Toreru Media は【毎週火曜日】+α で更新!

特許の拒絶理由通知とは?主な理由と対応策を解説

特許を出願する際に、特許庁から通知される「拒絶理由通知」は、多くの特許出願人にとって避けては通れない壁です。この通知を適切に理解し、対応することが特許取得の鍵となります。

拒絶理由通知は、特許庁が出願された発明に対して特許を認められない理由を示すものです。しかし、これを受け取ったとしても、特許取得のチャンスが完全に失われるわけではありません。適切な対応を行えば、拒絶理由を解消し、特許を取得する可能性を高めることができます。

本記事では、拒絶理由通知の基本的な仕組みから、具体的な対応方法、そして拒絶理由通知を回避するための事前準備について、初心者向けにわかりやすく解説します。特許出願の成功率を高めたい方にとって、必ず役立つ内容となるはずです。

1. 拒絶理由通知とは

特許庁から出願人に送られる「拒絶理由通知」は、特許取得の過程でよく見られる重要な手続きです。この通知を正しく理解することで、適切な対応が可能になります。

拒絶理由通知の定義と役割

拒絶理由通知とは、特許庁が出願された発明について「特許法の要件を満たしていない」と判断した際に、その理由を説明する文書です。この通知は、特許庁が単に出願を拒絶するためのものではなく、出願人に対して「修正の機会」を提供する役割を果たしています。

具体的には、以下のような内容が記載されています。

  • 拒絶理由となる法的根拠(例:新規性や進歩性の欠如)
  • 指摘された問題の詳細

拒絶理由通知を受け取るタイミング

拒絶理由通知は、特許庁が出願内容を審査した後、特許要件を満たしていない点が見つかった場合に送られます。出願後に審査請求をしてから審査開始までは平均10か月程度(※ 本記事執筆時点における傾向)かかるため、通知を受け取るタイミングはその後になります。

拒絶理由通知を受けた場合の選択肢

拒絶理由通知を受け取った場合、出願人には次のような選択肢があります。どの選択肢を選ぶかは、通知された拒絶理由の内容や、特許取得の可能性を考慮して判断する必要があります。

  1. 意見書の提出
    • 拒絶理由に反論するための文書を特許庁に提出します。
    • 特許庁が指摘した拒絶理由が不当である場合や、補正を加えずに特許要件を満たしていると考えられる場合に有効です。
    • 具体例: 進歩性の欠如が指摘された場合に、発明の技術的優位性や差別化要素を説明する。
  2. 補正書の提出
    • 特許請求の範囲や明細書を修正し、拒絶理由を解消します。
    • 特に、新規性や進歩性の欠如、記載不備が指摘された場合に用いられます。
    • 具体例: 特許請求の範囲を狭めることで既存技術との差異を明確にする。
  3. 分割出願
    • 元の出願から一部の内容を分割して新しい出願を行います。
    • 主に、拒絶理由が特許請求の範囲の広さや複数の発明が混在していることに起因する場合に有効です。
    • 具体例: 特許請求の範囲が2つの発明を含んでいると指摘された場合、それぞれを別々の出願として分割する。
  4. 出願の取り下げ
    • 拒絶理由を解消する見込みがない場合、出願を取り下げることも選択肢です。
    • 審査時点でまだ出願公開前であれば、出願を取り下げることで、将来的に同じ発明を新たな視点で再出願する道が開ける場合もあります。

拒絶理由通知を受けた場合でも、適切に対応することで特許取得の可能性を高めることができます。それぞれの選択肢のメリット・デメリットを理解した上で、最適な方法を選ぶことが重要です。

2. 主な拒絶理由とその内容

拒絶理由通知には、特許を付与できないと判断される具体的な理由が記載されています。これらの理由を正確に理解し、適切に対応することが特許取得への鍵となります。本章では、特許法で定められた主な拒絶理由について概要を解説します。

新規性の欠如

新規性とは、その発明が「世界中でこれまで公開されたことがない」ものであることを指します。特許庁が審査の過程で類似の技術文献や公開された発明を発見した場合、新規性が欠如していると判断されます。

  • 主な例: 既存の特許文献や論文に同一の技術が記載されている。
  • 対応方法の例: 特許請求の範囲を修正して、既存技術との差異を明確にする。

進歩性の欠如

進歩性とは、その発明が「当業者にとって容易に考えられるものではない」ことを意味します。進歩性が欠如していると判断される場合、特許庁は「既存技術を組み合わせただけ」と見なします。

  • 主な例: 既存の2つの技術を単純に組み合わせたに過ぎないと判断された場合。
  • 対応方法の例: 2つの技術を組み合わせることに困難性があることを説明する。

明細書や特許請求の範囲の記載不備

特許明細書や特許請求の範囲に不明確な記載や不備がある場合、拒絶理由として指摘されます。これにより、発明が実施可能でないと判断されることもあります。

  • 主な例: 特許請求の範囲に記載した発明を実施できる具体的な実施例が明らかにされていない場合。
  • 対応方法: 明細書や請求の範囲を補正し、具体的かつ明確に記載する。

拒絶理由にはさまざまなケースがあり、それぞれの対応が求められます。次の章では、拒絶理由通知を受けた場合の具体的な対応策について解説します。

3. 拒絶理由通知を受けた場合の対応策

拒絶理由通知を受け取った場合、適切な対応を行うことで特許を取得できる可能性を高めることができます。本章では、拒絶理由通知への具体的な対応策について詳しく解説します。

意見書の提出

意見書とは、特許庁が指摘した拒絶理由に対して、反論を行うための文書です。特許庁の指摘が不当である場合や、特許要件を満たしていると考えられる場合に提出します。

意見書の作成ポイント

  • 法的根拠への反論: 拒絶理由の法的根拠(新規性や進歩性の欠如など)について、具体的な反論を示します。
  • 技術的説明: 発明が既存技術とは異なる点や、進歩性を有する理由を詳細に説明します。
  • 証拠の提示: 必要に応じて、技術文献やデータを提示して反論を裏付けます。

補正書の提出

補正書とは、特許請求の範囲や明細書を修正して、拒絶理由を解消するための文書です。特許庁が指摘した問題を解決するための有効な手段として広く利用されます。

補正書の作成ポイント

  • 請求範囲の修正: 特許請求の範囲を絞り込み、既存技術との差異を明確にします。
  • 明細書の修正: 不明確な記載や実施可能性の欠如を解消するために、具体的な内容を修正します。

分割出願の活用

分割出願は、元の出願から一部の内容を分割して新しい出願を行う方法です。特許請求の範囲が広すぎたり、複数の発明が含まれている場合に有効です。

分割出願のメリット

  • 審査の対象を明確化: 異なる発明が一つの特許出願に含まれていると、その一部しか審査してもらえない場合があるため、元の出願を分割することで、各発明ごとに審査を受けられるようになります。
  • 拒絶理由の解消: 分割によって問題となっている特許請求の範囲を切り離すことで、拒絶理由を解決できます。

実際の拒絶理由として指摘されることの多い新規性と進歩性や、それらが認められた具体的な事例について、こちらの記事で詳しく紹介していますので、よろしければご参照ください。

4. 拒絶理由を回避するための準備

拒絶理由を受けるリスク、あるいは、拒絶理由を最終的に克服できないリスクを最小限に抑えるためには、特許出願の段階で十分な準備を行うことが重要です。本章では、拒絶理由通知を回避するために必要な事前準備について解説します。

事前調査の重要性

特許出願を行う前に、発明が特許要件を満たしているかを確認するための調査をすれば、特許取得の成功率を上げることができます。

先行技術調査

  • 目的: 発明が既存の技術文献や特許と競合していないか確認する。
  • 方法: 特許庁の「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」や商用データベースを活用して調査。
  • ポイント: 既存技術との差異を明確にし、新規性と進歩性を満たせそうな発明の特徴点を把握する。また、世界中の先行技術文献を調査し切ることは困難なため、コスト的に許容できる範囲内で現実的な調査をする。

自ら公開済でないか確認

  • 目的: 発明に関連する情報が自らの発表や公開資料を通じて既に公知になっていないか確認する。
  • 方法: 学会発表、論文、展示会資料、ウェブサイトなどを見直す。
  • ポイント: 公開済みの情報が特許出願の新規性を損なうことがあるため、出願前に発明内容がどこにも公開されていないか確認することが重要。もし公開済みの場合でも、一定の条件を満たせば新規性喪失の例外適用を受けることができる場合があるため、その点も確認する。

明細書作成時の注意点

特許明細書は、特許出願における最重要書類です。取得できる権利範囲が広くなるように考慮しつつも、発明が明確かつ具体的に把握できるように作成することで、拒絶理由を回避しやすくなります。

明細書作成のポイント

  1. 発明の背景と課題の記載:
    • 発明が解決する課題と、その必要性を明確に記述する。
  2. 発明の具体的な実施例:
    • 発明の実施可能性を示すため、実施例を具体的に記載する。
  3. 用語の統一:
    • 専門用語や表現を統一し、あいまいな記載を避ける。

特許事務所や専門家への相談

特許出願は複雑なプロセスであり、専門家である弁理士(特許事務所や弁理士法人)のサポートを受けることで成功率を高めることができます。

専門家を活用するメリット

  • 経験豊富な視点: 特許法や審査基準に基づき、明細書や請求の範囲を適切に作成。
  • 調査の効率化: 先行技術調査を専門的に行い、必要な情報を効率的に収集。
  • 戦略的な出願: 分割出願や補正を見据えた戦略的な対応が可能。

5. 拒絶査定となった場合の選択肢

拒絶理由通知に対する対応を行ったとしても、特許庁の判断によっては拒絶査定となる場合があります。拒絶査定を受けた場合でも、特許取得の可能性を完全に失うわけではありません。本章では、拒絶査定を受けた後の主な選択肢について解説します。

拒絶査定不服審判の請求

拒絶査定不服審判は、特許庁の拒絶査定に対して異議を申し立てる手続きです。この審判を通じて、特許庁が再度出願内容を審査することになります。

手続きの流れ

  1. 不服審判の請求: 拒絶査定の通知を受け取った日から3か月以内に請求する必要があります。
  2. 補正書の提出: 審判請求と同時に、特許請求の範囲や明細書の補正を行うことができます。分割出願を行うこともできます。
  3. 審判部による再審査: 審判部(前置審査が行われる場合は元の審査官)が再度出願内容を審査し、拒絶理由が解消されれば特許が付与されます。

ポイント

  • 不服審判を請求する際には、拒絶理由を詳細に検討し、適切な補正や反論を行うことが重要です。
  • 必要に応じて弁理士に相談し、戦略的な対応を検討しましょう。

再出願の検討

拒絶理由が複雑で解消が難しい場合や、別の観点から特許を取得したい場合には、再出願を検討することも可能です。

再出願のメリット

  • 出願内容を改善して、新たな審査を受けることができる。
  • 元の出願で得られた審査結果を参考にすることで、特許取得の可能性を高められる。

再出願のポイント

  • 再出願時には、元の出願と同じ内容がすでに公開されている場合、新規性を満たさない可能性があります。そのため、新たな視点や追加の技術的特徴を含めることが重要です。

拒絶査定を受けた場合でも、特許取得のための道は残されています。適切な対応を行い、特許取得の可能性を最大化しましょう。

まとめ

特許出願の過程で拒絶理由通知や拒絶査定を受けることは珍しいことではありません。しかし、これらに対して適切な対応を行うことで、特許を取得できる可能性を大きく高めることができます。

本記事の要点

  1. 拒絶理由通知の重要性: 拒絶理由通知は、特許取得を妨げるものではなく、出願人に修正の機会を提供する手続きであることを理解しましょう。
  2. 主な拒絶理由と対応策: 新規性や進歩性の欠如、明細書の不備といった拒絶理由について、それぞれの対応方法を明確にすることが重要です。
  3. 事前準備の重要性: 先行技術調査や自らの公開状況の確認、そして明細書の適切な作成を行うことで、最終的に特許を受けられないリスクを軽減できます。
  4. 拒絶査定後の選択肢: 拒絶査定不服審判や再出願など、次のステップを見据えた行動が必要です。

適切な管理と専門家の活用

特許出願や拒絶理由通知への対応は、法律や技術の知識が求められる複雑なプロセスです。そのため、弁理士や特許事務所などの専門家を活用し、戦略的に対応することをおすすめします。

特許取得は、企業や発明者にとって大きな価値をもたらす重要な資産です。適切な準備と対応を行い、拒絶理由を克服することで、特許取得の可能性を最大化しましょう。

高品質な特許出願を、誰でもカンタンに

Toreru 特許®︎ は、経験豊富な弁理士が最新のテクノロジーを最大限に活用し、高品質な特許を、誰でもカンタンに利用できるようにしたサービスです。これまでむずかしかった「安心」と「カンタン」を両立しました。

一般的に特許出願サービスはお客様にとって複雑で高価格なことが多いですが、Toreru 特許®︎ では、誰でも手軽に高品質な特許出願が可能です。

  • オンラインで完結: 特許出願の手続きがすべてネットで完結。気になる出願状況も、見返したい書類も、マイページからすばやく確認できます。
  • 安心の弁理士サポート: テクノロジーに精通した弁理士が、特許の品質を守り、親身にサポートします。
  • リーズナブルな料金: 誰もが安心して特許出願できる、予算に優しいシンプルな料金を実現しています。
  • 発明相談は無料: AIによる事前ヒアリングや、弁理士とのWebミーティングをもとに、あなたの発明の要点を整理した第三者視点の「発明提案書」を作成します。発明相談~発明提案書の受け取りは、なんと無料です。

革新的なアイデアをビジネスの強みにするために、まずは Toreru 特許®︎ をチェックしてみませんか?

Toreru 公式Twitterアカウントをフォローすると、新着記事情報などが受け取れます!