インナー “からの” ブランディングを実践したら、幸せと売上が両立した話 ~ブランディング事例~

「何のために仕事をしているんだろう?」
「何のためにお金を稼いでいるんだろう?」
「何のために生きているんだろう?」

嵐のように過ぎ去っていく毎日の中で、ふと考えることがある。
筆者もその一人だ。

そんなことをいちいち考えていても仕方ない。そう思いながらも、やるべきことに追われて余裕を失っているとき、つまずいたとき、疲れてしまったとき・・・ちょっとしたきっかけで、どうしても考えてしまう。

きっとそれだけ、人間にとって欠かせない問いだからなのかもしれない。

いつものようにそんなことを考えていたとき、幸運にも、迷いを晴らすヒントとなるような珠玉の話を聞かせてもらえる機会を得た。それは、一つの生きたブランディングの事例だった──

1.インナー(内側)からのブランディングとは

「ブランディング」という言葉ほど、人によってイメージするものが変わってしまう言葉を筆者は知らない。

多くの人が思っているイメージは、見栄えを良くするとか、こう思われたいというイメージを作り上げるという感じではなかろうか。

モテるためにはどうすればいいかを徹底的に考えて、必要なことを実行する。いわば「外側」からのブランディングだ。

筆者が考える真のブランディングは、「内側」からのブランディングである。これを「インナー(内側)からのブランディング」とでも呼ぼうか。一般的に、社外に向けてではなく社内に向けたブランディング活動を「インナーブランディング」とか「インターナルブランディング」と呼ぶことがあるが、これとはやや違う意味合いである。ここでいう「インナー(内側)からのブランディング」とは、社内に向けたブランディングではなく、社内からのブランディングだ。(もちろん、これにより社内に向けたブランディングにもなり得るところも重要な点だ。)

インナー(内側)からのブランディングの場合、外側からの場合とはベクトルが全く逆である。何をするかというと、

  1. 自分自身をよく知って
  2. やるべきことに納得して
  3. やり切る
  4. その姿を周りに見せる

ということをやるのだ。

出発点が、「どうすればモテるか」ではなく「自分自身をよく知る」となっている。自分自身をよく知るためには、自分の「内側」に徹底的に向き合うことが欠かせない。

だから「インナー(内側)からのブランディング」なのだ。

2.インナー(内側)からのブランディングの何が良いのか?効果は?

ブランディングの出発点を「内側」にすると、次のような利点がある。

  • 強み(弱み)を活かせる
  • 自分がやっていることに納得できる
  • 壁にぶつかってもやり切る力が出る
  • 濃い(フィットする)顧客と仲間が来る
  • 結果として売上と利益が上がる
  • 顧客も自分も幸せになる

なぜこのような利点があるかを理解するためには、逆に出発点を「外側」にするとどうなるのかを考えるといいだろう。

「外側」からブランディングをするとこうなる。

  • 売上起点
  • 顧客起点
  • 短期視点
  • 売上が上がったとしても本当に幸せか?

ビジネスにおいてブランディングに取り組むなら、売上(利益)に貢献することは間違いなくマストである。ブランディングを実行するには様々な投資が必要だからだ。したがって、ブランディングを「外側」から考えると、必然的に「売上が上がるためにはどうすればいいか?」から逆算する思考になる。「どうすれば顧客がお金を払うか?」からスタートする、と言い換えてもいい。

ただ、ブランディングのスタートを売上や顧客の満足におくと、結果が出ない期間は拷問のようである。売上や顧客の満足を最大の目的として考え出したあらゆる施策に対して「やり方が間違っているのではないか?」という不安が常に付きまとう。その施策を選んだ根拠が売上だからだ。根拠が揺さぶられれば、簡単にぐらついても仕方がない。短期視点になるのは自然な成り行きだ。

もちろん、採った施策がうまくいき売上が上がることもある。素晴らしい。ビジネスとして大成功だ。しかし、何か大事なものを置き去りにしていないか?

そう、自分である。ここでは自分の幸せが忘れ去られている。自分が「どう在る」のが幸せなのか。うっかりそれを無視した手段でビジネスとして大成功しようものなら、金持ちの不幸の姿が目に浮かぶ。

「内側」からのブランディングは、この忘れ去られた自分からスタートする。

自分の好きなこと。嫌いなこと。強み。弱み。持っているもの。持っていないもの。他者と同じ部分。違う部分。やりたいこと。やりたくないこと。喜ばせたい人。そしてそれはなぜか──

そこを突き詰めた後で浮かび上がる「道」は、誰よりも自分が納得できるものだ。この納得とは、言い換えると「たとえこれで失敗しても悔いはない」ということでもある。こう言うと、「結果(売上)が出ないことの言い訳を用意している」とか「甘い」とかいう声が聴こえてきそうだ。だがそういうことを言っているのではない。ビジネスとしてやる以上、売上を上げることがマストなのは、すでに書いた通りだ。そういうことではなく、ここでいう納得がないと、壁にぶつかったときに簡単に「折れて」しまうのだ。納得があれば、少々の壁にぶつかってもやり切る力が出る。このようなやり切る力がビジネスを成功させるために不要だという人が、果たしているだろうか。

むろん、「外側」への伝達は極めて重要だ。いくら自身を深く理解し、やるべきことに納得し、それをやり切っても、それらが「外側」に伝わらなければ、顧客は来ないし、仲間もできない。逆に、その一連のプロセスを適切に「外側」に伝えることができれば、あなたの「内側」に惚れ込んだ顧客や仲間が集まってくる。企業と顧客、企業と従業員との関係は、人と人との関係と同じだ。

だから、「外側」への配慮が不要だと言っているのではないのだ。むしろ超重要である。「外側を起点とする」ことを問題にしているに過ぎない。そこは理解していただきたい。

自分が持っているものを活かし、本当にやりたいことを、納得して、やり切る。その姿に共感した顧客や仲間が寄ってくる。結果として、売上も上がるし、広告コストや採用コストも下がる。そうなれば当然、利益も上がる。顧客も自分(仲間)も幸せな状態である。

これが私が考える「インナー(内側)からのブランディング」の価値である。

3.インナー(内側)からのブランディングを体現して効果が出た事例

とはいえ、まだピンとこない人も多いだろう。そこで一つ、正にインナー(内側)からのブランディングを体現したような事例をご紹介したい。

それは、『OTOKO DESIGN(オトコデザイン)』というブランドである。

「プレミアムヘアサロン寿(KOTOBUKI)」という名の理容室のブランドだ。埼玉県新座市片山に店舗を構える。

このブランドをつくるのに社外からサポートしたのが、ブランドづくりやデザインを手掛けるデザインファーム「OICHOC(オイチョック)」だ。その代表取締役 / ブランドディレクターを務める八幡 清信(やはた きよのぶ)氏に、『OTOKO DESIGN』ブランドの「内側」を聞くことができた。

 

八幡 清信
KIYONOBU YAHATA
OICHOC 代表取締役 / ブランドディレクター

26歳でデザイン会社「OICHOC」(https://www.oichoc.com/)設立。2010年に法人化し代表取締役就任。20年の経営経験から、経営者の「おもい」に寄り添うブランドデザインを目指す。ブランドマネージャー1級資格&トレーナー。社会貢献活動「南三陸ねぎ応援プロジェクト」を創設。その活動は新聞、ラジオ、テレビでも紹介され注目を集めている。ブランディング事例コンテスト2018大賞。ロンドンで開催されたPENTAWARD 2019入賞。動画で応募! 地方創生大賞優秀賞。

 

プレミアムヘアサロン寿
PREMIUM HAIR SALON KOTOBUKI
埼玉県新座市片山1-9-17-102
http://otoko-design.com/

インナー(内側)からのブランディングを実施したら、 “数字” が跳ね上がった

いかにして KOTOBUKI の『OTOKO DESIGN』ブランドができあがっていったのかに入る前に、あえて、重要な “数字” について触れておこう。繰り返すが、どんな理想を述べたところで、ビジネスにブランディングを活かそうとする以上、数字に貢献しなくていいということには決してならないからだ。

八幡氏の主導の下、KOTOBUKI がブランディングに取り組んだ結果、それ以前と比較して、わかっているだけでも以下のような効果があったという。

  • 新規顧客数:1.5倍
  • 顧客単価:1.15倍
  • 商品売上:1.5倍
  • 指名率:1.3倍
  • 採用問合わせ:広告出して1名 / 年  → 広告なしで3名 / 年(そのうち1名採用

いずれも大きな成果だ。さらに、現在のコロナ禍にあっても、1ヶ月の新規顧客来店数は100名くらいいるそうだ。筆者の自宅の近所にも、コロナ禍でもなんのその、狭めの店内にお客さんがびっしりの “トガった” ステーキ屋があるが、特定の顧客層に対し深く刺さっている証拠だろう。有名な男性向け月刊誌「Lightning」で取り上げられたり、理容美容専門学校からの講演依頼等も増えている。一時的なキャンペーンとは異なり、顧客の頭の中のイメージを刷新するブランディングは長く効果が続く。きちんとこのような “数字” や効果が出れば、ただの理想論ではないことがわかるだろう。

絶望的とも言える “人気のなさ” に苦しんでいた

ところで、みなさんの友人・知人に「理容師になりたい」と言っている(た)人はどのくらいいるだろうか?

失礼を承知で言うが、筆者の周りにはこれまで1人もいなかった。

そう、理容業界はいま、業界全体として深刻な “人気のなさ” に苦しんでいる。

それを端的に示すのが、理容師を輩出する理容専門学校の卒業者数だ。文部科学省が発表した学校基本調査の数字によると、2000年頃には2,000人以上いた卒業者数が、20年後の2020年にはわずか500人台まで落ち込んだ。“美容師” も同じく数字が落ち込んでいるようだが、それでもまだ美容師は卒業者が1万5,000人程度いる。

このような状況にあると、大きな悩みの種となるのが、理容師の「採用」である。

現在、東京だけでも理容師の求人は2,000社ほどあるという。全国で毎年わずか500人の卒業者を取り合うのだから、なかなか厳しい。

なぜ理容師は人気がないのだろうか。

自身も過去、理容業界の業界誌のデザインに携わっていた経験があり理容業界の事情にも明るい八幡氏によれば、理容師の不人気の大きな原因として「安くて、しんどい」仕事であると認識されている、というのが大きいという。

実際、理容師の賃金水準は、全業種中ワースト2位だそうだ。また、理容師は営業時間終了後も “練習” が必要だ。そういった時間も含めると、労働(稼働)時間も非常に長い職種である。

そんな状況の中、KOTOBUKI も理容師の採用に苦しんでいた。

KOTOBUKI が持っていた、ある強い “想い”

「そんな中、KOTOBUKI さんは元々、理容師の待遇改善をしたい、理容業界そのものの魅力をアップしたい、という想いを強く持たれていたんです。」(八幡氏)

と八幡氏は言う。そういう想いから、理容業界で全国的な講演活動をしたり、いま “売れている” ヘアスタイルをレクチャーする、というようなことも積極的に行っていた。ただ、待遇改善や魅力アップを実現するためには、お店の利益の向上が欠かせない。気持ちはあっても元手がなければ、出せるものも出せない。利益を向上させるためには、顧客単価などを上げることが必要で、そのためには、サービス自体の価値を向上させるしかない。そして、その価値が伝わらなければならない──

そこで KOTOBUKI が取り組むことを決意したのが “ブランディング” だった。

自分たちのインナー(内側)を深掘り、 “オンリーワンの魅力” =ブランドを自覚していくプロセス

当初、Webサイトの刷新を主軸としたブランディングを依頼されていた八幡氏だが、真っ先に取り組んだことは、店舗スタッフ全体で、徹底的に自分たちをよく知るためのプロセスを踏むことだった。

八幡氏のサポートを受けながら、社内でブランディングを推進した中心的存在は、 KOTOBUKI の創業者であり現在もマスターとして現役の三島一郎(みしま いちろう)氏の息子、チーフデザイナーとして活躍する三島裕和(みしま ひろかず)氏だ。

ブランディングのプロセスに誰が関わるか、というのは非常に重要なポイントの一つである。それが “自分たち” をよく知るプロセスなのであればなおさらだ。組織は人の集合体であり、その集合体= “自分たち” をよく知りそこに “納得感” を得るためには、いかに社員全体を巻き込むか。

KOTOBUKI が選んだ方法は、あえて “創業者以外” のスタッフ全員で、自分たちの「内側」を深掘りするワークを重ねることだった。三島裕和氏は、父である創業者の想いを引き継ぎつつも、そこに新しい風を吹き込み、KOTOBUKI 全体としてブラッシュアップした新たな “想い” に昇華させ、それを “実行” し切るためには、それが最善だと判断したのだ。創業者の一郎氏も、それを見守ったという。

ほぼ全員を巻き込んだワークでは、「どう見せるか」の前に、そもそもの会社としての理念や想い、こだわりや、今 “持っている” ものは何か。逆に弱みは何なのか。誰に対してどんなことを提供したいのか。できるのか。そしてスタッフ一人一人はそれぞれどのような解釈をしていて、個人としてはどういう想いを持っているのか。そういったことを徹底的に洗い出していった。カットの高い技術、きちんと効果の出る育毛施術、目の前の顧客の悩みに向き合う強い意識。そういった強みも再認識した。

「ブランドをつくるとき、僕はいつも、この会社のオンリーワンの魅力ってなんだろう?と考えているんです。」(八幡氏)

さまざまな意見が出されるなか、ファシリテーターとなった八幡氏は、 “オンリーワンの魅力” の種を探し続けていた。そこで注目したのは、頻繁に海外への社員旅行を実施していることだった。

KOTOBUKI は、社員をLA(ロサンゼルス)などの海外に連れて行く、ということを継続して行っているという。それだけ聞くと、単なる豪華な福利厚生のようだ。だが、もちろんそれだけではない。ヘアスタイルの発信地でもあるLAに社員を連れて行き、バーバー(理容室)やビバリーヒルズのセレブを相手にする美容師の元で、デザイン情報を収集し、最新のヘアスタイルを学んでいるというのだ。なおアメリカでは、大卒で銀行員になるか理容師になるか、というぐらい、理容師は人気職業なのだそう。そんな流行の最先端の “現場” にスタッフが足を運び、そこで感じ取った最新のヘアスタイルを日本の顧客に提案するための準備をしている。

「なかなかそこまでやっている理容室って無いよな、と思ったんです。」(八幡氏)

そこから、どうしてそこまでやっているのかを掘り下げていった。すると、自分たちが本当に顧客に提供したいと思っているものの輪郭が見えてきた。自分たちは、ただ髪を切っているのではない。男性に「新しい自分との出会い」をしてほしいんだ。だから、常に最新のヘアデザインも取り入れながら提案しようとするし、それを実現する技術力を磨き、一人一人の顧客にも寄り添う。

ひょっとして、自分たちがやろうとしていることは「 “男” のブランドイメージを上げる」ことなのではないか──

ワークに参加していたあるパート社員の言葉を、八幡氏は見逃さなかった。

それをきっかけに、スタッフ全員が、自分たちは “単なる床屋さん” ではなく、男性が自分の新たな魅力に出会い、自信を持てるようにする “デザイナー” なんだ。それを「自覚」していった。

「社員みんなを巻き込むことはとても大事。ただそのぶん、みんなの想いを一つにまとめあげていくことは簡単ではありません。そういうとき僕は、 “今まで社内で目立たなかった人” の発言からピックアップする、ということをよくします。」(八幡氏)

八幡氏のこの言葉が印象的だった。みんなから出てきた想いを、 “伝わる” 一つの方向に向けていくためには、掘り下げた「内側」を、今度は顧客目線で捉え直す必要がある。そういうとき、社内で顧客目線に近い人は、案外 “今まで社内で目立たなかった人” だったりすることが多いのだそうだ。言われてみると、腑に落ちる話である。

「ワークで自らを出し切ったら、それをベースに、あとは僕たちプロが “伝わる” 表現を提案します。みんなの意見を出し合うプロセスは欠かせませんが、一方で弊害もある。身内だけだとなかなか発想が “ジャンプ” しないんです。そこに “外部” の存在であり、かつ、表現のプロが関わることで、トガった “オンリーワンの魅力” が表現できると思っています。」(八幡氏)

ついに表現されたブランドのコンセプト

こうしてついに、KOTOBUKI がどういう存在なのか、存在でありたいのか、を定義したブランド・アイデンティティが言語化された。

自分ブランドを高め、プレミアムな男をつくる、洗練されたデザイナーである

シンプルでありながら、自分たちで再発見した “オンリーワンの魅力” が的確に表現されている。元々、単にカットやパーマだけではなく、育毛やスキンケアなど、幅広い施術に対応していた KOTOBUKI だが、たくさんのことをやるぶん、スタッフ達の中にもどこか「なんでウチはこんないろんなことをやってるんだろう・・・?」という空気もあった。だが、全ては、ご来店いただいた男性に “新しい自分” に出会ってもらい、自信をつけて帰っていただくため。全てが繋がり、 “納得” が生まれた。これから KOTOBUKI のスタッフ達は、自らをこのような存在であると認識しながら、宣言(約束)した価値を顧客に提供していくのだ。 “幸せ” とは、困難が無いことではない。自分の存在や行動を自ら肯定できることだ。スタッフ達の顔も活き活きしてきた。

自己認識に用いるブランド・アイデンティティとは別に、 “外向け” に使っていくブランドネームやコピーも用意した。

新しく生まれた KOTOBUKI のブランドネームが『OTOKO DESIGN』である。実は当初、このようなブランドネームを、ヘアサロン名(プレミアムヘアサロン寿)とは別につくる予定はなかったという。だが、一連のプロセスの中で KOTOBUKI のスタッフ達が自ら “デザイン” とか “デザイナー” という言葉を多用していたことに注目した八幡氏は、この言葉を含むブランドネームを別途つくった方が、 KOTOBUKI の “オンリーワンの魅力” が伝わると考えた。

 

『OTOKO DESIGN』のロゴマーク。筆者も商標登録をサポートさせていただいた。

 

「オトコを上げろ。」

「0.03mmの男の魅せ場」

こういった魅力的なコピーも KOTOBUKI のWebサイトを彩る。これまでのプロセスを知った読者のみなさんなら、見出した “オンリーワンの魅力” が外の人にも伝わるよう、ここに凝縮されていることがわかるだろう。

もちろん、Webサイトのビジュアルも刷新された。店舗内装にも手を入れた。以前は、育毛施術のビフォー・アフターを前面に押し出したようなサイト、ピンクの内装だったこともあったが、強みを支える確かな技術力に加え、オトコを上げる洗練されたデザイナー集団であることを、ビジュアルでも伝えるものに仕上がった。「内側」に持っていた “オンリーワンの魅力” が、全ての接点を通じて表現され、一貫した顧客体験となった。

 

 

 

 

このような取り組みをした結果は、すでに述べた通りである。今では、ウェブからの流入が多くなり、これまで取りこぼしていたエリアからの顧客も増えた。

インナー(内側)からのブランディングのプロセスの中で “やるべきこと” を再認識した KOTOBUKI 。アイデアもどんどん生まれ、今後もブランディングプロジェクトは継続していく予定だという。これからもどんな進化を遂げていくのか、とても楽しみだ。

悩みを解決しないと、ビジネスマンはワクワクできない

八幡氏が率いる OICHOC が、ブランディングをサポートするときに最も大事にしていること。出てきたキーワードは、 “ワクワクする” と “未来をデザインする” という2つだった。 OICHOC 自身のコピーもまさに、 “「ワクワクする未来」をデザインする。” となっている。彼らが提供するブランディングプログラムのネームも『ワクワクブランディング ®︎』だ。

「ここで言っている “ワクワク” は、実は、子供っぽい意味のワクワクではないんです。」(八幡氏)

OICHOC の “ワクワク” は「抜苦与楽(ばっく よらく)」。苦しみを抜いて、楽しみを与える。そういう意味だ。OICHOC が常に意識しているのは、まずは苦しみを抜いてあげること。ビジネスマンは、 苦しみ=悩み を先に抜いてあげないと、ワクワクできない。八幡氏はそう言う。だからクライアントの悩みを見抜き、そこを解消することから始めるのだ。 

OICHOC が手掛けるブランディングにはその力がある。自らの強みを再発見するとは、裏を返すと、弱みを肯定すること。すなわち「自分たちらしくやっていいんだ」と気づくことである。 KOTOBUKI もそれに気づいた。その気づきが、苦しみを抜く。さらには、デザインの力で「ブランドの未来の姿を見える化」する。そうすると、自然と未来に希望が生まれ、未来に “ワクワク” してくる。 OICHOC は、これをサポートすることを「ワクワクする未来をデザインする」と表現している。

いま、変化が激しく予測の難しい世の中になっている。そんな環境でビジネスを成功させるには、最後まで自分を信じられる確固たる軸が必要だ。その軸を自らの内に発見したとき、自分たちの存在意義や行動に納得できる。そしてそれが幸せの源となる。インナー(内側)からのブランディングには、この時代を生き抜くヒントがあると、筆者は思う。

余談だが、八幡氏も今回のプロジェクトがきっかけとなり、いまは KOTOBUKI で “オトコを上げ” てもらっているという。そんな話を聞きながら、ついつい勇気が出ず「…いつもどおりで。」と美容室でカットをお願いしてしまう筆者も、未来にワクワクしている一つの理容室に足を運んでみたくなる。

そんな魅力がそこにはあった。

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