目次
はじめに
日経トレンディのヒット商品ランキングは、毎年11月ごろに発表されています。この記事ではこのランキングにランクインしたヒット商品の中からいくつかをピックアップして、2023年を振り返りつつ、商標目線で掘り下げていきます。
日経トレンディ「2023年ヒット商品」ベスト30が決定、一挙公開
これまで遠い存在だったものが身近に〜ChatGPT/chocoZAP
【1位】ChatGPT
2023年に一世を風靡したChatGPT。1位にランクインしたのも納得です。これまでAIというと難解でとっつきづらいというイメージがあったかと思いますが、ChatGPTはそのイメージをガラッと変えました。チャット形式でやり取りできるのが手軽で良いですよね。
そんなChatGPTですが、リリースされたのは2022年11月30日でした。手軽さと便利さ、そして優秀さが話題になりあっという間に世界中に広まりました。2023年の1月にはなんと1億人のアクティブユーザー数を獲得したそうです。リリースからわずか2ヵ月でのこの数字、すごいですね。
さて、このように一気に世界中に広がったChatGPTの商標登録はどうなっているのでしょうか。
「ChatGPT」というサービス名は、サービスリリースの翌月である2022年12月に米国で商標登録出願され、その出願を基礎とした国際登録がされました。
ちょっと解説:商標の国際登録国際登録をすると、指定した国の特許庁に通知がゆき、通知がくると、各国ではそれぞれの法律に基づいて審査がおこなわれます。つまり、一回国際登録をおこなえば各国に対して個別に出願手続きをしなくてよいのです。 |
「ChatGPT」のような世界中で使われるサービス名の場合、各国に対して個別に出願手続きをしたらその手間は膨大なものとなるでしょう。国際登録は、まさにそんなシチュエーションで力を発揮するのです。
【2位】chocoZAP
さて、ChatGPTのように今まで身近ではなかったものを一気に身近にしたことで2023年に話題になったものといえば。そう、あのRIZAPグループが新たに打ち出した「chocoZAP」です。
画像:チョコザップ公式ページ より引用
数年前、RIZAPは「結果にコミットする」というキャッチコピーとともにダイエット業界に衝撃を与えました。しかし、厳しいトレーニング、食事制限、決して安くは無い料金など、なかなかにハードルが高いものでした。
そんな上がってしまったハードルを下げるべくRIZAPグループが打ち出したのが「chocoZAP」であると言えます。コンビニ感覚で気軽に通えるジムというコンセプトのもと、トレーニングに対するハードルをぐぐっと下げたのです。
商標「chocoZAP」の詳細情報 – Toreru商標検索
実はRIZAPグループは「chocoZAP」の他にも「ちょコラーゲン」「chocoDeli」「チョコッスル」といった「ちょこ」というフレーズに様々なことばを組み合わせたネーミングもしっかり商標登録出願しています。
「ちょコラーゲン」はサプリメント、「chocoDeli」は食事に関するサービスでしょうか? 「ちょこ」というフレーズに様々なことばを組み合わせることで、トレーニングに留まらず幅広い分野に「ちょこ」ブランドを展開していこうとしていることがうかがえます。
商標「chocoDeli」の詳細情報 – Toreru商標検索
ハードなトレーニングで有名になったRIZAPグループがそれを否定する「ちょこ」ブランドを育ててゆく。変わることで更なる高みを目指そうとする意志を感じます。
既存商品・IPの魅力を再発信〜こだわり酒場のタコハイ/ジブリパーク
【7位】こだわり酒場のタコハイ
「タコハイ」自体は昔からあるブランドですが、リブランディングにより再ブレイクしました。皆さんも「タコハイってなに味なの?って思うよね」というフレーズをCMで耳にしたことがあるのではないでしょうか。
画像:サントリーホールディングス株式会社|こだわり酒場のタコハイ より引用
この「タコハイ」を商標目線で見てみると、商標登録出願が2回されていることがわかります。1回目は昭和59年、2回目は2015年です。
画像:J-PlatPatより引用
なぜ、商標登録出願が2回されているのでしょうか。それには商標登録出願の際に選択される指定商品(モノ)・役務(サービス)の区分が関係していると思われます。
2回目の出願で選択された区分を見てみると、43類「飲食物の提供」でした。
実は、1回目の出願がされた昭和59年には「飲食物の提供」のような役務(サービス)に使用する商標の登録は認められていなかったのです。当時は商品(モノ)に使用する商標の登録だけが認められていました。
具体的にいうと、昭和59年当時は、酒屋で販売されるタコハイ缶のラベルに「タコハイ」と付けることは商標登録により保護できましたが、飲食店で提供されるタコハイのグラスに「タコハイ」と付けることは商標登録により保護できなかったのです。
そのため、リブランディングにあたって、現在の制度に合わせて新しい出願をおこなったことが推測されます。(ちなみに、1回目の出願による商標登録は2023年12月現在も存続しています。)
【20位】ジブリパーク
これまで親しまれてきたものの魅力を改めて発信する‥といえば、ジブリの世界観を再現した公園「ジブリパーク」もそうですね。11月末には魔女の宅急便をテーマとした新エリア「魔女の谷」オープンの発表もあり、ますます盛り上がりを見せています。
画像:ジブリパーク公式ページ より引用
2024年3月のオープンが発表された「魔女の谷」。このネーミングもしっかりと商標登録されています。
他にも「青春の丘」や「もののけの里」といったジブリパークで使用されるネーミングも商標登録されています。青春の丘は耳をすませばをテーマとしたエリア、もののけの里はもののけ姫をテーマとしたエリアです。
2023年は球界がアツかった!〜WBC 2023/阪神タイガースの「アレ」
【10位】WBC 2023
2023年3月に開催されたWBC 2023。日本中が侍ジャパンの活躍に沸きました。
WBCで活躍し、一躍有名人となった選手と言えば…そう、ラーズ・ヌートバー選手です。試合での活躍はもちろん、ペッパーミルパフォーマンスでも話題になりましたよね。
そんなヌートバー選手のお名前、なんだかチョコレートバーなどのお菓子が連想されませんか? WBC開催期間中にはそんな想いを代弁するような記事が出されたりしていました。あの頃、みんなヌートバー選手のことがなんだか気になっていたんです。
画像:あまくておいしいヌートバーのつくりかた :: デイリーポータルZ (dailyportalz.jp) より引用
ヌートバー選手側もそのような意識があってか、米国において指定商品を「栄養バー」商標登録出願をしていたようです。
ヌートバー選手による商標登録出願について:やはり指定商品は栄養バー(栗原潔) – エキスパート – Yahoo!ニュース
今のところ日本では出願していないようですが、ヌートバー選手と関係のない第三者がヌートバー選手の人気に便乗して「ヌートバー」を出願したとしても、商品の出所が混同されるという理由や公序良俗違反であるという理由などにより登録されないでしょう。
【26位】阪神タイガースの「アレ」
野球といえば、2023年は「アレ」もありましたね。そう、阪神タイガースの38年ぶりの日本一です。
選手に優勝のプレッシャーを与えないために優勝を「アレ」と呼ぶようになったのが「アレ」発祥のエピソードとして知られていますが、今シーズンは「アレ」を「A.R.E.」と表記し、「Aim! Respct! Empower!」という想いを込めました。
この合言葉は球団公式スローガンとなり、商標登録もされました。ちなみに出願時期は2022年12月とかなり早く、球団の想いの強さがうかがえます。
「アレ」関連の商標登録出願として、2023年9月には下記のロゴが出願されています。優勝実現の可能性が高まり、優勝イベント、セールなどに向けて出願をおこなったのではないでしょうか。
まとめ
この記事ではこのランキングにランクインしたヒット商品の中からいくつかをピックアップして、商標目線で掘り下げてゆきました。
商標は、ヒット商品のオリジナリティや品質を保護し、消費者の信頼を獲得するために不可欠なもの。まさに、ヒット商品を支える縁の下の力持ちです。
毎年生まれるヒット商品、その背景にどんな商標権をはじめ、どんな知的財産権があるのか?あなたも調べてみると面白いかもしれません。