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商標のファストトラックとは?メリット・デメリットを解説!

ビジネスにとって欠かせないものとは?そう、スピードですよね。商標を出願したけれど、いつ、結果がわかるんだろう。気になりますね。

じつは、商標の審査期間は平均10ヶ月~12ヶ月※1といわれています。ビジネスの状況によっては、もっと早く審査の結果を知りたい場合があります。そんなときのために、通常よりも早く審査をしてもらえる「ファストトラック審査」という制度があります。この記事では、この「ファストトラック審査」について詳しく解説していきます。

※1 本記事執筆時点の数値。審査期間は変動する可能性があります。

<2023年3月16日 追記>

本記事で紹介する「ファストトラック審査」は、2023年3月31日以前に出願されたものをもって休止されることが、特許庁から公表されました。
休止の理由は、最近の通常の審査期間が短くなったため(平均8ヶ月程度に短縮された ※2023年3月16日時点)、とのことです。
そのため、2023年4月1日以降の出願については「ファストトラック審査」の適用はありませんので、ご注意ください。

なお、「ファストトラック審査」が再開される可能性もあるようですが、再開時期は未定とのことです。

また最新情報を入手しましたら、適宜記事を更新いたします。

1. 商標のファストトラック審査とは

商標のファストトラック審査とは、商標の審査期間が通常の約10ヶ月〜12ヶ月から、約6ヶ月に短縮される制度です。

大幅に審査期間が短くなるにもかかわらず、この制度を利用するための特別な申請や費用は不要なことが大きな特徴です。

ただし、この制度を使うためには条件がありますので、それを説明していきます。

2. 商標のファストトラック審査の条件

ファストトラック審査を利用するためには2つの条件があります。

  1. 出願時に指定している商品・サービスが「類似商品・役務審査基準」「ニース分類」の商品・サービスのみであること
  2. 審査が始まるまでに、指定した商品・サービスの補正を行っていないこと

この2つの条件を両方満たしている場合に、ファストトラック審査を利用することができます。

条件を満たしていれば自動的にファストトラック審査が適用されるため、適用を受けるために別途特別な申請などをする必要はありません。

「類似商品・役務審査基準」「ニース分類」の商品・サービスかどうかの調べ方

J-PlatPat という特許の検索サイトで「類似商品・役務審査基準」「ニース分類」の商品・サービスかどうか調べることができます。

まずは、 J-PlatPat へアクセス。

すると下の画面が出てきます。

データ種別を「基」「N」のみにチェックを入れます。

検索キーワードに出願のときの指定商品・サービスを入力して検索。

その商品・サービス名に「基」または「N」のマークがついているか確認。

その商品・サービスに「基」または「N」マークのどちらかがついていれば、ファストトラック審査が利用できます。

ただし、ファストトラック審査を利用するためには、願書に書く指定商品・指定役務の全てがこの「基」または「N」マークのものでなければなりませんので、ご注意ください。

3. 商標のファストトラック審査のメリット・デメリット

商標のファストトラック審査のメリットは、通常より早く審査を受けられることです。

そのことにより、下記のメリットがあります。

  1. ネーミング変更をすべきかどうか早くわかる
  2. 似ている商標を使用している他社に早期にやめるように警告することができる
  3. Amazonセラーの場合は、ブランド登録が早くできる

一方、商標のファストトラック審査のデメリットは、商品・サービスの書き方に制約がかかることです。

先ほどご説明した通り、ファストトラック審査を受けるためには、「基」または「N」マークの指定商品・指定役務しか願書に書くことができないからです。

これにより、本来取得しなければいけない商品・サービスの権利が取れない可能性があります。

こういう場合は、まず弁理士などの専門家とよく相談して、本当にファストトラック審査を受けることを優先すべきかどうかを検討することをオススメします。

4. 商標のファストトラック審査と早期審査との違いは?

ファストトラック審査と似ているもので、「早期審査」という制度があります。

2つの制度の違いは以下の通りです。

 ファストトラック審査早期審査
費用不要不要※1
申請書類不要必要
審査期間6ヶ月に短縮2ヶ月に短縮
商標をすでに使っている必要があるか不要必要
商品・サービスの書き方「基」「N」のみ「基」「N」のみ※2
補正しても認められるかNGOK

※1 特許庁への印紙代は不要ですが、弁理士に任せた場合は2~3万円の手数料がかかることが多いです。

※2 早期審査の要件によっては、商品・サービスの書き方が限定されないようにすることもできます。

早期審査について、詳しくはこちらをご覧ください。

5. 商標のファストトラック審査と早期審査との使い分け

ファストトラック審査と早期審査は下記のように使い分けるとよいでしょう。

状況 適しているもの
商標登録をとても急いでいる 早期審査(2ヶ月)
そこまで急いでいない

指定商品(役務)が一般的なもので足りる
ファストトラック審査(6ヶ月)
そこまで急いでいない

指定商品(役務)に一般的ではないものがある
通常審査(10ヶ月~12ヶ月)

まとめ

ファストトラック審査は、審査期間が通常より半年から4ヶ月ほど短縮されるという大きなメリットがあります。

そのため、利用価値はとても大きい制度です。

ただし、ファストトラック審査をデメリットなく利用するには、商品やサービスが一般的なものであることが必要ですので、注意が必要です。自分が権利をとりたい商品やサービスがファストトラック審査の条件に当てはまるかどうかわからない場合は、弁理士へご相談いただくと良いでしょう。

ファストトラック審査、早期審査、通常審査、それぞれのメリット・デメリットを知って、上手に使い分けていきましょう。

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