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商標事務とは

  • 2022年2月1日
  • 2022年4月17日
  • 商標

本記事は現役の商標事務担当者が実際の仕事に基づき解説していきます。

1.商標事務とは

商標事務とは、商標登録に関する事務のことです。「商標登録」とは、商品やサービスの目印(商標)を守る国の制度の下、その目印(商標)を国に登録しておくことをいいます。

特許事務所における商標事務は、弁理士の指導監督のもと、クライアントの商標登録手続きの補助を行います。

2.商標事務の仕事内容

特許事務所における商標事務のおもな仕事内容は、弁理士の指導監督のもと、以下のような商標登録に関する補助業務です。事務所の方針にもよりますが、商標調査は弁理士が行うことが一般的です。

  • 出願手続き
  • 特許庁からの発送文書の受け取り
  • 早期審査の書類提出
  • 使用意思・事業計画書の書類提出
  • 拒絶理由対応等の書類提出
  • 登録料納付
  • 期限管理
  • 更新手続き
  • 住所・名称変更手続き
  • 名義変更・移転登録手続き
  • 不使用取消審判の書類提出
  • 電話やメールでのクライアントのサポート
  • 見積書・請求書・領収書の発行

一般企業における商標事務は、自社製品が第三者の知的財産を侵害していないかどうかの調査や、自社の知的財産が他社に侵害されていないかの調査、他社との商標権のライセンス交渉などを行います。

3.商標事務の1日の流れ

商標事務の1日の流れの一例をご紹介します。(在宅勤務の場合)

09:30 出社、メールチェック
09:45 所内のオンライン会議
10:00 特許庁からの発送文書の受け取り、弁理士に拒絶理由通知の通知
10:30 登録料納付書の作成、提出前チェック、クライアントへメール
12:00 休憩
13:00 登録料納付手続き、報告書の作成
13:30 クライアントからの電話対応、メール返信
15:00 商標登録願作成、提出前チェック、クライアントへメール
17:00 出願手続き、報告書の作成
17:30 退社

4.商標事務が未経験から経験者になるまで

特許事務所などで商標事務を経験し、実務を通して業務経験を積んでいくのが一般的です。 実務の中で、「商標法」について詳しくなり、商標登録に関する特許庁の資料を参考に、商標登録の一連の流れや各種手続きの様式や方法などを勉強していきます。

商標事務は専門的な事務職のため、専門知識を深め、手に職を付けて長く働く方が多いお仕事です。

また、知的財産の幅広い知識を身につける手段として、国家試験である知的財産管理技能検定を受験することも有効です。商標だけではなく、特許、実用新案、意匠、著作権、民法なども網羅的に学ぶことができ、知的財産全般への理解が深まります。

5.商標事務の年収や条件

正社員

商標事務の年収は、特許事務所の正社員の場合、300万円〜450万円くらいが一般的です。その人のスキルや知識、経験や事務所の収益により変わってきます。収益性の高い事務所ほど、給与水準を高く設定することができます。

キャリアステップとしては、所属部署の管理職になることなどで、更なる年収アップを見込めます。

パート・アルバイト

時給は時給1200円~1500円くらいが相場です。その人のスキルや知識、経験により決定されます。

勤務日数などは、業務内容や案件量によって異なります。

6.商標事務のやりがい

  • 様々な企業の発売前の新製品や新サービスをいち早く知ることができます。
  • 自分が関わった商標が登録になり、テレビや街中で見かけたとき、商標が社会で役立っていることを実感できるのは、この仕事の醍醐味でもあります。
  • 商標事務は電話やメールなどでクライアントと接する立場でもあるので、クライアントの疑問や不安を解消し、感謝されたときは、達成感を感じます。

7.商標事務の良いところ、大変なところ

良いところ

  • デスクワークが中心で、静かな環境で働くことができます。
  • 専門性のある事務職のため、専門知識を深めながら長く働くことができます。
  • 弁理士と協力しながら業務を行うため、学びが多く、成長できる環境に身を置くことができます。
  • 特許事務所の休日は、特許庁の休みに合わせることが多く、土日祝日、年末年始はお休みになることが一般的です。週休二日制のため、プライベートの時間を充実させたい人にはおすすめです。

大変なところ

  • 書類作成など1文字でもミスをすればクライアントの権利に多大な影響を及ぼすため、ミスの許されない仕事です。
  • 特許庁への提出物は期限があるため、期限管理には細心の注意を払わなければなりません。
  • 特許庁への提出物は紙で提出しなければならないものもあるため、業務内容によってはオフィスへの出社が必要です。
  • 未経験の募集が少ないこと。未経験でも就業可能な場合は、商標の制度について主体的に学び、実務を通して経験を積んでいく必要があります。

8.商標事務に適性がある人

  • 細かいチェック作業が得意な人
  • 特許庁への提出物は期限があるため、期日を期限を意識し計画的に業務を進めることができる人
  • 弁理士とのコミュニケーションを取りながら業務を進めるため、コミュニケーション力と協調性がある人
  • 法律は変わることが多いため、商標法をはじめとする法律や商標の制度について日々意欲的に学ぶことができる人
  • 秘密保持の意識が高い人。弁理士にはクライアントの情報の守秘義務が課せられているため、商標事務もクライアントの情報は慎重に扱わなければなりません。
  • ITリテラシーが高い人。現在、特許事務所の中でもIT化が進んでおり、単純な業務は自動化されつつあります。知財の専門性を高めることはもちろん、ITによる業務効率化も求められています。

9.商標事務へのインタビュー

■特許事務所で知財事務全般を経験し、経験者として現在 Toreru で商標事務として活躍中のAさん(30代/女性)にお話を伺いました。

私は学生時代より司法試験を受けており、法律自体に興味がありました。司法試験の受験科目は対国家規範であったり、当事者間対立構造を念頭に置く側面が強いと感じ、なかなか自分のキャリアをイメージできないでおりました。その一方で、知財業界は業界全体が一丸となって権利を保護することで産業の発展に寄与するため、ポジティブな業界だと感じました。

その中でも、商標は他の知的財産権(特許・実用新案・意匠)の出願に比べ、日本で唯一出願件数が伸びていることに未来を感じました。

転職の理由としては、私は商標を専門とする弁理士を視野に入れているため、多くの経験を積むことができる Toreru に決めました。 Toreru は商標登録出願代理件数が日本で一番多く、数々の実績があり、経験を積めることに魅力を感じました。多くの業務をここまで効率化しているところは他に無いと思います。

商標事務の醍醐味は、業務を通じて様々な会社の技術やサービス内容を知ることができ、知見が広がることだと思います。

また、以前の特許事務所では個人事業主のお客様と接する機会はなかったのですが、Toreru では個人事業主のお客様からもお問い合わせをいただくことが多いです。お話を伺ってみると、「そもそもなぜ商標が必要なのか」などの商標全般のご質問をいただくこともあり、商標のご相談の受け皿になっている実感があります。

以前の特許事務所ではそのようなお客様のケアができていなかったので、専門知識を活かしてお客様と接することでお役に立てることはとても嬉しく思います。

今後は、単純な業務を効率化していった先に、事務全体を見渡して、「機械ではなく、人間が携わらなければならないことは何か」を追求していきたいと考えています。また、商標制度の理解をより深め、個々のお客様の悩みや懸念点に寄り添い、お客様のニーズを把握し、お客様からも特許庁からも信頼される存在を目指していきます。

■未経験から商標事務をはじめ、現在 Toreru で活躍中のBさん(30代/女性)にお話を伺いました。

事務系のお仕事を広く探している際に Toreru の商標事務の求人が目に留まりました。面接を受けた際に感じた雰囲気の良さや、新しいことに次々とチャレンジしている様子などから、Toreru での商標事務に興味が湧き、私もメンバーの一員になりたいと思って入社を決めました。

業界未経験からのスタートでしたので、最初の3ヶ月くらいは覚えることが非常に多かったです。その後も日々学ぶことや発見があり、飽きることがありません。作業に対しての正確さはもちろんのこと、「理解の正確さ」も大切な仕事だと思います。

また、 Toreru は、単純作業は極力自動化するなど効率化にも積極的に取り組んでいます。日々の仕事の中で何か気づきがあれば、カンタンに提案や周知ができる環境が整っているので、自分の仕事に改善点を見つけ、工夫しながら働くことが好きな方にはとてもやりがいを感じられる環境だと思います。同時に、一つのやり方に固執しない柔軟性も必要になってくると思います。

商標事務として入社いたしましたが、現在は商標事務以外にも様々な仕事にチャレンジさせていただいています。今のところは各施策にアサインされて参加している身ですが、ゆくゆくは「今の Toreru に必要な施策」の計画立案から取り組めるような力をつけたいと思っています。

10.商標事務の英語の必要性

海外のクライアントや現地代理人とのやり取りをすることが多い特許事務所では、英語での対応が必要となります。

海外の案件を扱う場合は、以下のようなケースがあります

  • 海外のクライアントが日本に出願する場合(外内)
  • 日本のクライアントが海外へ出願する場合(内外)

11.特許事務と商標事務の違い

特許事務は特許に関する事務のお仕事です。特許事務所での勤務の場合、おもに弁理士の指導監督のもと、特許に関する補助業務を行います。おもな業務は以下の通りです。

  • 特許出願書類作成
  • 特許出願
  • 期限管理
  • 年金管理
  • ライセンス契約管理
  • 電話・メール対応

特許と商標は、同じ知的財産権ではありますが、手続きの流れ、必要書類、専門用語が若干異なります。

特許事務は海外の知的財産権の管理をすることも多く、語学力を活かすことも可能です。

商標事務よりも制度が複雑であるため、より多くの知識を要します。

12.商標事務と商標担当者の違い

  • 商標担当者の業務は、おもに弁理士が担当します。事務所によっては、弁理士資格を持たない商標担当者が弁理士の指導監督のもと、以下のような業務を行うこともあります。
    • 商標調査
    • クライアントとの面談
    • 出願する商標の指定商品・役務の選択
    • 早期審査の事情説明書の作成
    • 意見書・補正書の作成
    • 不使用取消審判の書類作成
    • 異議申立ての書類作成
  • 商標担当者は専門的な判断(類否判断・識別力の有無等)を伴う実務を行うことに対し、商標事務は専門的な判断を伴う実務は行わず、弁理士の指導監督のもと、クライアントの手続きのサポートなど行います。
  • ただし、商標事務の場合も商標制度の概要について深く理解しておく必要はあり、事務手続きの専門性を求められます。

13.商標事務の将来性

特許事務所の仕事は、AIやクラウドなどで自動化されている傾向にあります。例えば、Toreru では商標事務は従来の10分の1まで自動化されています。

将来的には、CX(顧客体験)の高いカスタマーサポートや商標事務の効率化業務などに従事していく人材が求められるようになると考えられます。そのためには、商標の知識を深めることはもちろん、ITの知識や技術を磨いていく必要があります。 具体的には、FAQの構築や記事作成、社内マニュアルの整備、商標事務の効率化ツールの活用など、商標事務における無形資産を形成することで、特許事務所の中で必要不可欠な存在としてポジションを確立させていくことができるでしょう。

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