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全部同じ「つなぐ」知育玩具だと思ってた。 ~ LEGO、LaQ、マグ・フォーマー、Wammy を特許から読み解く

「つなぐ知育玩具」四天王:LEGO、LaQ、マグ・フォーマー、Wammy

知育玩具には、いろいろな種類があります。

積む、はめる、くっつく、曲げる・・。

特に代表的で、おそらく世界中で最も認知されているのが LEGO でしょう。そして磁石を用いたマグ・フォーマー、日本が生み出した LaQ(ラキュー)Wammy(ワミー)など、知育玩具には数々の名作があります。

これらはすべて、ざっくりと表現すると「パーツをつなぐ玩具」です。一見すると、同じカテゴリーのライバル商品に見えるかもしれません。

ところが、実際に遊び、そして裏側にある特許情報というレンズもとおして見てみると、実は技術的な観点も、根底にある思想も、まったくの別物であることが分かります。そして同じ「つなぐ」という行為であっても、そこにある仕組みが違えば、子どもたちの中で育まれる感覚も変わってくるのです。

一体どんな違いがあるのか?

「つなぐ」知育玩具 ”四天王” について、特許から紐解いていきましょう!

1.LEGO®:知育玩具界のレジェンド! 

「つなぐ=立体物を正確に固定する」

もはやレジェンド的存在。世界で最も認知されている知育玩具といっても過言ではないでしょう。LEGO はデンマークで1958年に発売され、その後60年以上にわたり世界中で愛されてきました。

デンマークにおける最初の特許出願は、1958年1月28日。発明者は、創業者の息子である Godtfred Kirk Kristiansen。この図面を見るだけで、どこか懐かしく、パーツを組み合わせたときの手の感触がよみがえってきますね。

LEGO_Patent_DK92683C_Toy building element

DK92683C:Toy building element(1958.1.28出願) より引用  Google Patents リンク

LEGO の核にあるのは、突起と内側の空洞により「しっかり噛み合う」という考え方。LEGO 公式 HP によると、この構造によって “clutch power” が生まれ、安定して組めるようになったと説明しています。(参考:How do LEGO® bricks work?

そして1958年に出願された米国特許においても、ブロックを任意の位置でしっかり固定するための結合手段がポイントとして書かれています。 

本発明の主な目的は、そのような組み立てブロックを任意の望ましい相対位置で一緒に固定するための改良された結合手段を提供することであり、これにより、さまざまな種類と形状のおもちゃの構造物を作るためのブロックの非常に多様な組み合わせが提供される

US3005282A より引用(機械翻訳)

US3005282A:Toy building brick(1958.7.28出願) より引用  Google Patents リンク

特許によれば、1958年以前からブロックの玩具は存在していたものの、強く固定してつなぎ、かつ、取り外しも可能な玩具はなかったようです。

創業者の息子が発明者である特許から、LEGO ブロックの誕生背景を学ぶことができました。

そしてLEGO®は、今も「つなぐ」を進化させている

もっとも、LEGO の面白さは、1958年の基本特許の内容で終わりではありません。近年の特許出願を見ると、関心は「ブロックをしっかり固定すること」だけでなく、組み上げたモノをどう認識させるか、どう反応させるかにも広がっています。

例えば特許第6262127号 ”拡張現実向けの玩具構築システム” は、従来の LEGO ブロックによる結合構造を前提にしながら、AR マーカー付きの構成要素をモデルに取り付け、コンピュータ側で位置や向きを認識することを想定しています。1958年の LEGO が「正確に固定する発明」だとすれば、こちらは「組んだものをデジタル世界に接続する発明」といえそうです。

特許第6262127号(2012.5.22 出願)より引用 J-PlatPat リンク
ブロックに拡張現実マーカー321が付いている。

さらに、WO2025157966A1 “Configurable interactive toy system” では、組み上げた玩具に、どんな反応や性格を与えるかにまで及んでいます。本アイデアの特徴は、玩具がインタラクティブに反応するだけでなく、パーツの組み合わせによって、その反応自体を「アイデンティティ」として切り替えられる点です。

図8がわかりやすいです。恐竜のようなインタラクティブ玩具に識別タグ要素としてブロック305a, 305b が取り付けられ、背中に触れるといった操作によってセンサ125 が反応し、玩具が音や動きで応答する様子が描かれています。つまり子どもは、単にブロックを組み立てるだけでなく、触る・動かす・反応が返ってくる という遊びまで楽しめるわけです。

WO2025157966A1 (2025.1.24 出願) より引用  Google Patents リンク

形を組む玩具というより、ふるまいを組み替えられる玩具というアイデアですね。複数のタグを組み合わせて活用するとより面白さが増すようで、特許文献中には、例えばブタとドラゴンのタグを組み合わせることで、より激しく吠え叫ぶブタの鳴き声が出力されるといった例も記載されています。

LEGO は今もなお、「つなぐ」という原点を保ちながら、その先にある遊びの体験そのものを更新し続けているのですね。世界中で愛される理由が垣間見えた気がします。

2.LaQ®(ラキュー):日本で生まれた世界的知育玩具!

「つなぐ=平面物から立体物を創造する」

LaQ

LaQ

日本発のLaQ(ラキュー)は、奈良県吉野郡に本社があるヨシリツ株式会社によって生み出されました。「立体をつなげるのではなく平面をつなげれば良い」との発想に基づき、1994年に発売。(参考:LaQ誕生秘話 | LaQとは

LaQ の面白さは、 平面パーツをつないで立体を生み出す ところにあります。

LEGO が「塊」を積むなら、LaQ は「面」を組みます。この違いは、見た目以上に大きいです。

LaQ の世界では、正方形や三角形のパーツとジョイントを組み合わせることで、面が少しずつ角度を持ち、やがて立体になります。つまり子どもは、知らず知らずのうちに 「面」「角度」「多面体」に触れているわけです。

特許的にも、LaQ のポイントはここにあります。

単なる接続具ではなく、どうすれば少ない種類のジョイントで、多様な角度や形を実現できるかどうすれば球体や動物のような複雑な立体も無理なく作れるか。そこが改良の対象になっています。

【0003】しかしながら、従来、種々の形状をした中空の立体を正確かつ容易に組立てることができ、しかも組立て状態がしっかりとしたものがない。
【0004】したがって、従来の組立てブロックでは、家具やシャンデリアの飾りといった実用の物品を組立てることができなかった。
【0005】そこで、この発明は、実用の物品の組立てにも利用できる組立てブロックを提供しようとするものである。
(特許第3221637号より引用)

LaQ_Patent

特許第3221637号:組立ブロック(出願日:1993.4.20) より引用(J-PlatPat リンク

LaQ そのものを示す図面ですね。それぞれのパーツがしっかりと特許図面にも示されています。

パーツが小さくてなんだか難しそう・・と思いきや、やってみると、驚くほど簡単にパーツが繋がり、形が作られていきます。カチッとハマる感覚がたまりません。小さい子供でもどんどんパーツを組み上げていくことが可能です。

LaQ_Unicorn

LaQ “ユニコーン”(筆者撮影)

そして LaQ に関する特許はまだまだあります。1994年発売以降、着実に発展を遂げ、ジョイントを改良した特許が複数出願されています。

例えば特許第7245518号では、ボール型ジョイントを用いることで、人型ロボットの作成を可能にしています。関節が可動することで表現の自由度が増して、さまざまな楽しみ方が生まれそうですね。

LaQ_Patent_Joint

特許第7245518号(2019.8.28出願) より引用(J-PlatPat リンク

特許図面を見るだけでも、遊びの幅が広がっていることが一目で伝わってきます。

1994年の誕生から20年以上経過した今もなお、新たな発明が積み重ねられており、「次はどんな改良があるのか・・!?」と、楽しみながら特許の中身を追うことができました。

LaQ®ヒットの裏側:秒で購入した理由と模倣品問題

以下の LaQ は、沼津港深海水族館「シーラカンス・ミュージアム」で購入したものです。観光の思い出に何を購入するか迷っていたところ LaQ を発見し、手ごろな価格もあって、気づけば  ”秒” で購入を決めていました。

技術によって優れた製品を生み出すだけでなく、こうした販売の工夫もあってこそ、世の中へと広く浸透していくのだと感じます。

LaQ_DeeP-Sea

LaQ コレクション 深海生物(筆者撮影)

なお2012年には、ドイツの「プラギアリウス・アワード(Plagiarius Award)」において、模倣品との比較事例として取り上げられています。企業にとって模倣品は悩ましい問題ではありますが、1994年の発売から20年足らずで、海外でも広く認知されるヒット商品へと成長したことの裏返しともいえるでしょう。

LaQ_Plagiarius Award 2012

類似品・コピー商品情報 | サポート | LaQ より引用

3.Magformers(マグ・フォーマー®):韓国発祥の磁石型知育玩具!

「つなぐ=自然に立体化する」

Magformer

マグ・フォーマー

マグ・フォーマーの面白さは、とにかく楽に、直感的につなぐことができる ところにあります。公式サイトでも、内部のネオジム磁石によって、ピース同士は極を意識しなくてもつながり、2Dの形が3Dの形へ変わっていくことが強調されています。(参考:The Basic Principles of Magformers

実際に遊んでみると、たしかに驚くほどスムーズにつながります。でも落ち着いて考えてみると、こんな疑問がわいてきます。

どのパーツ・どの場所で組み合わせても、磁石はなぜ反発しないのか?

その答えは、特許に書かれていました。

実は、ピースの縁に沿って配置された円筒磁石が回転できるようになっていて、向かい合うピース同士が近づくと、磁石が自分で向きを合わせて引き合う構造になっているのです。分かりやすい、とても優れた発明ですね。

Magformer_Patent

US7154363B2:Magnetic connector apparatus(2005.6.14出願) Google Patents リンク

magformer_movie

磁石が回転して引き寄せられる様子(筆者撮影)

この仕組みによって、

  • つなぎ合わせる向きを考えなくてよい
  • パーツを近づけるだけで勝手につながる
  • 複数の辺どうしがつながり、平面が自然と立体になる

という体験が実現されています。マグ・フォーマーという製品を成り立たせるための、根幹となる特許といえるでしょう。

マグ・フォーマー®の先駆け「マジキャップ」特許ライセンス

なお、ここでさらに面白いのは、日本にはマグ・フォーマーの先駆けともいえる「マジキャップ」という商品が存在していたことです。

マジキャップに関連する特許第3822062号「磁力接続構造体」は、上記マグ・フォーマー特許よりも早い2001年4月6日出願の特許で、磁石が回転するというコアな仕組みを、非常にシンプルな内容で押さえています。

【請求項1】
 非磁性の材料で形成され接続端が設けられた構造本体部と、構造本体部の内部の接続端付近に収容され軸方向が接続端と略々平行に配設された円柱形のマグネットとを備え、マ グネットは径方向に相対して両磁極が着磁され構造本体部の内部で径方向に回転可能である磁力接続構造体。
特許第3822062号 より

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特許第3822062号(2001.4.6 出願)より引用 J-PlatPat リンク

そして、公益社団法人発明協会の受賞紹介ページでは、他社への実施許諾製品として「マグ・フォーマー等」と紹介されています。

Magiqup_Magformer

中小企業庁長官賞:回転磁石付き知育玩具・立体図形学習教材(特許第3822062号) より引用

つまりマグ・フォーマーは、単なる海外発の人気商品というだけではありません。日本特許のライセンス関係の上でも語ることができる製品だったわけです。

そしてその後、マグ・フォーマーは独自の特許出願も重ねながら発展していきました。

そう考えると、この製品は「磁石で楽しくつながる玩具」というだけでなく、先行技術をライセンスで取り込みつつ、自らの製品として磨き上げていった好例と見ることもできそうです。

4.Wammy®(ワミー):やわらかさを ”つなぐ” 知育玩具

「つなぐ=固定されず変形し続ける」

Wammy は、本記事で紹介する4製品の中で、いちばん「やわらかい」発想の玩具です。コクヨから2008年に発売されました。

Wammy

Wammy

Wammy はやわらかいポリエチレン製で中央が空洞のブロック玩具であり、そのため 曲げたり、間を通したりしてつなげられます。平面作品からボールや動物などの立体作品まで作れるという説明も、まさにこの特徴を表していますね。(参考:Wammy(ワミー)|文具|コクヨ

対応する特許においても、その考え方が忠実に記載されています。

特許第4378661号は、柔軟な枠状の板体に、突起と孔、さらに内部の開口を設けることで、ねじる、曲げる、別の部材を中に通すといった複雑な組み方を可能にし、立体の表現力を高めることを目的にしています。

Wammy_Patent

特許第4378661号:組み付け玩具(2007.11.20出願) (J-PlatPat リンク

この特許の面白いところは、単に「やわらかい素材を使いました」という話では終わっていない点です。

特許では、柔軟な板状部材に、対角線上の一方の角へ突起を、もう一方の角へその突起が入る貫通孔を設ける基本構造が示されています。さらに内部には、外形をなぞるようなひょうたん形の開口を設けることで、部材をくぐらせたり、通したりといった、より複雑な組み方ができるようになっています。図6がまさにそれを示しており、柔軟さと貫通孔を活用しながら、馬を表現しています。

つまり Wammy は、どう固定するかよりも、「どう変形しながらつなげるか」を発明しているのです。そのしなやかな構造が、子どもの高い表現力や想像力を引き出していくのでしょう。

【発明の効果】
【0019】
 本発明によれば、ピースをひねったり湾曲させたり、ピース内に他のピースを潜らせたりする等により、単に並べて連結するだけでなく、ピースの複雑な形態の連結が可能で、簡単な構造でありながら立体形状物を構成でき、高い表現力、想像力を育む、組み付け玩具を提供することができる。
特許第4378661号 より引用

遊び方に柔軟性がある Wammy®

「柔軟性」という点が、LEGO や LaQ、マグ・フォーマーとの大きな違いだと感じました。

LEGO は、正確に固定する。LaQ は、面をつないで立体を完成させる。マグ・フォーマーは、磁石で迷わず立体化する。

それに対して Wammy は、固定されて完成するというより、変形し続けながら形になっていく玩具なのです。完成形に向かって一直線に組むというより、手を動かしながら「こんな形にもなるのか」を発見していく。その自由さが、Wammy がヒット商品となる秘訣なのかもしれません。

さらに興味深いのは、この「柔軟性」が、遊びの終わりを定義しない点にあります。一般的なブロックであれば、完成した作品は「鑑賞するもの」になりがちですが、Wammy は異なります。Wammy で作ったボールやバッグは、その柔らかさゆえに、投げたり身に付けたりと、次の遊びへとシームレスにつながっていくのです。

wammy-ball

ボールにすると、掴んで、投げて、跳ねさせて、いろいろな遊び方ができる。

5.まとめ:つなぐ玩具に宿る「おもしろさの設計」

  • LEGO は、立体をしっかり固定し、積み上げていくおもしろさ。
  • LaQ は、平面が立体へと変化していくおもしろさ。
  • マグ・フォーマーは、磁力によって直感的に組み上がるおもしろさ。
  • Wammy は、やわらかく自在に形が生まれていくおもしろさ。

特許を読み解いていくと、それぞれの製品において「おもしろさ」そのものが設計されていることが見えてきました。どれも優れた玩具でありながら、同じ「つなぐ」という行為の中で育まれる体験は決して同じではありません。その違いこそが、これらの玩具の魅力をより際立たせているのでしょう。

そして LEGO や LaQ の事例で紹介したとおり、特許情報というレンズをとおすと、継続的な企業努力が静かに浮かび上がってきます。

特許は、単なるビジネスにおける武器(権利)ではなく、発明者が「子どもたちにどんな世界を見せたいか」を綴った、文化的な史料としての側面もある。本記事の執筆を通じて、そのことを改めて感じました。

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