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商標の上申書とは?

商標登録の手続きの中で、「上申書」という書類があることを知ったものの、分からないことがいっぱいでお困りではありませんか?本記事では、上申書とはどんな書類か?どんな時に提出するのか?活用方法は?お金はかかるの?などを詳しく解説します。

1. 商標の上申書とは

上申書とは、審査中の商標登録出願について、特許庁の審査官に何か伝えたいことがあるときに提出できる書類のことです。
似ている書類に「意見書」がありますが、「上申書」と「意見書」は違う書類です。

  • 意見書:拒絶理由通知を受けたときに、それに対する応答として反論などの意見を述べる書類
  • 上申書:特許庁の審査官に対して何か伝えたいことがあるときに、こちらから自発的に提出する書類

状況に応じて、適切な書類を提出しましょう。

なお、もし特許庁から何らかの通知書が届いて、それに対応しようとしているときは、どんな書類を提出するべきかが書面に書かれていることが多いので、まずは通知書の内容をしっかり読み込みましょう。

2. 商標の上申書はどんなときに活用できるか

上申書には「このようなときに使わないといけない」という制限はありません。

その名の通り、特許庁に対して上申したい(=意見・情況などを申し述べたい)ときにいつでも提出できる書類です。書類方式に不備がある場合を除き、基本的に上申書の受理を拒否されることはありません(上申の内容を受け入れてもらえるかは別問題として)。

たとえば以下のような場面で上申書を有効活用できます。

ケース1:「出願した商標の使用事実や意思を示しなさい」という拒絶理由(商標法3条1項柱書)を回避するために、事業計画書等を自発的に提出するとき

実際に拒絶理由通知を受けたタイミングで、事業計画書等を「意見書」に添付して提出することもできますが、この拒絶理由通知がくることが予見できているときは、その前に「上申書」に事業計画書等を添付して自発的に提出することもできます。
予め「上申書」で提出しておけば、拒絶理由通知を受けずに商標登録まで進めることができるので、トータルの審査期間を短くすることができます。

ケース2:商標登録出願の審査を一時中断して、結論を出すのを待ってほしいとき

例えば、「他人の商標と類似している」という拒絶理由通知を受けて、「似ていない」という反論が難しそうなときに、その他人の商標権を買い取る交渉や、権利を取り消す審判を起こして、自分の商標を登録できる状況を整えることを考えたとします。

商標登録出願の拒絶理由通知への応答期間は原則40日と決まっています。そこから最大3ヶ月の期間延長ができる制度はありますが、交渉や審判には結構な時間がかかりますので、間に合わないこともありえます。

特許庁の審査官は、出願人がそのような働きをしていることは認識できないので、応答期間が過ぎればその商標を「拒絶査定(=登録NG)」と判断してしまいます。
そこで、対応が応答期間を超過しそうな場合は、応答期間中に「上申書」で審査の一時中断を願い出れば、事情を考慮して審査を中断してくれる可能性が高いです。

上申書での審査中断は「お願い」に過ぎないので、その通りに待ってくれるかは特許庁審査官の裁量に委ねられますが、経験上は、ほとんどの場合数ヶ月以上待ってくれる印象です。

ケース3:意見書で行った反論内容に後から追加したいとき

拒絶理由通知に対して反論するときは、「意見書」で十分な反論を行うのが原則です。しかし、もし意見書を作成した時には思い至らなかった反論を後から思いつき、それも審査官に考慮してほしいときは、後追いで「上申書」で追加の反論を提出することができます。こちらも、後から提出した「上申書」の内容を審査で加味してくれるかどうかは審査官の裁量次第です。あくまで最終手段的なものとして捉え、基本は最初の「意見書」でしっかり反論を記載するようにしましょう。

3. 商標の上申書はいつ提出できる?

商標登録出願について上申書を提出する場合、提出できるのは「審査(審理)係属中」のみです。

  1. 審査係属中:商標の出願後、審査結果(登録査定 or 拒絶査定)が出るまで
  2. 審理係属中:拒絶査定不服審判の請求後、審理終結通知 が出るまで

4. 上申書の費用

上申書を特許庁に提出する際に印紙代はかかりません。無料で受け付けてもらえます。

上申書の作成を弁理士に依頼する場合は、内容に応じて1万円くらいからの手数料がかかることが多いです。他の手続きのついでに上申書を出す場合は無料で対応してもらえることもあります。

5. 上申書の書式

上申書の作成例です。上申書のテンプレートはこちらからダウンロードできます。

上申書の参考図

まとめ

最後にまとめです。

  1. 商標の上申書とは、審査中の商標登録出願について、特許庁の審査官に何か伝えたいことがあるときに提出できる書類のこと
    1. 「意見書」と「上申書」は違う書類
      1. 意見書:拒絶理由通知を受けたときの応答書書類
      2. 上申書:こちらから自発的に提出する書類
  2. 上申書の活用例
    1. ケース1:「出願した商標の使用事実や意思を示しなさい」という拒絶理由(商標法3条1項柱書)を回避するために、事業計画書等を自発的に提出するとき
    2. ケース2:商標登録出願の審査を一時中断して、結論を出すのを待ってほしいとき
    3. ケース3:意見書で行った反論内容に後から追加したいとき
  3. 商標の上申書が提出できるのは「審査(審理)係属中」のみ
    1. 審査係属中:商標の出願後、審査結果が出るまで
    2. 審理係属中:拒絶査定不服審判の請求後、審理終結通知 が出るまで
  4. 上申書の提出費用(特許庁へ支払う印紙代)は無料
    1. 上申書の作成を弁理士に依頼する場合の手数料は1万円くらい
    2. 他の手続きのついでに上申書を出す場合は無料で対応してもらえることもある
  5. 上申書の書式
    1. 知的財産相談・支援ポータルサイト(独立行政法人工業所有権情報・研修館)https://faq.inpit.go.jp/industrial/faq/search/result/10939.html
    2. 書式集(特許庁)https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/hoshiki-shinsa-binran/shoshikishu.html

上申書についての疑問は解消できたでしょうか?少しでもお役に立てていたら幸いです。

これからも商標のお役立ち記事をどんどん公開していきますので、引き続き Toreru Media をお楽しみください!

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