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PayPayはなぜ「スマホ決済」の王者になった? ~圧倒的No.1を支える機能&知財を探る

みなさんは、「スマホ決済(QRコード決済)」サービスを活用していますか?

「スマホ決済」は、ここ数年で、支払方法の選択肢として現金・クレジットカード支払いと並ぶようになりました。チェーン店や大型店舗のみならず、個人店でもスマホ決済可能なお店が急に増えた印象があります。また、友人や家族とのお金のやり取りもスマホ決済サービスを活用する機会が増えたように思います。

数あるスマホ決済サービスの中でも、圧倒的シェアを獲得している「PayPay」。

参考:MMD研究所サイト「2023年スマートフォン決済利用動向調査」

最近はスーパーなど日用品の支払いもPayPayですし、飲食店で使用する機会も多いです。私の友人・知人にもPayPayユーザが多いので、飲食代のやり取りなどに活用しています。

ライバルとの競合の中で、PayPayはどうしてNo.1の座を射止められたのか?プロダクトの魅力はどこにあるのか?知財の観点から掘り下げます。

1.「PayPay」のネーミングに込められた想い

まず、PayPayの名前の由来について調べてみました。

決済事業といえば「社名+Pay」が主流ともいえる中、PayPayだけは少しネーミングのコンセプトが異なります。

引用元:J-PlatPat 引用元:J-PlatPat

副社長のインタビュー記事によると、敢えて会社を想起させるようなワードはサービス名に入れなかったようです。そこには、理由がありました。

以下、引用

私はどの会社の色もつけたくなかったんですよ。ソフトバンクに関する名前をつけてもYahoo!の名前をつけても、そのサービスを使っている人だけが使うようなイメージになってしまう。そういった固定概念を持たれることがない、もっと中性的なものにしたかったんです。ユーザーがすでに使っているサービスに関わらず、日本全国みんなが使う決済システムにしたい。 

参考文献:PayPay Inside-Out リーダーインタビュー

なるほど、当初の思いの通り、日本でシェアNo.1、みんなが使う決済システムの地位を獲得できていますね。

このPayPayは、今となってはかなり身近なネーミングとなりましたね。そうです!決済時に聞くことができる、あの決済音です。

2.決済音「PayPay!」のこだわり

PayPayの特徴として、決済手続き時に「PayPay!」と音が鳴ることが挙げられます。支払時に「PayPay!」の決済音が鳴ると子供たちが大喜び!子供ながらに、自然とPayPayを認知している様子です。

決済音の機能としては、支払完了したことを確認するための決済音となるのですが、それ以外にも、「ユーザの『払った』感を与えること」、「店内の他のユーザーへのブランド告知効果」などさまざまな目的があることが下記記事に記載されていました。

参考記事:ゲーミフィケーション×音~PayPay決済音の秘密|Japan Gamification Association

いずれにせよ、「PayPay!」の決済音は他の決済サービスとは異なる、PayPay独自の仕掛けですね。

音の商標として商標出願中です。

引用元:J-PlatPat

また、決済時に音が鳴る観点では、特許出願もされていました。

引用元:J-PlatPat

この特許では、「決済情報に応じて支払い音を変える」アイデアが権利化されています。例えば、ある店舗での決済回数に応じて音を変えたり、決済金額や決済タイミング、取引対象によって音を変えたりします(請求項3〜4)。ユーザーはより楽しみながらサービスを利用できますね。

※こちらのアイデアは2024.3時点で搭載が確認できていません。今後実現されるのでしょうか?楽しみです。

3.画面回転機能

もう一つ、PayPayの特徴的な機能を挙げるとすると、『画面回転機能』ではないでしょうか?支払するユーザーが入力した支払金額を店員さんに確認してもらう際に、金額の表示画面がくるっと相手側に180度回転する機能です。

これは、加盟店側からのご意見がきっかけだったようです。

以下、引用

加盟店はユーザーが入力した金額を確認する必要があり、画面が回転しないと少々確認がしにくい仕様でした。

また、ユーザーが画面を見せるのを忘れてしまうと加盟店は決済金額の確認を一緒にすることができません。

どうにかユーザーに決済画面を加盟店に見せるよう教育できないか、何か方法はないかとチャレンジしてできたのがこの機能です。

引用元:ゲーミフィケーション×音~PayPay決済音の秘密|Japan Gamification Association

支払う側にとっても、店舗側にとっても、ちょっとした面倒を解消してくれる機能ですよね。この機能は画面意匠として意匠登録されていました。

引用元:J-PlatPat

また、画面を回転する機能として、特許も取得されています。

請求項1の内容を見てみると、支払時の「金額入力画面が表示されてから、画面が回転し、『支払う』ボタンが表示されるまで」の一連の処理の流れが、権利になっていました!

引用元:J-PlatPat

この特許の審査過程を見てみると、出願当初は金額表示画面の表示角度を回転させるという広い権利範囲になっていましたが拒絶理由通知が出されました。そこで、「金額表示画面を拡大して回転させる、支払ボタンを表示させる、画面の反転状態を元に戻す反転戻しアイコンを表示させる」という具体的構成を追加することで登録になっていました。

意匠・特許の双方で保護されていることから、画面回転機能もPayPayの重要ポイントであることが窺えます。

4.個人間送金機能

数々のスマホ決済サービスに搭載されている機能の一つに、『個人間送金機能』があります。チャージした残高を家族や友人と送り合えるというものです。PayPayもこの機能を搭載しています。

画像引用元:PayPay公式サイト

『個人間送金機能』は、使えば使うほど利便性を感じられます。

例えば、友人と食事した際の割り勘や、同僚との飲み会費用の集金に活用できます。現金での集金は小銭を準備しておかねばならず少しストレスを感じるときもありましたが、個人間送金であれば1円単位の割り勘・集金も手間なく行えることができますね。

調べてみると、PayPayは、この『個人間送金機能』をユーザがより使いやすくするためのアイデアを特許取得していました。

特許の概要は、受取側と支払側のユーザの情報をサーバが取得し、取得した情報から、ユーザ同士の関係性として予想される「メッセージ」の候補が表示され、支払側ユーザがその候補からメッセージを選択できるというものです。

引用元:J-PlatPat

『個人間送金機能』で事務的にお金を送り合うだけだと味気ないもの。ただ、いちいちメッセージを書くのも手間ですよね。このアイデアでは、お金をやりとりするユーザ同士の情報から、「飲み会幹事ありがとう」などのメッセージ候補が自動的に表示されるため、気軽にコミュニケーションを取ることができます。

現時点でのPayPayアプリには実装されていないようですが、今後、導入されると面白そうな機能ですね。

また、個人間送金の中でも『グループ支払い機能』があることがPayPayの特徴でもあります。

『グループ支払い機能』は、複数人での割り勘ができる機能で、ユーザーはグループのメンバーに対して、それぞれの支払い額を設定でき、どのメンバーが支払い済みなのかを視覚的に確認可能なため、受け取り漏れを防げます。

『グループ支払い機能』(割り勘機能)に関しては、直接的に特許の権利対象となっている文献は摘出できませんでしたが、電子決済サービスの各種支払いに関する特許の明細書・図面に、割り勘機能のインターフェースに関する説明が記載されていました。

引用元:J-PlatPat

割り勘機能は、明細書段落0054に記載されています。

明細書段落0054より引用

割り勘する利用者を選択するための画面や割り勘の金額を設定するための画面が提供され、選択された利用者と設定した金額で割り勘を行うことができる。割り勘は、決済アプリ20に搭載されている機能である。

『グループ支払い機能』のように、複数人の間で使える機能は、『仲間内で割り勘するために私も使おう』というような、PayPayユーザの増加のきっかけになっていそうですね。

5.きせかえ機能

最後に『きせかえ機能』についてご紹介します。

これまでご紹介した『画面回転機能』や『個人間送金機能』などの、ユーザの手間やストレスを減らすための機能とは少し目的が違い、着せ替え機能は、ユーザがワクワクするための仕掛けのような位置づけにありそうです。

『きせかえ機能』は、PayPayアプリのホーム画面に表示される、バーコード部分のデザインを変更できる機能です。

「どん兵衛」とのコラボきせかえ例

調べてみると、『きせかえ機能』に関するアイデアが、しっかりと特許取得されていました!

引用元:J-PlatPat

特許の内容は、ユーザ情報に基づいて、バーコード表示領域を含むコンテンツ表示領域に適用されるデザインを選択し、選択されたデザインを画面に表示させる、というシンプルなものです(請求項1)。

より具体的には、ユーザ情報として、ユーザの位置情報やPayPayの利用状況の情報に基づいたデザインが自動的に選択されるという内容が特許査定になっています。実際は、ユーザ自身の好みであるデザインの選択をユーザから受け付ける仕様なので、今の仕様よりも少し発展したアイデアが特許になっているということですね。

ユーザーにとっての利便性を重視した機能のみならず、遊び心までつまっているPayPayアプリ。『きせかえ機能』は、まるでスマホケースやお財布を選ぶのに近い感覚で、自分が好きなデザインを選ぶことができます。

ユーザは単にアプリを通じて支払機能を実現するだけでなく、アプリそのものを楽しむことができますね。このような仕掛けも、シェアNo.1を獲得できた理由の1つとして挙げられそうです。

6.まとめ

本記事では、PayPayが圧倒的なシェアを獲得した理由として挙げられる、特徴的な機能を挙げ、関連する知財について調べてみました。ユーザーの利便性を追求するものから遊び心が垣間見えるものまで、魅力的な機能がいろいろと詰まっており、機能ごとに知的財産が取得され、しっかりと権利で保護されていました。

PayPayは、QRコード決済業界では比較的後発のサービスでした。しかし、他社と差別化できる、PayPayならではこだわりの機能が検討されている様子が窺えました。

また、他のQRコード決済にも同様に搭載されている『個人間送金機能』については、より利便性を追求したアイデアが特許出願されていることが確認できました。このような積み重ねがシェアの獲得につながったのかもしれませんね。

機能だけでなく、還元キャンペーンも大胆で魅力的なPayPay。今後も目が離せないですね!

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