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アプリを商標登録するときの区分と注意点!実例から学ぼう!

PCやスマホを誰もが持つ社会になってから、あらゆるサービスが「アプリ」を通じて提供されるようになりました。

それに伴い、商標登録でも「アプリ」について権利を取ろうとする人が多くなっています。

そこでこの記事では、「アプリ」の商標登録をする際、どの区分を選べばいいのかや、特有の注意点について、実例も交えながら解説します。

1. アプリ名の商標登録の区分

アプリ名を商標登録するときに必要な区分は、そのアプリが次のどちらに当たるかどうかで少しだけ異なります。

  1. 端末にインストールして使うアプリ(スマホアプリ、PCアプリ、タブレットアプリ)
  2. インストール不要でウェブブラウザ上で使うアプリ(ウェブアプリ)

アプリ名の基本的な区分

①端末にインストールして使うアプリ(スマホアプリ、PCアプリ、タブレットアプリ)の商標登録の区分

  • 9類

※ 9類にある「電子計算機用プログラム」などを指定する必要があります。

②インストール不要でウェブブラウザ上で使うアプリ(ウェブアプリ)の商標登録の区分

  • 42類

※ 42類にある「電子計算機用プログラムの提供」などを指定する必要があります。

このように、どちらのタイプのアプリかで該当する区分は異なるのですが、どちらのタイプであっても、できるだけ9類と42類の両方の区分で商標登録しておくのがオススメです。

③どちらのタイプのアプリでもできれば登録しておきたい区分

  • 9類
  • 42類

なぜなら、アプリ事業の場合、最初は「ウェブアプリ」だけでスタートしたけれど、人気が出てきたので途中から「スマホアプリ」もリリースする(この逆も)ということがよくあるからです。

9類か42類の片方しか登録してなかった場合、登録しなかった方の区分を他社に取られてしまう可能性があります。もしそうなってしまうと、上記のように後追いで別のタイプのアプリに拡張しようとするときに、権利問題で事業拡張ができなくなるリスクがあります。

このようなリスクを踏まえると、どちらのタイプのアプリであっても、できるだけ最初から9類と42類の両方で商標登録しておく方がいいでしょう。

上記に加えてさらに必要な区分

上記で紹介した9類42類「アプリ」そのものを守るために必要な区分ですが、ビジネスモデルによってはこれに加えて他の区分も必要となることがあります。

9類と42類に追加でどの区分が必要になるかどうかを考えるときは、「もしアプリではなく人がそのサービスを提供するとしたらどの区分に該当するか?」を考えるとよいです。

たとえば「医療情報を提供するアプリ」だったら、「アプリ」自体は9類と42類だけど、「医療情報の提供」という(人による)サービスだったら44類なので、9類、42類、44類の3区分が必要だな、という具合に考えます。

以下はその他の例です* 。

広告収入モデルのアプリ

  • 35類

※ 35類にある「広告業」「広告場所の貸与」などを指定する必要があります。

料理アプリ

  • 43類

※ 43類にある「飲食物の提供」「料理及び飲食店に関する情報の提供」などを指定する必要があります。

金融系アプリ

  • 36類

※ 36類にある「金融又は財務に関する助言」などを指定する必要があります。

医療系アプリ

  • 44類

※ 44類にある「医療情報の提供」などを指定する必要があります。

SNSアプリ

  • 45類

※ 45類にある「オンラインによるソーシャルネットワーキングサービスの提供」などを指定する必要があります。

法律系アプリ

  • 45類

※ 45類にある「法律に関する情報の提供」などを指定する必要があります。

イベント系アプリ

  • 41類

※ 41類にある「娯楽の提供」などを指定する必要があります。

教育系アプリ

  • 41類

※ 41類にある「技芸・スポーツ又は知識の教授」などを指定する必要があります。

求人系アプリ

  • 35類

※ 35類にある「職業のあっせん」「求人情報の提供」などを指定する必要があります。

マーケティング系アプリ

  • 35類

※ 35類にある「マーケティング」などを指定する必要があります。

保険系アプリ

  • 36類

※ 36類にある「保険情報の提供」などを指定する必要があります。

注意: 実際のビジネスの内容によっては、上記の区分以外の区分でも商標登録をしておいた方がいい場合もありますので、自分で判断するのが難しい方は専門家に相談することをオススメします。

2. アプリアイコン・ロゴの商標登録の区分

アプリに関して商標登録をする場合、アプリ名だけでなく「アプリアイコン」や「アプリのロゴ」についても商標登録をした方がいいことが多いです。

アプリアイコンやアプリのロゴを商標登録する場合でも、登録すべき区分は、アプリ名の商標登録のときと同じです。

3. アプリ名とアプリアイコン・ロゴの商標登録の実例

実在のアプリについて、実際にどのような区分で商標登録されているか、実例を見てみましょう。

Apple

「FaceTime」(ビデオ通話アプリ)のアプリ名

商標登録​​第5457782号
9類:「コンピュータソフトウェア」など
38類:「コンピュータ端末による通信」など
42類:「アプリケーションサービスプロバイダによるコンピュータソフトウェアの提供」など

Mac や iPhone の「FaceTime」は、ビデオ通話アプリです。基本的には端末にインストールして利用するアプリですが、Windows ユーザーがビデオ通話の参加者としてウェブブラウザから通話に参加することも可能です。そのため、9類と42類の両方で登録しています。

また、通話アプリであるという性質から、電話会社など通信インフラ事業者が取る区分である38類も押さえておこう、という意図が窺えます。

「探す」アプリ のアプリアイコン

商標登録​​第6378450号
9類:「コンピュータソフトウェア」など
35類:「コンピュータネットワーク及びグローバルコミュニケーションネットワークを介した企業・消費者・商業情報の提供」など
38類:「コンピュータによる通信」など
42類:「オンラインによるダウンロードが不可能なソフトウェアの提供」など
45類:「遺失物の捜索・返還」「地図情報の提供」など

これは iPhone などの Apple デバイスを紛失した際に、そのデバイスの現在位置をGPSで把握できるアプリです。

アプリ名は「探す」というストレートで独自性のない名前をあえてつけているため、このアプリ名自体は商標登録が困難です(独自性≒識別力のない名前は商標登録できないルールのため)。一方、このアプリアイコンは独自のデザインで識別力があるので、アプリアイコンのみ商標登録されています。実際、ユーザーは「探す」というアプリ名というよりこのアプリアイコンで「Apple の “探す” アプリだ」と認識していると思われます。このような場合、アプリアイコンを商標登録しておくのは非常に有効です。

このアプリも、インストールされたアプリからだけではなく、ウェブブラウザから iCloud にログインして利用することが可能なので、9類と42類の両方で登録されています。

また、このアプリは紛失したデバイスを探すために必要な地図情報をユーザーに提供するため、45類の「遺失物の捜索・返還」「地図情報の提供」などでも登録されています。

さらに、このアプリは、デバイスの位置情報を把握するものなので、ユーザーの位置情報を元に広告的な情報を提供するというような活用方法も想定しているのでしょう。広告サービスが該当する35類でも登録されています。

クックパッド

「cookpad」(料理レシピ検索アプリ)のアプリ名

商標登録第5012578号
9類:「電子出版物」
16類:「印刷物」など
35類:「インターネット等の通信ネットワークによる広告」など
41類:「技芸・スポーツ又は知識の教授」など
42類:「電子計算機用プログラムの提供」など
商標登録第5398011号
9類:「料理及び料理レシピに関するデータ管理用コンピュータソフトウェア(ダウンロード可能なものを含む)」など
41類:「料理に関するコンテストの企画・運営及び開催」など

料理レシピ検索アプリの「cookpad」のアプリ名の商標登録です。

最初に行った1件目の商標登録では、9類で「電子出版物」だけを登録しており、「電子計算機用プログラム」などのインストール型アプリを登録していません42類のウェブアプリ(電子計算機用プログラムの提供)のみを登録しています。おそらくこれは、クックパッドは当初ウェブアプリからスタートしたからだと思われます。

しかし、後日2件目の商標登録を行い、2件目の方で9類のインストール型アプリを登録し直しています。クックパッドの成功に伴い、スマホアプリなどもリリースすることとなったため、後追いで追加したのでしょう。

その他、料理レシピ=料理方法の知識を教授している、と捉え、教育サービスが該当する41類なども登録しています。

Google

「Google」(検索エンジンアプリ)のアプリのロゴ

商標登録第5893980号
9類:「情報のインデックス・ウェブサイトのインデックス及び他の情報源のインデックスの作成用のダウンロード可能なコンピュータソフトウェア」など
25類:「シャツ・ティーシャツ・縁あり帽子・縁なし帽子を含む被服・ティーシャツを含む子供用被服」
35類:「第三者のためのインターネット経由による広告の配信」など
36類:「慈善のための募金」など
38類:「多国間電気通信ネットワーク経由による通信を含む電気通信」など
42類:「インターネット用検索エンジンの提供」「オンラインによるダウンロード不可能なソフトウェアの提供」など

検索エンジンアプリである「Google」は、アプリのロゴも商標登録されています。

Google はかなりの数の商標登録を持っているためこれだけではないですが、この商標登録はロゴの登録の中では一番古い時期にされたものです。

最初の登録の時点からこれだけ多数の区分で登録していることは注目に値するでしょう。

9類、42類はもちろんのこと、収入源である広告(35類)や、被服(25類)、募金(36類)なども当初から想定されているのはおもしろいです。

Slack

「Slack」(チャットアプリ)のアプリアイコン・ロゴ

国際登録第1566911号
9類:「グループ通信、すなわち投稿・メモ及びインスタントメッセージング・ファイルの共有・カレンダーの同期及び外部のサービスプロバイダーとの自動統合において使用するためのソフトウエアを特徴とするダウンロード可能なモバイル機器用アプリケーションソフトウェア」など
35類:「事業のためのグループ通信及び共同作業の分野におけるコンピュータ及び通信ネットワーク経由での商品及び役務の販売促進・提供促進のための企画及びその実行の代理」など
38類:「コンピュータユーザー間におけるデータ及び文書の電子通信」など
41類:「事業のためのグループ通信及び共同作業の分野並びに事業アプリケーション開発の分野における、セミナー・研修会の運営並びにコンピュータアプリケーションの訓練の実施」など
42類:「情報の共有用ソフトウェアを特徴とするオンラインによるアプリケーションソフトウェアの提供(SAAS)」など

Slack のアプリアイコン兼ロゴであるシンボルマークが、アプリ名とは別に商標登録されています。

Facebook

「Facebook」(SNSアプリ)のアプリ名

商標登録第5062344号
42類:「ユーザーにより定義された情報・個人のプロフィール・情報を特徴とするカスタマイズされたウェブページ用プログラムの提供」など
45類:「インターネット上でのウェブサイトを通じたソーシャルネットワーキングユーザー向けの友達探し及び紹介のための情報の提供」など

Facebook アプリも多数の商標登録がありますが、比較的初期に登録されたこちらの商標登録では、ウェブアプリを保護する42類SNSサービスを保護する45類で登録されています。

4. アプリの商標登録の3つの注意点

アプリの商標登録をするときには、3つの注意点があります。

  1. アプリ名だけではなく、アプリアイコンも忘れずに商標登録しよう
  2. アプリ名は区分が多くなりやすいので、依頼するときは3区分の料金で比較しよう
  3. 他のジャンルのアプリであっても、商標登録の競合になることがある

①アプリ名だけではなく、アプリアイコンも忘れずに商標登録しよう

アプリは、アプリ名だけでなくアプリアイコンでサービスを覚えてもらうことも多いです。そのため、アプリアイコンを商標登録しておらず他社に同じようなアイコンを商標登録されてしまうと、使っているアプリアイコンを変更しなければならないことがあります。

サービスが世の中に認知されていく途中でアプリアイコンを変更しなければならない事態になると、せっかく蓄積した認知や信用がリセットされてしまい、事業上、不利になってしまいます。

このようなことにならないよう、初期からアプリアイコンも商標登録しておくことをオススメします。

②アプリ名は区分が多くなりやすいので、依頼するときは3区分の料金で比較しよう

アプリ名の商標登録の際は区分が3区分以上になることが多く、それによって商標登録の費用が高くなる傾向にあります。

そのため、商標登録をどこかに依頼する場合は、1区分ではなく必ず3区分(以上)の見積もりを取るようにしましょう。

なぜなら、依頼先によっては、1区分の料金は安いが3区分では料金が3倍になるなど、思わぬ出費となる場合もあるからです。

それを防ぐためにも、3区分の見積もりをもらうようにすると良いです。

③他のジャンルのアプリであっても、商標登録の競合になることがある

競合他社はだれもが気になるところですが、ビジネス上競合関係にない会社については逆にノーマークになりがちです。

商標登録においては、全く関係ない業界の商標登録であっても権利的な競合になることがあります。

つまり、アプリのジャンルが異なる他社のアプリ名であっても、ネーミングが似ているとしてあなたの商標が登録できないことがあるのです。

たとえば、料理アプリと医療系アプリでは、全くジャンルが異なるように見えますが、商標権の内容としては「アプリ」という共通項目があるため、権利的にはバッティングすると判断されます。

結果的に、アプリ名の商標登録はとても競合しやすくなっているため、特に「早め早め」の商標登録をオススメします。

まとめ

最後にまとめです。

  1. アプリ名を商標登録するときに必要な区分は、そのアプリのタイプによって次のように異なる
    1. 端末にインストールして使うアプリ(スマホアプリ、PCアプリ、タブレットアプリ):9類
    2. インストール不要でウェブブラウザ上で使うアプリ(ウェブアプリ):42類
  2. もっとも、どちらのタイプのアプリであっても、できるだけ最初から9類と42類の両方で商標登録しておく方がいい
  3. ビジネスモデルによってはこれに加えて他の区分も必要となることがある
  4. アプリアイコンやアプリのロゴを商標登録する場合でも、登録すべき区分は、アプリ名の商標登録のときと同じ
  5. アプリの商標登録をするときには、3つの注意点があります。
    1. アプリ名だけではなく、アプリアイコンも忘れずに商標登録しよう
    2. アプリ名は区分が多くなりやすいので、依頼するときは3区分の料金で比較しよう
    3. 他のジャンルのアプリであっても、商標登録の競合になることがある

ITが当たり前になった現在では「アプリ」の分野での商標登録はみんなが求めるものです。

それだけに競合も多く、最初の商標登録のときに適切な区分を選べるかどうかが、事業の成功を左右する要因になり得ます。

この記事で解説したポイントを押さえて、「アプリ」の商標登録を成功させましょう!

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