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【ビジネス転生録 vol.01】街から消えたレンタルビデオ店は今?GEOの華麗な転生を商標で追う

かつて街には映画やドラマのビデオを貸し出すレンタルビデオチェーン店がありました。

しかし、映画やドラマといったコンテンツは配信で楽しむのが当たり前という時代になり、レンタルビデオチェーン店は街から姿を消しました。街から消えたレンタルビデオチェーンはいったいどうなってしまったのでしょうか。もしかして倒産してしまったのでは⋯?

いえいえそんなことはありません。かつて街を賑わせたレンタルビデオチェーンは華麗な転身を遂げ、ますますビジネスを拡張しています。

本記事ではそんな華麗な転身を遂げたGEO(株式会社ゲオホールディングス)を取り上げ、その激動の変化を知財目線で追ってゆきます。

創業とあのロゴの出願 ―そしてレンタル事業黄金期へ

GEOが創業したのは1986年のこと。創業者である遠藤氏が愛知県豊田市にビデオレンタル店を開業したことがはじまりです。

沿革 | 株式会社ゲオホールディングス 

この愛知のレンタルビデオ店をスタートとしてGEOは多店舗展開を図ってゆくのですが、特徴的であったのは、郊外の主要幹線道路沿い(いわゆるロードサイド)を中心に出店していったこと。これは、駅前の一等地を中心に展開していた競合のTSUTAYAとは対照的なものでした。

では商標登録のほうもみていきましょう。1989年には、あのGEOの特徴的なロゴをいちはやく商標登録出願しています。

登録2367979 出願日 1989年3月18日

この商標の指定商品を見てみると、現在の商標実務とはちょっと違った指定商品の選び方をしていました。さっそく見てみましょう。

登録2367979 出願日 1989年3月18日

商標分類として、紙、紙製品、事務用品が入る「第16類」を指定しています。レンタルビデオのお店なのになぜ? 実はこれには当時の商標制度が絡んでいます。(それと、「提手付簡易買い物袋」「紙製簡易買物袋」という指定商品もヒントです。)

現在の制度では、レンタルビデオのお店が商標登録出願をする場合、お店が提供する「ビデオを貸し出す」というサービスを直接指定するのが王道です。しかし、当時の制度ではこのようなサービスを指定して出願することはできませんでした。

そこで考え出されたのが「自店の店名(ロゴ等)が印字された物理的な物」を指定して商標登録出願を行うという戦略です。そうなると、レジ袋や買い物袋といった物は指定商品としてうってつけ。先ほどの出願「提手付簡易買い物袋」「紙製簡易買物袋」といったものを指定商品としていたのはそのためです。

さて、話をGEOの歴史に戻しましょう。

多店舗展開が軌道に乗り始めたGEOは、同業チェーンなどを相次いで買収・直営化し、さらに店舗網を拡大してゆきます。2000年代から2010年頃まで、GEOはまさにレンタルソフトチェーンとしての黄金期を迎えていました。

2014年度の有価証券報告書によると、ビデオレンタルを行う「ゲオショップ」という形態の店舗数は、当時1274店舗あったそうです。松屋フーズの国内店舗数が1367店舗(2025年7月末時点)なので、同じぐらい全国に普及していたことがわかります。

後の逆転劇の伏線~セカンドストリート買収と不動産事業

この黄金期の最中である2008年、ゲオは洋服や家具を扱うリユースショップ「セカンドストリート」を傘下にしました。当時はサブ事業の位置づけでしたが、これが後に同社の命運を分ける先見の明となりました。

登録4490876 出願日 2000年7月13日

こちらは2000年に出願されたセカンドストリートの旧ロゴです。現在は主にアルファベット表記のロゴが使われていますが、当時はカタカナ表記だったのですね。なお、逆三角形に数字の「2」が組み合わされたマークは当時から健在だったようです。

ちなみに、この商標は、当時のセカンドストリートの運営会社(株式会社フォー・ユー )により出願され、後にGEOの運営会社(株式会社ゲオホールディングス)に移転されています。

写真(筆者撮影):GEOとセカンドストリートの複合型店舗(2026年8月撮影)。ひとつの店舗で古着、家電、ガジェット、ソフトの買取が全部できるのはユーザーとしては嬉しいところ。

写真(筆者撮影):「売る、買う、巡る。2ndSTREET 」は商標登録されています。

さて、ここで後の逆転劇の伏線となったであろうポイントをもう一つご紹介します。それは、「不動産事業の展開」です。

先ほど、GEOの戦略としてロードサイドへの出店をご紹介しましたが、長年の多店舗展開を経て、GEO社内には「どこに店舗を出せばお客さんがたくさん入るのか」のノウハウが蓄積されてゆきました。そして、なんとGEOはこれを活かすべく、不動産開発ノウハウを外販する専門の子会社を作ってしまったのです。

登録4995642 ※現在は登録期間満了により権利抹消

現在この会社は存在せず、商標登録も登録期間満了により消滅していますが、この商標登録からは、当時、不動産事業に本気で取り組んでいたことがうかがえます。この不動産事業への取り組みにより得られた知見は、後のセカンドストリート事業の多店舗化成功に活かされたに違いありません。

激動の時代を経て現在へ~大胆な社名変更とそこに込められた想い

さて、2010年代半ばごろから、日本のエンタメ視聴環境は劇的な構造変化を迎えます。Netflix、 Amazonプライム・ビデオなどの台頭により、ビデオは「お店に借りに行くもの」から「自宅でボタン一つで選ぶもの」に変わってしまったのです。GEOもこの波には抗えず、店舗数縮小はやむを得ないことでした。

しかし、ここでへこたれないのがGEOです。レンタル市場の危機を察知するやいなや、かつて獲得した「セカンドストリート」事業を経営の本丸に据えることを決断し、総合リユース企業への転身に舵を切りました。

ここで活かされたのが、GEO社内に蓄積されていた「どこに店舗を出せばお客さんがたくさん入るのか」という不動産開発ノウハウ。つまり、GEOとセカンドストリートの強みが融合したことで今のこの成功のカギだったというわけです。

そんなGEOですが、2026年10月に運営会社の社名を「ゲオホールディングス」から「セカンドリテイリング」に変更します。(2024年には社名変更に先駆けて商標登録出願も行っています。)

商標「セカンドリテイリング」の詳細情報 – Toreru商標検索 

この社名変更に関して、遠藤社長がインタビューに答えている記事がありました。

その頃からホールディングスに付いているゲオという屋号がレンタルビデオのイメージであることが気になっていました。実際には、ゲオは携帯電話の販売などの新分野の仕事もしているのですが、なかなかレンタルビデオのイメージから離れられませんでした。そして海外でセカンドストリートを出店する時、ゲオホールディングスという名称だと、「このゲオとは何をやっている会社なんだ」ということになります。ゲオとそのビジネスを知らない国の人たちにホールディングカンパニーを説明する際、迂遠(うえん)な説明を繰り返さなくてはならなかった。

「ゲオよりセカストが有名」——社名変更の裏にある、Z世代とグローバルを見据えたブランド再定義 | Business Insider Japan

セカンドストリートの事業が伸びてゆくとともに、事業と社名の乖離が大きくなっていったことへの苦悩がうかがえるエピソードです。この状況を打破するため、メイン事業であるセカンドハンド(リユース)事業を表現する直球ど真ん中のネーミング「セカンドリテイリング」に社名変更がなされました。

これは、商標・ネーミングを活用した事業戦略としても非常に興味深い事例です。「セカンドリテイリング」というブランド名には、「セカンド」というフレーズが入っていることから、このブランド名に触れた人は「この会社はセカンドハンド品(中古品)を扱う事業だな」と直感的にイメージできます。つまり、ブランド名が自動的に事業内容を説明してくれているというわけです。

「GEO」という名前には長年の歴史が詰まっており、社名変更に反対意見を唱える人もいるかもしれません。しかし、このようにメイン事業の変化に合わせてブランド名も柔軟に変化させてゆくというこの決断は、ビジネスを加速させていくうえで非常に強力な後押しとなることでしょう。

日本発の「MOTTAINAI」を世界へ

さて、ここまでは主に日本国内での事業展開について話題を展開してきましたが、ゲオホールディングスは海外進出も積極的で、世界各国に進出しています。近年では、2024年度の北米での売上高が241億円、アジアでの売上高が256億円とグループ全体の10%以上にまで成長しています(有価証券報告書より)

そんなゲオホールディングスがリユース事業で最初に進出したのはアメリカです。

2018年1月にリユース事業の海外初店舗として、カリフォルニア州ロサンゼルスのメルローズアベニューに「セカンドストリートメルローズ店」を出店しました。

店舗の概観をGoogleストリートビューで見てみると、ザ・アメリカンな感じの街並みにセカンドストリートのロゴが掲げられた店舗が立っているのは、すこし不思議な感じです。

セカンドストリートがアメリカで初出店したメルローズアベニューという場所は、ビンテージファッションの聖地と呼ばれており、多くのビンテージショップが軒を連ねています。

こちらはセカンドストリートUSAのWEBサイトに掲載されていたストリートスナップ。日本でのブランドイメージと比べかなりスタイリッシュに寄せていますね。

写真:2nd STREET USA | Second Hand Clothing Store – Buy & Sell Clothes | 2nd Street より引用

アメリカ・メルローズでの出店の約一年前、2016年の年末には、アメリカでもしっかり商標登録出願しています。海外進出と現地での商標登録出願は切っても切り離せないですからね。

Trademark Status & Document Retrieval US Registration Number: 5419451 

さて、セカンドストリートはアメリカ進出にあたってどのような勝機を見ていたのでしょうか。

実はアメリカではセカンドハンド品(中古品)を扱うお店自体は特に目新しいものではありません。そのような状況下で、セカンドストリートは「丁寧さ」「明るさ」を売りに差別化を図りました。

アメリカの従来型の古着店は、倉庫のような店内に据え置かれた大型のラックに大量の古着が乱雑に詰め込まれており、お客さんはその古着の山の中からお目当てのモノを「発掘」してゆくスタイル。あるいは、こだわりの一点モノを扱う、一見さんにはちょっと入りづらいビンテージのセレクトショップ。

セカンドストリートはこの中間のポジションに勝機を見出しました。つまり、「探しやすくて、一見さんでも入りやすい」ここに勝機を見出したのです。明るくてオープンな店内に古着が整然と陳列されているという絵面に、日本の「丁寧」「おもてなし」といったイメージが合体し、日本発の古着チェーン「セカンドストリート」というブランド力が高まっていったのです。

さて、海外進出はアメリカに限らず、マレーシア、台湾、タイ、シンガポール、香港、ベトナムにも現地法人があります。もちろんこれらの国でも商標登録出願を行っています。画像はシンガポールでの登録例です。

Global Brand Database Registration Number: 40202600640T

日本には「もったいない」(MOTTAINAI) という独自の概念があります。これは、価値あるものを無駄にせず大切にするという日本独自の概念です。ゲオホールディングス(2026年10月からはセカンドリテイリング)が世界進出を実現することで、この概念もきっと世界中に広まってゆくことでしょう。

おわりに

今回は、配信サービスの登場により苦境に立たされたGEOの華麗なる転身を知財の切り口でご紹介しました。メイン事業の転換に伴い、社名という会社にとって最も重要な「ブランド名」を転換するという決断は、商標・ネーミングを活用した事業戦略として、非常に興味深い事例でした。

さて、この「ビジネス転生録」シリーズでは、今後もピンチからの逆転を実現させた企業を知財目線で追ってゆきます。次回はいったいどの企業を追ってゆくのでしょうか。ご期待いただけますと幸いです。

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