【スムージーVSフラッペ対決!】セブンとファミマの「レジ横ドリンク」特許を比較してみた

コンビニのカフェ化が止まりません。コーヒーはもはや定番化し、我々の生活にすっかり馴染んでいます。コンビニコーヒーが登場した当時は、「缶コーヒーがあるのに、わざわざコンビニコーヒーを飲む人なんているの?」と思われていたのに。

コンビニコーヒーは「コンビニで作りたての飲み物を買う」という文化を作りました。そして、その文化をベースとして、スムージーやフラッペなど新たなドリンクも続々と登場しています。

そんなコンビニコーヒー「じゃないほう」のレジ横ドリンクには、様々な工夫が凝らされています。そして、工夫あるところには特許あり。もちろん特許も取られているというわけです。

本記事では、コンビニドリンクのなかでも注目度が高い、セブンイレブンのスムージーとファミリーマートのフラッペの特許技術を取り上げます。

【イチからのマシン開発】セブンイレブンのスムージー

2017年頃から試験販売を開始し、昨年2023年からついに本格的に全国に展開されたセブンカフェスムージー。「そういえばいつの間にかセブンに新しいドリンクマシーンができたなあ」と思っていた方も多いのではないでしょうか。筆者もその一人です。

ちなみに「セブンカフェ」は今年2024年に商標登録出願されています。

「セブンカフェ」ブランド自体は長年展開されていましたが、意外にも出願は最近なのですね。ブランド展開にこれからより一層力を入れていくということなのかもしれません。

商標「セブンカフェ」の詳細情報 – Toreru商標検索

さて、「新しいドリンクマシーンができたなあ」と思いつつ、実はまだ飲んだことがなかった筆者。これを機に実際に飲んでみました。

まず、冷凍庫から凍った材料が入ったカップを取り出してレジでお会計。カップの中には凍った果物と、キューブ状の物体(野菜や果物のピューレを固めたものだそうです)が入っています。

その後カップのふたを開け、マシーンにセットし、しばらく待ちます。

できあがり!

野菜や果物の「生」な感じがいいですね。紙パック入りの野菜ジュースとは新鮮さがぜんぜん違います。身近なコンビニでこの味が飲めるのはうれしいです。

しかも、使われている野菜や果物は大きさや見た目の問題で規格外となってしまっていたものとのこと。ヘルシーでおいしいだけではなく、環境にもやさしいのです。

さて、カップに入っていた材料はどのようにしてスムージーになるのでしょうか。凍った材料でスムージーを作るのは、カチカチに凍っているし、ツルツル滑りそうだし、大変そうです。

そんな時に頼りになるのが安心と信頼の富士電機です。富士電機はセブンカフェのコーヒーマシン開発ですばらしい実績を残しています。Toreru Mediaでも過去に取り上げました。

カップをマシンにセットするだけで自動的にサイズを識別する技術など、かゆい所に手が届くナイスな技術でセブンカフェの躍進に貢献した富士電機。そんな富士電機がスムージーマシンではどんな技術を開発したのでしょうか。

スムージーマシン関連の特許技術を探してみたところ、富士電機が特許権者である特許7524794がありました。では、どんな特許技術なのか見てみましょう。

まず、スムージーマシンが抱えていた「課題」の説明から。

セブンカフェのスムージーは、凍った材料を回転する刃で粉砕して作ります。しかし、この作り方だと、はじめのうちは刃が材料に衝突しながら回転できるのですが、だんだんと刃に材料が引っかかってゆき、そのまま刃と材料が一緒に回転するようになってしまいます。そうすると、材料はうまく粉砕されません。

そこで、富士電機は、「①刃を上下に移動させる」「②刃の回転速度(回転数)を変化させる」という2つの動きを組み合わせ、刃から材料を振り解きました。具体的には、はじめは容器下側で速い回転速度で刃を回転させ(A)、その後刃の回転速度を低下させながら刃を上昇させ(B)、容器の上部では低い回転速度で回転させます(C)。

特許7524794 図5

実は、もともと刃を上下に移動させる技術はあったのですが、それでも、刃への材料の引っかかりを解消するのは難しかったそうです。そこで、富士電機は回転速度の変化を組み合わせ、引っかかりを見事解消しました。

コーヒーマシンに続き、スムージーマシンでも富士電機の特許技術が裏をしっかりと支えていたというわけです。

新しいドリンクを開発しようとなったら、それを製造するマシンから開発する。まさにイチからの開発。セブンイレブンの本気度がうかがえます。

【既存マシンの活用技術】ファミリーマートのフラッペ

専用マシンの開発から取り組んだセブンイレブンのスムージーとは対照的に、ファミリーマートのフラッペは汎用のコーヒーマシンで作ることができます。

しかし、汎用のコーヒーマシーンという限られた道具でおいしいフラッペを作るのはなかなかにハードルの高いことでした。専用の回転刃が備えられたセブンイレブンのマシンとは違い、汎用のコーヒーマシーンで出来るのはお湯やミルクを注ぐことぐらい。凍った材料にただミルクを注ぐだけではミルクが行き渡らず、うまくフラッペ状にはなりません。

そこで、ファミリーマートは「容器をお客さんに揉んでもらう」という手段に出ました。容器を揉んで中に入った氷を崩すことで、ミルクは行き渡りやすくなりました。

専用のマシンを用意しなくてもよいことは、低価格での提供に一役買っているものと推測されます。実際、スターバックスなどのカフェチェーンのドリンクに比べ、ファミリーマートのフラッペはかなりお求めやすい価格です。

お客さんに氷を崩してもらうというある意味斬新な選択をしたファミリーマートですが、「せめて崩しやすく・・」という想いからでしょうか。ファミリーマートはフラッペにある工夫を加えました。氷の中央に穴を開けたのです。

これは筆者が購入したブラックサンダーコラボのフラッペ。氷の中心に穴が開いていることがわかります。

穴が開いていることにより氷を崩しやすいというわけです。

コーヒーマシンでミルクを注ぎ、ストローで混ぜたらできあがり!

揉んで崩したり、ストローで混ぜたり、ちょっとだけ手間はかかりますが、近所のコンビニでお手頃価格のフラッペが楽しめるのはいいものです。

さて、氷の中央に穴を開けるという一見シンプルなこのアイデア、実は特許を取得しています。

ファミリーマートのフラッペ開発に携わった赤城乳業株式会社が出願した特許6139741がこれにあたります。

この特許技術は、逆円錐形状の内蓋14によって穴をキープするというのがポイントです。また、内蓋14は容器12を内側から支持する芯材としても機能するため、揉みやすさのために容器12を柔らかい素材にしても強度が維持できるというメリットもあります。

特許6139741 図4

「あれ、さっきの写真では逆円錐形状の内蓋なんてなかったよね」と気づいた方もいるかもしれませんが、実はこの容器、現在は使われていない旧型の容器です。工場での製造方法が改良され、逆円錐形状の内蓋なしでも穴を形成できるようになったそうです。

しかし、穴を開けるというアイデアは今も受け継がれていますし、穴を開けるというアイデアを実現するためのこの技術が、フラッペの普及に貢献したことは間違いありません。

実は他にもフラッペを展開しているコンビニチェーンはありますが、電子レンジで加熱するなど、ファミリーマートとは作り方が違います。「コーヒーマシンでフラッペが作れる」というのはファミリーマート独自の顧客体験なのです。

そして、この独自の顧客体験を実現させているのが、新規マシンを作るのではなく「フラッペの中央に穴を空ける」というシンプルなアイデア。このシンプルなアイデアを特許でしっかり守ったファミリーマート、侮れません。むしろ、シンプルで誰でもマネできそうだからこそ特許で守る意味があるとも言えます。

画像:ファミリーマート公式プレスリリースより引用 フラッペはいまやファミリーマートの看板商品となり、今年2024年には10周年を記念した総選挙も行われました。

まとめ

本記事では、コンビニドリンクのなかでも注目度が高い、セブンイレブンのスムージーとファミリーマートのフラッペを取り上げました。

セブンイレブンは独自マシンの開発から取り組み、セブンカフェのスムージーというブランドをイチから作りました。一方、ファミリーマートは既存のコーヒーマシンを活用し、フラッペという看板商品を生み出しました。タイトルに「対決」が入っている本記事ですが、対照的な二社に甲乙はつけがたいものです。

というわけで「対決」は引き分け!

対照的な二社の戦略に思いを馳せながらコンビニドリンクを楽しむことにしましょう。

Toreru 公式Twitterアカウントをフォローすると、新着記事情報などが受け取れます!

押さえておきたい商標登録の基本はコチラ!