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【旅行・飲食・ゲーム】枠を抑えるだけじゃない!特許で読み解く、未来の「予約体験」

朝、スマホを見ると一緒に歯科受診予約のリマインド通知が届いている。来週の友達とのランチ、まだお店の予約をしていなかったな・・・

出張で利用する新幹線は、コンセント付きの席を確保したいから、早めに押さえておこう。今日の夕方は息子のオンライン英会話の予約を入れていたんだっけ。

あ、インフルエンザの予防接種、いつのまにか予約開始になってる・・・!夏休みの旅行、宿が埋まる前に早く予約しよう。

私達の生活では、あらゆる場面で予約が当たり前となっています。

昔のように、予約といえばとにかく電話をしてみるという時代から、今ではスマホでポチッと、事前にメニューを選んでおくのも当たり前。そして、リマインド通知まで届くという便利さに囲まれています。

便利になった予約は、今や日常のあちこちに、当たり前のように入り込んでいますが、そもそも、私たちはなぜ「予約」をするのでしょうか?

並ばずに済むため? 確実にサービスを受けられるようにするため? それとも、気持ちの準備をするため…?いずれにしても、予約がどんどん便利になり、機能も増えてきたように思います。

そんな予約の裏側には、色々なアイデアや技術が詰まっています。

本記事では、交通、飲食、ゲームセンターなど、身近なジャンルに登場する「予約システム」に関する特許をご紹介しながら、「予約」という行動の進化と、その先にある価値について見ていきたいと思います。

1.「席の確保」だけではない!進化する電車の座席予約

まずは、電車の座席予約に関するアイデアです。

特開2024-048251_出願人:日立製作所)

電車の予約システムは皆さんも馴染みが深いシステムだと思います。新幹線の座席を予約するとき、これまでは、通路側がいいな、コンセントが利用できる位置がいいな、といった比較的単純な理由に基づいて席を選びますよね。

このとき新しい価値として、例えば、座席ごとに設置されている情報コンテンツが異なっており、自分が興味関心に合った席が自動で割り当てられたらどうでしょうか・・・?

この特許情報を見ると、車内には、例えば、宿泊施設に関するデジタルサイネージが設定されていたり、窓にエステやスキンケアに関するステッカーが貼られていたり、また別の席には、ポケットにはヨガに関するチラシが置かれた座席があったり、キャラクター人形が置かれていたりと、座席事に異なる体験が用意されています。

(図2より引用)

このように、座席ごとに異なる広告やコンテンツが設置されており、乗客は「どの座席に座るか」によって、移動中の体験が変わります。座席の予約時に、乗客の属性を踏まえて、興味関心のありそうな広告が設置された座席を割り当てていきます。

当日、電車に乗車して指定された席に座ると、そこにはキャラクターのぬいぐるみが置かれていて、座席前のポケットにはそのキャラが登場する「ご当地情報」が小冊子になって挟まれている。移動手段であった車両への乗車が、体験の入口に変わるというアイデアです。

2.もう電車だけじゃない、旅プラン全てをまるっと予約!

2件目は、旅の予約全体に関するシステムのアイデアです。

(特許7420494_出願人:東日本旅客鉄道株式会社)

これは旅行のプラン策定と、旅行のプランに対応する予約を管理するシステムです。このとき、一度策定した行動プランに、容易に新たな行程を追加することができるアイデアです。それだけでなく、新たに追加した工程である、宿での宿泊や飲食店での飲食について、そのまま予約が可能です。

一度旅行の予定を立てたあとに、「せっかくだから温泉にも立ち寄ろう」などと行程を追加したいときもありますよね。例えばそれが旅行の移動中等であっても、ユーザの希望に応じた行程変更と予約をシームレスに実現できる構成となっています。

本特許に記載されている実施の形態では、八王子駅から松島海岸駅へ向かう行程がもともと表示されており、さらに「宿泊施設」と「飲食店」のアイコンがユーザのスワイプ操作によって追加されています。これにより、宿泊と飲食の行程が追加され、さらにそのまま、追加した宿泊施設と飲食店の予約処理を行っています。

こうして、当初は「移動だけ」だった旅程に、“グルメと温泉”という充実の寄り道が加わり、オリジナルの旅プランが出来上がりました。

元の電車の経路案内にも、新たなスケジュールが自動で追加されています。このように、旅のしおりに沿ってまるっと予約の管理ができ、途中の変更や追加も手軽にできるといった、予約を切り口に、新たな体験を提供してくれるアイデアです。

この特許がJR東日本によって登録されているのも、電車の新しい価値提供のプランという点で、興味深いですね。

3.今すぐ入れるお店はどこ?ショッピングモールでの飲食店の予約が進化!

続いては、飲食店の予約についてのアイデアです。

(特許6578044_出願人:株式会社EPARK)

普段使う機会のある方も多いであろう、EPARKの予約システムが特許出願されていたのでご紹介します。

本特許に記載されている予約システムは、時間単位で予約するのではなく、当日に順番待ちの番号を取得し、席が空いたら順番に案内されるシステムです。店のアプリで順番待ちの番号を取る際には、目安の待ち時間が提示されたりもしますね。ショッピングモールのレストラン街などで利用されることが多いかと思います。

特許情報では、1つの店の情報だけを表示するのではなく、待ち時間の算出も含め、各店舗の運営事情に応じた柔軟な予約枠管理を行うことができることが開示されています。

例えば、「今の混雑状況」「滞在中の客の情報」「空き時間の見込み」などを踏まえ、予約を受けたり案内をします。予約の可否、顧客の案内の可否の判断には、店舗側のスタッフの数等も考慮されます。

さらに、例えばショッピングモールなどの場合、レストラン一覧画面が表示され、今すぐ入店可能な店舗はどこか、比較的空いている店舗はどこなのかをひと目で把握することができます。

お店それぞれが個別に予約を管理するだけだった頃から、顧客の混雑を緩和し、ショッピングモール全体の最適化を図れるようになりました。

顧客側も、ショッピングモール内を歩き回りながら1店舗ずつお店の状況を確認して、予約できそうなお店を探す・・・といったランチ難民になることがなく、お店探しと予約を効率的に行うことができますね。

今日は空いているこのお店に行ってみようかな、など、新たに選択肢を増やすきっかけにもなりそうです。個人的にもショッピングモール全体で導入してもらいたいシステムです。

4.割り込みOK!?オンラインクレーンゲームならではの予約システムとは?

最後にご紹介するのは、クレーンゲームの予約に関するアイデアです。

(特許7370717_株式会社タイトー)

かつては外出先で見つけたらプレイする、といった存在だったクレーンゲーム。今は、直接機械の前に行かなくても、スマホを介して遠隔でプレイできるようになっているのには驚きました。複数の会社がサービスを提供しています。

オンラインクレーンゲームの「タイクレ」

取れた景品は郵送で自宅まで送ってくれる仕組みになっており、大きなぬいぐるみをGETしてしまい、出先で持ち歩きに困る、なんてことがないのはメリットですね。

この特許は、オンラインクレーンゲームならではの予約システムです。

開示されている特許情報では、遠隔でクレーンゲームをプレイできるだけでなく、他の方がプレイしている様子(ゲーム機の内部の様子)をスマホを介して見ることができます。これによって、クレーンゲームの内部で、自分が欲しいアイテムが取れそうな状況であるかどうかを遠隔で見定めながら、予約を行います。

この特許では、ゲームプレイの予約を行う際、通常は他のユーザの順番待ちの一番後ろになるようにプレイ予約がなされます。しかし、ユーザの希望によっては割り込み予約が可能です。割り込み予約は、手持ちのコインを使用することにより、他のユーザの順番待ちの一番後ろにつくのではなく、他のユーザの順番待ちに割り込みます。

但し、必ずしも割り込みが認められるわけではなく、順番待ちをしているユーザの承認が必要になります。つまり、順番待ちユーザは、順番を先に譲ることによってコインを得るか、割り込みを認めないかを選択します。

このような割り込み予約により、コインという対価を払うことにより、オンラインで他の人の台を見ているユーザーが「今、このタイミングでプレイしたい」というタイミングで順番を得ることができます。

具体的には、他のプレイヤーによるプレイによって自分の欲しい景品が取得しやすい位置に移動されたとします。そのときに割り込みを要求することで、自分の欲しい景品が取りやすい状況を得ることができます (明細書段落0172)。

前のプレイヤーも「割り込みを承認してコインをもらうか」、「承認しないか」という選択肢があるので不快感はありません。リアルのクレーンゲーム台で「番を交代してください」と言うのはなかなか困難ですので、これはオンラインクレーンゲームならではの予約システムですね。

5.まとめ

これまで見てきた4つの特許はいかがでしたでしょうか?かつて予約とは、サービスを受けるための「枠の確保」にすぎないものでした。

しかし、スマホの普及とともに予約のハードルは徐々に下がり、今や予約は“手軽”であるだけでなく、“+αの価値をもたらしてくれる仕組み”へと進化しています。「移動」ではなく旅をトータルで管理してくれる、広告という形で自分に合う情報を提供してくれる、より自分のニーズに合う状況でサービスを受けられる・・・。

このように、予約は日常に溶け込み、「何を楽しむか、いつどこで楽しむか。」日々の選択を豊かにしてくれているものとなっているように思います。

予約を活用して、より豊かな経験ができる世界が創られる、そんな未来を特許情報から覗き見ることができました。

特許で開示されたアイディアは必ずしも実装されるとは限りませんが、発明者が工夫して考え出した新しい技術情報です。今回紹介した特許のアイディアが、予約の世界を進化させていくことを、私も楽しみにしています。

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