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商標の異議申立てとは?

無事に商標登録完了!とほっとしたのも束の間… 自分の商標登録を検索したら「異議申立のための公告」という表示が出ていてビックリしたことはありませんか?

あるいは、モタモタしていたら取りたい商標を他の人に登録されてしまった・・・というときに「異議申立て」という手段を聞いたことがあるかもしれません。

商標登録には、「もし商標の登録が間違っているのではないかと思う場合には、それを申立ててください。再審査しますよ」という異議申立てという制度があります。

この記事では、商標の異議申立てについて、みなさんが気になるポイントを基本的なところから事例まで解説します。

この記事を読んで、異議申立てに慌てないよう、備えておきましょう!

商標の異議申立て制度とは?

商標の異議申立て制度とは、ある登録商標について、登録後に、その商標が商標法に違反して登録されているから取消しするように特許庁に対し申立てることができる制度です。

この制度の活用場面としては、登録商標が自分も使う予定がある商標であったり、登録商標が自分の商標と似ているような場合に、その登録商標を取り消すために、異議申立てを行うことが多いです。自分が他人の登録商標を取り消すために異議申立てを行うこともあれば、逆に他人から申立てを受けてしまうこともあります。

商標の異議申立ての成功率

2020年の商標の異議申立ての成功率は約12%です。登録商標の取消しに成功した件数は46件、失敗した件数は338件です。これは、異議申立てと似た制度である無効審判請求の成功率が30~50%なのに比べると低い数値といえます。

(参考: https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2021/document/index/honpen0101.pdf

この理由としては、

  • 異議申立ての時期は審査が終わってすぐであり、その審査の結果を尊重して、登録を維持している可能性があるため
  • 異議申立て制度の他に無効審判制度があるため、異議申立ての審判官は判断に迷った場合はとりあえず登録を維持し、無効審判に任せている可能性があるため
  • 異議申立人は、申立てに対し商標権者が反論した場合に再反論する機会が与えられないので、主張の方法が不利なため(一方、無効審判の場合は再反論の機会が与えられる)
  • 異議申立てを認めて商標登録の取消決定をすると、商標権者がその決定に不服で裁判所に上訴(審決取消訴訟)した場合、特許庁が訴訟の被告になる。これを心理的に嫌がっている可能性(無効審判請求の審決が不服な場合も審決取消訴訟を起こしますが、この場合は「商標権者vs無効審判の請求人」の争いとなるので、特許庁は裁判当事者にはならない)

などが考えられます。

商標の異議申立ての費用

登録異議申立ての費用として、特許庁の印紙代と専門家の手数料がかかります。

  • 印紙代:3,000円+(区分数×8,000円)
  • 専門家の手数料:20万円~40万円ほど

印紙代が無効審判に比べて非常に安いことが特徴です。

参考:https://www.jpaa.or.jp/howto-request/attorneyfee/attorneyfeequestionnaire/#a13

商標の異議申立てができる時期

商標登録の異議申立てができる期間は、登録商標の「登録公報発行日」から2ヶ月以内です。このように申立て期間が非常に短いですので、期間を過ぎてしまわないように注意が必要です。

さらに、商標の「登録日」から2ヶ月ではないので、それも注意してください。

「登録公報発行日」は J-PlatPat から調べることができます。

商標の「存続ー登録ー異議申立てのための公告」とは

J-PlatPat で商標を検索したとき、ヒットした商標の「ステータス」欄に「存続ー登録ー異議申立のための公告」と表示されることがあります。

「存続ー登録ー異議申立のための公告」とは、現在「異議申立てができる期間」中であることを知らせるものです。

「存続ー登録ー異議申立のための公告」の表示について、いくつか注意点があります。

  • この表示を見ただけでは、実際に異議申立てが行われたかどうかはわかりません。
  • 以前、Amazonブランド登録をしたい人は、この期間中はブランド登録ができない場合がありました。しかし、この記事執筆時点のAmazonの運用では、商標登録前の「出願中(審査中)」の状態でもAmazonブランド登録ができるとの情報を入手しています。ただし、今後も運用が変わる可能性はありますので、注意が必要です。
  • 表示にタイムラグがあり、実際には異議申立てができる期間が終わっているにも関わらず「存続ー登録ー異議申立のための公告」と表示されることがあります。

商標の異議申立ての活用例

商標の異議申立てを活用する場面として典型的なのは、次の場面です。

  1. 自社(や他の人)も使いそうな特徴(独自性)がない商標に対して、異議申立てをする
  2. 自社で登録した商標と似ているのに登録された商標に対して、異議申立てをする

それぞれの場合について、具体的な事件をあげてお話していきます。

自社も使いそうな特徴がない商標に対して、異議申立てをする:「チーズフォンデュ」(異議2019-900229)

「チーズフォンデュ」という商標が「菓子、パン」の分野で商標登録されました。

しかし、「菓子、パン」の分野であっても「チーズフォンデュ風味の菓子、チーズフォンデュ風味のパン」があります。(たとえばこちら

そうだとすると、「チーズフォンデュ」という商標を使っても、商品である「菓子」や「パン」の品質や内容を単に言い表しているだけで、そこには特徴がありません(ブランドを区別する目印にはなりません)。

このような理由から、登録商標「チーズフォンデュ」は取り消されることになりました。

参考:https://shohyo.shinketsu.jp/decision/tm/view/ViewDecision.do?number=1365183

自社で登録した商標と似ている商標に対して、異議申立てをする:「肩にちっちゃいジープのせてんのかい」vs JEEP」(異議2019-900293)

ボディビルダーに対する掛け声にはいろいろおもしろいものがありますが、その中に「肩にちっちゃいジープのせてんのかい」というものがあります(参考)。このフレーズがアパレル分野や文房具の分野で商標登録されました。

ところが、「Jeep」は世界的に有名な車のブランドで、すでに商標登録されていました。「ジープ」と「Jeep」はカタカナか英語かの違いがあり、商標全体の構成は全然違ってはいますが、「Jeep」が世界的に著名な商標であることから、「肩にちっちゃいジープのせてんのかい」と「Jeep」は似ている商標であると判断されて、取り消されました。

参考:https://shohyo.shinketsu.jp/decision/tm/view/ViewDecision.do?number=1366321

商標の異議申立ての流れ

商標の異議申立ては、以下のような流れで進みます。

①登録異議申立人は、定められた事項を書いた登録異議申立て書を特許庁長官へ提出

     ↓   

②3名から5名の審判官(これを審判官の合議体といいます)により審理がスタート

     ↓

③審判官が審理した結果、申立てられた商標が登録を取り消すべきものであると判断された場合、審判長が「~という理由であなたの商標は取り消されます」という内容の通知(取消理由通知)を商標権者に送る

     or

審判官が審理した結果、登録を維持すべきと判断された場合、登録維持の決定が下されて審理は終了

     ↓

④取消理由通知を受け取った商標権者は、それに対して反論したいことがある場合には、反論書(意見書)を提出

     ↓

⑤商標権者からの主張や反論も検討して、最終的に審判官が登録された商標は取り消されるべきものであると判断した場合、登録された商標は取り消され、商標権は最初からなかったことになります。

      or

審判官が登録された商標には問題がないと判断した場合、商標権は維持されます。

商標の異議申立ての審理期間

商標の異議申立てをしてから審理が終わるまでの期間は、その事件により異なりますが平均約8.6ヶ月ほどかかります。

複数名からなる審判官の合議体により審理が行われるため、それなりに時間がかかるのは仕方ありません。

商標の異議申立てのメリット・デメリット

商標の異議申立てを行うメリット・デメリットをまとめてみました。

異議申立てのメリット

  • 印紙代が安い
  • 誰でも申立てができる
    似た制度である無効審判は「利害関係人」でないと申立てできませんが、異議申立ては誰でもできることとなっています。
  • 攻撃側は一回申立てをするだけで良いので、反論の手間などがかからない
    無効審判の場合は、防御側から反論があると、攻撃側に再反論の手間がかかることがあります。

異議申立てのデメリット

  • 再反論ができない
    無効審判の場合は、防御側から反論があった場合、攻撃側は再反論ができます。
  • 申立てする期間が短い
    登録公報発行日から2ヶ月間しかありません。
  • 誰が申立てしたかがバレる(権利行使など報復措置をされる可能性もある)
    異議申立てをするときは「申立人」の情報を書かないといけないため、誰が申立てたのかが相手方に伝わります*。


* 異議申立ては「何人も」可能とされているので、申立人を隠したい場合は第三者の名義を借りて申立人になってもらうケースもあります(いわゆるダミー請求です)。

まとめ

最後にまとめです。

  1. 商標の異議申立て制度とは、ある登録商標について、登録後に、その商標が商標法に違反して登録されているから取消しするように特許庁に対し申立てることができる制度
  2. 2020年の商標の異議申立ての成功率は約12%。異議申立てと似た制度である無効審判請求の成功率が30~50%なのに比べると低い数値
  3. 登録異議申立ての費用として、特許庁の印紙代と専門家の手数料がかかる
    1. 印紙代:3,000円+(区分数×8,000円)
    2. 専門家の手数料:20万円~40万円ほど
  4. 商標登録の異議申立てができる期間は、登録商標の「登録公報発行日」から2ヶ月以内
  5. 商標の異議申立てをしてから審理が終わるまでの期間は平均約8.6ヶ月ほど
  6. 異議申立てのメリット
    1. 印紙代が安い
    2. 誰でも申立てができる
    3. 攻撃する側は一回申立てをするだけで良いので、再反論の手間などがかからない
  7. 異議申立てのデメリット
    1. 再反論ができない
    2. 申立てする期間が短い
    3. 誰が申立てしたかがバレる(権利行使など報復措置をされる可能性もある)

商標の異議申立て制度は、特許庁が行った商標登録に対して、私たち国民にその間違いをみつけてもらって再審査の機会をつくるものですから、商標登録について国民の信頼を高めることを目的とした制度といえます。

少し複雑な制度ですが、この記事で解説したポイントを押さえておけば、専門家に相談するときにも落ち着いて対応できるでしょう。メリット・デメリットを踏まえて、この制度を有効に活用していきましょう!

 

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