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アパレル分野の商標登録の注意点は?区分、商品を詳しく解説!

アパレル分野で商標登録をしようと思っても、区分や指定商品など決めなければならないことがたくさんあってよくわからないと悩んでしまいますよね。Toreru でもお客様からそのような相談を受けることも多いです。

そこで、この記事ではアパレルブランドの商標登録の区分や指定商品選びのポイントや、登録する際の注意点について解説します。

  • アパレルブランドの多くが商標登録する理由
  • アパレル分野の商標登録区分と代表的な商品アイテム
  • アパレル分野で商標登録する際に注意するべきポイント

上記のことが知りたい方は最後までチェックしてくださいね。

多くのアパレルブランドが商標登録をする理由

なぜ多くのアパレルブランドが商標登録をするのか?一言でいえば、「自らのブランドを守り、育てる」ためです。

ブランド名を使用するために商標登録は必ずしも必要ではありませんが、登録せず使い続ける際のリスクを知っておくことは大切です。そして、商標登録は「リスク回避のためだけの後ろ向きの投資」ではありません。

理由を知っておくことで商標登録をする際の優先順位も決めやすくなるので、まずはアパレルブランドが商標登録する理由を見ていきましょう。

① 自分が考えた名称が将来使えなくなる可能性があるから

ブランドロゴや名称が代表的ですが、商標登録しておかないと自分が考えて作ったロゴや名称が使えなくなる可能性があります。

例えばアパレルブランドの1つにフレッドペリーというブランドがあります。フレッドペリーのロゴマークは月桂樹という実際にある植物をモチーフのしたロゴです。

しかし、月桂樹をモチーフにしたロゴを使う商品はかなり多く、代表的な所で言えば大吟醸で有名な「月桂冠」なども月桂樹をロゴマークに用いています。

※左がフレッドペリー、右が月桂冠

     

引用:https://www.fredperry.jp/    https://www.gekkeikan.co.jp/

実際には「月桂冠」のロゴがアパレル分類で商標登録されていることはなく、フレッドペリーのロゴとは住み分けできているのですが、もし月桂冠(株)が「自社でもTシャツを作って、販売するかもしれない」と考えて、先にアパレル分類で登録をしていたらどうでしょうか。

商標の基本ルールは早い者勝ち。

よく使われるモチーフは、多くの人が使いたいもの。他の会社が商標出願してくることは十分あり得ます。後から使えなくなることがないように、商標登録しておくことが大切です。

② ブランディングが特に重要な業界だから

アパレルブランドはとにかくブランディングが重要な業界ということも商標登録する会社が多い一因でしょう。

アパレル業界では、ブランドが異なったとしても、取り扱う商材の種類に大きな差は生まれにくいです。

例えば衣類を専門に扱っている会社であればTシャツやYシャツ、デニムパンツなどの商材はどうしたって被ってしまいます。

そんな時にユーザーにとって重要なのは「どこのブランドのTシャツなのか??」という点。

同じ綿100%のTシャツであっても、無名ブランドの商品と、エルメスブランドの商品では、は大きな金額の差がありますよね。

価格だけではありません。お客さんは商材につけられた「ブランドロゴ」に自らの価値観を投影します。

例えば、Tシャツでもスノーピークならアウトドア志向。ナイキならカジュアル&スポーティー。A BATHING APEならストリート系。

星の数ほどあるブランドがそれぞれファンを囲い込めるのも、差別化できる「商標」があってこそ。アパレルメーカーにとって、ブランドイメージが生命線。他人に勝手にロゴやブランド名を使わせないよう、しっかりと商標登録をしているのです。

アパレル分野の商標登録の区分はこれだけある!区分ごとに解説

アパレル分野の商標登録に関する区分は、他の分野と比べても非常に多いです。

そこで一覧にまとめてみました。

区分代表的な商品
9類メガネ・サングラス
14類ネックレス・指輪・腕時計・キーホルダー
18類バッグ・財布・化粧ポーチ
25類トップス・アウター・パンツ・靴
26類ボタン類・ブローチ・ヘアバンド
35類セレクトショップなど小売店のサービス

最近のアパレルブランドは多品種化が進み、いわゆる「被服(25類)」だけにとどまらず、抑えておくべき区分が広がっています。

そこで、各区分についてアパレルと関係しやすい商品・サービスをピックアップしていきましょう。

9類 メガネやサングラス

<アパレルと関連しやすい代表的商品>

  • メガネ
  • サングラス

実は9類の主な指定商品はコンピューターやスマホなどの電子計算機類やプログラムなので、本来であればアパレルとはかけ離れた区分です。

しかし、メガネやサングラスは光学機器の一つとして、国際協定上9類に区分されています。メガネ、サングラスといったいわゆるアイウェアはアパレルブランドが良く取り扱う商材ですから、9類を指定しておくケースは多いです。

ちなみに防火服や防塵防毒マスクなども9類に区分されています。これはファッションのためというよりは「身を守るための防具だから9類」とイメージすると良いでしょう。

9類のもっと詳しい紹介:https://toreru.jp/media/class09/

14類 ネックレスや指輪などのアクセサリーや貴金属、腕時計など

いわゆるアクセサリー全般に該当するのが14類です。

<アパレルと関連しやすい代表的商品>

  • 指輪
  • ネックレス
  • イヤリング
  • ペンダント
  • ネクタイピン
  • キーホルダー
  • 時計

意外なところでは身に付けない、宝石箱や記念カップなども14類に該当します。14類には貴金属類も含まれるためです。

14類のもっと詳しい紹介:https://toreru.jp/media/class14/

18類 バッグや財布、化粧ポーチなど

<アパレルと関連しやすい代表的商品>

  • バッグ
  • リュックサック
  • ショルダーバック
  • 財布
  • 化粧ポーチ
  • キーケース
  • 名刺入れ
  • ステッキ、つえ

たくさんの商品が出てきました。まず、物を入れるバッグ類が18類に該当します。それ以外に、財布・名刺入れなどの小物類も多くこの分類に含まれています。これらはアパレルブランドで商品化する機会が多いでしょう。

珍しいところでは乗馬用品なども18類ですね。

18類のもっと詳しい紹介:https://toreru.jp/media/class18/

25類 洋服、和服、下着、帽子、靴など衣類全般<アパレルと関連しやすい代表的商品>

  • 洋服、コート、セーター類、ワイシャツ類
  • Tシャツ、キャミソール、タンクトップ
  • 下着、寝巻
  • サッカーや野球などのスポーツユニフォーム
  • 靴下
  • 手袋、マフラー
  • ネクタイ
  • 帽子
  • ベルト
  • アイマスク

25類はアパレル商材のど真ん中。「衣類」と呼ばれる物は全て含まれると思って頂ければOKです。(医療用の衣服などの専門用途の衣類だけは別の場合があります)

オーソドックスな洋服だけでなく、スポーツユニフォームやコスプレ衣装、さらには靴、ベルト、ネクタイまでもその範疇に入り、幅広いことが特徴です。

25類のもっと詳しい紹介:https://toreru.jp/media/class25/

26類 ヘアバンドや髪留め、衣服につけるブローチなどの貴金属以外の装飾品

<アパレルと関連しやすい代表的商品>

  • リボン・テープ
  • ピン・針
  • ウィッグ(かつら)
  • ブローチ
  • シュシュ
  • ボタン類

貴金属以外のアクセサリー類に該当するのが26類です。

14類と非常に似通っていますが、違いは主に、貴金属製でないものや裁縫に使う道具が26類だと考えて頂ければ問題ありません。

26類のもっと詳しい紹介:https://toreru.jp/media/class26/

35類 セレクトショップなどの店名やECサイト名(小売業)として商標を使用する場合

<アパレルと関連しやすい代表的サービス>

  • 被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
  • 衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
  • 身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
  • 広告業

アパレル業界での35類は、店舗ブランドや、ECサイトの名称の登録等が代表的な使われ方です。

たとえばユニクロ(ファーストリテイリング)は、「ユニクロ」という名前と赤と白で構成されたブランドロゴを35類で登録しています。

商標登録第5137359号(2008年6月6日登録)

35類は商材単品ではなく、広告・小売などのサービス全体に関わる重要な区分です。ブランド名を実店舗・オンライン店舗名に使う可能性がある場合は、しっかりと登録しておくことをお勧めします。

35類のもっと詳しい紹介:https://toreru.jp/media/class35/

アパレル分野の商標登録に特有の注意点

アパレル分野では、商標登録に他の業界とは少し違った注意点があります。

それが以下の4つです。

  • 流行が早いアパレル商品で本当に商標登録するメリットがあるか考える
  • アパレル関連商品は種類が多いので費用がかなりかかる
  • 登録する場合は優先順位を決める必要がある
  • 個人名ブランドの登録は同姓同名がいる場合は原則不可

それぞれどのようなことか解説します。

①流行が早いアパレル商品で本当に商標登録するメリットがあるか考える

商標登録する商品が本当に登録するに値する商品なのかを考えてから登録をしましょう。

他の業界と比べてアパレル業界というのは極めて流行の移り変わりが早く、今年カッコいいと言われたシャツが来年にはダサいと言われるのが当たり前の業界です。

また、商標登録の完了自体も時間がかかるので商標登録が完了した頃にはブームが去っているということもあり得ます。 

お金を出して商標登録をしても来年には作る意味がなくなってしまうのであれば無駄になってしまうので、よく吟味してから商標登録することをおすすめします。

かかる時間についての参考記事:https://toreru.jp/media/trademark/1225/

②アパレル関連商品は種類が多いので費用がかなりかかる

既にご紹介したようにアパレル関連商品は区分がかなり細かく分かれます。

他の業界よりも商標登録の区分が多く、区分が増えるとそれだけ費用も余計にかかるので、ブランドを立ち上げて商標登録する際はある程度まとまったお金がかかるということを覚えておくようにしましょう。

商標は追加出願し、カバーする区分をあとから増やすことも可能ですが、それまでに第三者が出願してしまうリスクがあります。商品化する可能性が高い区分はできるだけブランドの立ち上げ時に出願しておくことをお勧めします。

参考記事:https://toreru.jp/media/trademark/766/

③登録する場合は優先順位を決める必要がある

登録をする場合は商品ごとに優先順位を決めてから登録するようにしましょう。

前述の通り、アパレルの商標区分は多く、流行の移り変わりが早い業界です。

従って、たくさんある商品のどれから登録をするべきか優先順位を決めないとお金がいくらあっても足りません。

そこで、何年にも渡って売り続ける定番商品、もしくはブランドアイコンとなる商品の区分を優先して登録をしていくことをおすすめします。②と関連しますが、まずは商品化する可能性がある商材のリストアップから手を付け、優先順位をつけると良いでしょう。

④個人名ブランドの登録は同姓同名がいる場合は原則不可

実は個人名ブランドの登録は、同姓同名がいる場合は原則できません。

人格権保護のため、他人のフルネームはその人の承諾がない限り商標登録できない法律になっています(商標法4条1項8号)。珍しい人名なら、その人から承諾を得られるケースもありますが、同姓同名の人がたくさんいる場合は全員から承諾を得なければならず、現実的ではないでしょう。

具体例としては、デザイナーの菊地武夫氏が自身のブランドとして知られる「TAKEO KIKUCHI」の英字表記を含む商標を登録しようとしたところ、商標法4条1項8号を理由に2020年7月に拒絶査定となっています。

以前はここまで厳しくなく、過去に「TAKEO KIKUCHI」が登録された分はあるのですが、近年は同姓同名がいる個人名ブランドを登録することが、かなり困難な実情があります。

流石に厳しすぎる!という批判を受けてか、2021年8月に「マツモトキヨシ」のフレーズを音の商標として出願したところ、「他人の人名が含まれる」と特許庁に拒絶されていた事件で、知財高裁が「フレーズから連想されるのはドラッグストアとしてのマツモトキヨシであり、人の氏名を指すものとはいえない」として、商標登録を認めるべきという判断を下しています。(「マツモトキヨシ」の音商標に関する令和2年(行ケ)第10126号)。


そのため、今後状況は変わって行くかもしれませんが、現段階では、個人名ブランドの商標登録には困難が伴う可能性が高いといえます。

なお、これは商標登録することができない(独占権が無い)だけであって、商標利用ができないわけではありません。

自分の名前を単にアパレルブランドに使えればよいという方は安心してください。

商標登録でかかる費用はどれくらいなの?

商標登録にかかる費用は、特許庁に支払う費用と、弁理士に支払う代理人手数料に分かれます。

特許庁に支払う費用は自分で出願しても、必ずかかる費用です。

特許庁費用は出願時と登録時の2回支払いのタイミングがあり、区分の数が多いほど金額が増えていきます。

  • 出願時:3,400円+(区分数×8,600円)
  • 登録時:区分数×17,200円 ※5年分

1区分であれば、合計29,200円が特許庁に支払う費用です。

  • 申請時=3400円+(1×8,600円)=12,000円
  • 登録時=1×17,200円=17,200円
  • 申請時+登録時=29,200円

なお、1区分増えると特許庁に支払う費用が25,800円ずつ増えていきますので、自分に必要な区分をしっかりと見極めることが大切です。

次に弁理士に依頼する場合、手数料がかかります。これは事務所によって異なりますが、1区分で5~10万円が相場でしょう。

費用をかけて弁理士に依頼するメリットは、自分に合った指定商品や区分を相談できること、また、出願前の調査により「商標の登録可能性」を事前にチェックできることです。

明らかに似ている商標が先に出願されている場合、登録できる可能性は低く、今の内にブランド名やロゴを変えた方が良い・・ということもあります。

弁理士に依頼することで手続の手間を省けるだけでなく、専門的な知識により、商標に関するさまざまなリスクを未然に防ぐことができるのが最大のメリットになります。

商標権侵害で裁判になった具体例

アパレル業界でも商標権侵害によって裁判沙汰になった事件はあります。

たとえば、しまむらの損害賠償事件。

平成14年に株式会社しまむらで販売していたポロシャツが商標権侵害をしていたとして1236万円の賠償請求を命じられています。

平成 13年 (ワ) 4981号 損害賠償請求事件(東京地方裁判所)

本事件は並行輸入品をめぐる争いでしたが、一般にアパレルメーカーは自分のブランドに敏感で、商標権を侵害する他社には厳しい姿勢を採ることがほとんどです。

警告でも販売停止だけでなく、過去販売分の損害賠償や、市場からの回収を求めてくるケースも多いため、自社商品が他人の商標権を侵害していないことはしっかりと調査すべきでしょう。

なお、自社ブランドが商標登録できていれば、指定商品の範囲内では使用できることが確実になりますので、安全確保のために商標登録はとても有効です。

アパレル以外のコラボアイテムで商標登録する場合の区分を紹介

ブランドを大きくするのに有効な手段の1つであるコラボ。コラボはアパレルという範囲を超えて事業展開することもしばしばです。

従ってコラボをする時はアパレルだけでなくアパレル以外の区分の商標登録を検討する必要があります。

ここではコラボでよく使われる商品の区分の説明と注意点について解説します。

21類 マグカップ

コラボアイテムの定番であるマグカップの区分は21類です。

21類は主に化粧用具、調理用具、食器、洗濯用具、清掃用具等が該当します。

21類の中には3類と混同しそうな化粧用具がありますが、21類では化粧用の刷毛やスポンジ等が該当します。

口紅や化粧下地、香水などは後述する3類に該当するので合わせてチェックしていきましょう。

21類のもっと詳しい紹介:https://toreru.jp/media/class21/

16類 文房具

16類は主に紙類や書籍、雑誌などの印刷物。文房具類が該当します。

コラボアイテムとして使われやすいものが文房具、例えばボールペンや万年筆は売り場でもよく見かけますね。

16類のもっと詳しい紹介:https://toreru.jp/media/class16/

3類 化粧品

一般的に連想する化粧品(口紅・香水・化粧下地・マスカラ等)は3類に該当します。

メンズブランドではあまり縁がない区分ですが、女性向けに展開しているブランドであればコラボ時にはよく使用される区分です。

ただし、靴墨や石鹸なども3類に該当するので、間違えやすい区分でもあります。アイテムが細かいため、コラボ時には下記の記事も合わせてチェックしてみてください。

3類のもっと詳しい紹介:https://toreru.jp/media/class03/

コラボ商品の場合は相手の権利許諾や表記をしっかり確認する

コラボ商品を扱う場合の注意点としてはコラボ相手の権利許諾の条件や、要求事項をしっかりと確認することです。

コラボにおける許諾のための要求事項には大きく分けて2つあり、1つ目が「商品の仕様チェック」、2つ目が「権利表記のチェック」です。

「商品の仕様チェック」は通常、試作品で行われますが、「権利表記のチェック」は量産品に付されたロゴや印刷で行わることが多いです。

すなわち、コラボ先が要求していた権利表記や、ロゴの印刷が万一間違っていた場合、修正しようにもすでに生産は進んでいる・・なんて悲劇が起こります。

権利表記が間違っていた場合、相手側も「まあ、いいですよ」なんて軽々しく言えませんから、最悪の場合は全品廃棄、作り直しなんてことも・・。信頼関係をも失いかねません。相手と自分がwin-winにするために行うのがコラボですから余計なトラブルにならないように注意することが大切です。

まとめ

アパレル分野の商標登録は他の業界よりも区分がたくさん分かれていて、それだけかかる費用も多いです。

また、流行の移り変わりが早いので、登録する必要があるのかを吟味し、適切な区分を選んでいくと良いでしょう。

アパレル分類で商標登録をしようか、またどんな区分・商品を選べば良いか迷っている方に、この記事が参考になれば幸いです。

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