「ジャンプ漫画って商標登録出願されてるの?」
そんな疑問から始まった前回の記事の分析では、ジャンプ漫画の商標登録出願とジャンプ編集部の「期待度」との間に相関が見られました。
そうすると、この相関関係を使ってもっと深堀りしたくなるのがジャンプファンの性。
・ワンピースみたいなアクション漫画とボーボボみたいなギャグ漫画では、編集部の期待度は違うのか?
・バトル展開があると期待度は上がるのか?
・シリアスな漫画とコミカルな漫画、期待度が高いのはどっち?
そんなわけで、今回は「漫画ジャンル別☆ジャンプ商標分析」をやってみました!
それでは、商標から見るジャンプ分析、第2回スタートです!
ゲストライター紹介
特許事務所に勤める弁理士。ジャンプ歴は22年、終わらない思春期を過ごしています。 |
目次
1.アクション・ギャグ・スポーツ、ジャンル別商標分析
世のジャンプ漫画好きは、毎週ジャンプを読む本誌派と、単行本で一気に読む単行本派に分けられます。
激動のストーリーを一気読みできるのが単行本派のメリットなら、本誌派の醍醐味は毎週エキサイティングな漫画体験を味わえること。
筆者は本誌派ですが、様々なジャンルの漫画を読める点も「本誌ならでは」の魅力だと思っています。
アクション、ギャグ、スポーツ、恋愛……漫画にはいろんなジャンルがありますが、やっぱりアクション漫画とギャグ漫画では商標の出願戦略も違ってくるのでしょうか?
一番出願されているジャンルは、やっぱり?
ということで早速、商標登録出願されたジャンプ漫画77作品をジャンル別に分析してみましょう。
各作品のジャンルはまんが王国に登録されているものを採用しました(2020年9月19日検索。ジャンルを併記した作品リストを本記事の最後に掲載しています)。
出願数ダントツで堂々の1位は、やはりアクション・アドベンチャー。
『ドラゴンボール』『ONE PIECE』『NARUTO -ナルト-』など、ジャンプを語る上では外せないバトルアクション漫画や冒険漫画が含まれるジャンルです。
次は同率2位で、『銀魂』『ピューと吹く!ジャガー』などのギャグ・コメディ漫画、『キャプテン翼』『テニスの王子様』などのスポーツ漫画、『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』『ワールドトリガー』などのSF・ファンタジー漫画の3ジャンル。
これに『ウイングマン』『いちご100%』などの恋愛漫画が続きます。
一方、1作品しか出願されていないジャンルは、ヤンキー・任侠(『ろくでなしBLUES』)、歴史・時代劇(『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』)、ヒューマンドラマ(『みどりのマキバオー』)でした。
下図の歴代の商標出願作品の出願比率を眺めると、アクション漫画を中心としてギャグ・スポーツ・恋愛などバランスよく構成されており、少年誌として隙のない布陣です。
商標が出願された作品はジャンプ史を築いた名作が多く、下図上側のグラフは歴史に選ばれた理想的なジャンル比を表していると言えるかもしれません。
これを現在のジャンプ連載陣(2020年42号)と比較してみると、明らかな違いはスポーツ漫画の有無。代わりにアクション枠・ギャグ枠が大きく取られています。
『火ノ丸相撲』や『ハイキュー!!』が完結して少し寂しい週刊少年ジャンプ、新世代スポーツ漫画の登場を期待したいところです。
さて、さらに分析を進めるために、歴代の商標出願作品を連載が始まった年代別に切り分けてみましょう。
やはりと言うべきか、アクション・アドベンチャーはどの年代にも安定して出願されています。
これに対し、特に2000年代以降に出願数を伸ばしているのがギャグ・コメディとサスペンス・ミステリー。
特に2000年代はギャグ・コメディ枠が強く、『ピューと吹く!ジャガー』『銀魂』『SKET DANCE』など6年以上の長期連載も豊作です。
また、サスペンス・ミステリー漫画は、2000年代の『DEATH NOTE』『魔人探偵脳噛ネウロ』を走りとして、それまでのジャンプの枠に囚われないジャンルとして台頭してきました。
半面、やはりスポーツ漫画枠は縮小気味であることも見て取れます。
こうして見ると、アクション・ギャグ・スポーツ・ファンタジー・恋愛の5大ジャンルを柱としつつ、中心となるアクション・アドベンチャー以外のジャンルはそれなりに増減していること、職業・ビジネス、グルメ、サスペンス・ミステリーといった他ジャンルの漫画も全体の2割程度を占めることがわかります。
どの年代にも職業・ビジネス漫画が入っている点なんかは意外性がありますよね。
長期連載化しがちなジャンルは?
ここまでジャンル別の出願状況を見てきましたが、今度は別の視点からジャンル別分析をしてみましょう。
ジャンプでは、読者アンケートの結果で連載継続/打ち切りを判断していることはよく知られています。つまり、人気があるほど連載が長く続くシステムなので、完結までの連載期間は読者人気のバロメーターになると考えられます。
そこで、商標登録出願された完結作品を対象に、ジャンル別の平均連載期間を調べてみました。
全体平均5.8年に対し、ヤンキー・任侠漫画とギャグ・コメディ漫画は平均連載期間8.7年を誇ります。小学6年生が大学生になっちゃうくらいの長さですね(BLEACHネタ)。
実はヤンキー系の漫画は歴代で『ろくでなしBLUES』しか出願されていないので、その連載期間がそのまま平均になっています。
ギャグ・コメディは、実に40年にわたって連載された『こち亀』が平均をドカンと引き上げています(『こち亀』を除くと平均連載期間は5.6年)。
これらの次に来るのは、やはりアクション・アドベンチャー。連載期間15年を超える『NARUTO』『BLEACH』などの影響もあり、平均7年という高い数字です。
その他、全体平均を上回っているのはグルメ漫画(6.5年)とスポーツ漫画(6.3年)。
グルメ漫画が少し意外かもしれませんが、出願されている『トリコ』『食戟のソーマ』はどちらもかなりの長期連載です。
また、近年不遇なスポーツ漫画ですが、軌道に乗ればしっかり長期化しています。『アイシールド21』『ハイキュー!!』のように全国大会レベルまで1試合ずつ描いていれば、必然的に長期連載になりますよね。
これに対し、ヒューマンドラマ、職業・ビジネス、恋愛は平均連載期間が約3年と、相対的に短めです。
これらのジャンルは、バトル漫画にありがちな次々に敵が登場するといった長期化展開が難しく、読者の興味を惹き続けることに限界があるとも考えられます。
ヒロインとゴールインしたと思ったらあいつはB級ヒロインだとか言われて、続々現れるA級、S級ヒロインを落としにかかるなんて展開、ちょっとイヤですよね。
こうして見ると、出願数の半分強を占めるアクション・ギャグ・スポーツ・グルメが長期連載としてジャンプを支え、他のジャンルはより短期間で入れ替わって新しい風を入れるといった傾向が見えてきます。
一番期待されているのはお仕事漫画?
ところで、前回の記事では「ジャンプが期待する作品の商標は早めに出願されるのでは?」という仮説を立てて検証しました。
そこで今回も、どのジャンルの作品が早期出願されているのかを調べることで、ジャンプ編集部の期待の方向性を見てみましょう!
なお、昔の作品は商標登録出願が完結から数十年後ということも多いので、以下では、ジャンプ漫画の商標出願が本格化した1990年以降に連載開始し、完結前に出願された作品に絞って分析します。
意外なことに、出願が最も早いのは、アクションやSFを差し置いて職業・ビジネス漫画でした。具体的には『ヒカルの碁』『バクマン。』『アクタージュ act-age』の3作品です。
どの作品も、少年少女が棋界・漫画界・芸能界といった「大人の世界」で活躍するストーリーで、ジャンプではやや異色とも言えるジャンルです。
しかし、上でもチラリと紹介したように、これらの職業・ビジネス漫画は1980年代以前から現在までたびたび連載され、密かにジャンプ誌面を充実させる役割を持っています。
また、アクション漫画などと違って数が少ないだけに、連載に至る門は一際狭く、このジャンルの作品はジャンプ肝煎りでスタートするものと考えられます。
さらに、『ヒカルの碁』の影響で多くの子供たちが囲碁を始めたり、現実の棋界とのコラボ企画が立ち上がったりと、現実の職業をテーマにしているだけに、これら職業・ビジネス漫画の影響力は他ジャンルの作品に先駆けて大きくなる可能性もあります。
そうすると、他ジャンルよりも早期出願とする戦略は至極当然であり、上記の結果はジャンプにおける「お仕事漫画」の重要性を物語っていると言えるでしょう。
ジャンプ編集部のジャンル別☆期待度ランキング
一方、他ジャンルに比べて早期出願が少ないのがギャグ・コメディ漫画とスポーツ漫画。
出願までの期間の全体平均が1.5年であるのに対し、ギャグ漫画・スポーツ漫画は平均するとこれより半年ほど遅れて出願されており、出願するかどうか、つまりジャンプとして「推す」かどうかの見極めに他ジャンルよりも時間がかかっています。
近年でも『SKET DANCE』や『斉木楠雄のΨ難』は連載開始から4年でようやく出願されていますし、『火ノ丸相撲』も連載開始から4.6年後、完結の半年前になって初めて出願されています。
花形のアクション・アドベンチャー漫画や『DEATH NOTE』のようなハラハラ展開のサスペンス漫画に比べると、ギャグ・スポーツ枠はどうしてもアンケートの結果が目立たなかったり発行部数が少なめだったりで人気が測りにくい、といった事情もあると推察されます(例えば、かなりの人気を誇った『銀魂』『ハイキュー!!』は例外的に約1年半と早めに出願されています)。
下図のように連載開始年代ごとに見ても、「お仕事漫画の出願は早め」「ギャグ・スポーツ漫画の出願は遅め」という傾向は昔からあまり変わっていないようです。
一方、他ジャンルでは、2010年代(緑色のバー)に入って恋愛漫画・グルメ漫画が「様子見」期間を延ばしているのに対し、アクション・アドベンチャー枠は2010年代に早期出願に大きく舵を切っている様子が目を引きます。
このように上図の2010年代のデータに注目して最近のジャンプの商標戦略を読み解くと、平均的には連載開始から1年半ほどで出願することとしつつ、アクション・アドベンチャー、職業・ビジネス、SF・ファンタジーの3ジャンルは早期に商標登録していることが窺えます。
「早期に商標登録出願されるほどジャンプ編集部の期待が大きい」と仮定し、乱暴にまとめてみると、最近のジャンプ編集部の漫画期待度ランキングは「お仕事≒アクション>SF・ファンタジー>サスペンス≒恋愛≒グルメ>ギャグ>スポーツ」と言えそうです。
2.出願されるためにはバトル展開が必要?
さて、ジャンプの商標戦略を漫画のジャンル別に見てきましたが、ここからは少しだけ漫画の中身にも踏み込んでみましょう。
ジャンプといえばやっぱりバトル。人気が落ちたときのテコ入れでバトル展開に切り替えることは、太古の昔からしばしば行われてきました。
そこで次の調査テーマはズバリ、バトルをやらないと出願されないのか?
引き続き「1990年以降に連載開始して完結前に出願された作品」を対象として、筆者の独断と偏見で各作品をバトルあり・バトルなしに分類し、出願状況を調べてみました。
なお、本記事では「バトル」を「相手を殺傷する目的で、肉体、武器、または超能力を用いて戦うこと」と定義しました。
……ということで、答えは明確にNO! バトル展開がある漫画もない漫画も、ちゃんと出願されています。
考えてみれば、そもそもバトル展開が考えづらい職業・ビジネス漫画やスポーツ漫画も出願されてますもんね。
全体的に見るとバトル漫画の方が出願数は多いものの、お仕事やスポーツだけでなく、恋愛漫画やギャグ漫画の「バトルなし」作品もしっかり商標を押さえています。
とはいえ、これだけで終わってはつまらないですよね! バトル展開の有無による違いをさらに深掘りしてみましょう。
次に気になるのは、バトル展開をやればジャンプ編集部の期待度は上がるのか? という点です。
バトルやってれば編集部が期待してくれるの?
上記のジャンル別分析と同じように「早期出願ほどジャンプ編集部の期待が大きい」と仮定して、「連載開始から出願までの時期」をバトルの有無で比べてみます。
結論から言うと、上図の「全体」項目のとおり、平均するとバトルありの漫画はバトルなしの漫画より半年も早期に出願されていました。
バトルの有無による出願時期の違いはかなり顕著に出ており、ほとんどのジャンルでバトルありの作品が早期出願される傾向があります。
特にグルメ漫画とギャグ漫画は、バトルの有無で出願までの時期が倍近く違っており、ジャンプ編集部のバトル重視が明らかに見て取れます。
効率よくジャンプ編集部からの期待度を上げるためには「兎にも角にも殴り合い! こまけぇこたぁいいんだよ!!」ということになりそうですね!(冗談です^^;)
バトルやってれば人気が取れるの?
それでは、実際の読者からの人気はどうなのでしょうか?
上記のように「連載期間が長いほど読者の人気が高い」と考えて、完結作品の連載期間を比べてみましょう。
全体としては、バトルありの漫画の方がバトルなしの漫画よりも平均10ヶ月ほど長く連載されています。
やはりバトル展開の方が読者人気を得やすく、長期連載化する傾向があると推測されます。
しかし、ジャンル別に見ると、むしろ恋愛漫画はバトルしない方が少しだけ長期連載となる傾向があり、必ずしも全ジャンルがバトル展開に適しているとは言えないようです(恋愛漫画とバトルはそれほど相性が良くなさそうなので、しっくり来る結果です)。
ただし、上記のとおり出願時期において顕著な「バトル重視」が見られたグルメ漫画・ギャグ漫画では、確かに「バトルあり」が「バトルなし」よりも平均して1年ほど長く連載されており、早期出願に込められた編集部の期待が結実したものと考えられます。
まとめると、やはりバトル展開がある漫画は早期出願され(編集部に期待され)、連載も長期化する(読者からの人気も高い)という傾向が見られました。
シリアスとコメディ、編集部はどっちに期待?
続いて、バトルの有無だけでなく作風も比べてみます。
ド真面目シリアスも爆笑コメディも両方楽しめるのもジャンプの魅力。
『バクマン。』では「シリアスな笑いが大事だ!」と言われてましたが、果たしてジャンプ編集部の期待度はシリアス・コメディ、どちらに傾くのか。
こちらも筆者の独断と偏見により、各作品をシリアス・コメディに分類してみました(商標登録出願時の作風で判断しています)。
作風の比較では、バトルの有無ほど顕著な違いは見られませんでした。
恋愛やアクション・アドベンチャーなどはシリアス・コメディ間で差が付いていますが、シリアス×恋愛の作品やコメディ×アクションの作品は各1作品しかなく、統計的な差とは言えません。
総じて、シリアス・コメディ間の差よりも作品ごとの違いの方が大きく、ジャンプ編集部は「その作品がシリアスかコメディか」によって一律に期待度を変えているわけではないようです。
次に、完結作品の連載期間も比較してみましたが、下図のとおり出願時期以上にシリアス・コメディ間で差が小さいという結果となりました。
このように、作風(シリアスかコメディか)と出願時期(編集部の期待度)や連載期間(読者人気)との間には、明確な相関が見られませんでした。
最強はコメディ×バトル!?
ところが、単にシリアスとコメディを比較するのではなくバトルの有無と掛け合わせると、また違った一面が見えてきます。
下表のように、バトルの有無と作風(シリアス・コメディ)でクロス集計してみましょう(具体的な作品リストは本記事の最後に掲載しています)。
この掛け合わせで「連載開始から出願までの平均期間」と「完結までの平均連載期間」を計算してみると、下図のようになりました。
最も早期出願(=期待度が高い)かつ長期連載(=人気が高い)という栄冠を手にしたのはコメディ×バトル漫画。
上図の並びでは、出願が早いほど連載期間が長くなる、つまり編集部の期待度が高いほど人気が出るという傾向が綺麗に出ています。
バトルありの漫画ではコメディが強く、バトルなしだとシリアスが強いというのも面白い傾向ですね。
コメディ×バトル作品は、序盤のコメディ展開からバトル中心にシフトしていった『ぬ~べ~』『REBORN』、コメディ中心でたまに中長編のバトル展開を挟む『銀魂』『幽奈さん』、ギャグバトルとでも呼ぶべき『ラッキーマン』『ボーボボ』などがあり、かなりバラエティに富んでいます。
コメディ×バトル作品の強みは、なんといってもコミカル展開とバトル展開を使い分けて読者を飽きさせないこと。展開の幅が広いので、いろんな層の読者を取り込みつつ、長期連載にも対応できる柔軟性があります。
結果として、商標が出願された8作品は一切短期終了なし! 最短でも連載期間3.8年、平均連載期間6.3年という安定感を持つ、ジャンプの隠れた主役です。
これに対し、シリアス×バトルはジャンプの王道。商標が出願された作品数は圧倒的に多く、設定・世界観の自由度も高いので、多種多様なバトル漫画が毎年生まれています。
連載10年を超える看板作品も多いものの、数が多いためか一部の作品は短期終了となることもあり、安定感はコメディ×バトルより少し劣るようです。
シリアス×非バトル作品の大半は現実世界が舞台で、お仕事漫画やスポーツ漫画が該当します。
『ヒカルの碁』なら囲碁、『アイシールド21』ならアメフトと、「やること」が明確に決まっている作品が多く、作品の方向性が変えづらいので、バトル系の作品ほどの長期連載化は比較的起きにくい傾向にあります。
最後のコメディ×非バトル作品に属するのはギャグ漫画と恋愛漫画。バトルもなくシリアスな展開も少ないので、ゆる~く読める作品が多いです。
しかし、コメディ×バトルと違ってコミカル一本なので読者の興味を惹き続けるのが難しく、一話完結ものだと話作りの負担も大きいことから、他のグループよりも連載期間が短めになっていると推測されます。
ジャンプの商標出願作品はどのように変わってきたのか
このように、上記の4グループは各々違った性質を持ち、得手不得手があります。
商標の出願時期や連載期間に差はあっても、どのグループもジャンプには欠かせないはず。
そこで、ジャンプ作品をこの4グループに切り分けて、実際の商標出願作品の変遷を見てみましょう。
上図のとおり、1990年代には全出願の実に8割以上がバトル漫画だったのに対し、2000年代からはコメディ×非バトルの出願も一気に増えて、バトルと非バトルの比率は半々近くになっています。
シリアス・コメディについても、1990年代にはシリアス8割コメディ2割という出願状況だったのが、2000年代以降はコメディ比率が3~4割に増えています。
このように、バトルの有無や作風で軽重を付けつつ、いろんな漫画をバランスよく載せて、適切に商標登録で作品を保護するというジャンプの方針は、2000年代から続いているようです。
最後に、本稿執筆時の最新号(2020年42号)の連載陣を同じように分析してみましょう。
スポーツ漫画やお仕事漫画が一斉に終了したためシリアス×非バトル枠が消失し、代わりにコメディ×非バトルが伸びています。
2020年28号から4号連続で始まった新連載『あやかしトライアングル』『破壊神マグちゃん』『灼熱のニライカナイ』『僕とロボコ』はいずれもコメディ風で、『灼熱のニライカナイ』以外の3作品は(今のところ)コメディ×非バトルです。
これに対し、2020年38号から4号連続の新連載『BURN THE WITCH』『仄見える少年』『高校生家族』『ぼくらの血盟』は『高校生家族』を除いてシリアス風で、やはり連載作品のバランスを取ろうとする意図が窺えます。
とすれば、これからの新連載陣には最高に面白いスポーツ漫画とお仕事漫画を期待するしかないですね!
なお、期待度も人気も高いはずのコメディ×バトルですが、商標出願の比率としては1990年代からずっと1~2割程度であり、ヒット作の発掘はなかなか難しいようです。
現連載陣でコメディ×バトルに当たるのは『夜桜さんちの大作戦』『マッシュル -MASHLE-』『灼熱のニライカナイ』。
めでたく次にくるマンガ大賞第1位を受賞した『アンデッドアンラック』と一緒に、日々の集英社の出願商標ウォッチングリストに入れておきましょう!
(え、まだ『アンデッドアンラック』読んでないの? 今すぐ読みましょう!)
3.まとめ
本記事では、ジャンプ漫画をジャンル別に分析した結果をご紹介しました。
結局は「面白い漫画は商標登録出願される!」に尽きるんですが、好きな漫画の商標を調べながらあれこれ考えるのは本当に楽しいです。
ジャンプ漫画以外にも、サンデーやマガジン、チャンピオン、ジャンプ+にヤングジャンプ、本当にいろんな漫画の商標が出願されています。
これを読んだ皆様もぜひ、あの漫画やこの漫画のタイトルやキャラ名が商標登録されてるか調べてみてください!
最後に、本記事の内容をまとめます!
- ジャンプ編集部が密かに期待するのは「お仕事漫画」
- バトル漫画じゃなくても出願するけど、やっぱりバトルは期待大
- コメディ×バトルは最高に期待されている
- 『アンデッドアンラック』、次にくるマンガ大賞第1位おめでとう!
それでは、いつかまた機会があればお会いしましょう!
おまけ:そういえば、アイツの商標は?
ジャンプといえばお馴染み海賊マーク。もちろんアイツも商標登録されています。
試しに特許庁のデータベースJ-PlatPatに飛んで、「登録番号」欄に「1427071」と入力し、「照会」をクリックしてみましょう!
アイツがこっちを見てるはず……。
出願日は1975年7月10日。記念すべき初出願作品『包丁人味平』の約1年前に出願されています。
出願から45年、1980年に商標登録されて40年。ジャンプの顔である海賊マークは、今なおジャンプブランドを守り続けています。
ジャンル別連載作品リスト
※各作品のジャンルはまんが王国に登録されているものを採用しました(2020年9月19日検索)。