はじめに
年の瀬が迫る今日この頃、巷では「ふるさと納税どうしようかな〜」という話題が飛び交いはじめているのではないでしょうか?
ふるさと納税とは、自分の故郷や応援したい自治体など、好きな自治体を選んで寄付ができる制度のことです。自治体の取り組むまちづくりや復興支援などさまざまな課題に対して、寄付金の使い道を指定できます。手続きをすれば実質自己負担額2,000円のみで応援したい地域の名産品や宿泊券などをもらえる、とてもうれしい制度です。
引用:さとふる|ふるさと納税とは?初めての方へ仕組みをわかりやすく解説
このようにとてもオトクな制度なのですが、魅力的な返礼品が多すぎて、選ぶ側としては迷ってしまいますよね。
そんな返礼品選びに迷うあなたに知財ライターである筆者からご提案です。
今年の返礼品は「知財」目線で選んでみませんか?
「知財」といういつもとは違う目線で返礼品を選んでみることで、きっとあなたのふるさと納税ライフが一味違うものになるはず。
返礼品の注文ページのリンクも貼りましたので、関心があるものがあれば、是非ページへ飛んでみてください。
※なお、リンクは2022年11月時点のものであることをご了承ください。
特許が活きる!とれたてフレッシュ返礼品
ふるさと納税といえば海鮮!日本各地の港町が自慢の海産物を用意しています。
さて、日本各地の港町からあなたの食卓へやって来る返礼品たちにとって大事なのは‥そう、鮮度です。実は、ふるさと納税の返礼品の鮮度を守るために特許技術が活用されているのです。
まずご紹介するのはこちら。愛媛県西予市の「超冷薫ぶり」です。ぶりを血抜きするのに特許技術が使われています。さとふるのページでも特許技術であることがアピールされていますね。

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さて、この特許技術、いったいどのようなものなのでしょうか。特許公報を見てみましょう。
【請求項1】生簀内若しくは水槽内の飽和酸素濃度以下の養生海水域で養生したブリを、この養生海水域から前記生簀内若しくは水槽内に前記養生海水域とは区画して設けた過飽和酸素海水域まで取り上げることなく水中を移動させた後、前記過飽和酸素海水域で取り上げて脱血処理を施すことを特徴とするブリの脱血処理方法。
引用:特許第6678622号
ポイントはズバリ「過飽和酸素海水」です。
過飽和酸素海水とは、わかりやすく言うと通常の海水よりもたくさんの酸素を含んだ海水のこと。ブリを酸素たっぷりの海水の中で泳がせることにより、ブリに酸素をたっぷりと補給させます。こうすることにより、味落ちの原因となる成分が減り、おいしさが保たれるのです。
ちなみに、血抜きの方法にも特徴があります。ブリの心臓に管を入れ、その管に「薫液」という燻製のチッブから抽出した成分を含む特別な液体を流し込み、血液を薫液で置き換えてしまうのです。このようにしてしっかりと血抜きすることで、生臭さが無くなります。
液体を流し込むことについて、特許公報にはこのように書かれています。
【請求項2】前記脱血処理は、ブリの脊髄を破壊した直後に、冷却した灌流液をブリの血管に導入して血液と置換することで施すことを特徴とする請求項1記載のブリの脱血処理方法。
引用:特許第6678622号
「灌流液」が「薫液」に相当します。つまり、ブリの血管に「薫液」を流し込み血液と置き換えるという内容が書かれています。
ちなみに特許権者の株式会社オンスイが超冷薫ぶりの加工技術を解説する動画をアップしています。血抜きによりブリのエラが白くなっていく様子は一見の価値ありです。
そんな超冷薫ぶりを実際に取り寄せて食べてみました。

一般的なブリと比べ、身が白いのが特徴ですね。血抜きがしっかりとされている証拠です。肝心の味ですが、ブリにありがちな血生臭さはなく、旨みがダイレクトに伝わってきます。
冷凍品でこの品質は革命的です!
続いてご紹介する特許技術は宮城県気仙沼市の「10秒deめかぶ」です。独自開発された「うすうすパック」により、冷凍庫内でもかさばらずに保管でき、しかも約10秒で解凍できるのです。

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さとふるのページでもアピールされていたように、この「うすうすパック」の発明は特許出願されているそうです。
今回の記事執筆時点では、この「うすうすパック」の発明に対応する特許出願の公開公報は確認することができませんでした。特許出願の内容は一定期間経過後に公開されるというルールのため、その期間がまだ経過していないのかもしれません。
「うすうすパック」の技術がどのように言語化されているのか。公開された特許情報を見るのが楽しみです。
そんな「10秒deめかぶ」を実際に取り寄せて食べてみました。

パッケージの厚みは約5mmほど。ぬるめの流水に10秒ほど当てればきちんと解凍されました。ツルツシャキシャキのおいしいめかぶが10秒で食べられるのは嬉しいですね。また、パッケージが薄いので冷凍庫内では立てて収納可能です。かさばらなくて、しかも取り出しやすいので助かります。
ご当地グルメ!地域団体商標で選ぶふるさと返礼品
みなさん、「地域団体商標」という制度をご存知でしょうか。
「地域団体商標」というのは、地域産品のブランド力向上のために出来た制度です。この制度で保護されるのは、「地名+商品名」という構成の商標です。
通常、「地名+商品名」という商標は商標登録が認められませんが、一定の条件をクリアすることにより商標登録が認められます。たとえば、「横手やきそば」や「越前がに」などがこの制度を利用して商標登録されています。
地域団体商標制度を利用して登録された商標というのは、その地域イチオシの地域ブランドであると言えます。まさにふるさと納税との相性バッチリです。これは返礼品選びのヒントになりそうですね!
先ほど触れた「横手やきそば」も返礼品とされています。

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「越前がに」の返礼品もありました。こちらの返礼品の寄付金額はなんと驚き120万円!一体どんな越前がにが届くのでしょうか・・。いつかこの寄付金額が出せる時が来たら確かめてみたいものです。

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比較的お求めやすい越前がにもありますのでご安心ください。

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さらには・・加工法も商標に?
地域ブランド以外にも、面白い商標登録を見つけました。
先ほど特許編で紹介しました「超冷薫」です。

「10秒deめかぶ」に関しても、「10秒de」という部分が商標登録されていました。

商標というと、どうしても「商品・サービス名」での登録を想像しがちですが、特徴的なコピーや製造法なども他と差別化する要素として、商標登録することが可能です。
それにしても「10秒deめかぶ」ではなく「10秒de」で商標登録されているとは‥もしかすると他の海産物で「10秒de」シリーズを展開していく計画があるのかもしれませんね。
見た目も商品価値!ユニーク意匠の返礼品
返礼品のなかにはユニークなデザインが売りのものもあります。
たとえば北海道富良野市の「ショートケーキ缶」と「ふわ缶」は、ショートケーキを缶に詰めるという意外なデザインが目を惹きますよね。
さとふるのページでもアピールされているように、このショートケーキ缶のデザインは意匠登録されています。

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本記事執筆時点では、いちごがの断面が整然と並ぶ「ショートケーキ缶」と水玉模様が美しい「ふわ缶」のデザインがそれぞれ意匠登録されています。では、意匠登録の内容を見てみましょう。
まず、「ショートケーキ缶」の意匠公報に掲載された図面を見てみましょう。何やら色が塗られている部分がありますね。ショートケーキのいちごの部分と缶のプルトップの部分に色が塗られています。

【意匠に係る物品の説明】本物品は、透明な容器の内部に収容されてなる菓子である。本物品は、内容物を示す参考図に示すように、容器の底部および中央部にはスポンジケーキを層状に配置し、容器の内表面にはカットされたフルーツを配置し、それ以外の部分には生クリーム等を注入してなる菓子である。
引用:容器付き菓子|意匠登録第1707466号
【意匠の説明】朱色で着色された部分以外の部分が、意匠登録を受けようとする部分である。
引用:容器付き菓子|意匠登録第1707466号
つまり、ショートケーキ缶のいちごの部分と缶のプルトップの部分が意匠登録の対象なのです。このような物品の一部分のデザインのことを「部分意匠」といいます。
部分意匠のメリットとしては、「デザインの特徴的な部分だけを真似しつつ、全体としては似ていないデザイン」を他社に販売されてしまった場合に、権利行使をすることが可能になるという点が挙げられます。
ショートケーキ缶を例にしますと、いちごが一列に並んだデザインとプルトップのデザインを真似しつつ、缶本体の形状を違うものにした製品を他社に販売されてしまった場合、部分意匠が登録されていることを根拠にして権利行使をすることができます。
仮にショートケーキ缶全体の意匠を登録していたとすると、このような場合の権利行使は難しいと考えられます。缶全体としてデザインが似ていないと判断され、権利の侵害が認められないおそれがあるためです。
ふわ缶の場合もショートケーキ缶の場合と同様に部分意匠が保護されています。

そんな「ショートケーキ缶」と「ふわ缶」を実際に取り寄せて食べてみました。
今回取り寄せたのはショートケーキ缶とティラミス味のふわ缶です。可愛らしいデザインに気持ちが上がります。

よくよく考えてみると、缶を透明にして断面を見せるというのは、かなり斬新なアイデアですよね。
それに加えて、プルトップを開けてショートケーキを食べるという体験も面白く、普通のケーキとはひと味もふた味も違いました。もちろん味もバッチリでした。
さて、意匠登録という観点で返礼品をサーチしていたところ、なかなか珍しいものを見つけてしまいました。なんと、天皇陛下が即位した際の玉座とお衣装を再現した雛人形です。

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寄付先である愛知県碧南市は元来雛人形の製造がさかんな地域であり、碧南市で製造された人形は「碧南人形」と呼ばれて親しまれています。
ちなみに寄付額は驚きの68万円。先ほどの越前がにといい、このような高額な寄付金額の返礼品があるということは、このような高額な寄付金額を出す方がいるということなのでしょう。なんだか知らない世界を覗いた気分です。
さて、意匠登録に話を戻しますと、意匠登録されているのは玉座の部分になります。

【意匠に係る物品の説明】この物品は「三月節句ひな壇」として飾れる高御座に関するものである。
引用:三月節句ひな壇|意匠登録第1634568号
「高御座」(たかみくら)というのは、奈良時代から代々天皇の即位の礼で用いられてきた特別な玉座を指す言葉です。意匠公報でこのような雅な言葉を見るのはなんだか不思議な感じがしますね。
おわりに
今回の記事では「知財を身近にするメディア」であるToreru Mediaらしく、知財目線でふるさと納税の返礼品をご紹介してみました。
今年も残すところあとわずか。今年のふるさと納税の返礼品は「知財目線」で選んでみるのはいかがでしょうか?