今年、2026年は4年に一度のワールドカップイヤーであり、北中米ワールドカップが開催されました。
「史上最強」と評された日本代表は惜しくもラウンド32で敗退してしまったものの、オランダとの激戦、チュニジアに大勝、ブラジル戦での劇的先制弾など、4年後が待ち遠しくなる戦いを見せてくれました。
今回のワールドカップでは、出場国数の増加やハイドレーションブレイクの導入などの制度面の変更に加え、レフェリーの判定をサポートするための様々なテクノロジーが導入されています。これらのテクノロジーは、正確なレフェリングを実現するとともに、観客や視聴者に納得感、没入感を与えており、これからのサッカーの進化をも感じさせるものでした。
そこで、本記事では、ワールドカップイヤーを記念して、「サッカー×知財」をテーマに、北中米ワールドカップで躍動した最新テクノロジーに加え、サッカーと商標が交錯するトピックスをいくつか解説したいと思います。
目次
1.2026年ワールドカップを支えた最新テクノロジー
1.1. オフサイド判定をより正確にする「プレイヤーアバター」
重要なサッカーのルールのなかでも、最も分かりにくいとされているのが「オフサイド」ではないでしょうか。
近年では、VAR(ビデオアシスタントレフェリー)が導入されるようになり、「決まった!」と思いきや、審判がビデオをチェックしてゴールが取り消される場面も多く見られるようになっています。
オフサイドとは、ものすごく簡単に説明すると、「相手の後方から2人目の選手(多くの場合は最終ラインのディフェンダー)よりも前にいる味方選手にパスを出した場合」に適用される、いわば「待ち伏せを禁止する」反則です。

オフサイドが適用される場合 Jリーグ公式ホームページより
この図では、「相手の後方から2人目の選手」であるDFよりも、前に位置するFWにパスを出そうとしているためオフサイドとなります。右上のFWへのパスであれば、オフサイドになりません。
図であれば判別しやすいのですが、試合では常に動き回る選手の位置によって判定が変わってくるため、肉眼での判断が極めて困難であり、視聴者にとっても納得がいかない場面は珍しくありません。
このようなオフサイドに対するレフェリーの判定を補助するため、近年では、VARに加え、「半自動オフサイドテクノロジー」が導入されるようになっています。
これは、スタジアムの屋根下に設置されたトラッキングカメラが捉えた選手の身体の位置等のデータや、後述の「コネクテッドボール」が捉えたボールのデータ等をもとに、レフェリーに対してオフサイドの可能性が伝えられるというテクノロジーです。
半自動オフサイドテクノロジーは、2022年のカタールワールドカップから導入されていました。

半自動オフサイド技術、2022 FIFAワールドカップでの適用へ(FIFA公式ホームページ)より)
さらに、2026年の北中米ワールドカップでは、この3Dアバターがさらに進化し、選手ひとりひとりの身体の大きさまで、正確に反映されるようになりました。

テクノロジーパートナーであるレノボと共同開発した新たなイノベーションが、FIFAワールドカップ2026™で輝きを放つ(FIFA公式ホームページ)より
これは、FIFAが公式テクノロジーパートナーであるLenovoと共同で開発したものであり、実際に全参加選手1,284人全員の選手の全身をスキャンし、3Dアバターを作成しているのです(FIFA公式ホームページ)。
3Dアバターをここまで正確に作成する必要があるのか?と思えますが、オフサイドの判定は極めてシビアであり、例えば、足先が少しでもオフサイドラインを超えていればオフサイドの判定になりますので、選手ひとりひとりの身体のサイズのデータが重要になってくるのです。
上記画像の黄色のユニフォームの23番の選手は、コロンビア代表DFのダビンソン・サンチェスですが、足先がわずかにオフサイドラインを超えていたことから、オフサイドの判定が下されました。
実際に選手をスキャンして作成しているアバターなだけに、髪型も含め実際の選手とよく似ていて、見ている側としても臨場感がありますよね。
なお、この3Dアバターを生成する技術については、日本のソニーグループ株式会社が特許の出願をしていますが、まだ登録には至っていないようです。

1.2.ボールの動きを正確に捉える「コネクテッドボール」
1.2.1. ワールドカップの公式球
ワールドカップで用いられる公式球には、大会ごとにオリジナルのデザインと名前が与えられています。

例えば、2010年の南アフリカワールドカップの公式球「ジャブラニ」は「限りなく真球に近い球体」であるがゆえに、無回転シュートやブレ球になりやすいという特徴があり、ゴールキーパーからは批判の声が出るなど、物議を醸したこともありました。

同大会「日本vsデンマーク」戦で炸裂した本田圭佑の「無回転フリーキック」が印象に残っている方も多いのではないでしょうか。
この伝説的フリーキックも、ジャブラニから生まれたものでした。
このように、ワールドカップの公式球は、その大会、その時代を象徴するアイコンのようなものとなっていますが、近年では、公式球に秘められたテクノロジーにも注目が集まるようになっています。
1.2.2.コネクテッドボールテクノロジー
そのテクノロジーこそが、コネクテッドボールテクノロジーです。
これは、ボールの中に搭載された「500Hz慣性計測ユニット(IMU)モーションセンサーチップ」がボールの動きや衝撃を捉え、そのデータがリアルタイムでVAR審判に送信されるという技術です。

北中米ワールドカップ公式球「トリオンダ」 モルテン公式オンラインショップより
ボールが受けた衝撃は、心電図のようにグラフ化され、選手のボールへの接触の有無や時点を、視覚的に把握することが可能となります。

クロアチアを「天国から地獄」へと突き落とした「コネクテッド・ボール・テクノロジー」とは何か? ボールの「音」を判断しているわけじゃない!|FIFAワールドカップ2026より
今回のワールドカップでも、中継画面に映し出された心電図のようなグラフが気になった方も多いのではないでしょうか。
上記画像は、北中米ワールドカップ・ラウンド32の「ポルトガルvsクロアチア」の一戦。
クロアチアが1点ビハインドで迎えた後半アディショナルタイム、劇的同点弾が決まったと思いきや、クロスに合わせようとしたクロアチアの選手のボールへの接触が認められ、オフサイドと判定されて同点弾は取消しとなり、クロアチアはそのまま敗退となりました。
ここでも、コネクテッドボールが読み取ったボールへのわずかな接触が、判定に利用されています。
ボールの軌道が変わったようには見えないため、わずかに髪の毛が接触した程度ではないか?とも言われており、肉眼ではおよそ判断できない領域です。
わずかな接触まで感知するコネクテッドボールは、客観的なジャッジを実現する一方で、選手やサポーターを天国から地獄へ突き落す技術であるともいえそうです・・・。
このコネクテッドボールに関連する技術については、アディダスが特許を有していました(すでに存続期間満了によって消滅)。

出願日は2005年9月20日ですが、実際にワールドカップの舞台で使用されたのは、2022年のカタールワールドカップが初めてのことでした。
勝敗を左右する重要な判定に繋がる技術であるがゆえ、実用化までに相当な期間を要したことが窺われます。
なお、カタールワールドカップの公式球では、前記特許の図面と同様、センサーがボール中央に設置され、ケーブルのようなもので固定されていましたが、北中米ワールドカップの公式球では、前記画像のとおり、センサーはボールのパネルの裏側に設置されるようになっています。

カタールワールドカップ公式球「アル・リフラ」 adidas公式サイトより
1.3. 選手と同じ目線で試合を観戦できる「レフェリービュー」
最後に紹介するテクノロジーは「レフェリービュー」、その名のとおり、主審の頭に装着された小型カメラによって、試合中の主審目線での映像と音声を記録しているものです。
これも、LenovoとFIFAの共同開発によるものです。
レフェリービューは今回の北中米ワールドカップで初めて導入されたもので、生中継においても、レフェリー目線の映像が映し出されていました(北中米ワールドカップ ラウンド32 アルゼンチンvsオーストリアのレフェリービュー FIFA公式YouTubeチャンネル)。
選手と同じ目線で見るシュート、審判に抗議する選手の表情、さらには、試合前に審判と選手が握手する場面も捉えており、これまでの中継映像では味わえない臨場感を実現していました。
この審判目線の映像は、AIによる映像安定化技術を採用した「レフリービューAIスタビライザー」により、ブレや歪みが最大50%低減されているとのことです(Lenovo公式ホームページ)。
「手ブレ補正」ならぬ、最強の「顔ブレ補正」ともいえる技術によって、視聴者をワールドカップのピッチ内へ連れて行くテクノロジーでした。
サッカーのみならず、陸上競技等のスポーツや音楽イベント等の撮影の際にも活用される、ブレ補正技術については、こちらも日本のソニーグループ株式会社が特許を有しています。

2. ゴールパフォーマンスは商標登録できる?
2.1.海外での商標登録例
ここまでは、北中米ワールドカップを支えた最新技術を紹介してきましたが、ここからはテーマを変えて、サッカーと商標が交錯するトピックや裁判例を紹介したいと思います。
サッカー選手がゴールを決めた後に披露する「ゴールパフォーマンス」は、その選手の代名詞ともいえるものです。
キリアン・エンバペの「腕組みポーズ」、ジュード・ベリンガムの「両手を広げるポーズ」、アーリング・ハーランドの「瞑想ポーズ」など、サッカーが好きなら、お気に入りのゴールパフォーマンスがある方も多いのではないでしょうか。
そんなゴールパフォーマンスですが、近年、これを商標登録する選手がちらほら出てきています。
例えば、プレミアリーグのチェルシー所属、コール・パーマーのゴールパフォーマンスは、「両腕を組んで両手で上腕を上下に擦る」という何やら寒そうな動きですが、このゴールパフォーマンスは英国にて商標登録されています。

商標登録番号:UK00004129108(イギリス商標局サイトより)
上記リンクからは、登録されたパーマーのゴールパフォーマンスの動画が掲載されていますが、なぜか白黒、そして真顔、ユニフォームではなく黒色ロンT姿でゴールパフォーマンスを披露するパーマーを見ることができます。
商標登録するための動画であるが故にここまで質素なものとなったのかと思われますが、こんなにシュールなゴールパフォーマンスはなかなか貴重です。実際に動いている様子をぜひ見てみてください。
その他にも、キリアン・エンバペ、クリスティアーノ・ロナウド、ヴィクトル・ギョケレシュのゴールパフォーマンスは商標登録されているとのことであり、海外ではゴールパフォーマンスを商標登録する例が散見されます。
2.2.日本での登録可能性
日本においても、動き商標の制度があるため、ゴールパフォーマンスという動きについても、識別力等の登録要件を充たすのであれば、商標登録される可能性はあると考えられます。
「人間の動き」が登録されている例を調査してみたところ、京都にある居合斬り道場を運営する「一般社団法人戸山流居合道」が、居合斬りの型を動き商標として商標登録していました(指定役務:技芸・スポーツ又は知識の教授、剣道の教授)。

商標登録第6363354号(日本特許庁サイトより)
他方、筆者が調査した限り、日本人のサッカー選手のゴールパフォーマンスが、動き商標として登録されている例は見当たりませんでした。そもそもゴールパフォーマンスが印象的な日本人のサッカー選手があまりいないからかも知れません。
また、実際問題として、ゴールパフォーマンスを商標登録する実益がどこまであるのか?という疑問もあります。
例えば、仮にゴールパフォーマンスを商標登録したとしても、他人が当該ゴールパフォーマンスを試合中に模倣したことに対して、商標権侵害を追及することは困難といえそうです。
商標権侵害の要件である商標の「使用」とは、例えば、商品のパッケージに標章を付する行為等、商標法で細かく規定されていますが(商標法2条3項)、「試合中にゴールパフォーマンスを披露する」行為は、商標法で定められた商標の「使用」の類型に当てはまらないと判断される可能性があると考えられるからです。
その意味で、ゴールパフォーマンスという行為自体を商標権によって独占することは困難ですが、例えば、「ゴールパフォーマンスのシルエットをプリントしたユニフォーム等を販売する行為」は、商標権侵害(商標の使用)に当たる場合もあり得るでしょう。
なお、著名人の知名度や顧客吸引力を利用して商品を販売したりする行為に対しては、一定の要件を充たせば、「パブリシティ権侵害」として、損害賠償請求等を行う余地もあります。
著名なサッカー選手(のゴールパフォーマンス)の知名度を利用して、商品を販売する等の行為に対しては、パブリシティ権で対処することができる場面もあるといえるでしょう。
3.正規ライセンシーなのに訴えられたサッカー商標訴訟:ユベントス事件(東京地判平成12.3.23)
3.1.ユベントス(Juventus)について
本事件は、「ユベントス」というサッカーチームの商標について争われた事件ですので、まずは同チームについて説明します。
ユベントスとは、イタリアのプロサッカーリーグ「セリエA」に所属するビッグクラブであり、2011/2012~2019/2020シーズンまでリーグ9連覇を成し遂げるなど、輝かしい実績を有する強豪です。
日本人選手がユベントスに在籍したことはありませんが、2026年夏の移籍市場では、日本代表守護神の鈴木彩艶がパリサンジェルマンに移籍し、さらにユベントスにレンタル移籍されるとの噂が流れていました(しかし、この移籍は直前で破談となり、鈴木彩艶はアストンヴィラに移籍することとなりました。)。
また、過去には、同じくセリエAの強豪「ACミラン」に所属していた本田圭佑が「ユーヴェ(ユヴェントス)が今、弱くなったらユーヴェ自体も危ないでしょ。本当にイタリア全体が危ないですよ。」と発言したことが話題になったこともありました(出典:クラブや伊メディアに不満…心中を明かす本田「このチームは変わらない」)。
・・・日本代表選手について語り始めるとキリがないですが、本筋に戻します。
3.2.事案の概要
本事件は、そんなイタリアの強豪クラブの名称である「ユベントス」について、本国のクラブとは何ら関係がないのに、なぜか日本で商標権を有していた企業が原告です。

原告が有していた「ユベントス」の商標(商標登録第1795328号)
他方、ターゲット(被告)となったのは、ユベントスの許諾を得たイタリアの企業から正規のルートでユベントスの商品を輸入し、日本で販売していた企業(つまり正規ライセンシー)です。
原告は被告に対し、ユベントス商標に基づき、損害賠償や差止めを求めたのですが、
- そもそも世界的にも有名なサッカークラブの名称を、勝手に登録した商標は有効なのか?
- 正規のルートで輸入販売している側が損害賠償を支払う必要があるのか?
などなど、突っ込みどころ満載の事件で、サッカーに関連するという点だけでなく、商標法の勉強にもなる判例です。
まず、この事件を理解する前提として、1.「ユベントス」商標の有効性について確認しましょう。
実は原告が有していた「ユベントス」商標は、「国際信義に反する」等の理由で、一度は特許庁にて無効審決が下されていました。
無効の根拠:商標法4条1項7号(登録を受けることができない商標)
「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」
しかし、原告はその取消しを求めて訴訟を提起し、なんと東京高裁にて逆転勝訴(無効審決の取消し)を勝ち取っています(東京高判平成11.3.24〔判時1683号138頁〕)。
商標法4条1項7号には該当しないと判断した東京高裁判決の理由は、以下のとおりです。
- Jリーグが創設されたのは平成3年である一方、ユベントス商標が出願されたのは、その8年前である昭和58年のことであり、その時点において、日本国内ではプロサッカー競技の愛好者もさほどの数ではなかった。
- ユベントスというサッカーチームの存在等についても、日本において周知・著名ではなかった。
- 出願当時、プロサッカーの愛好者は男性が多かったものと解されるが、原告は、ユベントス商標を婦人用ハンドバッグ等に使用していたのであり、ユベントスの名声を利用する等、不正な意図をもって出願したものではない。
- 著名な外国の団体の名声を利用する目的で、当該団体の名称等について商標登録を受けることは公序良俗を害するが、出願時には当該団体が著名ではなく、その出願に不正な意図がなかった場合には、その出願後に当該団体が日本国内で著名になったとしても、そのことをもって直ちに、当該商標権が公序良俗を害するものになるとはいえない。
出願当時、Jリーグはまだ始まっておらず、「日本におけるサッカー自体の知名度がそこまで高くなかった」という時代背景を踏まえた判断となっており、原告の「ユベントス」商標自体は有効という前提があります。
3.3.裁判所の判断
このように「九死に一生を得た」ユベントス商標に基づき、原告が損害賠償や差止請求を求めたのが、今回紹介する裁判例(東京地判平成12.3.23 判時1717号132頁)です。
商標が有効である以上、ユベントス商標を使用している被告(正規ライセンシー)が敗訴してしまうのか・・・と思いきや、この事件では、原告の請求が「権利の濫用」であるとして、請求棄却判決となっています。
東京地裁の判断は以下のとおり。
- 昭和55年からは、事実上の世界一クラブ決定戦である「ヨーロッパ・サウスアメリカ・カップ」がいわゆる「トヨタカップ」として東京で開催されるようになり、同大会に参加するセリエAのチームは日本国内でも知られるようになっていった。
- 実際に、昭和60年の第6回トヨタカップでは、ユベントスが出場して勝利し、ヨーロッパに初のタイトルをもたらし、日本国内でも報道され、試合の模様は全国的にテレビ放映された。
- 平成3年にはJリーグが始まり、日本国内においてもサッカー愛好家が増大するとともに、海外の強豪チームが知られるようになった。
- 平成8年の第17回トヨタカップは、東京の国立競技場で開催され、約48,000人の観客が集まり、ユベントスが2度目の優勝を飾った。このニュースも多数の新聞に掲載され、現在では、ユベントスの名称は日本国内で広く知られるに至っている。
- 「Juventus」という語は、ラテン語を語源とする「青春」という意味の語であるところ、日本の辞書にはサッカーチームを表す固有名詞である旨の記載があることからすれば、「Juventus」という語は、イタリア語において、サッカーチームとしての「ユベントス」以外のものを表す一般的な用語とはいえない。
- 原告代表者は、出願当時、サッカー愛好家であり、度々イタリアに渡航して、イタリアの事情に精通していた。
そのうえ、以下のとおり結論付けました。
「原告は、我が国においてサッカー人気が高まるなか、原告商標が「JUVENTUS」チームの名称に由来するにもかかわらず、商標権が自己に帰属していることを奇貨として、その由来元に当たる同チームから適法に許諾を受けて同チームの標章を使用する者に対し、本件商標権を行使して、その使用を妨げようとしているものであるといえる。原告によるこのような本件商標権の行使は、正義公平の理念に反し、国際的な商標秩序に反するものといわざるを得ない。したがって、原告の本訴請求は、公正な競業秩序を乱すものとして、権利の濫用に当たる」
3.4.検討(2つの判例の比較)
この事件だけを見ると、東京高裁(商標の有効性)と、東京地裁(損害賠償の成否)で判断が180度異なり、「わけわからん」状態に陥ってしまいそうです。ただ、東京高裁と東京地裁の判断を比較すると、2つのポイントが見えてきます。
1つ目は「判断基準時」です。
無効審決をひっくり返した東京高裁は、あくまでも「出願当時」における、日本国内でのサッカーの人気度や、ユベントスの著名性をもとに検討しており、出願後にユベントスが日本国内で著名になったからといって、公序良俗違反にはならないと判断しています。
他方、権利濫用を認めた東京地裁は、日本国内で開催されたトヨタカップにおいて、ユベントスが2度勝利したこと等によってユベントスの著名性が高まったこと等、出願後の事情も考慮に入れています。
2つ目は「原告の意図に対する評価」です。
いずれの事件においても、「原告はユベントスの名声を利用しようとする不正の意図があったのでは?」という点が問題になっています。
東京高裁は、原告がユベントス商標を婦人服等に使用してきたこと等を理由として、不正の意図はなかったと判断しました。
他方、東京地裁は、原告代表者がサッカー愛好家であることや、度々イタリアに渡航していたこと等、原告(代表者)に固有の事情を拾い上げたうえで、「原告は「ユベントス」が著名なサッカーチームの名称であることを知ったうえで出願した」と認定し、権利濫用との結論に繋げています。
本件からの学びとしては、「商標が有効であっても、損害賠償は権利濫用として否定される場合がある」という点と、「不正の意図の認定次第で、結論が全く異なってくる」という点でしょう。
なお、原告代表者は、「ユベントスはミラノのJuventusというブティックの店名に由来するものであり、サッカーチームとは無関係だ!」と主張していたようですが、東京地裁は、「そのようなブティックが存在していたことを示す証拠が無い」として一蹴しています。
「サッカー愛好家がセリエAのユベントスを知らんわけないだろうが・・・」と突っ込みたくなる弁解です。
4.最後に~2030年ワールドカップに向けて~
次のワールドカップまであと4年もあります。
この4年間でさらなるテクノロジーが生まれ、次のワールドカップをもっと面白くしてくれると考えるとワクワクしますよね。
さらに、この4年間、世界で躍動する日本人選手にもワクワクさせられること間違いなしでしょう。
26/27シーズン開幕戦でハットトリックを決めた鈴木唯人、Jリーグからスペインの名門「バレンシア」に移籍後、スタメンを勝ち取った佐藤龍之介、そして、新たにプレミアリーグに参戦した前田大然と守田英正、挙げればキリがないほど、日本人選手が世界で活躍し続けていて、2030年のワールドカップで「史上最強」を更新することは確実です。
サッカー(観戦)好きの筆者としては、さらに成長したテクノロジーと日本代表が躍動するであろう、2030年のワールドカップイヤーに、またこんな記事が書けることを楽しみにしています。