皆さんは、外食や家庭の食事で餃子を食べますか?
我が家は『大阪王将』の冷凍食品シリーズである冷凍餃子をよく購入します。いざという時のために、冷凍庫に一つストックしています。時間のない日でもパパッと簡単に作ることができ、とても重宝しています。もう何年もリピーターです。
他にも多くの冷凍食品がある中で、なぜ私は『大阪王将』の冷凍餃子を選んだのか?というと…
きっかけは、初めてスーパーで商品を見かけたとき「あの有名な王将が出している餃子なら美味しいだろう!」と思ったことでした。つまり、王将ブランドに安心感を持ち、選んだ…つもりでいたのです!
実は、「王将といえば、餃子の王将」という勘違いがきっかけだったのです。王将といえば、『餃子の王将』一択だと思っていた。私の住まいの近所に店舗もなく、『大阪王将』、『餃子の王将』のどちらにもほとんど足を運んだことがなかった私は、赤地に白字の王将というロゴを見て、王将といえば、『餃子の王将』!と思い込んでいました。
『大阪王将』と『餃子の王将』は別物であることに気づいたのは、少し後になってからのこと。更に調べてみると、『大阪王将』は、元々は『餃子の王将』の暖簾分けだったことを知り、驚きました。
(参考:ブログ記事)
『餃子の王将』と『大阪王将』、一見似ていそうであって、元々は暖簾分けという関係性もあります。しかし餃子という共通点はあるものの、現在は全く異なる視点でそれぞれ事業を展開しています。
本記事は、『大阪王将』と、『餃子の王将』、それぞれの餃子戦略を、知財から探っていく内容になっています。本記事を読むと、『餃子の王将』と、『大阪王将』、それぞれの餃子の魅力、そして、知財との関わりを知ることができるかもしれません。
※『大阪王将』は、株式会社イートアンドホールディングスの手がけるブランドであり、『餃子の王将』は株式会社王将フードサービスが手がけるブランドです。以降、認識しやすいよう、『大阪王将』、『餃子の王将』と表記いたします。
目次
1.『大阪王将』の餃子戦略
1-1.冷凍食品事業への進出
『大阪王将』は昭和44年に1号店をオープンしてから、餃子専門店として、着々と店舗数を増やしていきました。
今は、餃子に始まり、チャーハン、天津飯、ラーメンと中華料理を楽しむことができます。
現在は全国に300を越える店舗を展開しています。
2000年以降は、外食産業に留まらず、冷凍食品販売を開始することにより、本格的に食料品事業に参入しました。自分たちの事業領域を「食べ物」と大きく捉え、どんな時代でも必要とされるメーカーの方に軸足を移す方針に舵を切りました。
自社店舗に生の状態で供給している餃子を、凍らせて冷凍食品に仕立てるのであれば比較的取り組みやすいですし、競合に対する差別化戦略になる、という点に着目し、開発に注力されてきたのだとか。
そんな『大阪王将』にとって、食料品事業を支えているこちらの冷凍食品は、油も、水も、蓋も入らずにフライパンで焼くだけで美味しい羽根付き餃子が作れます。
この、他社の商品と差別化される部分については、しっかりと特許取得されていました。
そんな特許の内容について、簡単にご紹介します。
羽根付き餃子の羽根の部分となる、「羽根の素」について、水、穀物粉、油、及び、乳化剤の質量比が規定されています。
また、製造方法についても特許の請求項で規定されていて、餃子の羽根形成材は、未加熱のまま冷凍することがポイントになっています。羽根形成材が加熱されないため、餃子の羽根形成材は糊化しないまま出荷されます。これにより、粘度が適切に保たれ、熱したフライパンの上で綺麗に広がるようです。
『大阪王将』では、冷凍餃子の他にも、冷凍の小籠包の商品も展開しています。
写真:イートアンドWebサイト
こちらの冷凍食品である小籠包についても、小籠包の皮に関する特許が出願されていました。さらに、小籠包を包装する包装容器と、羽根形成剤の観点からも、特許出願されているのが確認できました。
上記の通り、食品事業にも注力されている『大阪王将』ですが、食品事業の中核であり、『大阪王将』の人気商品である冷凍餃子や、スープ入りの小籠包は、その技術が特許取得されており、しっかりと守られていました。
特許のほかにも、印象的だった『大阪王将』の商標を紹介したいと思います。
1-2.ぷるもち水餃子
『大阪王将』から、水餃子の冷凍食品も発売されています!
写真:イートアンドWebサイト
こちらの商品名「ぷるもち水餃子」が、商標登録されていました!
ネーミングを見た瞬間に、餃子の皮がぷるぷるっと、もちっとしていそうだなというイメージが湧いてきますね。こちらの商品は、スープや鍋に入れて楽しむことができるそうです。
1-3.ギョパ
最初、この商標を見た時、何だろう?と思いましたが…ギョパとは、「餃子パーティー」の略なのですね。例えば、『大阪王将』のCMなどで「ギョパ」が使われていますね。
「お家で餃子パーティー」は、外食事業にはないコンセプトであり、差別化されているようにも見えます。
コロナにより生活様式に変化があったことで、自宅で食事をする機会が増えたこともあってか、SNSを活用した、ギョパのキャンペーンも開催されていました。
以上のように、『大阪王将』では外食産業に留まらず、冷凍食品事業にも注力する様子が、知財の面からも伺えました。近年では、『大阪王将』の売上高に占める食品事業の割合は、外食産業を超えることもあるほどの勢いなのだとか。
そんな食品事業の主力商品となっている冷凍餃子や小籠包については、特許によって技術が押さえられています。また、その外食産業のイメージが強い『大阪王将』が、お家で食事をするキャンペーンなどを打ち出し、生み出されたネーミングは商標で保護されています。このように、知財をうまく活用しながら、新たな事業を大きく成長させていく様子が伺えますね。
1-4.冷凍餃子を焼いてみました
さて、私も『大阪王将』の冷凍餃子を購入し、焼いてみましたよ。
フライパンの上に並べて火にかけるだけで、パリッとした羽根のついた餃子を焼くことができました。特別なコツも不要。これなら気軽に羽根付き餃子が頂けますね。
2.『餃子の王将』の餃子戦略
外食産業に留まらず、冷凍食品まで事業を広げている『大阪王将』に対して、『餃子の王将』は、どのような戦略で事業を成長させているのか?こちらも知財の観点から調べてみました。
2-1.新業態 『GYOZA OHSHO』
『餃子の王将』の新しいコンセプト、『GYOZA OHSHO』が2016年に誕生しました。
それまでの王将といえば、気軽にお店に入れて、ボリューム満点の中華をガッツリ食べられるイメージでした。一方で、例えば女性がカフェに入る感覚ではお店に入れなかった、という側面もあったのではないでしょうか。
そのような、今まで王将で食事をしてみたかったけれど、足を運べなかった方や、食事会のお店選びで候補に入らなかったけれど、利用してみたいという方が、気軽に入りやすいようなお店になっていますね。
こちらの新業態『GYOZA OHSHO』は、ロゴも従来の王将から大分印象が変わっています。モノトーンを基調としたデザインで、従来の漢字表記ではなくローマ字表記になっている点も、興味深いですね。
こちらの新しいロゴは、もちろん商標出願されています。
さらに、この新業態の発表と、新しいロゴの商標出願と同じくらいのタイミングで、『GYOZA OHSHO』の新しいコンセプトと関連がありそうな商標がいくつか出願されていました。
例えば、「王将女子」
女性も王将で気軽に飲食できるようなイメージを想起させますね。
実際、この新業態『GYOZA OHSHO』は、女性をターゲットとしている側面も強いので、新業態のイメージとも合っているように思います。
「ジャストサイズメニュー」
通常のメニューよりも、量が少なく、その分価格も安く設定されているメニューです。
少しずついろんな種類を食べたい!という顧客の希望を叶えてくれます。例えば女子会などで、いろんな種類のメニューを注文して、みんなでシェアするのも良さそうですね。
メニュー表にはこんな感じでわかりやすく記載されています。
※ジャストサイズメニューは、通常の『餃子の王将』の店舗にもあります。
「ゼロ餃子」
こちらも特に女性には嬉しいメニューではないでしょうか?
ニンニクが入っていない餃子です。
翌日も出勤の予定があったら躊躇してしまっていた餃子も、ニンニクが入っていないとなれば注文できますね。
こちらのゼロ餃子のメニューが誕生したのも、『GYOZA OHSHO』の開始と同じタイミングの2016年です。女性をターゲットにするという視点から生まれたメニューなのではないかと思います。
写真はにんにくの代わりに生姜が入ったメニューですが、にんにくゼロであることがしっかり明記されています!女性に限らず、ビジネスマンのランチメニューにも重宝されそうですね。
※ゼロ餃子メニューは、通常の「『餃子の王将』」の店舗にもあります。
2-2.新業態その2「餃子エクスプレス」
『餃子の王将』は、2019年にはさらなる新業態を打ち出しています!
その名も、「餃子エクスプレス」
そのネーミングやロゴからイメージされる通り、スピーディに王将メニューが楽しめるのがコンセプト。
店舗の立地が駅直結であったり、営業時間が早朝から夜遅くまで長いことから、電車を待つちょっとした時間に立ち寄ったり、人との待ち合わせまでの隙間時間に一杯飲むのに利用したりできそうですね。
また、全席スタンディングで、厨房から出来立てのメニューを直接カウンターへ提供できる設計になっていることから、お客さんに対してスピーディーにメニューを提供するためのオペレーションを実現できているように思います。
このように、『餃子の王将』は外食事業に注力し続け、新業態の店舗を拡大させていくことにより、ターゲット層を着実に広げている様子が伺えます。そして、新業態の開始にあたり、そのネーミングやメニュー名などは、確実に商標出願を行い権利を取得していることも分かりました。
2-3.『GYOZA OHSHO』へ行ってみました
さて、筆者も先日、初めて『GYOZA OHSHO』を利用してみましたよ。
お店の外観。照明の感じもなんだかオシャレですね。
ロゴは従来のものと並んでいました。これは確かに、王将系列であるとわかりやすいですね。
来店時に注文した小籠包とラーメンセット。食器の雰囲気も、従来の王将とはどこか違う感じ。
1人用の席も充実していました。向かいの席の人から丸見えにならないような配慮も嬉しいですね。これなら、女性1人でも入りやすいな、と感じました!
『餃子エクスプレス』も、機会があったらぜひ利用してみたいです!
3.まとめ
元はといえば暖簾分けの関係だった、『餃子の王将』と、『大阪王将』。長い年月を経て、それぞれ独自の戦略で、事業を成長させてきました。そして、その事業の成長には、知財が関わっていたことも分かりました。
冒頭で少しお話しした通り、筆者は『大阪王将』と『餃子の王将』の違いをあまり分かっていなかったのですが、改めて調べてみると、両者の「餃子戦略」はそれぞれ特徴があり、興味深いものがありました。
知財面からも分かった両社の戦略の違いを知った上で、外食で店舗を訪れてみたり、スーパーで冷凍食品を手に取ってみたりすると、また新たな発見があるかもしれません。