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ウェブサイト名を商標登録するときの区分は?落とし穴も解説

コロナ以降、ショッピングはネットという流れがあっという間に加速しました。また、副業もさかんになって、自分でウェブサイトを立ち上げて、ハンドメイド商品や自分がセレクトした商品を販売したいなと思っている人もいらっしゃるかもしれませんね。

でも、ウェブサイトを開設するときに、うっかり他人の商標権を侵害してしまう、ということがあります。そんなことがあると、せっかく立ち上げたウェブサイトのネーミングやロゴが使えなくなったり、商標権者から損害賠償請求されたりするようなことも起こり得ます。

また、自分は商品を売ったりしているわけではなく、ただブログを書いているだけだけど、その場合もブログ名の商標登録が必要なの?と疑問を持たれている方もいるでしょう。

この記事では、そもそもウェブサイト名の商標登録は必要なのか?というところから、検討時のポイントや注意点まで、しっかり解説していきます。

1. そもそもウェブサイト名の商標登録は必要か

結論からいうと、必要です。

他者から商標権侵害だといわれないためには、自分が先に自分のウェブサイト名を商標登録をしていることが大切になります。

ウェブサイトには、大きく2つの種類があります。一つは、そのウェブサイトを通じて何か商品やサービスを販売したり広告宣伝するケース。もう一つは、そのウェブサイトで何か情報発信をするケースです。

このそれぞれのケースについて、なぜウェブサイト名の商標登録が必要なのか考えてみましょう。

まずは、ウェブサイトを通じて何か商品・サービスを販売したり広告宣伝しているケースです。

このようなサイトの訪問者にとっては、商品・サービスを販売・宣伝しているウェブサイトの名称が、その商品・サービスの提供者と何らかの関係があると見える可能性が高いといえます。

たとえば、『Toreru』という名称のウェブサイトで洋服が売られているのを見た後、街中で『Toreru』という看板の洋服店を見かけたら、両者は何か関係のある事業者だと感じても何ら不思議はありませんよね。

ウェブサイトで洋服を販売する例

つまり、この場合、ウェブサイト名は「お店の看板」のように機能しているということです。そのため、このウェブサイト名は商標登録しておくべきこととなります。

次に、ウェブサイトで何か情報発信をするケースを考えてみましょう。この場合、たとえその情報発信が無償であっても、そのウェブサイト名の商標登録が必要になる可能性が大いにあります。えっ、別に商売をしているわけではないのに…と思う方も多いことと思います。

商標権は、ある名称やロゴを「商標として」使用する行為を独占できる権利です。この「商標として」というためには、平たくいえば「事業として」商品・サービス(情報の提供も含みます)を扱うことが必要なのですが、事業として=有償である、とは限りません。

昨今は、いわゆるフリーミアム・モデルや、無償のオウンドメディアを通じて間接的に集客をするなど、無償でのサービス提供や情報発信であっても商取引の一環となることがめずらしくなくなってきています。

そのような背景下では、無償のウェブサイトの名称でも、他者の登録商標と同じもの、それを含んだもの、よく似たものを使用すると、商品・サービスの出所混同がおこり得ます。極端な話、たとえば『Nintendo』の名でゲームに関する情報発信をしているブログがあったら、あの任天堂が運営しているブログかと勘違いするおそれがありますよね?ということです。

したがって、無償の情報発信サイトの名称であっても、他者から商標権侵害を問われるリスクがあると考えられます。

ということは、無償のウェブサイト名でも商標登録をして、他人に似た商標権を取られないようにしておくことが必要かつ重要になります。

2. ウェブサイト名を商標登録するときの区分

では、商標登録をしようとしたときの区分はどのようにして決めたらよいのでしょうか。

そのウェブサイトで何をするかによって必要な区分が変わってきますので、以下を参考に自分に必要な区分を確認してみてください。

ウェブサイト上で商品販売をするとき(ECサイトのとき)

ウェブサイトで商品販売をする例

この場合、ウェブサイト名が「小売店の看板」のように機能していることが多いです。そのため、35類の小売役務(「〇〇の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定することがおすすめです。(〇〇の部分は、実際に取り扱う商品に当てはまるものを記載する必要があります)

また、ウェブサイト名が取扱商品自体のブランド名でもある場合(例えば、NIKEのオンラインショップでは、『NIKE』はウェブサイト名でもあり、そこで取り扱っているスポーツ用品自体のブランド名でもあります)には、取扱商品の区分(例:取扱商品が靴だったら25類「履物」)でも商標登録することが望ましいです。

ウェブサイト上で自社の商品・サービスを宣伝するとき

たとえば、商品はリアル店舗でしか販売しないけど、その店舗や商品の宣伝をウェブサイトで行う場合がこれに当てはまります。

この場合、たとえそのウェブサイト自体では販売行為を行っていなくても、サイトの訪問者はそのウェブサイト名と宣伝されている商品・サービスとを結びつけて理解します。そのため、そのウェブサイト名は、その商品・サービスの商標として機能します。

したかって、その商品・サービスが該当する区分(指定商品・役務)を指定することが必要です。

ウェブサイト上で他者の商品・サービスの広告宣伝を掲載するとき

ウェブサイト上で広告宣伝(紹介)しているのが、自分の商品・サービスではなく、他者の商品・サービスである場合がこれに当てはまります。

この場合は、35類「広告業」や「広告場所の貸与」、「消費者のための商品及び役務の選択における助言と情報の提供」を指定するのがおすすめです。

ウェブサイト上にアフィリエイト広告を掲載するとき

一つ上のケースと似ていますが、ウェブサイトで直接他者の商品・サービスを紹介するのではなく、そのサイト内でアフィリエイト広告を設置しているケースです。

この場合は、35類「広告業」や「広告場所の貸与」を指定するのがおすすめです。

ウェブサイト上で定期的に記事を配信するとき

ブログなど、そのウェブサイト上で定期的・逐次的に記事を書いて情報発信をする場合がこれに当てはまります。

この場合、まずは41類「電子出版物の提供」を押さえておくのがよいでしょう。本来この指定役務は、従来紙の本や雑誌だったものをウェブでストリーミング配信する行為を想定したものなのですが、今の社会では、従来雑誌などが担っていた情報発信がブログ等に置き換わっていることも多いため、ウェブサイトによる情報発信行為は、この指定役務と実質的に同等のものと評価できる余地があります。

ただし、雑多なテーマではなく、何か特定の分野・テーマに特化した情報提供をするときは、「〇〇に関する情報の提供」(例:44類「医療情報の提供」)も指定した方がいい場合があります。なお、「〇〇に関する情報の提供」は、〇〇が何かによって区分が変わるので注意が必要です。どの区分に当てはまるか判断が難しいことも多いので、わからないときは詳しい弁理士に相談しましょう。

そのウェブサイトにログイン機能があるなど、オンラインで利用できるアプリケーションのような性質があるとき

このようなウェブサイトの場合には、42類「電子計算機用プログラムの提供」も指定しておくことをおすすめします。

この指定役務は、もともとはSaaSなど、インストール不要で使えるソフトウェア(ウェブアプリ)を想定したものですが、単なるウェブサイトも広義ではソフトウェア(ウェブアプリ)であり、この指定役務が必要なサイトとそうでないサイトのボーダーラインは必ずしも明確にはなっていません。

そのため、自分では「ウェブアプリというほどのものではないけど…」と思っても、たとえばログイン機能があるような場合には、この指定役務も押さえておく方が安全です。

ここまで典型例を解説してきましたが、これ以上は書ききれません。区分についてより詳しくは、こちらの記事もご参照ください。

3. ウェブサイト名の商標登録で気をつけたい落とし穴

ウェブサイト名の商標登録で気をつけたい落とし穴

最後に、ウェブサイト名を商標登録するときに気をつけたい「落とし穴」を解説します。

3.1.登録する指定商品・指定役務(区分)を間違える

商標登録の指定商品・指定役務には、内容を勘違いしやすい表現がたくさんあります。そのため、商標登録に詳しくない人が自力でやろうとすると、知らないうちに間違った権利内容で商標登録をしてしまっていることが少なくありません。(怖いのは、権利内容が自分に合っていないことは特許庁は指摘してくれないので、間違っていたことに気づくのは係争が起こったとき…ということです)

ここで全てを挙げるのは難しいですが、一つ具体例を紹介します。ウェブサイト名の商標登録をするときに一番間違えやすいのは、35類「商品の販売に関する情報の提供」です。

「商品の販売に関する情報の提供」という文言からすると、一見、「商品に関する情報を伝えるウェブサイト」のときに登録が必要な指定役務かのように思えますが、それは間違いです。

実は、35類「商品の販売に関する情報の提供」は、「商品販売をサポートするコンサルティングサービス」を意味する指定役務なんです。(最高裁判所の判例でそのような解釈が示されています。最高裁第三小法廷平成23年12月20日判決)

このように、指定商品・指定役務で使われている表現が意味するところは、一般の感覚とは異なっていることも少なくないため、十分に気をつけましょう。

3.2.どこの国向けに情報発信しているかで商標登録すべき国が変わり得る

ウェブサイトは、意図的にアクセス制限をかけない限り、世界中からアクセスできます。そのため、ウェブサイト名に商標を使用する行為が「どこの国での使用行為なのか」という問題が生じます。

なぜこれが問題になるかというと、商標権は、各国ごとに成立し、その国の中だけで効果を生じる権利だからです。つまり、日本で取得した商標権は、日本国内での商標使用行為のみを保護することができます。

現状、ウェブサイト名に商標を使用する行為が「どこの国での使用行為なのか」の明確な判断基準を定めた規定はありません。しかし、そのウェブサイトを客観的に見て、どこの国の閲覧者を対象としている(または、対象としているように見える)ウェブサイトか、が重要な判断基準と考えられています。

日本語はローカルな言語なので、日本語のウェブサイトであれば、専ら日本向けのウェブサイト(日本国内での商標使用行為)とみなされる可能性が高いでしょう。そのため日本語のウェブサイトを運営する場合は、日本での商標登録を検討すべきです。

一方、英語をはじめとする外国語でも情報発信をしている場合、理論上は、その外国語を母国語とする外国でも商標登録が必要となる可能性があります。各国で商標登録するとなればその分費用がかかるため、誰でも気軽に対処できるわけではありませんが、この点に留意しておく必要はあります。

おわりに

ここまで、ウェブサイト名の商標登録の必要性やポイントを解説してきました。現在は誰でも気軽にウェブサイトを開設できるだけに、誰もが知っておくべき知識といえるでしょう。

実際にウェブサイト名を商標登録する際には、区分をしっかり確認し正しく権利を取得しましょう。

区分は、現時点で取り扱っている、または取り扱う予定の商品・役務だけではなく、将来のビジネスを視野に入れて判断する必要もあります。

区分の判断が難しい。どの範囲の国で登録する必要があるのかよくわからない。そういう場合には、商標登録に詳しい弁理士に相談しながら進めることをおすすめします。

相談をする中で、あなたのウェブサイトで今後何をしていくかについて新しい展望が見えてくることもあります。まずは一歩、商標のケアをはじめてみましょう!

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