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どうして「セブンカフェ」は日本一のコーヒー店になったのか ~ブランド成長を支える知財のヒミツ

コンビニでお買い物をすると、レジでついでに注文してしまうコンビニコーヒー。

コンビニコーヒーがスタートした当初は、美味しいコーヒーが、こんなに手軽に、しかも安く買えるようになったんだと感動したのを覚えています。

各コンビニチェーンで展開しているコンビニコーヒーは、それぞれ独自の魅力があります。その中でも、セブンイレブンは、『セブンカフェ』というネーミングのコーヒー提供サービスをいち早く起動に乗せることに成功しました。その、『セブンカフェ』は、どのように誕生し、なぜあんなにも売れる商品へと成長したのでしょうか??この記事では、知的財産の観点から見てみたいと思います。

0.日本のコーヒー文化の歴史とセブンカフェの功績!

本題の知的財産の話の前に、日本のコーヒー文化の歴史、そしてセブンカフェの功績について簡単に紹介したいと思います。

日本のコーヒー文化を大きく変えることとなったのは、スターバックスの日本上陸。日本上1996年のことです。喫茶店でもなく、缶コーヒーでもない、『カフェチェーン』でコーヒーを楽しむという新しい習慣が、若い人を中心に浸透していきました。

また、2008年にはマクドナルドで100円コーヒーがスタートしています。当時、100円で飲める手軽な本格コーヒーは話題となり、人気を集めました。発売以降、数年に一度のペースでリニューアルしています。

日本経済新聞 マクドナルドの100円コーヒー

このように、幅広い年齢層の方々が様々な場所で、手軽にコーヒーを楽しめる文化が定着してきた頃。2013年1月にセブンカフェが誕生しました。セブンカフェは、発売から半年で2憶杯突破、これは一日一店舗あたり95杯という計算です!

セブン&アイホールディングスニュースリリース

セブンカフェは、予想を大きく上回るスタートを切り、急成長を遂げました。

スタートした2013年には、「日経優秀製品・サービス賞2013」日本経済新聞賞の最優秀賞を受賞する快挙、このようなセブンカフェの大きな貢献があり、月刊誌「日経トレンディ」が発表した2013年のヒット商品の第1位には「コンビニコーヒー」が選ばれました。

日経トレンディ 2013年ヒット商品

セブンカフェで大成功を収めたセブンイレブンですが、実は、このセブンカフェを打ち出す以前にも何度かコーヒーの提供にチャレンジしていました。そして、試行錯誤を重ねたものの、上手く軌道に載せられなかったのです。

では、なぜ今回の『セブンカフェ』は大成功したのでしょうか。

冒頭で述べたような日本のコーヒー文化の変化も理由の一つだと考えられますが、

今回の『セブンカフェ』でセブンイレブンが打ち出した戦略にも秘密がありそうです。

1.セブンカフェの誕生の秘密は、チームMD(マーチャンダイジング)にあり ~各社の強みと知財~

今回大成功となったコンビニコーヒーですが、元々、小売業であるコンビニが新たにコーヒー業界に参入するには、大きな障壁があったのではないでしょうか。

例えば、コーヒーチェーンと肩を並べられるような『おいしくて飲みやすく、万人受けするコーヒーの味』を追求する必要があるでしょう。更には、セルフサービスを想定して、店員さんもお客さんも操作しやすく、更にはレジの横に置けるような小型サイズのコーヒーマシンを開発する必要があります。

これらをセブン単独で一から開発し、実現するのは非常に長い道のりになってしまいそうですね。

実は、『セブンカフェ』は、セブンイレブンがプロジェクトリーダーとなり、原料・製造・資材・機材などを提供するメーカーと共同で商品を開発する「チームMD(マーチャンダイジング)」という体制で誕生しました

週刊東洋経済 セブン独り勝ちの秘密

名前を知っている、有名な企業の名前がズラリと並んでいますね。

共同開発体制をとっているセブンカフェ。各社の強みがどのように活かされているのでしょうか?各社が出願人となっている知的財産からひも解いていきたいと思います!

1-1. ロゴはセブンイレブンが商標登録

まず初めに、セブンカフェのロゴについては、セブンイレブンが商標登録しています。

Toreru商標検索

こちらのロゴは、クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏がデザインされました。佐藤氏は、セブンカフェはもちろん、セブンイレブンブランド全体のブランディングを手がけています。

セブンカフェの新ブランド、佐藤可士和氏が手掛ける

こちらのセブンカフェのロゴは、セブンイレブンの他のラインナップ、セブンプレミアム等と統一感されていますね。

セブンイレブンのオリジナル商品

1-2. コーヒーマシンの外観は富士電機とセブンが共願、機能面では富士電機が単願

コーヒーマシンについては、富士電機が大きく貢献しています。

富士電機は、ご存知の通り日本の大手電機メーカーです。自販機系意外にも、パワー半導体や再生可能エネルギー関連設備など幅広く手がけています。

セブンカフェの核といえるコーヒーマシン、知財により差別化が図られているのでしょうか。まず、マシンの外観と思われる意匠登録を見つけました。この意匠はセブンホールディングと富士電機の共同出願となっておりました。

意匠登録1548823

また、顧客が操作する側の面は、関連意匠や部分意匠によっても、しっかり押さえられています。

意匠登録1549038 意匠登録1548824

一方、コーヒーマシンの機能面については富士電機から特許出願が沢山見つかりました。その中でセブンイレブンと共同で出願されている特許は一件もありませんでした。富士電機の事業内容を鑑みると、機能に関する部分は、富士電機側がたくさん技術を持っていることが予測できますので、富士電機の強みが発揮されている領域なのでしょう。

実際にどんな特許が出願されているのか見てみましょう。顧客が自らコーヒーを入れるシチュエーションで発生しそうな課題を、技術的に解決しています。

特許第6028344号

こちらの特許は、『既にコーヒーを注入したカップに、再度コーヒーを注入してしまう』といった、技術課題が実際のシチュエーションに沿った具体的なものであることが特徴ですね。カップが無くなったこと及び扉の開閉を検知するステップを入れることにより、この課題を解決しています。

以上のように、コーヒーマシンについて知的財産を見てみると、外観は富士電機との共願、機能面は富士電機の単願と、権利の線引きがはっきりと表れていました。

1-3. エンボス形状の紙コップは東罐興業株式会社のノウハウ

続いて、コーヒーを提供する紙コップを製造する会社について見てみましょう。

セブンカフェのホットコーヒーを注文すると、凹凸形状の紙コップにコーヒーを入れて頂けます。この凹凸形状は、エンボス形状と呼ばれています。なぜでこぼこしているのかご存知ですか?

紙コップの表面に凹凸形状を施すことにより、断熱性が高まります。お客さんが持ち運びに困らず、かつ、コーヒーが冷めてしまわないという、テイクアウトを前提とする、コンビニコーヒーに必要な性能を満たしているデザインなのです。

コンビニでよく見るエンボスコップとは? 木村容器株式会社Webサイト 

エンボス形状の紙コップについては、東罐興業株式会社から出願されて、意匠登録されています

意匠登録1497495

更に、紙コップの表面にエンボス形状を施す方法については、特許にて権利化されています。

特許5943497

意匠も特許も、いずれも権利者は東罐興業株式会社が単独の権利者となっています。セブンホールディングスとの共有の権利になっていません。

更に、東罐興業株式会社のエンボスコップは、ドトールコーヒーのテイクアウトカップ等にも使われているのを見かけますね。エンボス形状は東罐興業の独自のノウハウであり、セブンイレブンに限らず、幅広く提供されています。

1-4. コーヒー焙煎技術はAGF UCC

続いて、コーヒー豆の焙煎、抽出技術については、味の素ゼネラルフーズとUCC上島珈琲が注力しています。

セブンカフェに織り込まれている技術はどれなのか、具体的な案件は特定することはできませんでしたが、いずれの会社も、コーヒー豆の焙煎、抽出技術に関する特許について、数件の特許出願が確認できました。

1-5. 2018年のセブンカフェ刷新の際は三社が手を組む

セブンカフェは2018年にリニューアルしています。

焙煎方法の変更や、新しい工程の追加などにより、味わいに磨きがかかりました。

このリニューアルにおいても、これまでご紹介した各企業と手を組み、実現に至ったようです。

セブン&アイホールディングス公式サイト セブンカフェをリニューアル

3社がそれぞれ権利を有していますが、知的財産権は権利の名義人だけではなく、ライセンス先に許諾し、実施を認めることができます。セブンカフェも別途契約で、許諾を認めているのでしょう

2.リニューアルで更なる進化、『顧客のボタン押し間違い問題』はテクノロジーの力で解決

記事の前半では、開発に関わる企業の知的財産からセブンカフェの誕生について調べてみました。

セブンカフェは2013年にスタートして以来、何度かリニューアルされ、より良いサービスに刷新されています。その中でも印象的だったのが、『コーヒーマシンのボタンの押し間違い』の課題を解決した、コーヒーマシンのリニューアルです。

2-1. 盲点だった!?スタイリッシュなデザインに潜む『ボタンの押し間違い問題』

一度でもセブンカフェを利用したことのある方はご存知の通り、セブンカフェはセルフ方式をとっています。利用者は、お会計の際にレジで手渡されたコップを、自分でコーヒーマシンにセットし、自分の購入した種類のコーヒーのボタンを押してコーヒーを淹れます。

しかし、いざコーヒーマシンを目の前にすると、どのボタンを押して良いのか分からない人が続出しました。

自分が注文したのと違うサイズのボタンを押してしまい、コップからコーヒーが溢れてしまう、また、値段の違う種類のコーヒーを入れてしまい、返金処理が発生してしまうなど。

このようなボタンの押し間違えが発生する原因の1つとしては、セブンカフェのコーヒーのサイズのバリエーションが、日本で一般的なサイズ表記であるS,M,Lではなく、R(レギュラー)とL(ラージ)であったことが挙げられています。

このサイズ表記に馴染みのないお客さんは、目の前にSMLの表記のボタンがあっても、どれを押したらよいかが瞬時に分からないのです。他には、コーヒーマシン操作面の表示についても挙げられています。シンプルでスタイリッシュな操作面のデザインが、かえってどこを押して良いか分かりづらくしてしまった、というお客さんもいらっしゃったようでした。

お客さんの押し間違えを防止するため、各店舗がテプラシールなどを貼って対策していたようですね。あまり評判が良くなく、SNS等でテプラシールが貼られた画像がアップされているのを見かけました。

私自身はあまり抵抗がありませんでしたが、どのボタンを押したら良いか分からないので買う勇気が出ない、という友人がいました。私の実家の両親も、戸惑うと思います。

2-2.『ボタンの押し間違い問題』は、テクノロジーの力で解決

2018年、コーヒーマシンのリニューアルに伴い、この『ボタンの押し間違え問題』も解決となりました。

セブンコーヒーに新型機

上の写真の通り、新型のコーヒーマシンはボタンが一つなので、お客さんはボタンを押し間違えることがありません。

新型のコーヒーマシンは、ホットとアイスのカップの識別、さらにはカップサイズの認識を自動で行うセンサを備えています。センサで識別したカップの種類と大きさから、対応する飲料を判断します。

顧客がボタンを押すと、飲料の注入がスタートします。

この仕組みであれば、お客さんの判断ミスの可能性が確実に排除される…これはまさに、テクノロジーの力で課題を解決していますね。

この課題解決のキーとなる、カップの自動判別技術に関する技術が、富士電機から特許出願されていました。

特開2020-179939

この技術により、顧客がコーヒーを購入する心理的なハードルも下がり、より一層利用しやすいサービスとなりました。またお店側も、返金作業などの負担が減りました。セブンカフェは登場以来、このように改良を重ね、進化を続けていることが、売れ続ける商品へと大きく成長している秘密であると考えられますね。

ちなみに現在は、下記の写真のように、2種類のコーヒーマシンを置いている店舗が多いようです。従来のボタンが複数あるタイプのマシンと、今回ご紹介したボタンが1つのみの自動判別タイプのマシンです。現状では、カフェラテは従来型のタイプのみでしか淹れられることができません。一方、ブラックコーヒーはどちらのタイプのマシンでも淹れられます。

3.まとめ

累計杯数50憶を突破したコンビニコーヒー、『セブンカフェ』は、各社強力企業の集大成により誕生したこと、そして、誕生後も改良を重ね、進化を遂げてきたことが知的財産から分かりました。

まず、『チームMD』に参画する各社の強みは、それぞれ知的財産でしっかり守られていました。中には、セブンイレブンとの共同出願という形で権利が共有されているものもありました。

知的財産を見ると、こだわりを持って作り出されたセブンカフェが、コーヒーチェーンに負けないクオリティであるのも納得です。味だけでなく、コーヒーマシーンによるオペレーションについても、テクノロジーの力でしっかりと支えていることが特許出願から分かりました。

また、コンビニコーヒーは、カフェチェーンにはない課題もある一方で、カフェチェーンとは異なる強みがあります。

例えば、価格。スタバコーヒーの半分以下の価格で購入できます。更に、店舗数はコンビニの方が圧倒的に多いため、顧客が立ち寄れる確率も自然と上がりますね。

(店舗数参考:セブンイレブンは2万店以上、スターバックスコーヒーは約1600店)

私自身も、もともとスターバックスやドトールコーヒーをよく利用していました。しかし、コンビニコーヒーの魅力に気付いてからは、シチュエーションに応じて使い分けるようになりました。例えば、店内で過ごしたいときはコーヒーチェーンを利用、散歩や出先などで持ち歩きたいときはコンビニコーヒーを購入、というようにです。

このように、セブンカフェをはじめとするコンビニコーヒーは、発売開始以来、『新しいコーヒーのスタイル』のポジションを確立していると言えます。

勢いの止まることのないセブンカフェ。今後も日常生活にたくさん取り入れ、楽しみたいと思います。

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