? 心配いりません。後述する様式に従って書けば大丈夫です。
作成するときは、次の3点に注意しましょう。
- 修正すべき指定商品・指定役務があっているか確認しよう
- 対応期限を確認しよう
- 記載ミスがないか確認しよう
特に、記載ミス(③)があると権利がきちんと取れなくなるので、細心の注意が必要です。
4. 商標の手続補正書の手数料と印紙代
気になる費用についても触れましょう。
手続補正書に関係する費用には、 ①弁理士に支払う手数料 と ②特許庁に支払う印紙代 があります。
手続補正書を提出する場合の印紙代(②)は無料です※1。
そのため、弁理士(専門家)に頼まず自分で手続補正書を作成・提出する場合は無料です。
一方、弁理士に依頼する場合は、①と②合計で無料〜5万円程になることが多いです。
※1 例外として、支払不足の手続料金を納付するときの手続補正書には印紙代が必要です。
5. 商標の手続補正書の様式
手続補正書は、様式が決まっています。
とはいえ、下記の様式どおりに作成すれば問題ありません。
様式を確認しながら、手続補正書を作成しましょう。
最も注意が必要なポイントは、上の様式で作成する場合、赤枠で囲った箇所には修正後の全ての指定商品・指定役務を記載しなければならないことです。
たとえば、もともと次のような指定商品の内容だったとします。
【第25類】
【指定商品(指定役務)】洋服,ベルト,履物
この内容から「ベルト」のみを削除する場合には、このように記載します。
【第25類】
【指定商品(指定役務)】洋服,履物
より詳しくは、下記のURLが参考になります。
<参考URL>
まとめ
最後にまとめです。
- 商標の手続補正書とは、商標登録の手続きについて内容を修正することができる書類のこと。「指定商品・指定役務」を修正するために提出することが多い。
- 主に拒絶理由通知に対応するときに手続補正書で「指定商品・指定役務」の修正が必要になる。
- 指定商品・指定役務を修正するための手続補正書は、次の手順で作成する。
- 拒絶理由通知を確認する
- 対応表を作る
- 残せる指定商品・指定役務を書き出す
- 手続補正書を作成する
- 費用は、自分で手続補正書を作成・提出する場合は無料。弁理士に依頼する場合は無料〜5万円程になることが多い。
- 手続補正書は決まった様式どおりに作成しなければならない。
一見難しそうな「手続補正書」ですが、コツがわかれば恐れることはありません。
上手に使えば、手続補正書だけで拒絶理由通知に対応できることもあります。
この記事で解説したポイントをしっかり押さえて、大事な商標を登録に導きましょう!