年齢やライフスタイルとともに変わっていく、服選び。ショッピングが楽しくて、休日は一日中洋服を見て回っていた20代。子供が生まれ、買い物に出かけること自体が難しくなってきた30代。更に昨今の状況から、服に対する価値観が変わった方も多いかもしれません。
そんな風に、私自身も試行錯誤を重ねていく中でも、長い間通い続け、お世話になっているのが、ユニクロです。我が家はみんな、ユニクロが好き。長い間、私の服選びを助けてくれているユニクロについて、その歴史とビジネスについて、知財を交えて自由研究したいと思います。
目次
1.なぜ、ユニクロを選ぶのか?~我が家のニーズとユニクロのコンセプト~
はじめに、ユニクロのビジネス戦略について、我が家のニーズを元に掘り下げてみたいと思います。年々、ユニクロ購入頻度が上がっている我が家。なぜ、ユニクロを選ぶのか?を改めて考えてみました。
つまり一言でまとめると、効率的なファッションライフを送りたい。
毎朝の服選びも、衣服のお買い物も、あまり複雑にせず、シンプルにしたい。冒頭の試行錯誤の結果、効率追求に行きついたのです。
「効率追求派」の究極な例ではスティーブ・ジョブズが有名ですね。
「いつも同じ服を着る」「シンプルな服を着る」、いわゆる効率追求派のファッションライフが、近年は比較的世の中に受け入れられている印象がありますね。私もジョブズほど究極ではありませんが、似た思いを持っています。
そんな、「効率追求」という二ーズに合っているのが、ユニクロのコンセプトです。
ユニクロの目指す姿は、LifeWear(究極の普段着)
あらゆる人の生活を豊かにする、生活ニーズから考え抜かれたシンプルで上質な服。
ユニクロの品揃えは広い客層に対応しており、更に、エクササイズやマタニティライフなど、あらゆる生活シーンを想定した幅広い品揃えになっています。ユニクロは、ZARA、H&Mなどと比べると、比較的トレンドを追わないシンプルなデザインの服が多く、値段も良心的、という面も特徴です。
しかし、品揃えが豊富でシンプルなデザイン、更に価格が良心的、というだけでは、『国民服』と言われるほど選ばれるブランドにはならないですよね。
特に最近は安いブランドも多く出てきて、ユニクロといえば「安さ」という印象ではなくなりました。ユニクロ自身も「GU」という若め・安めの兄弟ブランドを立ち上げるなど、「安さ」による差別化はもはや目指しているように見えません。
価格競争オンリーではない、それでも選ばれるユニクロの秘密を、知的財産から探してみようと思います。
2.選ばれる秘密① 機能で差別化
ユニクロが選ばれるポイントの一つに、『着心地の良さ』が思い浮かびますね。着ていて暖かい、冷感がある、汗をかいてもさらっとしている、などなど、ユーザーに嬉しい機能が、ユニクロウェアには沢山備わっています。このようなユニクロウェアの機能性について、広告等でも全面的に宣伝されており、ユニクロが力を入れている点であることがよくわかります。
まさにこの機能性が、他のファストファッションブランドとの差別化されるポイントではないでしょうか?
ここでそのエピソードを一つ。いつかのカナダ旅行の思い出です。現地で着るアウターを1枚持っていこうと思い、迷わずユニクロのウルトラライトダウンをスーツケースに入れました。
旅行は8月で、東京発(猛暑)⇒バンフ(当日12~13℃)⇒バンクーバー(25℃前後)という温度差の激しい観光スケジュールでした。現地に到着し、バンフでのみダウン着用、バンクーバーでは暑くて不要のため、コンパクトに収納してスーツケースに。道中、荷物にならなかったのが助かりました!
ウルトラライトダウンは、ユニクロの代表的なアイテムの一つで、発売当初の仕様から、機能やデザインが色々と進化しています。
その中の一つ、インナーダウンとしての着こなしができるタイプのものが、特許出願されていました!
内側のボタンを留めればコートのインナーダウンとして最適なVネック仕様に早変わり。クルーネックとVネックの2-wayで着用できるため、アウターのタイプに合わせて幅広い着回しが可能です。
そして、アウターで他にも出願されていたのが、こちらのハイブリッドダウンパーカ―です。
「プレミアムダウン」と新開発の「吸湿発熱中綿」を組み合わせることにより、従来のダウンアウターの常識を覆すスタイリッシュなシルエットが誕生しました。動きの活発な部分には中綿を、柔らかく暖めたい部分にはダウン素材を使用し、動きやすさと軽さを実現した、新感覚のアウターです。
インナーでは、汗をかいても心地よく着用できる生地使いが、実用新案登録されていました。
前面の生地と後面の生地との境界線である縫い目が脇の中心より後ろ側に位置する。脇と接触する面には、汗取り用の生地5が縫着される。汗取り用の生地の一部は、前面の生地と後ろ側の生地に縫着されている。
そして、やはり昨今のユニクロアイテムで話題になったのは布マスク。発売当時、噂を聞きつけ購入してみました。長時間着用しても耳が痛くならず、つけ心地が良かったのが印象的です。
発売された2020年に特許出願されており、その数か月後に改良技術が出願されています。いずれも早期審査請求がされており、通常の特許出願よりも早いタイミングで特許査定となりました。
ユニクロ独自の三層構造が特許取得されていますね。
改良技術の方は、生地の縫い目部分の凹凸が少なくなっており、見た目や付け心地が更に向上しています。
以上のように、ユニクロの衣服は『機能性』に注力していることが、特許・実用新案からも裏付けられました。
3.選ばれる秘密② オシャレになったロゴ
私の記憶にある中で、一番最初のユニクロブームといえば、ユニクロのフリースの人気が急上昇した頃。みんな持っていましたよね、色バリエーションもどんどん増えた気がします。
今から20年前、2000年頃のお話ですね。
さて、その20年前に比べて、ユニクロに対するイメージが変わった、オシャレなブランドになったように感じるのは、私だけではないはずです。イメージが変わった理由の一つに、ユニクロのロゴが変わった点が挙がります。
登録商標を紹介しながらロゴの変遷を追っていきたいと思います。
3-1:ブランド名『ユニクロ』は、「ユニーク・クロージング・ウェアハウス」の略だった
今ではおなじみ『ユニクロ』ですが、このユニクロ(UNIQLO)というブランド名は、「ユニーク・クロージング・ウェアハウス (UNIQUE CLOTHING WAREHOUSE)」を略したものだそうです。
『ほかでは買うことのできない良いカジュアルファッションを、
お客様が自由に選び買うことができる』ブランド
こちらが第1号店オープン時の写真です。
確かに、看板には、UNIQUE CLOTHING WAREHOUSEと書かれていますね。この写真に写っている、スタッフと思われる方々が着ているTシャツのバックプリントが、当時のロゴでした!
手をつないだ二人のモチーフ、懐かしいですね!
3-2:デザイン変更!オシャレになったユニクロロゴ
さて、この頃のユニクロの店舗といえば、三角の屋根、そしてこの上のロゴが大きく掲げられており、お店の前に三本のポールが立っていたのを覚えていますか?
懐かしい!!昔、実家の近くにあったのも、このようなお店でした。そして、ポールの先端にはユニクロのロゴの旗がついていましたよね。上の写真は、お店の正面と側面にも、同じロゴが大きく掲げられています。
こちらのロゴは、よく見ると分かるように、今のものとは少し異なるデザインになっています。変更前のロゴも、変更後のロゴも、どちらも商標登録されていました。どこが変わったのか、見てみたいと思います。
字体が少し違うのと、背景の色が今のロゴほど鮮やかな赤色ではありません。このロゴ変更は、ちょうど海外展開が加速した時期でした。
鮮やかな赤地に白文字というシンプルなものですが、どちらも強く印象に残るデザインですね。皆さんもご存知の通り、変更後のロゴは、カタカナ表記のロゴと、英語表記のロゴのタイプがあります。
そして、カタカナ表記のロゴと、英字表記のロゴがぴったり横に並べられているのをよく目にしますよね。正方形の真っ赤なロゴが二つ並んでいると、インパクトが大きいように感じます。このように、二つのロゴを横に並べた商標についても、登録されています。
そうそう、このロゴ配置です!左側にカタカナ文字のロゴ、右側に英字のロゴが並ぶ配置が、とても印象的です。
さて、このロゴ変更があったあとから、ユニクロのスポーツウェアを中心に、服にこのようなマークがついています。
写真:筆者撮影 家にあったスポーツウエアを引っ張り出してみました
このマークからは、まさに、横に並んだ二つのユニクロロゴが想像されますね。今となっては、文字がなくてもこの二つの正方形を見ただけでユニクロだと認識できる程に、ユニクロユーザーに定着したと言えると思います。
ユニクロのロゴの変化により、洗練されたブランドへとイメージが変わり、オシャレファッションに取り入れられるブランドへ成長していったのではないかと考えられます。
ちなみに、最近は緑色のロゴも商標出願されていました。皆さん、どこかで既に見かけたことはありますか??
ドラえもんと共に、サステナモード!色が違うだけで、ぐっと印象も変わりますね。「服のチカラで、未来を変える。」というユニクロのサステナビリティメッセージを、世の中に分かりやすく伝え、広めていく役割を担っていきます。
4.選ばれる秘密③ スタイリッシュな店内
先ほどご紹介した三角屋根の店舗写真を見ると、店舗の外観自体もスタイリッシュな雰囲気に変化しているのだな、と感じますね。中でも近年話題になっている2つのデザインを紹介します。いずれも意匠登録されています。
①UNIQLO PARK
店舗と公園が一体化した施設になっている、UNIQLO PARK。ショッピングに、公園遊びに、一日中楽しめそうですね。
UNIQLO PARK 横浜ベイサイド店は、スロープ状の屋上面が、すべり台やジャングルジム、ボルダリングやクライミング設備を備えた公園になっています。
こちらは、建築物の意匠として意匠登録されています。
建築物の意匠は、2020年4月1日に施行した改正意匠法で認められるようになりました。
こちらの意匠登録は、その『建築物の意匠』の第1号の登録意匠なのです。
②ユニクロ原宿店『UT POP OUT』
とてもスタイリッシュな店内ですね!スケールも圧巻。
ユニクロ 原宿店の「UT POP OUT」は、同店1階の入り口を兼ねた世界最大級のUT専用の売り場として、同店トータルクリエイティブディレクターの佐藤氏と共にデザインしました。
「UT POP OUT」の売り場デザインは、内装の意匠として登録が認められています。
以前、中目黒の「Starbucks Reserve Roastery」を研究したときも、3Fに設置された「コーヒー抽出機」についてしっかりと意匠権が登録されていました。
ブランドコンセプトを体現する旗艦店舗のデザインは、各メーカーにとって絶対にマネされたくないものでしょう。意匠権を上手く活用して、デザインを模倣から守っていることがわかります。
店舗を、『単に服を販売する場所』と捉えず、『お買い物を楽しめる空間』を創りあげ、店舗空間、さらにはブランド自体のファンを育ていく。そんなユニクロの戦略も意匠から見ることができました。
5.まとめ
今は国民服とまで呼ばれるようになったユニクロ。シンプルで定番のデザインが多く、一見、他のブランドとの差別化が難しそうですが、安いだけではないユニクロ特有のこだわりが、アイテムや店舗に色々とつまっていることが、知的財産からもわかりました。
知財を色々見ていると、ユニクロに行きたくなってしまいました!!
ユニクロアイテムは耐久性も良く、気付けば何年も着ていた・・・ということがありがちな我が家。こちらのパーカも、当初は子連れ海外旅行で活用する目的で購入しましたが、その後も長く着ることができ、今では子どもとの公園遊びの際に活躍しています。
写真はいつかの台湾旅行。旅先で息子が鼻血を出して、パーカーのお腹のあたりが真っ赤になりましたが、宿泊先での簡単な手洗いで綺麗に取れて感動しました。そして、すぐ乾いてくれて本当に助かった思い出があります。
今後も、日常生活の思い出とともに、私のユニクロアイテムも増えていきそうな予感です。これからも、お世話になり続けたいなと思います。