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おジャ魔女たちの商標戦略ー愛され続けるコンテンツを守るために

まえがき

 最近、アニメ作品のリバイバルが盛んです。スピンオフ作品が連載中のキン肉マン、今秋新作アニメが放映開始されたダイの大冒険、2021年に劇場版公開を控えたセーラームーンなど枚挙に暇がありません。

 そんな中、筆者の人生に多大なる影響を与えたアニメ作品「おジャ魔女どれみ」シリーズの新作映画が2020年11月に公開されます。本記事では、おジャ魔女どれみシリーズを題材としてリバイバル作品の商標戦略について調査しました。

おジャ魔女どれみ20周年記念作品「魔女見習いをさがして」とは

「魔女見習いをさがして」予告編

https://www.lookingfor-magical-doremi.com/

リンク:「魔女見習いをさがして」公式ホームページ

1999年より朝日放送・テレビ朝日系列で4年間放送された「おジャ魔女どれみ」シリーズ。最高視聴率は13.9%(「も~っと!おジャ魔女どれみ」)、世代別では女児の9割が視聴していたほど圧倒的な人気を誇っていました。当時子どもたちが目を輝かせながら観ていた「おジャ魔女どれみ」が、TVアニメ放送開始から20年という時を超え―完全新作映画となって帰ってきます!”(「魔女見習いをさがして」公式ホームページより引用)

 何を隠そう、筆者もどれみたち魔女見習いの活躍に目を輝かせていた一人でした。新作映画の知らせに否が応にも期待が高まります。

年齢も性格も住んでいる場所も…なにもかもが違う三人。しかも、それぞれ思い描く未来が見えず、人生に絶賛迷い中!そんな彼女たちを引き合わせたのは“おジャ魔女どれみ”!?(「魔女見習いをさがして」公式ホームページより引用)

 主要な登場人物は子ども時代に「おジャ魔女どれみ」を見ていた三人の女性。コンテンツに触れていた側にスポットが当たるというのは少し珍しい構成ですね。

 しかしながら、子どもたちの悩みに寄り添ったストーリーを丁寧に描いてきた「おジャ魔女どれみ」シリーズの新作映画として、「かつての子どもたち」であった私たちの悩みに寄り添ったストーリーが描かれるのは、ある意味ふさわしいことなのかもしれません。筆者もかつての子どもたちの一人として、映画の公開を楽しみにしています。

コラボ企画に必須なものと言えば…?

 映画の公開に合わせた数々のコラボ企画にも要注目です。

 こちらはアート・キャンディ・ショップ「papabubble/パパブブレ」とのコラボキャンディ「おジャ魔女ミックス」です。おジャ魔女たちの変身アイテムなどをモチーフにした可愛らしいキャンディが映画オリジナルのパッケージに詰め込まれています。(か、かわいい…!)

アート・キャンディ・ショップ「papabubble/パパブブレ」とのコラボキャンディ「おジャ魔女ミックス」

画像:「魔女見習いをさがして」公式ホームページより引用

 公式ホームページには、他にも非常に幅広い企業・団体とのコラボ企画の情報が告知されています。

「魔女見習いをさがして」コラボ先一覧
表:「魔女見習いをさがして」コラボ先一覧

 このようなコラボ企画において忘れてはならないのが商標登録です。安心してコラボ企画を進めてゆくためには、「おジャ魔女どれみ」というネーミングを商標登録し、商標権でしっかりと保護してゆく必要があります。

 ネーミングを商標権により保護していくことは「おジャ魔女どれみ」というコンテンツのブランド力を守っていくために非常に重要なことです。ブランディングと商標登録の関係についてはこちらの記事をご参照ください。

https://toreru.jp/media/trademark/536/

「おジャ魔女どれみ」の商標登録の状況は?

 「おジャ魔女どれみ」というネーミングは、東映アニメーション株式会社により1998年10月9日に商標登録出願されています。テレビアニメシリーズの放映開始されたのが1999年2月7日ですので、放映開始の約4ヶ月前には出願されていたことになります。そして、1999年12月24日に登録されています。

「おジャ魔女どれみ」登録商標
画像:Toreru商標検索

 この際、3, 5, 6, 8, 9, 11, 14, 16, 18, 20, 21, 24, 25, 26, 27, 28, 29, 30, 32類と、20区分もの分類がカバーされました。例えば、被服が含まれる第25類や、菓子・パンが含まれる第30類がカバーされています。

 ここでおさらいしておく必要があるのが、商標登録の存続期間は原則として設定登録の日から10年であり、以後は10年ごとに商標登録の更新が必要であるということです。詳しくはこちらの記事をご参照ください。

https://toreru.jp/media/trademark/344/

 「おジャ魔女どれみ」の場合、1999年に登録され、その10年後の2009年、そして更に10年後の2019年に商標登録の更新手続が行われ、現在も商標登録が維持されています。

「おジャ魔女どれみ」商標-登録情報
画像:J-PlatPat 商標検索

 テレビアニメシリーズの放映は2003年1月に終了しましたが、その後も有料チャンネルで「おジャ魔女どれみナ・イ・ショ」という外伝シリーズが放映されたり、高校生になったおジャ魔女たちを描いた小説が発表されたりと、新たなコンテンツが製作されてきました。さらに、テレビでの再放送やインターネットでの配信なども相まって、「おジャ魔女どれみ」という作品は愛され続けてきました。(今回の映画にも再放送と配信でおジャ魔女たちに出会ったキャラクターが登場します。)

 このように、おジャ魔女どれみというコンテンツが愛され続けてきたからこそ、テレビアニメシリーズ放映後も商標登録を維持するという判断になったのではないでしょうか。

愛され続けるコンテンツを守るために

 また、2019年には第9類と第41類について商標登録出願が行われています。

「おジャ魔女どれみ」商標-9類、41類出願
画像:J-PlatPat 商標検索

 第9類は1999年にされた最初の出願でもカバーされていましたが、2011年(平成23年)に商標の区分が改正されたため、改めて出願を行ったものと推測できます。平成23年法の第9類には、インターネットを利用して受信し保存することができる動画ファイル」「電子出版物」といった1999年当時には無かった商品が含まれます。

 また、第41類には「オンラインによる映画の映像・画像・音声・文字情報の提供」が含まれます。これはコンテンツをストリーミングにより提供するサービスに対応します。

 ちなみに第9類に含まれる「インターネットを利用して受信し保存することができる動画ファイル」は、コンテンツをダウンロードにより提供するサービスに対応します。

 最初の出願が行われた1999年当時、インターネットはまだまだ一般的なものではありませんでした。そのため、最初の出願の際に選択した商品・サービスだけではコンテンツビジネスをカバーしきれなくなったという事情が伺えます。

 「おジャ魔女どれみ」のような長く愛され続けるコンテンツを守るためには、コンテンツの初出時には想定されなかった商品・サービスについて商標登録出願を行うという戦略が必要でしょう。

おわりに

 笑って泣いて支え合って、かけがえのない時間を過ごした三人は改めて気づく、いつもどれみたちがそばにいてくれたことに。そして魔女見習いたちに背中を押され、踏み出した先に、素敵な世界が広がっていた―(「魔女見習いをさがして」公式ホームページより引用)

 筆者も魔女見習いたちに背中を押され、自分の人生を踏み出した一人です。

 おジャ魔女どれみシリーズは、魔法少女ものでありながら、魔法が決して万能の解決手段ではないことを強く示しています。「自分の願いを叶えるために」魔法の力を得た魔女見習いたちは最終的に「魔法に頼らないで自分の夢を叶える」選択をするのです。この選択が多くの子どもたちの背中を押したのではないでしょうか。

 魔女見習いたちに背中を押してもらい、自分のやりたいことを見つけ、そして今このような文章を書けていることをなんだか感慨深く思うと共に、この作品を守り続けた全ての人たちに感謝して今回の記事を終わろうと思います。

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