商標目線で「北関東スーパーマーケット抗争」を斬る!

今、北関東がアツい。

テレビは北関東ネタを日々連発し、北関東を舞台にした映画「翔んで埼玉」は、第二弾の公開が迫っています。

画像:翔んで埼玉公式ページより引用

世界の今を発信することをコンセプトとしてはじまったTV番組も、最近はもっぱら北関東に熱視線を送っている様子。

画像:有吉の世界同時中継公式ページより引用

そんな今最もホットな地である「北関東」で繰り広げられているのが「北関東スーパーマーケット抗争」です。

北関東と一括りにされがちですが、北関東は其の実、一枚岩ではありません。各県が確固たるアイデンティティを持ち、しのぎを削りあっています。

勿論、スーパーマーケットもそうです。各県ゆかりのスーパーマーケットが日々激しい抗争を展開していると言っても過言ではありません。

そして、その抗争の最前線と言えるのが、筆者が住む茨城県古河市です。

各県との県境が目前に迫る古河の地には、各県を代表するスーパーマーケットが進出し、その勢力を拡大しようとしています。

本記事では、北関東でスーパーマーケット抗争を展開する3社について、商標目線でお伝えしていきます。

1.ヤオコー 〜抜かりなきお惣菜包囲網、そして「アレ」も商標登録〜

まずご紹介するのは、埼玉で創業した「ヤオコー」です。

写真:ヤオコー古河大堤店(筆者撮影)

ヤオコーは、TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』の人気企画「スーパー総選挙」でも第2位にランクインした実力者です。

有権者であるリスナーの皆さんが「推しスーパー」と、その熱い「推しコメント」をTBSラジオHP内のフォームから投票。9/5~10/19の投票期間に集められた票数は、第3回の4倍以上となる24,844票に!さらに、名前の挙がったスーパーの種類は468!

22年度スーパー総選挙|TBSラジオ

総選挙で圧倒的な支持を見せつけたヤオコーの強さの源は、「お惣菜」です。スーパー総選挙の投票者コメントでも以下のように評されていました。

カツは分厚くてサクサク。パンについても種類が豊富。お惣菜は飽きてしまいがちですが、ヤオコーは新しい商品が並ぶペースが早くて飽きない!

22年度スーパー総選挙|TBSラジオ

筆者もこのコメントには完全に同意します。ヤオコーのお惣菜は他のスーパーマーケットに比べて頭一つ抜けているのです。

また、ヤオコーのお惣菜は守備範囲の広さも強みです。和・洋・中・エスニック、全ジャンルのお惣菜がおいしいのです。

そんなヤオコーがお惣菜をジャンルごとにブランディングし、ブランド名を商標登録していることを皆さんはご存知でしょうか。

画像:Toreru 商標検索より引用
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画像:Toreru 商標検索より引用
画像:Toreru 商標検索より引用
画像:Toreru 商標検索より引用

「幸唐」、「味庵」、「漁火」、ヤオコーユーザーであれば一度は目にしたことのある名前ではないでしょうか。

写真:ヤオコーのお惣菜(筆者撮影)

「幸唐(さちから)」は鶏の唐揚げ。

「味庵(あじあん)」は中華・エスニック料理。

「漁火(いさりび)」は魚総菜と、まったく隙がない布陣です。

お惣菜のブランド名を商標登録することからも、ヤオコーの知財戦略への力の入れようがうかがえます。実はヤオコーは特許事務所とタッグを組み知財管理、ブランディングに取り組んでいるようです。

お客様インタビュー 株式会社ヤオコー様|馬場国際特許事務所

特許事務所とタッグを組んだことをきっかけに、これまで商標登録していなかった「アレ」も商標登録したそうです。

画像:Toreru 商標検索より引用

「タラッタラ、タラッタラ、なっかおしのいーち♪」でお馴染みの「中押しの市」です。「中押しの市」は毎月15日開催のいわゆる特売デー。この日は店内にのぼりが立ち、テーマソングも流れて大盛況です。

ともあれヤオコーユーザーであればこの文字面を見るだけでメロディが浮かんでくることでしょう。商標をしっかり抑えておくのも納得です。

2.カスミ 〜多業態展開で幅広い「食」のニーズを満たす〜

続いてご紹介するのは、茨城で創業した「カスミ」です。

カスミが力を入れているのは、ズバリ「食」です。「食」というのはまさにスーパーマーケットのド王道。そこに真向勝負をかけているのがカスミなのです。

「食」に対する消費者のニーズは実に様々です。「コスパ良くいきたい」「新しいものに出会いたい」「ちょっと贅沢したい」…このような様々なニーズを満たすため、カスミは幅広い業態(店舗ブランド)を備えています。商標を通して見ていきましょう。

まずご紹介するのは「FOOD OFF ストッカー(フードオフ ストッカー)」です。こちらはカスミが展開するディスカウント業態で、コスパの良さが自慢です。

画像:Toreru 商標検索より引用

続いて紹介する店舗ブランドは「FOOD SQUARE(フードスクエア)」。珍しい輸入食品やこだわりの国産食材を取り揃える食品を強化した業態です。

画像:Toreru 商標検索より引用

さらに「BLANDE(ブランデ)」は2022年から展開を開始した新業態、高級志向の店舗ブランドです。

BLANDEは有料会員制プログラム「BLANDE Prime」などスーパーマーケットとしてはかなり尖った施策に取り組んでおり、業界の注目を集めています。

画像:Toreru 商標検索より引用

茨城県つくば市にあるBLANDE研究学園店には、有料会員専用のラウンジがあるそうです。ラウンジはイートインスペースとして使え、「BLANDE」で購入した食品をちょっとリッチな気分で楽しめます。

カスミ新業態「BLANDE」2号店 研究学園店を徹底レポート!|ダイヤモンド・チェーンストア

さて、今回の記事執筆にあたって、「FOOD SQUARE(フードスクエア)」の店舗に行ってみました。

写真:FOOD SQUARE(フードスクエア)古河諸川店(筆者撮影)

購入品はこちら。

真:購入商品(筆者撮影)

FOOD SQUAREでは、地場野菜も多く取り扱われています。地場野菜の販売は今や多くのスーパーマーケットがおこなっていることですが、ジャンボピーマン(写真左端)や長オクラ(写真左から二番目)など、普通のスーパーマーケットにはないちょっと珍しい野菜があるのがFOOD SQUAREならではです。

購入品の中での個人的なヒットは「サラダにんにくフレンチ風味」でした。まるごとのにんにくがゴロっと入っており、にんにく好きにはたまりません。これはリピート確定です。

実は、FOOD SQUAREの店舗は筆者の自宅から少し離れているのですが、「サラダにんにくフレンチ風味」を買うために、また訪れてみようかなという気持ちになりました。

3.ベイシア 〜「衣料品も揃う」「ネットでも買える」で現代の忙しさに寄り添う〜

最後にご紹介するのは、群馬で創業した「ベイシア」です。

写真:ベイシア古河総和店(筆者撮影)

ベイシアは最近レディースアパレル小売り専門店のハートマーケットとの協業で新ブランド「&H」を立ち上げたことで話題です。

スーパーで服が買われない時代に、ベイシアがアパレル新ブランドを立ち上げた理由|ITメディアビジネス

もちろん、ブランド名の商標登録出願も抜かりなくおこなっています。「&H」は2023年4月20日にプレスリリース、同26日より店舗での販売を開始しました。その約一カ月前には商標登録出願を済ませています。

画像:Toreru 商標検索より引用

上記の記事ではスーパーマーケットの衣料品についてこのように評されています。

共働き世帯が増え、忙しさが増した現代人にとって、「買い物」は一度で済ませるに越したことがないはずだ。それなのに、日本チェーンストア協会加盟店のデータからは、食品が伸びる一方で、衣料品の売り上げが落ち込んでいることが分かる。つまり、それぞれ別の店で買い物をしているという見方ができる。一見、合理的とは思えないこの行動を多くの人がとる理由は、量販店の衣料品売り場に期待をしていない、興味を持っていないことも一因だろう。

スーパーで服が買われない時代に、ベイシアがアパレル新ブランドを立ち上げた理由|ITメディアビジネス

たしかに、筆者もスーパーマーケットの衣料品売り場はなんとなくスルーしていました。スルーしていた理由は…スーパーマーケットの服はちょっとダサい、そんなふうに思っていたからかもしれません。このような現状をベイシアは打破しようとしているのです。

また、ベイシアは、楽天グループ株式会社が展開するネットスーパーのプラットフォーム「楽天全国スーパー」の第一弾として出店をおこなったことでも話題です。

楽天、ネットスーパーのプラットフォーム「楽天全国スーパー」を提供開始|楽天グループ株式会社公式ページ

画像:Toreru 商標検索より引用

実は筆者もこのサービスのユーザーです。ユーザーの視点からこのサービスの良さを挙げるとすると、まず何よりも、楽天IDが紐づけられたことによるスムーズな買物体験が挙げられます。もともと楽天に登録していた住所やクレジットカード情報が利用できたので、導入がとてもスムーズでした。

それと、これは筆者が利用しているベイシア古河総和店独自の取り組みなのかもしれませんが、ネットスーパーで注文をすると、配送の際に手書きのメッセージカードが添えられていたのも印象的でした。

画像:ネットスーパーでの購入時に添えられていたメッセージカード(筆者撮影)

おわりに

本記事では、北関東でスーパーマーケット抗争を展開する3社について、商標目線でお伝えしました。

惣菜や特売日までも、「自社ブランド」として商標登録しているヤオコー。

「食」に注目し、顧客ターゲットに合わせてさまざまな「業態(店舗ブランド)」を広く展開するカスミ。

他企業とコラボレーションすることで、独自のアパレルブランドを立ち上げたり、ネットスーパーを推進するベイシア。

このように3社がそれぞれの強みを活かしながら切磋琢磨しているのです。これからも北関東スーパーマーケット抗争から目が離せません!

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