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ChatGPT:AIツールが知財業界に与える影響と対策

はじめに

こんにちは、Toreru の宮崎です。

最近、OpenAIによって開発された「ChatGPT」という人工知能ツールが注目を浴びています。このツールは文書作成や要約などの分野で大きな飛躍を遂げ、これまでにない種類のタスクをこなすことができるようになりました。これにより、知財業界にも大きな影響がある可能性があります。

本記事では、ChatGPTが知財業界にもたらす影響について考察し、その対策についても解説します。

ChatGPTとは?

ChatGPTとはOpenAIによって開発された人工知能ツールです。文書生成や要約、対話などの分野で大きな飛躍を遂げています。ChatGPTは大量のテキストデータを学習し、ユーザーからの入力に基づいて文章を生成することができます。このツールは将来的にはさまざまな業界で利用されることが期待されています。

知財業務の適用例

それでは、ChatGPT が知財業務のどこに利用できるか検証していきましょう。

(1) 特許明細書作成

まずは、特許明細書作成について検証していきます。

実際に、ChatGPT に請求項を書いてもらいました。お題は、「消しゴム付き鉛筆」です。

さらに、特許明細書を作成させてみました。

いかがでしょうか?

請求項はまだまだ難しいですが、明細書の品質は非常に高いと感じませんか。課題も推測して書いていることに驚きました。

構成を与えれば、きれいな文章を書いてくれるため、明細書作成の時間は大幅に短縮する可能性があります。

(2) 商標の意見書の作成

次に商標の意見書作成を試してみました。

まずは識別力の例

次に類否判断の例

特に類否判断の「animato」(アニマート)と読むということを指摘していることに驚きました。

下記の手順で行うと、意見書作成の質を落とさずに時間短縮ができそうです。

  1. ざっくりAIに構成を書かせる
  2. 人間が構成を修正
  3. AIが清書する

(3) 警告書の作成

次に商標の警告書を書かせてみました。

構成をちゃんと与えれば、上記の警告書を送っても何も問題なさそうなクオリティです。

(4) 相談業務

次に相談業務を検証します。

「スタートアップのステージ毎の知財戦略」を聞いてみました。

これは素晴らしい回答ですね。一般的な回答の相談業務については ChatGPT が活用される可能性がありますが、100%信用できないところもあるので、実際には専門家のブログ記事と併用されると考えられます。

個別的な相談業務は、まだまだAIでは対応が難しいので今後も弁理士が担うことになりそうです。

(5) その他の業務

その他の業務として下記のものに利用されることが考えられます。

  • 特許調査
  • 報告書作成
  • メール作成
  • 記事作成(このブログ記事もChatGPT を利用して書いています!)
  • 資料作り
  • 資料の要約

AIが発達すると知財業界はどうなるか?

それでは、AIが発達すると知財業界はどうなるか予想していきましょう。

弁理士事務所

ChatGPT が登場すると、「特許権利化市場」が最も影響を受けます。

この市場は、今回のAIが最もうまく使えるところで、かつ、市場が大きいです。そのため、AIを取り入れるインセンティブが相当あります。最終的には、価格が下がって市場が縮小する可能性が高いです。

参考にしたのは、AIの進出が進んでいる翻訳業界です。

以下、実際に起こっている翻訳業界の現状を見ていきましょう。

ざっくり「高価格帯」「中価格帯」「低価格帯」に分けて考えてみます。

まずは、AIの出現により低価格帯の仕事が代替されます。品質があまり高くなくてもよく、検討事項も少ない場合はAIで十分だと判断されるのでしょう。

その後は、中価格帯の人は2つの選択肢に迫られます。

  1. AIを利用して、効率化して低価格にする
  2. AIを利用せず、高価格帯にする

AIを利用した場合は、品質を落とさずに価格を下げることになります。

また、AIを利用しない場合でも、高価格帯に人が集まりすぎて競争が起こり価格下落が起こります。

そうして、AIの進出により全ての価格帯で下落もしくは市場消滅が起こります。

今回のChatGPT の出現により、将来、特許権利化市場も同じようになると予想されます。

つまり、AIをクライアントが利用するとともに、弁理士が利用することで市場縮小の引き金になると考えられます。

知財部

それでは、知財部の業務はどうなるのでしょうか?

日常業務は効率化される可能性はありますが、調整業務や課題解決業務が多いため、今回のAIの影響はかなり限定的だと予想されます。

今後どうするべきか?(特に弁理士事務所)

市場の縮小に対して今後どうすれば良いか検討していきます。

変化を起こす事務所が生き残る

特許権利化市場が縮小すると同時に、チャンスが生まれる時でもあります。

対策を3つご紹介します。

  • 技術開発
  • 事業開発
  • 市場開発

技術開発

まずは、今回のAIを使ってオペレーションを改善する「技術開発」が考えれます。

特に、「プロンプト」(AIにどうやって命令するかの文章)を磨くことや、そもそもAIが理解しやすい構成でまとめるノウハウを蓄積すれば、圧倒的に効率化ができます。

特にAIがまだ普及していない過渡期には効果を発揮します。

その他にも、VBAでのシステム開発やSaaSなどを利用することでもオペレーションは大幅に短縮できます。

事業開発

次に考えられるのは、より付加価値の高いサービスを開発することです。

例えば、下記のようなものがあります。

  • 知財コンサルティングサービス
  • 開発・マーケティング・ブランディングの創出に貢献する知財サービス
  • 顧客体験を良くするサービス

この項目は難易度が非常に高いです。 事業開発には試行錯誤の期間・資金がいるので、長期的な目線で取り組むことが重要です。

市場開発

特許の権利化市場で、供給が少ないジャンルを見つける方法もあります。

例えば、下記のようなものがあります。

  • ITなど成長している分野の特許出願
  • 地方の企業の開拓

こちらは、見えない参入障壁(例えばコネクション等)もある可能性もありますが、単にプレイヤーが少ないこともあり得ます。

市場リサーチをして、まずは小さく参入できないか検討してみるところから始めるのが良いでしょう。

まとめ

ChatGPT は知財業界において大きな可能性を秘めた技術です。

まずは、どのようなところに使えそうか小さく試してみて、その効果を実感するのが良いと思います。

ありがとうございました。

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