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グッズの商標登録の区分は?グッズ特有の留意点も解説

たとえば巷であふれるキャラクターグッズのように、ある分野でコンテンツやブランドがヒットすると、アパレルや雑貨などのさまざまなグッズ展開をすることがよくありますよね。もし、あなたがグッズ展開をしているのなら、それらのグッズについて商標登録はしていますか。商標登録をしていない、そもそもよくわからない、そういう方に向けて、今回は、グッズを扱っている場合に必要となる商標登録について詳しく解説していきます。

1. グッズの分野での商標登録が必要

商標を使ってグッズ販売をする場合は、その具体的なグッズの種類に対応する区分で商標登録が必要となります。

たとえばポケモン。ポケモンはテレビゲームからスタートしましたが、その大ヒットを受けて、さまざまなグッズ展開をしています。このような場合、テレビゲームの区分で「ポケモン」関連の商標を登録しているだけではダメなんです。テレビゲームとは別に、展開しようとしているグッズについても、そのグッズに対応する区分で商標登録することが必要です。

そのため、現に「ポケモン」関連商標も多くの区分で登録されています。

第16類:雑誌、書籍等

第28類:おもちゃ、人形、遊戯用器具等

第3類:せっけん類,香料類,化粧品等

(各画像の出典:https://www.pokemoncenter-online.com/ ポケモンセンターオンライン)

2. グッズの商標登録の区分

グッズに対応する区分は、そのグッズが具体的にどんな種類の商品かで異なります。該当する区分は様々なグッズによって細かく分かれていますので、正確な知識をもって区分を見極めることが重要です。

 

たとえば、アパレルの分野では以下のように分かれます。

  • 25類 服や靴
  • 18類 かばん類
  • 14類 アクセサリー、時計

 

オシャレな雑貨屋などで扱っているグッズもかなり細かく分かれています。

  • 21類 マグカップなどの食器類
  • 24類 タオルやハンカチ
  • 16類 ブックカバー
  • 9類 スマホケース
  • 28類 おもちゃ、ぬいぐるみ

思いつくものをちょっと挙げただけでも、これだけの区分にわたっています。 

このように幅広い種類のグッズについて商標権を取るには、これらの区分すべてで商標登録が必要になります。商標登録出願の費用も登録料も、区分数×印紙代(+弁理士に依頼する場合は弁理士手数料)で計算されるため、区分数が増えると商標登録の費用はそのぶん増額されることになってしまいます。

一方で、商標登録は早いもの勝ちです。費用削減のために登録しなかった区分については、別の誰かが先に商標登録してしまい、あなたがもう権利を取れなくなってしまうリスクがあります。たとえまったく同じ商標であっても、区分が違えば(厳密には指定商品・指定役務が抵触しなければ)別人が商標登録できる制度だからです。

つまり、「区分数が増えると費用が上がる vs 取らなかった区分の権利がもう取れなくなるリスク」というジレンマがあるということです。

この両者を比較考量して優先順位をつけることがポイントになります。

区分についてより詳しくは、こちらの記事もご参照ください。

3. グッズの区分と小売役務の区分の違い

グッズに関係する少し特殊な区分として、35類に小売役務(○○の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供)という役務があります。

この小売役務は、典型的には、百貨店、スーパーマーケット、コンビニなど、他社製品を取り揃えて小売(卸売)販売をする事業者が取得すべきものとして用意されている区分(指定役務)です。

一方、2章でご紹介したグッズの区分は、メーカーなど、グッズ自体のブランドオーナーが取得すべきものとして用意されている区分(指定商品)です。

2章でご紹介したグッズの区分は、グッズの種類によって該当する区分が細かく分かれていましたが、小売役務の区分は、取扱うグッズの種類がどれだけ多かったとしても35類の1区分で登録できます。

そうすると、たとえば「かばん」を取扱うために商標権を取りたい場合、18類「かばん類」(グッズの区分)と35類(かばん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(小売役務の区分)のどちらを選べばいいのでしょうか。これについて悩む人が多いので、ここで解説します。

まず、基本的な考え方としては、権利をとりたい「商標」が次のどちらに該当するかで、適する区分を判断できます。

  1. グッズ自体のブランドを表す商標
  2. ショップ名やECサイト名のブランドを表す商標

①グッズ自体のブランドを表す商標の場合

権利を取りたい商標が、グッズ自体のブランドを表すものなら、「グッズの区分」で登録した方がいいといえます。

たとえば、『NIKE』の商標は、スニーカー自体のブランドを表しているので、グッズの区分(スニーカーなら25類)で登録するのがよいでしょう。

②ショップ名やECサイト名のブランドを表す商標の場合

一方、権利を取りたい商標が、ショップ名やECサイト名のブランドを表すものなら、「小売役務の区分」で登録するのが適しています。

たとえば、『ABC MART』の商標はスニーカーを販売するショップ名のブランドを表しているので、小売役務の区分(35類)で登録するのがよいです。

③両方にまたがる場合

では、『Apple』のように、製品自体のブランドでもあるし、自社ブランドショップ(Apple Store)も展開する、という場合にはどうしたらよいでしょうか?

この場合には、グッズの区分と小売役務の区分の両方を登録すべきです。

ただ、特にグッズの区分での登録は区分数が多くなりがち(=費用がかさみがち)です。そのため、まずは35類の小売役務のみ登録しておき、予算が取れた段階で、後からグッズの区分を登録する、という戦略もアリです。

なぜなら、35類の小売役務は、その取り扱い商品に対応するグッズの区分(指定商品)と原則として抵触する内容である、と特許庁の審査で扱われることとなっているからです。

たとえば、18類「かばん類」と35類「かばん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は、審査では「類似の商品・役務」と判断されます。そのため、どちらか片方を登録しておけば、もう片方について似た商標を他人が登録することを防ぐことができます。

まずは費用が安く抑えやすい35類小売役務で取扱商品を広く登録しておくと、それに対応するグッズの区分で他人が似た商標を登録するのを防ぐことができる可能性が高いため、予算が限られているときは費用対効果の高い戦略です。

4. ノベルティグッズの商標登録の場合

企業や商店が自社のサービスや商品の宣伝のために、社名や商品名を入れたいわゆるノベルティグッズとしてグッズを無償配布する場合があります。メモ用紙、クリアファイル、タンブラー、Tシャツ、マグカップなどなど、最近ではマスクがノベルティグッズとして配布されることもあるようです。このようなノベルティグッズの区分でも商標登録すべきなのでしょうか?

答えは、原則として、ノー。グッズの区分での登録は不要です。でも一方で、ノベルティグッズを配布することで宣伝・販促したい商品・サービスをその対応する区分で登録しておくことは必要です。

たとえば、洋服店で、店舗に来てくれたお客さんに対して、自社ブランド名が入ったボールペンを無償配布するような場合、16類(ボールペン)での登録は不要ですが、25類(洋服)での商標登録は必要になります。

無償配布するノベルティグッズは、そのグッズ自体が商品なのではなく、そのグッズを配布することによって宣伝・販促しようとする商品・サービスの宣伝広告物だといえるからです。

ただし、注意点もあります。自分としてはノベルティグッズのつもりであっても、そのグッズへの商標の付け方や流通方法などによって、その商標が付されたグッズを客観的に見たときに、そのグッズ自体のブランドを表しているように見える可能性もある場合には、そのグッズ自体についての商標の使用(=グッズの区分での登録が必要な行為)と解釈される可能性もあります。この場合、ノベルティグッズであってもそのグッズの区分で商標登録をした方が良いこともありますので、心配な場合は弁理士に相談しましょう。

まとめ

グッズごとに区分が細かく分かれているため、商標登録をする際、自分が取り扱うグッズがどの区分になるのかを見極めるのはかなり難しいです。グッズとしては似ているように思えても区分は全然別であったり、まったく外見も使い方も異なるグッズなのに区分は意外と同じだったりすることもあります。

また、区分がいろいろに分かれていると、出願や登録にかかる費用が区分の数だけ多くかかることも悩ましいところです。

一方で、しっかり権利をとっておかないと、他人に似た商標を使用されて思わぬデメリットを被るリスクもあります。

メリット、デメリットを比較考量しつつ、小売役務での登録などの賢い戦略も取り入れながら、上手にグッズ販売ビジネスを進めていきましょう。

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