そして登録へ…ドラクエに学ぶ、ゲームタイトルの商標戦略 ~ファミコン時代からスマホアプリまで~

巨大産業であり、ライバルの競争も激しいゲーム業界ですが、意外に「ゲームビジネスで、どこまで商標出願をすべきか」という定説はありません。

その背景には、ハードウェアの進化とともに、ゲームのビジネスモデル自体が変化し続けたことがありますし、『ゲームソフトのタイトルは、著作物の題号なので他人の商標権の侵害にならないのでは?』という昔からの議論もあります。

ただ、巨大化し続けるゲーム産業、2019年には過去最大の1兆7330億円を突破しました。コロナ禍によるステイホームが追い風になり、2020年以降も、ますます市場は拡大しています。

10年連続成長の国内ゲーム市場、コロナ禍でさらに需要増加 – BCN+R

ゲーム特許をめぐる係争では『白猫プロジェクト』をめぐる44億円の損害賠償訴訟(現在では49億5千万に引き上げ)が有名ですが、商標についても第三者の権利を踏めば、販売の差止請求や、多額の損害賠償請求を受ける可能性があります。

  • ゲームタイトル&サブタイトルって、どこまで商標出願する必要がある?
  • 出願するとしたら、指定すべき区分は?
  • モンスター名・アイテム名までも登録すべき?

もちろんケースバイケース・・ではあるのですが、これだけ大きいゲームビジネスの世界、少なくとも商標を出願する際の “王道” はあるはず。

そこで、今回は国民的ゲームソフトである、『ドラゴンクエスト』関連の商標登録をJ-Plat Patを用いて調査し、「ドラクエにおける商標出願ルール」を分析します。

自社のゲーム作品を守るために、どこまで商標を出願すべきなのでしょうか?早速みていきましょう。

 

LV1、ゲームメインタイトルの商標出願

① 最初のドラクエ出願を見てみよう

シリーズ最初のファミコンソフト、『ドラゴンクエスト』が発売されたのは1986年5月27日。前年の『スーパーマリオブラザーズ』のヒットを受け、世の中に本格的なファミコンブームが訪れた年でした。

当時、すでに『ウィザードリィ』、『ウルティマ』(どちらも1981年)という海外発のコンピューターRPG(ロールプレイングゲーム)はあったものの、普通のユーザーには敷居が高い内容・・。

そこで『ドラゴンクエスト』は堀井雄二氏の手により、「分かりやすく、遊びやすく」を追求して開発されました。誰でもRPGの楽しさを体験できるように再構築されたことで、マニアだけでない一般ユーザーの支持を受け、今でも最初の作品がリメイクされ続ける国民的ゲームシリーズになったのです。

 

歴代3タイトルがSwitchで遊べる「DQ1」・「DQII」・「DQIII」(GameWatchニュースより)

そんな『ドラゴンクエスト』の最初の商標出願は、1986年3月3日。ゲームソフト発売の2か月前でした。

 

当時の出願人はエニックス社。『ファイナルファンタジー』シリーズを擁する、もう1つの日本RPG界の雄、スクウェア社と電撃的に合併し、株式会社スクウェア・エニックスが誕生したのは、2003年でしたから、遡ること17年前になります。

当時のエニックス社の公開商標公報をチェックすると、他にも『ドアドア』、『ポートピア連続殺人事件』の商標登録出願が。エニックス社がゲームタイトルの出願を積極的に行っていたことがわかります。

さて、そんな最初の『ドラゴンクエスト』の商標出願を見ていると、ちょっと気になる部分があります。それは、指定商品の区分が、24・26類となっていること。現在の商標区分だと、テレビゲーム機用プログラムを記憶させたROMは9類、書籍であれは16類のはずです。

 

実はこの商標、出願があまりに昔で、昭和34年法といわれる旧区分で指定されています。

ただ、旧区分と新区分(平成5年以降)が混在していると、商標調査のときにあまりにも分かりづらい。そこで、特許庁は平成10年に「旧区分の登録商標を維持したいなら、新区分に書き換えないと、次回の更新を認めないよ」という“書換手続”を開始しました。

書換手続に関するQ&A | 経済産業省 特許庁

これら『ドラゴンクエスト』の最初の商標たちも、しっかりと書換が完了しているのですが、元は24類だった出願について、現在の登録区分を見てみると・・。

 

元は24類1区分だけだったのに、現在は14区分!?

新区分は国際分類に合わせてあり、昭和時代の旧区分とはだいぶ体系が異なるのですが、それにしてもこれだけバラバラになるとは。。

実は、いらない区分は更新時に選んで放棄することができるのですが、2019年の更新でも全ての区分が維持されています。区分ごとに3万8800円の更新費用がかかるのに、やはり『ドラゴンクエスト』の最初の商標、別格の扱いか・・・。

せっかく維持されているマイナー?な指定商品たち、いつか「ロトのビリヤードクロス」とか、「導かれしコッフェル」が商品化される日も来るのかもしれません。

 

② 最新のドラクエ出願に学ぶ、区分指定術

『ドラゴンクエスト』商標が、最初のファミコンソフト発売前からすでに出願されていたこと、最初の登録が大事にされていることはわかりましたが、書換に伴う区分が広すぎ、今の商標戦略にはそのまま流用できなさそうです。

そこで、最近の出願を探してみたところ、参考になりそうな出願がありました!

商標登録 6143171号

2016年に『DRAGON QUEST』が英文字で改めて出願され、登録も完了しています。

この出願では9, 16, 28, 41, 42類と5つの区分が指定されていましたが、ここからゲームビジネス上、重要と思われる指定商品を抽出してみましょう。

 

中でも、ゲームビジネスで特に重要とされるのは9類と41類です。この2つの区分の違いはどこでしょうか。

簡単に説明すると、9類は「ダウンロードできるプログラムや、プログラムを記録したメディア」、41類は「ダウンロード型ではない、通信を用いたプログラムの提供」と区別できます。※ どちらもスマートフォン向けアプリを含みます。

一昔前は、スタンドアローン型のゲームソフトと、ブラウザなどを介してオンラインで遊ぶゲームは区別しやすかったのですが、ゲームの進化により、

「ユーザー端末にプログラムをインストールさせつつ(9類)、そのプログラムを通じて、サーバーを介したオンラインバトルも提供する(41類)」

ようなハイブリッド型の作品が多く登場しました。オンライン形式のMMO RPGとしてリリースされた『ドラゴンクエストⅩ』はその典型と言えるでしょう。

 

ドラゴンクエストX オンライン | 公式サイトより

ガチなオンラインゲームでなくても、ランキングや、フレンド協力機能のような通信要素を盛り込むスマホアプリゲームが主流な現代。この場合は9・41類両方の区分を押さえる必要があるでしょう。

<区分をより詳しく知りたい方へ>

商標登録の区分 第9類 コンピュータなどの電子機器、眼鏡など

商標登録の区分 第41類 教育、スポーツ・文化・娯楽サービスなど

 

次にゲームビジネスに関わりやすい区分は、16類と28類。

① 16類は、「書籍及びトレーディングカード、ポスター・カレンダー、文房具類」といった紙類を中心とした区分です。

ドラクエの文房具といえば、レジェンド商品『バトルえんぴつ』、略称『バトエン』。六角形の鉛筆を転がし、モンスターを戦わせるというシンプルかつ熱いゲーム性に、多くの小学生が夢中になり、学校によっては「バトエン持ち込み禁止!」のルールが新たに制定されるほどでした。

バトルえんぴつをめぐる学校との戦い|takuro(juJoe)|note

他にも、トレーディングカード・ポスター・カレンダーなどは、ゲームのグッズ化ではまず検討される商品で、イベント会場などで物販する機会も多く、ソフトウェア以外のビジネス展開を考える際、最初に押さえるべき分類と言えます。

 28類は、「おもちゃ、人形、運動用具」といった、玩具を中心とした区分です。

先ほど、トレーディングカードは16類という話があったので、「バトルするカードゲームは16類・28類どちらに分類されるんだ?」と疑問を持たれるかもしれません。

トレーディングカード的な要素は16類、カードゲーム的な要素は28類なのですが、どちらの要素もあれば「両方の区分に該当」します。

まったく対戦がないアイドルのコレクションカードなら16類のみで良いのですが、ゲーム原作のカードは何らかのバトル要素が入るのが普通。28類も登録する必要があります。

 

ドラゴンクエストトレーディングカードゲーム Amazonサイトより

さらに「グッズ化にあたりキャラクターの名前、どこまで商標登録するか問題」もあるのですが、これはLV3で後ほど解説します。

③ ゲームタイトルで登録する区分には、もう1つ注意点が。ドラゴンクエストのゲームシリーズはユーザー課金型のビジネスモデルを採っていますが、最近のアプリゲームの多くはゲーム内で表示される広告をも収益源としています。この場合、

35類:「インターネット上での広告スペースの提供」

も指定しておくべきでしょう。ゲームアプリが、広告を表示するための掲示板、宣伝スペース的な役割も果たすためです。

 

さて、長くなりましたので、ここまでの内容をまとめます。

  • 第三者とバッティングするリスクを考え、ゲームタイトルはできるだけ公開前に出願!
  • ゲームタイトルでまずカバーすべき区分は、9類・41類。
  • ゲームが広告収益モデルならさらに35類。
    グッズ化も見込めるなら、16類・28類の追加も検討しよう!

 

LV2、サブタイトルの商標出願

① ドラクエのサブタイトルはどこまで出願されている?

ゲームタイトルにはサブタイトルが付いていることが良くあります。これらはどこまで商標でカバーすべきなのでしょうか。まずは、ドラクエメインシリーズ全11作品のサブタイトルの出願状況を見てみます。

 

おお、全てのサブタイトルが商標登録されていました。指定区分は先ほどチェックした「9・16・28・41類」が大半です。これはドラクエ商標の基本区分と言って良いでしょう。

目についたのは、ドラクエ6までのファミコン~SFC時代では、ゲームソフト発売時点にサブタイトル商標の出願をしていなかったこと。7作目、2000年発売の『エデンの戦士たち』からゲーム発売前にサブタイトルの出願を行うようになり、2007年には初期作品のサブタイトルもまとめて商標登録出願しています。

・・どうして、ドラクエはサブタイトルをも出願するようになったのでしょうか?

推測ですが、東京地判平成14年5月31日(つまり2002年5月)の「僕は航空管制官事件」が、サブタイトル出願方針の変化に影響を与えている可能性があります。

この事件を紹介するにあたり、まずはこのゲームパッケージを見てください。

 

<中古>ぼくは航空管制官(ゲームボーイアドバンス)駿河屋サイトより

これは、『ぼくは航空管制官』の商標権者が、原告商標と同一の標章を付してゲームソフトを販売する株式会社タムに対し、商標権を侵害する行為として、東京地方裁判所に訴訟を提起した事件です。

被告であるタム社は、

「プレーヤーが航空管制官として空港における管制業務(飛行機の離着陸の管理)を行うという内容のシミュレーションロールプレイングゲームであり、あたかも航空管制官になったかのような体験ができるものであって、被告標章「ぼくは航空管制官」はゲームの内容を端的に表すものにすぎない。

被告標章は、自他商品識別機能及び出所表示機能を有しない態様で使用されているから、その使用態様は、商標的な使用ではない。

と主張したのですが、裁判所は

「①被告ソフトの外箱の表面、側面及び裏面に,「ぼくは航空管制官」の文字が、大きくかつ目立つ色で表記されていること、

 ②被告ソフト及びその外箱には,「ぼくは航空管制官」の文字を除いて他に、被告ソフトと他社の商品とを区別するための標章は存在しないと解されること

 ③「ぼくは航空管制官」の文字の上方には「航空管制シミュレーションゲーム」と記載されているが、被告ソフトの内容は,同記載によって端的に説明されていると解されること

等の点を総合すれば、被告標章「ぼくは航空管制官」部分こそが、自他商品を識別するための標識としての機能を果たしているというべきである。」

として、「ぼくは航空管制官」のゲームタイトルは商標的な使用だと認めました。

※ ただ、本件の原告は、タム社が正規ライセンサーからゲーム販売の許諾を受けたのを不服に思い、正規ライセンサーに無断で商標を登録し、タム社を訴えたという特殊なケースでした。そのため、権利の濫用にあたるとして、最終的に請求は棄却されています。

 

実はこの判決、当時やや意外なものと受け取られました。
その背景には2つの裁判例があります。

まず1つ目、CDタイトル『UNDER THE SUN』の商標権侵害が争われた事件(1995年2月)では、東京地裁が

「本件CDに使用されている被告標章は、編集著作物である本件アルバムに収録されている複数の音楽の集合体を表示するものにすぎず、・・・自己の業務に係る商品と他人の業務に係る商品とを識別する標章としての機能を果たしていない態様で使用されているものと認められる。」

として、CDタイトルに対する商標権の侵害を認めませんでした。

 

さらに2つ目、書籍タイトル『POS実践マニュアル ー診療録の記載方法ー』の商標権侵害が争われた事件(1988年9月)でも、東京地裁が、

「POSは診療記録の作成方法を示す略語であって、単に書籍の内容を題号として表示されているものにすぎない」

として、「POS」商標権の侵害を認めませんでした。

 

これら裁判例を前提として、

「ゲームタイトルも書籍やCDタイトルと同様であり、少なくともタイトルがゲームの内容を表しているだけならば、他人の商標権侵害にならない=ゲームタイトルの商標権侵害リスクは低い」

と理解する人が多かったのですが、『ぼくは航空管制官』という、いかにもゲームの内容を表しているタイトルでも「商標的な使用」と判断されたので、みんな慌てた訳なのです。

 

② ゲームタイトルをどこまで商標出願すべき?

では、これらの事件を踏まえて、2021年現在では、ゲームソフトのタイトル・サブタイトルはどの範囲まで商標登録すべきなのでしょうか?

結論からいうと、

タイトルがそのままゲーム内容を表す一部の例外(三国志、リバーシ、ソリティアなど)を除き、ゲームタイトルは、「商標としての使用」となる。
これはメインタイトル・サブタイトルどちらでも同じである。安全に使用するためには商標登録しておくべき

でしょう。

理由ですが、特許庁の『商標審査基準』内で、「書籍・CDのタイトルは、商標登録できない場合がある」として明示されているものの、ゲームソフトには言及がありません。

(ア) 「書籍」、「電子出版物」、映像が記録された「フィルム」、「録音済みの磁気テープ」、 「録音済みのコンパクトディスク」、「レコード」等の商品について、商標が、著作物 の分類・種別等の一定の内容を明らかに認識させるものと認められる場合には、商品の「品質」を表示するものと判断する。 

(例) 商品「書籍」について、商標「商標法」、「小説集」
商品「録音済みのコンパクトディスク」について、商標「クラシック音楽」

もちろん上記の記載のうち「等の商品」にゲームソフトが含まれているという考え方もできるのですが、書籍、特に実用書の世界では「名は体を表す」のが普通なところ、多くのゲームソフトではタイトルからどんなゲーム内容なのか、明らかに認識することは困難です。

例えば、ドラクエのこんなタイトルはどうでしょうか。

商標登録 第5148063号

 ファミコンソフト『ドラゴンクエストⅡ』のサブタイトルですが、予備知識なしで

「大神官ハーゴンによる侵略から自国を守るため、ローレシア城の王子、サマルトリア城の王子、ムーンブルク城の王女の3名がパーティを組んで、ハーゴン及びハーゴンが呼び出した破壊神シドーを討伐する、コマンド選択式RPG」と明らかに認識できるでしょうか。

・・・このサブタイトルはドラクエマニアの中でも「シドーって1体じゃん」、「じゃあ悪霊の神々って誰だよ」と議論がありまして、ハーゴン配下の“アトラス・バズズ・ベリアル”の3体を指すという説はあるにせよ、あんまり納得感がないところです。

ちなみにメインタイトルの「ドラゴン」は、ロンダルキアの洞窟でちょびっとだけ出てます。洞窟を抜けた先でザラキを使うブリザードのほうが、よっぽどキャラ立ってますけどね。

ちょっと話が逸れましたが、別の例として、最新のスマホ向けゲームタイトルではどうでしょうか。

商標登録 第6331103号

公式ページでは、

「ドラゴンクエストがタクティカルRPGになって登場!あなたの指揮でモンスターを率いてマス目状のマップに出撃!簡単なのに奥深い、「ドラゴンクエスト」ならではの白熱のタクティカルバトルを楽しもう!」

との紹介なのですが、まあ、タイトルだけではゲーム内容の想像は困難でしょう。

 

ドラゴンクエストタクト 公式プロモーションサイト | SQUARE ENIXより

思えば、ゲームの進化はユーザーの想像を超えようとする、創意工夫の歴史でもありました。

確かに、ファミコン初期には『麻雀』、『ベースボール』など、商標としての使用とは言えない、一定のゲーム内容を直ちに表す作品がありました。

しかし、容量が64KBしかないファミコンの初代『ドラゴンクエスト』は、カタカナをわずか20文字しか使えないという制限の中、見事に「勇者がりゅうおうを倒し、アレフガルドに平和をもたらす」という当時のプレイヤーが想像もしなかった世界観を描き切りました。


『あるくんです』では、万歩計と液晶ゲームの融合、『剣神ドラゴンクエスト 蘇りし伝説の剣』では、TVの前で実際に剣を振って敵を倒すという新機軸を導入しています。

剣神ドラゴンクエスト 甦りし伝説の剣 スクウェア・エニックス公式ページより

やはり、ゲームの世界で「内容をそのまま表すタイトルが付く」ケースは限定的。スマートフォンの性能が上がり、ゲームアプリが大量に公開されるようになった現在、独創性があるタイトルをつけて少しでも差別化することはますます重要になっています。

自身のゲームタイトルがゲーム内容をそのまま表すものでないなら、そのゲームタイトルは商標であり、安全に使うためには商標登録が必要です。

まとめると、メインタイトルであっても、サブタイトルであっても、ユーザーに商標として認識されることに差はなく、ビジネスを継続するならどちらも商標出願すべきでしょう。

 

LV3、作中ワードの商標出願

① モンスター・じゅもん・名台詞・・ドラクエの出願状況

ドラクエといえば、スライムをはじめとした鳥山明デザインの魅力あるモンスター、ホイミ・ベホイミなどじゅもん名、そして堀江節といわれる独特の名セリフなどなど、作品を彩る固有名詞が満載です。

さて、これらは登録すべきなのでしょうか?「タイトル・サブタイトルに加え、さらにキャラクター名まで商標登録する予算なんかないよ!」という声も聞こえてきそうです。

そこで、どこまで出願するか考えるにあたり、このリストを見てみてください。左と右のグループ、違いが判るでしょうか?

 

・・実は、左が(株)スクウェア・エニックス名義での商標登録あり、右が商標登録なしのグループになります。この2グループ、いったいどこで差がついたのでしょうか?

まず、『キングレオ』、『パルプンテ』、『メガンテ』。これらは脈絡がないようですが、実は共通点があります。

 

ファミコン時代、「ドラゴンクエストカードゲーム」というシリーズがあり、その中で『キングレオ』、『パルプンテ』、『メガンテ』が商品名として使われていたのです。友達と遊んだ思い出がある方もいるのではないでしょうか。

次に『天空の剣』ですが、その名の通りの商品がありました。

武器ではなく、あくまで「観賞用置物」というカテゴリーなんですね。

では、『ゆうべはお楽しみでしたね』は何でしょうか。これは金田一蓮十郎氏による漫画のタイトルでした。

「『ドラゴンクエストⅩオンライン』で知り合った男女の、シェアハウスラブコメ」ということで、漫画の人気を受けて実写ドラマ化し、DVDも販売されることになったために商標登録したようです。

 

ドラゴンクエストⅩ|目覚めし冒険者の広場 再放送告知ページより

つまり、モンスター・じゅもん・武器などのドラクエ作中ワードの商標出願は、「その名前で商品化を行うかどうか」で決定しているのです。これは、

・他人の登録商標であっても、それを商品・サービスの目印(商標)として使用していない場合は、商標権侵害にはならない。

商標権とは、簡単にいうと商品やサービスの目印を独占できる権利

という商標制度の原則にも合致しています。「万一、ホイミ・ベギラマなど第三者に商標を取られてしまってもゲーム内での使用は商標としての使用にならず、商標権を侵害しない=何でもかんでも出願する必要はない」と判断しているのでしょう。

この考えを適用すれば、ゲームソフトやアプリをリリースする際は、まずは「ゲームタイトルの商標登録出願」に集中し、作中ワードまで出願するかは、商品化の可能性の有無で別途決めればよいと言えそうです。

もちろん、最初から商品化するつもりの主役級のキャラクター名は、後で使えなくならないよう、ネーミング決定時に商標調査や出願をしたほうが良いですが、取捨選択をする際の参考になるかと思います。

 

② グッズ化キャラクターが多すぎる・・ときの商標登録は?

ただ、それでも残るのは、「グッズ化する際に、キャラクター名を全て商標登録する必要があるか?」問題・・。

この点、ドラクエシリーズでは、さまざまなモンスターをフィギュアとして商品化していますが、『ドラキー』、『さまようよろい』などの個別のモンスター名はほぼ商標登録していません。

 

ドラゴンクエスト ソフビモンスター 039 ドラキー Amazon販売ページより

また、驚くことにあの『スライム』も28類【玩具】の商標登録はありませんでした(なお、16類【文房具】など、別区分での登録は多数あります)。

「スライムは国民的人気キャラクターなのに、28類の商標登録がないの?」と不思議だったのですが、検索すると、米国法人のバイアコム社が『SLIME/スライム』を28類【玩具】で商標登録していました。

日本でも一世を風靡した、ネバネバ玩具の商品名です。

 

スライム|商品情報|メガハウスのおもちゃ情報サイトより

現在、スクウェア・エニックス社がバイアコム社から『スライム』商標の使用許諾を受けているかはオープンにされていません。


ただ、Amazonの商品名を見ると、『ドラゴンクエスト メタリックモンスターズギャラリー スライム』のように、必ず商標登録されているゲームタイトルや、商品シリーズ名を組み合わせることで、『スライム』がドラゴンクエストのキャラクターであることを明確になるよう工夫しています。

 

ドラゴンクエスト メタリックモンスターズギャラリー スライム Amazonサイトより

 

 商標登録 5612266号(スクウェア・エニックス名義)

もちろん、キャラクター名も商標登録することが権利の安全面ではベストとはいえ、現実的な費用対効果を考えるとなかなか難しいもの。

そこでドラクエのように、『ドラゴンクエスト』のゲームタイトルを16類や28類といった区分で商標登録しておき、キャラクター名とセットで表記することで、少なくともメインタイトルの商標の使用だと言えるようにする・・という戦略は、参考になりそうです。

最後に、他社にキャラクターグッズの商品化を許諾する場合は、「該当する商品区分で商標をあらかじめ取っていること」がライセンス契約の根拠として使いやすいです。

他社にライセンスをしたのに商標権を押さえておらず、いつのまにか第三者が商標登録してしまってトラブルになった・・なんてことも避けるため、他社へのライセンスが絡むときは積極的に商標出願することをお勧めします。

 

LV4、まとめ ~ゲームの商標はこう取ろう!

ここまで、『ドラゴンクエスト』をお手本に、ゲームタイトルやサブタイトル、モンスター名・じゅもん名といった作中ワードの出願の必要性を検討してきました。

ドラクエシリーズの商標登録の特徴

  • ゲームタイトルはメイン・サブタイトル共に、もれなく商標登録。
  • じゅもん・名台詞などの作中ワードは、「その名称で商品化を行うかどうか」で出願するかを決定。
  • 大量にいるモンスター名はあまり商標登録せず、代わりに『ドラゴンクエスト』や『METALLIC MONSTERS GALLERY』のようなシリーズ名を商品化区分で登録し、合わせて表記することでリスクを軽減。

競争が激しいゲーム産業の中で、他社と差別化できるタイトルを付け、商標で保護しながらブランド化を進めることはビジネスに勝つための「王道」ストーリーです。

『ドラゴンクエスト』はファミコンに生まれ、スーパーファミコン、ゲームボーイ、プレステーション、ニンテンドーDS、Wii、Switch、そしてスマートフォン・・とハードウェアは違っても変わらぬ「みんなの冒険」を提供し、『国民的RPG』としてゲーム業界に君臨してきました。

堀井雄二氏が生まれ育った、淡路島の洲本市民広場には「ドラゴンクエスト30周年記念碑」が建立されています。

 

この碑に刻まれた『DRAGON QUEST』のロゴ、そして右下にしっかり輝くⓇ(商標登録済み)のマーク。

 

作品自体の面白さだけでなく、そのブランドを守り育てる意識の明確さ。これこそがドラクエの強さであり、見習いたい価値だと思うのです。

—————

<こちらもおススメ>

 

商標登録がよくわかるお役立ち資料
  • 初めてでもわかる商標登録
  • あなたに商標登録が必要か?
  • 商標登録っていくらかかるの?
  • など

商標登録の基礎知識や
ノウハウなどを
わかりやすくまとめた資料を
ダウンロードできます。

資料ダウンロード(無料)はこちら

ブランディングの最新記事8件