ギンビス「アスパラガス」が長~く愛される理由はどこに?~商標×ブランディングのヒミツを調査!

株式会社ギンビスが販売するロングセラーお菓子『アスパラガスビスケット』。3時のおやつや晩酌のお供として、口にした経験がある方も多いのではないでしょうか?

長く愛されるヒット商品・アスパラガスビスケットの人気の裏には、ユニークな商標やギンビスのブランド戦略が存在します。

この記事では、お菓子好きライターの筆者が商標調査と実食を交えてアスパラガスビスケットの人気のヒミツを探ります!

1、高級感のあるネーミングで魅力を発信

1968年に発売されたアスパラガスビスケット。「アスパラガス」と名付けられた理由は、ビスケットの長細い見た目がアスパラガスに似ていたため。

加えて、当時日本に来たばかりで高級品だった野菜「アスパラガス」を名前に含め、高級感のあるお菓子としての印象をつけようとしたそうです。

画像:発売当初のアスパラガスビスケット – ギンビス公式ページより

そんな「アスパラガス」関連の商標が初めて申請されたのは、アスパラガスビスケット発売前の1967年。

発売から約3年後の1971年に無事に商標登録され、その後50年以上続くロングセラー商品のブランド名になりました。

商標登録0930017

「アスパラガス」の味わいは、当時甘いものが中心だったビスケットをあえて塩味の効いた味わいにすることで他企業の商品と差別化。

アスパラガスビスケットが発売当初から人気を博した理由は、高級感をふまえたネーミングの妙と他にない味わいにありそうです。

なお、ギンビスは2023年3月に『アスパラガス ココナッツ味』を発売。同じ「アスパラガス」ブランドの商品でありながらゴマをなくしてアジアンスイーツやカレーで人気の「ココナッツ」を取り入れた斬新な商品を展開しています。

画像:アスパラガス|お菓子に夢を! – 株式会社ギンビスHPより

その他にもギンビスのユニークな「アスパラガス」商品は多く、チョコをかけた『ミニアスパラガスチョコ』や、過去にはお酒のお供にピッタリな『ミニアスパラガスおつまみベーコン風味』などを販売しています。

画像:アスパラガス|お菓子に夢を! – 株式会社ギンビスHPより

独自の「甘くないビスケット」路線は維持しつつも、近年の流行も柔軟に取り入れた商品ラインナップを拡大していることが、ブランドの発展につながっていると考えられます。

2、記念日制定で話題性を確保!

商品そのものの発展に加えて、イベントや季節の話題をPRに活用している点もギンビスの特徴です。アスパラガスビスケットの発売から50年を迎えた2018年には、「アスパラガスビスケットの日」が商標として出願されました。

登録6093781

「アスパラガスビスケットの日」としてギンビスが定めたのは、発売日ではなく”アスパラガスビスケットの形状に似ている”1月11日。

この日は一般社団法人日本記念日協会にも認定されており、オフィシャルな記念日としての影響力を有しています。

画像:1月11日は“アスパラガスビスケットの日®” | 株式会社ギンビスのプレスリリースより

商標登録がなくても記念日の認定は可能なようですが、商標登録をしておくことで、ギンビス社が「アスパラガスビスケットの日」をマーケティングツールとして継続的・積極的に使っていく意図がありそうです。

ちなみに、お菓子に関する記念日には江崎グリコの「ポッキー&プリッツの日(11月11日)」や森永製菓「ミルクキャラメルの日」といった各企業によるものが多数存在します。

特に「ポッキー&プリッツの日」は11月11日に購入者の8割弱が記念日を意識して購入したという調査もあり、上手く周知できれば記念日マーケティングはPR効果が高そうです。

画像:ポッキー&プリッツの日|ポッキー|Glicoより

3、どこが違う?「アスパラガス」とセブン-イレブン「セサミスティック」

ロングセラー商品として人気を拡げているギンビスの「アスパラガス」。調べていくとこんな商品も見つかりました。

ギンビスが製造するセブン-イレブンPB商品『セサミスティック』

今回注目したのは、ギンビスが製造元として表記されているセブン-イレブンのPB商品『セサミスティック』。本家アスパラガスビスケットとセサミスティックにどのような違いがあるのか、調べるために両者を購入しました。

(左)セブン-イレブン『セサミスティック』,(右)ギンビス『アスパラガスビスケット』

パッケージの写真を見て同じような形のビスケット……と思っていたところ、並べてみると想像以上に明らかな違いが。

アスパラガスビスケットはくびれた節が複数できているのに対し、セサミスティックはまっすぐで均一な形になっています。

セブン-イレブン『セサミスティック』
ギンビス『アスパラガスビスケット』

味わいも多少異なり、セサミスティックはあっさりとした塩気とゴマの風味が引き立つ味わい。アスパラガスビスケットのほうが甘みが強く、やみつきになる甘じょっぱさが楽しめました。

販売価格を比べると、セサミスティックは120gで税込138円(店頭価格)、アスパラガスビスケットは135gで税込176円(ヨドバシ・ドットコムで購入,獲得ポイントを引いた実質価格)。セサミスティックはスーパーやドラッグストアよりも高価なイメージがあるコンビニのお菓子ながら、グラム価格ではアスパラガスビスケットよりもコスパに優れています。

アスパラガスビスケットとセサミスティックのどちらが好みかは、人によって分かれそうなものの、「アスパラガス」にはいつもの味・あの形という安心感があります。少し価格差があっても、やっぱり食べなれたアスパラガスビスケットが良い・・というお客さんもいるでしょう。

大手流通へのPB商品の提供は、メーカーにとって安定した売上になるメリットがある反面、自社ブランド商品を販売する機会が減る、利益率が一般に低いというジレンマもあります。

つるっとした「セサミスティック」には、野菜のアスパラガスっぽい見た目というロングセラーブランドのアイデンティティはありません。

あのくびれた節が「アスパラガス」らしさの象徴であり、味の違いも含めて製造を請け負っているPB商品と自社ブランドの一線を引くギンビスの矜持を改めて感じました。

おわりに:アスパラガスビスケットの人気は”伸び続ける”意志にあり?

50年以上の歴史を誇るロングセラー商品ながら、未だに多くの挑戦を続けるギンビスのアスパラガスビスケット。この記事では、アスパラガスビスケットの人気の理由として以下の3点を取り上げました。

アスパラガスビスケットにおいて商標は、ブランド名やマーケティングツールとしての記念日名をギンビスの権利として安心かつ安全に利用するために活躍しています。同商品には、愛されながらもなおその魅力を伸ばし続ける、ギンビスの上向きな思いが反映されているのかもしれません。

アスパラガスビスケット」のこれからのブランド展開に、ますます期待が高まります…!

Toreru 公式Twitterアカウントをフォローすると、新着記事情報などが受け取れます!

押さえておきたい商標登録の基本はコチラ!